展開としては地味ですけど……。
では、本編どうぞ!
『それで、どうするんだい、マスター?』
「・・・・・・どうするって?」
エルミナの問いに、雄一は目を腕で覆ったまま応じた。
エルミナは構わず問う。
『これからどう動くのか、だよ』
「・・・・・・はやてを救うのは絶対だ。だけど、そのための方法が見つからん」
『なら、諦めるのかね?』
「じゃあ、どうしろってんだよ!」
雄一は身を跳ね起こすと、エルミナを首からはずし机の上に放り投げた。
机に転がったエルミナを睨みつける。
「蒐集しようがしなかろうが、どちらを選んでもはやての死に繋がるんだぞ! <アルス・マグナ>を使おうにも、使うには元の体が必要で、その体はアースラの中! 元の体を取り戻すには管理局に出向く必要があるけど、お互い緊張状態にある以上確実に一悶着あるぞ! <アルス・マグナ>を上手く使えたとしても、どのように改変すればいいのか、見当もついていない!! その状況でどうやれば助けられる方法があるっていうんだ!」
『なら、そこで立ち止まっていて何かが見えるのかね?』
雄一の激昂をエルミナは淡々と受け流した。
受け流された雄一は言葉に詰まる。
『その程度の困難など、笑いながら踏みつぶしたまえ。私達のマスターなら容易かろう。そもそも、解決法など、見つけるのではなく作るものだろう。諦めなければ突破口などいくらでも開きようはある』
「・・・・・・簡単に言うな」
『・・・・・・ただ、そうやって困難を笑って踏破した者を知っているだけだ』
エルミナの声が僅かに変わった。
何かを懐かしむような声で彼女は語る。
『彼はどんな困難に対しても踏み込んでいった。それこそ、万を超える軍を前にしてもな。今のような状況でも彼ならこう言うだろうな、「その程度できずして何がヴァレンシュタイン家の執事か」と』
エルミナの話に、彼? と首を傾げる雄一。
だが、思うところがあったのか、雄一は頭を冷やすと、現状を打開する手段を考え始める。
「その程度、か・・・・・・エルミナ、前に頼んだ闇の書の解析はどこまで進んでいる?」
一度顔を俯かせると、雄一の目の色が変わっていた。
発破が上手く働いたことに満足したのか、エルミナは作業の進捗を確認する。
『頁の解析は完了している。全体の解析はそろそろ4割といったところだ。頁解析のリソースが回せるようになったからもう少し効率は上がるだろう』
「そうか。なら、戦闘補助も含めて、全リソースを解析に回せ。どうせしばらく戦闘には出れないだろうし」
管理局とはち合わせる可能性を考えると、現状戦力として足手纏いになるのはシャマルと雄一だ。
おそらくシグナム達にもそれが分かっているだろうから、雄一達にはやての護衛を任せて蒐集に専念することななるだろう。
シグナム達が、海鳴から遠くの無人世界で蒐集をし、管理局が管理外世界の監視に力を注いでいて、管理局の目がはやてに向いていない今ならこの街で大規模の戦闘はないはず。
そう判断した雄一の意図をエルミナは汲んだ。
『了解した。戦闘サポートを含め、全リソースを使い、解析を急ごう。作業を中断しなければ他の機能が使えなくなるから注意してくれ』
「分かった。頼んだぞ」
そのまま沈黙したエルミナから視線を切り、再びベッドに横になる雄一。
そのまま、天井を眺めながら、思考を纏めていく。
「(管制人格から聞いた限り、まだ時間はある。その間に、俺はどう動けばいい? シグナム達にこのことを伝えるべきか? いっそのこと管理局から俺の体を強奪して、<アルス・マグナ>を使うか? ・・・・・・現実的じゃないか。仮に攻め込むとして、シグナム達は巻き込めないからこっちは俺一人。それに対して向こうはなのは達にクロノ、その他管理局員が多数・・・・・・尋常の手段じゃ即捕まるな。なんとかしてなのは達とシグナム達を和解させることができれば・・・・・・難しいな。話し合いを提案していたのに、その提案をこっちが蹴っているから、こちらから提案しようものなら、クロノ達が何をするか分からん)・・・・・・手詰まりじゃねえか」
考え始めて早々に暗礁に乗り上げた。
首を振って気を取り直し、打開する筋道を描いていく。
(やっぱり、現状考えられるのは、蒐集するか、元の体を取りに行くかだけど・・・・・・どっちも問題が山積みだ。ベストは前者だ。蒐集せずにただはやてが苦しむのを眺めているより、行動する方が希望はある。暴走体さえ押さえ込めれば管制人格とはやてに管理者権限を使って暴走体を押さえ込んでもらえばいい。今までの主のときは押さえ込むだけの戦力がなかっただけだろうし、そういう意味じゃはやての周りというか、この海鳴には十分な戦力がいる。だけど、俺達だけで暴走した闇の書を押さえ込めるか? 万全を期するなら、管理局というかなのは達の協力もあればいいんだけど、どうすればいいんだ?)
