とある異能の発火能力   作:兵太郎

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かなり時間を空けてしまい、申し訳ない。

さあ、投下です!


*追記しました!


活火激発

「……!ぐぇ!」

比嘉宗は、壁に叩きつけられて目を覚ました。地面に投げられたカエルの断末魔のような低い音が口から出てくる。

 

首を振って状況を確認してみる。どうやら身体に怪我は無さそうだ。背中を打ったようだが、それくらい。対した被害ではないと見越した比嘉宗少年は、次に部屋を見渡す。

通常、比嘉宗 蒼の部屋には、寝ぼけたなどの理由で間違って引火しない様に、壁や床、或いは服にコーティングを施してあるのだが……

 

そのコーティングした部屋の一角が、溶けて無くなっていた。

 

比嘉宗は考える。自分の炎の出力が上がったのか、と。しかしすぐに否定する。その理由は、その溶けた原因が外にある事が分かったからだ。

 

「さて、あいつはどこに逃げた?僕の炎で焼き尽くしてやる」

空いた穴から外の音が漏れてくる。そこから聞こえたのは、若い男の声。

比嘉宗はそのまま外へと飛び出す。外にいたのは

 

 

2m位はあると思われる高身長に、肩まで伸ばした赤髪。その赤が映える、黒いコート。両耳にピアスを大量につけている。見た感じ、外国人。

そいつが、比嘉宗の方を向いた。

 

「……ん?人払いはしておいたはずなんだけど……もしやここにまだ住人が残ってたのかな?まぁ、関係無いけど」

 

思っていたよりも幼い、しかし整った顔。右目のまぶたの下にあるバーコードの形をしたタトゥーが彫られている。

口の端では火のついた煙草が揺れて、煙もそれに呼応する様にふらふらと揺れながら漂っている。手には左右10本の指に1つずつ銀の指輪がはめられていて、メリケンの様にも見える。甘ったるい香水の匂いを周囲にばらまくその姿はまさに『不良』だが、1つだけ、その見た目にそぐわない特徴があった。

黒いコート。そう思っていたそれは、ただのコートでは無く、修道服。どうやらこの男、神に仕えるものらしい。比嘉宗少年の頭の中で、『不良神父』という二つ名が思い浮かんだ。

男はにやりと小さく笑うと、

 

「見られたのなら消すまでだ」

 

男は煙草を捨て、呟く。

炎よ(Kenaz)--」

 

その瞬間、捨てた煙草の軌道をなぞる様に、炎が生み出された。何も無いところから突然現れた炎に、比嘉宗は驚愕する。

炎はそのまま纏まっていき、剣の様な形を創る。それを男は手で掴んだ。

そのまま男は炎剣を振りかぶりながら比嘉宗に近づく。そして炎剣を比嘉宗に叩きつけた。

 

それは触れた瞬間に形を失い、辺り構わず全てを爆破した。熱波と閃光と爆音と黒煙が吹き荒れる。男が今斬りつけたところを一瞥すると、少年だった者は炎の塊となっていた。

 

「いやぁ、運が悪かったね。そのまま寮の中で震えていれば、こうして炭になり、灰になるのを待たなくても良かっただろうが…彼女にたどり着くまで、学園都市にバレても困るのでね」

 

男はもはや興味無さげに炎の塊から身体を背ける。そして先程まで戦っていたツンツン頭の少年の追撃を更に深めようとした。現在『魔女狩りの王(イノケンティウス)』に追わせているが、少年はまだ逃げ延びているらしい。運の良いやつだ、などと思いながら男は足を踏み出す。

 

その寸前、不意に身体に衝撃が走った。

男はそのまま横に吹き飛ばされ、壁に激突する。咄嗟に受け身を取ったため特に怪我は無かったが、男の頭は混乱していた。

 

「誰だ……誰が僕に攻撃を……!?」

先程まで自分が立っていた所。そこに現在佇んでいるのは、1つの炎。ついさっき燃やした少年の炎の塊だった。その炎はだんだんと小さくなり、やがて消える。

 

