リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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ギリギリになってしまいました。
討鬼伝が面白すぎて、止め時が……。
では本編どうぞ!


第八十三話 接敵と機会

 

空気を切り裂いて迫る頭部を回避して、シグナムは眼の前で蠢くワームに顔をしかめた。

 

「なるほど・・・・・・ヴィータが苦戦するわけだ」

 

以前ヴィータもこのワームと戦っていた。

彼女は、「頁はそこそこ稼げるけど、図体デカいから体力多くてメンドい」とこぼしていた。

そのときは何を軟弱なことを、と思っていたのだが、

 

(これは、思った以上に厄介だな)

 

緑色の体液をこぼすワームを睨む。

虫だからか、細かいダメージを与えたところで頓着せず、かといって殺すわけにもいかない。

 

(ならば、シュランゲフォルムはともかくファルケンは使うわけにはいかんな)

 

乱れた呼吸を僅かながら落ち着かせると、レヴァンティンを構えて眼前で蠢くワームを睨むと、

背後で何かが砂を突き破って現れた。

 

「なっ!?」

 

シグナムはすぐに身を翻して上空に逃れようとするが、背後に現れたもの、ワームの触手の方が一歩早く、シグナムを縛り上げた。

 

「しまった・・・・・・ぐぅっ!?」

 

体を傷つけられた恨みからか、ワームが触手を締め上げる。

痛みに呻く中、手首から先が動くのを確かめる。

シュヴェルトフォルムでは無理だろう、触手より先にシグナム自身を斬ってしまう。

ならば、とシグナムはシュランゲフォルムに変えて触手を斬ろうとし、

 

「バルディッシュ!」

<Thunder Brade>

 

その矢先、牙を鳴らしながらシグナムに迫るワームに、雷光を放つ剣が次々と突き立った。

 

「ブレイク!」

 

フェイトの合図で、突き刺さっていた雷剣が爆発していく。

 

「テスタロッサか」

 

ゆるんだ触手から逃れ、より上空を見上げる先。

バルディッシュを構えるフェイトの姿があった。

一方、フェイトはエイミィからの叱責を受けていた。

 

「<ちょ、フェイトちゃん!? 助けちゃってどうするの! 捕まえるんだよ!?>」

「<ご、ごめんなさい、つい。だけど>」

 

間違ったことはしていない、とフェイトは思っている。

シグナムに視線を向けると、シグナムもフェイトを見上げたかと思うとポツリとこぼした。

 

「礼は言わんぞ、テスタロッサ」

「お邪魔でしたか?」

「蒐集対象を潰されてしまった」

 

焼け焦げたワームにため息をつくと、フェイトは複雑そうに苦笑した。

 

「すみません・・・・・・けど、悪い人の邪魔をするのが私の仕事ですから」

「・・・・・・そうだな」

 

シグナムも複雑そうに笑うと、レヴァンティンにカートリッジを装填していく。

 

「悪人だったな・・・・・・私は」

「・・・・・・」

 

シグナムはレヴァンティンを、フェイトはバルディッシュを構えると、

 

「「っ!!」」

 

両者は激しくぶつかった。

 

 

 

二人のいる場所から離れた地点で。

ザフィーラは雷が走る空を腕を組んで見つめていた。

その背後に現れたアルフは不意打ちを入れることなくただ声をかけた。

 

「ご主人様が気になるかい?」

「お前か」

 

背後からの問いにゆっくりとザフィーラは振り返る。

 

「ご主人様は一対一。こっちも同じだ」

「・・・・・・シグナムは我らの将だが、主ではない」

 

半身を引き、拳を構えるザフィーラ。

アルフも応じるように拳を構える。

 

「あんたの主、あのペインってのが闇の書の主ってわけね」

「違う」

 

鎌掛けのつもりだったアルフの問いをザフィーラはあっさり否定した。

むしろ、その否定にアルフの方が戸惑った。

 

「い、今なんて?」

「あいつは、ペインは我らの主ではない。我らの主の友であり、我らと心を同じくする者だ」

「そんな、じゃあ一体誰が」

「答える義理は、ない!」

 

言葉と共に、ザフィーラが一気に間合いを詰める。

動揺していたアルフは一瞬挙動が遅れるが、

 

「くっ!?」

「っ、はあ!!」

 

互いの手甲が火花を散らしてぶつかり合った。

 

 

 

 

「シグナムとザフィーラが、フェイト・アルフと戦ってる?」

「ええ。ヴィータちゃんが、前に行った砂漠世界の魔法生物がなかなか魔力を持ってるって話をしてくれたの。それで、シグナム達が向かったんだけど、管理局の網にかかったらしくて」

 

シャマルの頼みは、雄一にシグナム達への増援に出て欲しい、というものだった。

なのはかフェイトに会うために、出る必要があった雄一には好都合だが、

 

「下手をすれば各個撃破される、か。不味いな。ヴィータは無事なのか?」

 

