リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第八十九話 得た確証と提案

「このまま蒐集しても、はやては救われない」

 

その一言に、場の空気が一気に凍り付いた。

 

「な、なんだよ、それ・・・・・・? どういうことだ?」

 

呆然と問い返すヴィータに、首を横に振って再度雄一は告げた。

 

「言葉通りだ。闇の書は歴代の主の誰かのてによってプログラムが改悪されているんだ。完成させた後、闇の書は主の魔力を使い果たすまで暴走するらしい」

 

 

 

あのあと、帰ってきたはやて達を出迎え、皆で夕飯を食べて、のんびりとした時間をお喋りに費やしていると、はやてが船を漕ぎだした。

はやてを寝かしつけた後、シグナムに頼んでいたとおりヴォルケンリッターの皆がリビングに集まる。

 

「それで、雄一。昼間の話の続きをしてもらっていいか?」

「そのことだが、まず先に、こっちも聞かせてくれ。あの仮面の男達について、何か思い出すこととかはないか?」

 

催促するシグナムに逆に問う雄一。

雄一が考えた限り、あの仮面の男達は闇の書が完成した先に用があるようだが、闇の書の改悪を彼らが知っているとしたら、目的はおそらく闇の書の破壊か封印。

それも、主であるはやてごとといったところだった。

ならば、シグナム達の記憶に何か、僅かでも閃くものはないかと期待した。

だが、シグナムの答えは否。

 

「前も言ったとおり、記憶にない。期待に沿えなくて悪いが」

「いや。覚えていないなら仕方がないよ」

「けど、あの人達は一体何を考えているのかしら。私達に手を貸したり、管理局から守ったり」

「どういうことだ?」

 

シャマルのこぼした呟きに雄一は彼女を振り返った。

 

「えっと・・・・・・雄一君にシグナムの応援に出てもらった後のことなんだけど、」

 

シャマル曰く、ヴィータが同じくシグナムの応援に向かう途中、なのはの待ち伏せを受けたらしい。

交戦するが、闇の書の蒐集は一人つき一回。

なのはと戦うメリットのないヴィータは目隠しを撃つと共にすぐに空域を離脱しようとしたらしい。

十分な距離を稼いだと思い、胸を撫で下ろした瞬間。

なのはの超長距離砲撃が火を噴いたらしい。

油断していたヴィータは直撃を覚悟したが、仮面の男が割り込み、障壁で防いだのだという。

さらに、なのはにバインドを仕掛けるなど、ヴィータの撤退を支援したのだという。

 

「何だ、それは?」

 

明らかにこちらに利する行動を取る仮面の男達に、眉をひそめる雄一。

 

「助けてもらった、と思っていいのかしら?」

「少なくとも、やつらが闇の書の完成を望んでいるのは確かだ」

「じゃあ、その目的は? 管理局に敵対してまで、こちらに味方する理由は思いつく?」

 

念のため、雄一はシグナム達にも問うが、

 

「完成した闇の書を利用しようとしているのかもしれん」

 

ザフィーラが応えるが、雄一の予想と大差はなかった。

だが、その予想にヴィータが反論した。

 

「ありえねー! だって完成した闇の書を奪っても、マスター以外には使えないじゃん!!」

「そうなのか?」

 

新しい情報に、シグナム達に確認すると、彼女達は頷いた。

 

「闇の書は起動したときにマスターのコアを蒐集するの。そのときに、マスターの情報を読み取って認証してしまうの。マスター以外が起動しようとしても、闇の書がマスター以外に応じないわ」

「だったら、催眠や暗示の類は?」

「完成した時点で、闇の書の主は絶対的な力を得る。脅迫や洗脳に効果があるはずもないしな」

 

絶対的な力。

シグナムが口にしたそのフレーズに、雄一は口を挟もうとし、

 

「ねえ・・・・・・闇の書を完成させてさ」

 

ヴィータが僅かに早く、雄一はタイミングを外され、ヴィータの言葉に耳を傾ける。

 

「はやてが本当のマスターになってさ、それではやては幸せになれるんだよね?」

 

ヴィータの躊躇いがちな問いに一同は眉をひそめた。

 

「なんだ、いきなり?」

「闇の書の主は大いなる力を得る。守護者である私達がそれを誰より知っているはずでしょう?」

「そうなんだよ・・・・・・そうなんだけどさ・・・・・・」

 