「いきなり斬りつけてくるなんて、武士道精神のなってないやつだな……まぁ、見た所外国人っぽいし、仕方ないと言えば仕方ない、か」

消えた炎の下から出てきたのは、やはりさっき炎の塊にした少年。男はその事実に驚く。

「まさか、僕の炎を物ともせず、動けるなんて……くっ、そういえばここの人間は、1人残さず能力者(バケモノ)だったか…」

「誰がバケモノだ誰が」

オレンジの頭をガシガシと掻き、そして比嘉宗はファイティングポーズを取り、名乗る。

「俺は比嘉宗 蒼。能力は『火着籠利(ファイヤーアーマー)』、火は俺にとって防具みたいなもんでね。さっきの攻撃も火の鎧を着たおかげでノーダメージだ。LEVELがどれくらいかは知らないけど、相性が悪かったな!」

その話を聞いて、男は少し顔をしかめ、言う。

「僕の名はステイル=マグヌス……と名乗りたい所だけど、ここはFortis931と言っておこうかな」

「は?なんだそれ?」

「魔法名だよ、聞き慣れないかな?僕達魔術師って生き物は、何でも魔術を使う時には真名を名乗ってはいけないそうだ。古い習慣だから僕には理解できないけどね」

その話を聞き比嘉宗蒼は……

 

「…ぷっ」

笑いを堪えきれず、とうとう吹き出してしまった。

「……何がおかしい」

「…い、いや…何がおかしいって…クク…魔術師とか真名とか魔法名とか、厨二かよ……ふふ、ははは!」

 

言った直後に再び斬撃が比嘉宗を襲った。

 

「…魔法名というのは僕達の間では、殺し名を意味するのさ。この名を聞いたからには生かしておかない。もうさっきみたいな油断や驕りは消した。ただ、僕は使命の為に、君を殺す!」

「…馬鹿にされたからってそんなに怒るな……よっと!」

 

比嘉宗は炎剣を弾くと、再び男--ステイルを蹴飛ばそうと足を出す。しかし、ステイルが後ろに下がった為、その足は宙を蹴った。

 

「本来これは1日にそう何回も使うものでは無いが……

 

--世界を構築する五大元素の1つ、偉大なる始まりの炎よ《MTWOTFFTOIIGOIIOF》

 

それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり《IIBOLAIIAOE》

 

それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり《IIMHAIIBOD》

 

その名は炎、その役は剣《IINFIIMS》

 

顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ《ICRMMBGP》--っ!」

 

詠唱を終えたステイルの喉元が大きく膨らみ、服の内側から炎の塊が飛び出した……いや、ただの炎の塊では無い。

それは人間の形をしていた。

 

「『魔女狩りの王(イノケンティウス)』!」

 

ステイルは自信満々に言う。

「行け!そいつを殺した後は、あの少年を追う仕事もある!早急に始末しろ!」

 

そしてそれを見て、比嘉宗少年は心情を吐露する。

 

「……何それ超カッコいい!!」

 

その言葉が終わったか終わらないか、そんな時に。

建物中に爆撃の様な轟音が響き始めた。

比嘉宗はその音に聞き覚えがあった。ステイルはその音に聞き覚えが無かった。しかし、その音は2人にとって、天敵とも言えるものの襲来を教えているものだった。

「スプリンクラーから水が!」

どうやら火災報知器がどちらかの炎を感知し、水をばら撒き始めたようだ。比嘉宗の炎はLEVEL2という微妙なLEVELという事もあり、また学園都市のスプリンクラーは対発火能力者(パイロキネシスト)用で、滝の様な水が降り能力者の炎を消すことを目的としている為、比嘉宗にはなす術なくその水に身に纏っていた炎を消されてしまった。

しかし、それに対してステイルの『魔女狩りの王(イノケンティウス)』自体には全く効果は無い様で、ステイルは少し馬鹿にした表情で比嘉宗を蔑む。

「はっ、あんな大口を叩いていた割に、これぐらいの水で鎮火される様じゃまだまだだね。僕の『魔女狩りの王』は水を蒸発させ、水蒸気に帰する位の事は余裕さ。しかし……今の君は文字通り無防備な状況だ。いくら君の能力が炎を身に纏う能力でも、身に纏っていない状況で自分よりも上の炎の塊をぶつけられれば、熱いし痛いだろうね」

ステイルは『魔女狩りの王』に命令する。

 

「殺れ」

 

『魔女狩りの王』の炎の拳が比嘉宗に迫る!!