シグナムとザフィーラがペアを組んでいるため、ヴィータは一人で蒐集をしているらしい。

問うと、シャマルは頷いた。

 

「まだ大丈夫よ。けど、念のためにシグナム達の援護へ向かってもらってるわ」

「それなら、俺が出向かなくてもいいんじゃないのか?」

 

ヴィータが行っているなら、雄一が出る理由はないのではないか。

首を傾げる雄一にシャマルはピッと指を立てると、説明した。

 

「それは駄目。ヴィータちゃんのいるところからだと、ちょっと時間がかかるし、管理局員に見つかって戦闘になったらもっと掛かるわ。それより、雄一君の転移で向かってもらった方が早いと思うの」

「俺の転移は皆のと変わらないんだけど。分かった。とりあえず急げるだけ急いでみる。シャマルははやての守りを頼んだ」

 

頼みを了承したところで、はやてが顔を覗かせた。

 

「あ、二人とも。もうお話は終わった?」

「ああ。ちょうどな。それで、どうかしたのか?」

「二人が話してる間に冷蔵庫の中を見てきたんやけど、大分中身が心許なくなってきてるんよ。せやから、買い物を頼みたいんやけど」

 

はやての頼みに、シャマルははっとした。

此処で雄一が駆り出されてしまうのは不味い。

かといって、雄一を残せるだけの理由が彼女には思いつかなかった。

一縷の望みを掛けて雄一を見るシャマル。

 

「それじゃあはやて。すまないが、シャマルといって来てくれないか?」

(って、あっさり言っちゃってる!?)

「えー、なんでなん?」

 

予想通り同行をねだるはやて。

それをどう断るつもりなのかと、シャマルはハラハラしながら状況を見守った。

 

「実はここの所、畑の野菜が狙われているらしくてな。猫かカラスか分からないけど、何か対策をしなきゃいけないんだ」

「あー、そうなんや。それやったら、ってウチより畑の方が大事なんかい!?」

「そうでもないぞ? はやての負担を少しでも減らすためってつもりで造った畑だから、どちらかと言うとはやての方が大事なんじゃないのか?」

「っ・・・・・・そ、そうか。それならええねん」

(納得しちゃうの、はやてちゃん!?)

 

目の前で起こる事態をえー、と思いつつ見守るシャマル。

だが、雄一はそこでさらに話題を摩り替えた。

 

「そうだはやて。買い物ついでに図書館で前に借りてきてもらったドイツ語辞典をまた借りてきてくれないか?」

「ええけど、雄君が自分で借りてくればええんやないの?」

「戸籍もない俺にどうしろと?」

 

ジト目で睨む雄一の目から笑って目を逸らすはやて。

 

「あはは・・・・・・けど、分かったわ。借りてくるから雄君はお留守番、お願いな?」

「ああ。シャマル、頼んだよ<俺はシグナム達を迎えに行って来るから>」

「ええ。分かってるわ<雄一君、大丈夫なの? 時間、結構ギリギリだと思うけど>」

 

はやてが帰ってくるまでに戻ってこないと、言い訳が立たないことを心配するシャマルだったが、雄一は気にせず頷く。

 

「<心配ない。すぐに片付けるよ>(話がスムーズに行けば)」

「それじゃ、行ってくるなー!」

「あ、はやてちゃん!? 買い物籠は私が持ちますからー!」

「・・・・・・ホント、気をつけてなー」

 

話し込んでいる間に持ってきていたらしい籠を手に、入り口へ向かうはやてをシャマルが慌てて追いかけていった。

苦笑しながら二人を見送った雄一だったが、

 

「・・・・・・それじゃ、行くか」

 

表情を引き締めると、部屋に戻ってエルミナを手に取った。

 

「エルミナ、作業一時中断。これから出るぞ」

『中断命令・・・・・・承認。マスター、何事だい? 戦闘はないんじゃなかったのかな?』

「思ったより、早い対面になりそうなんだ。シグナムのところへ転移する。やれるか?」

『割り出しを開始・・・・・・完了。可能だ。早速行くのかね?』

「ああ、頼んだ」

『承知した。転移開始』

 

エルミナが魔方陣を展開し、視界が切り替わる。

切り替わった先は、以前訪れた砂漠世界。

 

「・・・・・・相変わらず暑いな。シグナムはどっちに」

 

さっさと探そうと思った矢先、

強い振動が地面を駆け抜けていった。

 

「今のは!?」

『魔力衝撃・・・・・・戦闘中のようだね』

「くそっ!? これ以上溝を広げられてたまるか! エルミナ!」

『<Flier Fin>』

 

雄一は、エルミナに飛行魔法を展開させると震源へと急いだ。

震源は丘を越えた先、と近い。

 

すぐに視界が開け、

 

「なっ・・・・・・」

 

目に入った光景に、雄一は目を見開いた。

そこには、

 

レヴァンティンを構えるシグナムと対峙していたのだろう、フェイトの胸から腕を突き出した

あの仮面の男の姿があった。

 

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