シグナムとシャマルに諭され、俯くヴィータ。

彼女に雄一は問うた。

 

「ヴィータ。なんでそう思った?」

「・・・・・・私にもよく分からねえ・・・・・・だけど、あたしは何か大事なことを忘れている気がするんだ」

 

本人にもよく分からない違和感に、ヴィータは当惑していた。

だが、それを聞いた雄一はさもありなんと頷いた。

 

「そうか・・・・・・それを感じられただけで十分取っ掛かりになるな」

「ユウ?」

 

頷く雄一は考えが纏まったのか、一度四人を見渡す。

 

「夕方にシグナムには聞いたけど。シャマル、闇の書の主は絶対的な力を得られる。それに間違いはないのか?」

 

問われたシャマルは、首を縦に振った。

 

「え、ええ。そのはずだけど」

「なら、誰か完成に立ち会っているのか?」

「えっと・・・・・・」

 

シャマルは、記憶を探って思い出せなかったらしく、ヴィータ達にも視線を向けるが答えは否。

だが、雄一は顔をしかめつつも、やはりと頷いた。

 

「誰もいない、か。どんどん、こっちの予想が裏づけされていくな」

「おい、ユウ! さっきから一体何を言ってんだ!」

 

嫌な予感に突き動かされ、雄一を締め上げようとヴィータが手を伸ばす。

だが、

 

「いいか、先に言っておくけど、この話に嘘や冗談は一切ない。このまま蒐集しても、はやては救われない」

 

雄一の宣告に、伸ばした手だけでなく心臓までが止まったのでは、とヴィータは感じていた。

 

 

 

 

 

呆然としているシグナム達に、説明していく雄一。

 

「言っておくが、これは闇の書の管制人格に聞いたことだ。そして、俺も間違いないと考えている」

「そ、それこそありえねえ事じゃねえか!? あいつに会えるのは今ははやてだけのはずだし、実体具現化は完成させないと無理なはずだろ!? なのに何でお前が」

「銀の長い髪に赤い瞳」

「っ!? それって!?」

「管制人格の外見。ああ、それとよく泣いていたな」

「・・・・・・間違いない、ようだな」

 

雄一の言う管制人格の姿はシグナム達の記憶にある姿と一致する。

彼が知らないはずの管制人格を知っていたということからも、信じる余地はある話だ。

だが、到底信じられる話でもない。

 

「なら・・・・・・我らは今まで何をしてきたというのだ!」

「シグナム・・・・・・」

 

拳を握るシグナムに、シャマルは掛ける言葉を持たなかった。

自分達の行動ははやてを死地に送るものだったと知らされて、彼女も平静とはいかなかった。

 

「改悪の内容は、蒐集の果てにある暴走にリンカーコアの侵食。特に侵食は、コアの蒐集がなければ早まるという仕様だった。確実に闇の書の所有者になったものを破滅させるためとしか思えないほどだ」

「っ!」

 

淡々と紡がれる雄一の説明に、シグナム達は反論しようとするが、彼の説明に矛盾は見られなかった。

 

「だったら・・・・・・だったら、どうすりゃいいんだよ!!」

「ヴィータ・・・・・・」

「はやてを助けられない!? そんなの認められるわけがねえ!! はやては幸せにならなきゃいけないんだ!! 私達にこんな暖かい毎日をくれたんだから、その分私達ははやてに幸せを返さなきゃいけねえのに!!」

「落ち着け、ヴィータ!!」

 

シグナムがヴィータの腕を掴み強引に落ち着かせる。

 

「放せっ!」

「・・・・・・とりあえず、話を続けていいか?」

 

暴れるヴィータを気にせず説明を続ける雄一に呆れたようにシャマルが言う。

 

「これ以上、何を」

「ちょうどヴィータが聞いたこと、これからどうするかについてだ」

 

シャマルの非難を遮った雄一の言葉に、シャマルは言葉を呑み込み、暴れていたヴィータもとりあえずだが耳を傾ける。

注目される中、雄一はその提案を口にした。

 

「なあ、管理局と手を組むつもり、ない?」

 




ちょっと二つに割ります。
次回は百話記念回、ですが・・・・・・内容、どうしよう。
今、頭の仲にあるのは「雄一君を〇〇の世界に放り込もう」という類で、真っ先に浮かんでいるのは「討鬼伝」だったりします。もちろん、作者が今嵌っているからですが!

で、ではまた次回!
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