なのはやフェイト、クロノ達の協力があれば、戦力として安心できるんだが、敵対関係にあるのが悔やまれるし、なにやら因縁でもあるのだろうか?
とりあえず、そちらの案は置いておいて、もう一方を検討する。
「(後者なら、それこそ世界に干渉するわけだから実質できないことはないけど、力が大きすぎる分明確な対象がいるんだよな。せめて『こうしよう』って形が見えないことには・・・・・・そもそも、元の体がないと使えない。無用な戦いを防ぐためには、管理局の協力がいる訳で)・・・・・・って結局管理局との和解は必須じゃねえか」
問題が一つに纏まったが、雄一はその難問さに思わず匙を投げかけた。
(お互いがお互いを敵と捉えてるしな・・・・・・シャマルやザフィーラは事情次第で納得してくれそうだけど、ヴィータとかシグナムに『管理局と協力しよう』なんていった日にはどう言うだろうか?)
少し想像してみる。
だが、しばらく考えるうちに雄一の体が細かく震えだした。
「・・・・・・だ、駄目だ。最低限睨まれる程度だけど、ほとんどアイゼンの染みかレヴァンティンの錆ってどういうことだよ・・・・・・それに、何処までを話せばいいんだ?」
闇の書の完成に唯一希望を見出しているシグナム達。
彼女達に闇の書の真実を何処まで知らせていいものだろうか?
「というか、あれ? そもそもどうやって管理局に出向くんだ?」
知らせる範囲についてはひとまず置いておき、頭を切り替えると別の問題に気がついた雄一。
管理局が何処に拠点を構えているのか、それが分からない以上、転移で行くこともできないし。
「せめて、なのは達と話す機会が持てれば・・・・・・けど、そのためには蒐集に出る必要があるよな。海鳴での戦闘は、シグナム達もこの前みたいな待ち伏せを警戒してるからないだろうし。けど、そのためには俺が蒐集に出ることを納得させる必要があるけど・・・・・・どうやって?」
再び袋小路に入り込んでしまった問題に呻く雄一。
だが、ふとその動きが止まった。
「そういえば、結局あれから動きが無いな」
顔をしかめながら、雄一が警戒していた仮面の男達。
以前シャマルの前に現れて以後、動きを見せておらず監視も無くなっている。
管理局とは別の、何らかの思惑を持っているはずだから、諦めたとは思い難い。
(まあ、少なくとも一方はあれだけ痛めつけていたんだから、回復魔法があるとはいえ、大した脅威にはならないはず。けど、あいつらは一体なんで闇の書に関わるんだ?)
闇の書の記憶には確かにあんなやつらはいなかった・・・・・・はず。
「お前らは・・・・・・一体何者なんだ?」
雄一は虚空に幻視した彼らを睨みながら、呟くのだった。