 

比嘉宗は思わず眼を閉じる……が。

衝撃も痛みも熱さも、何も感じる事は無かった。

 

「な……!?『魔女狩りの王』が崩れ…何をした!!」

眼を開けた彼の前にいたのは、左肩からどんどんと崩れていく『魔女狩りの王』と、それに狼狽するステイルの姿。

『魔女狩りの王』は10数秒という時間をかけてその身体を霧散させた。

「何が起こって……『魔女狩りの王』がこんな水程度で消える訳が無い……」

ぶつぶつと呟くステイル。彼に近づこうとした比嘉宗の耳に、キンコーン、と寮のボロビルの中の唯一の先端技術(最先端、では無い)とも言える、エレベーターの音が響いた。

ステイルは、そちらをゆっくりと振り返る。

 

上条(かみじょう)当麻(とうま)が、そこにいた。

 

「そーいや、ルーンってのは壁や床に『刻む』モンだっけな。……ったく参ったぜ、アンタすげぇよ。正直、ナイフ使ってきざまれてたら勝ち目ゼロだったよ。こいつは周りに自慢したって構わねーぜ」

上条は訳のわからない事を話す。ただ、ステイルが動揺しているから、彼の能力に関係ある事は間違いないだろう、と比嘉宗は耳を傾ける。

「……まさか。まさか!3000度もの炎の塊が、こんな程度で鎮火するものか!」

「バーカ、炎じゃねえよ。テメェは人ん家に何ベタベタ貼りつけてやがった?」

その言葉にステイルは顔面の筋肉を引きつらせ、

 

「ーー『魔女狩りの王』!」

叫んだ瞬間、上条の背後からーーエレベーターの扉をアメ細工のように溶かしながら、炎の巨人が通路に這い出てきた。比嘉宗は再登場した炎人に驚き、再び戦闘体型に移行する。

 

「は、ははは。あはははははは!すごいよ、君ってば戦闘センスの天才だね!だけど経験が足りないかな。確かに僕がルーンを刻んだのは、唯のコピー用紙だけど、コピー用紙ってのはトイレットペーパーじゃないんだよ。たかが水に濡れた程度で、完全に溶けてしまうほど弱くはないのさ!」

 

ステイルはただ一言、殺れと再び命令する。『魔女狩りの王』はその腕をハンマーのように振り回して、

 

「邪魔だ」

 

上条当麻の右手が、魔女狩りの王に触れる。それだけで、炎の巨人がいとも簡単に消えていった。消えた『魔女狩りの王』は復活せず、もぞもぞとうごめくのが精一杯のようだ。

「な…何故!僕のコピー用紙(ルーン)はまだ死んでないのに…!」

「インクは?」

ステイルがビクリと震える。恐怖がだんだんと迫ってきているように彼は錯覚していた。

「コピー用紙は破れなくっても、水に濡れりゃインクは落ちちまうんじゃねーか?……ま、それでも1つ残らず潰す事はできなかったみたいだが」

残っていた『魔女狩りの王』の欠片は、スプリンクラーの水を浴びて消えていく。1つ1つ肉片が消えていき、ついには最後の1つまで、溶けるように消えていく。

 

「い、のけんてぃうす……『魔女狩りの王(イノケンティウス)』!」

ステイルの叫び声は悲痛で、半ば諦めが混じっているようにも聞こえた。

「いのけんてぃうす…イノケンティウス……『魔女狩りの王(イノケンティウス)』!!」

魔術師は叫ぶ。ーーしかし、世界は何も変化しない。

遂に上条当麻は、ステイル=マグヌスの元へ一直線に駆け出した!

 

「いのけん……くっ、灰は灰に(AshToAsh)塵は塵に(DustToDust)吸血殺しの紅十字(SqueamishBloodyRood)!」

ステイルがいくら叫んでも、その周りに炎は現れなかった。

 

上条当麻は拳を握りしめ、

 

ステイル=マグヌスの顔面を右拳で捉え、振り抜いた。

ステイル=マグヌスは錐揉み回転を数回すると、後頭部から金属の手すりに激突した。

 

そこまでの様子を、比嘉宗は唖然としながら見ていた。

「上やん……お前……」

「比嘉宗……そいつは、お前に任せる。お前もそいつと戦ってたみたいだしな。俺はちょっと、やることがあるから、もう行くよ」

そう言うと、上条当麻はゆっくりと、非常階段を降りていった。





ステイル撃破(上条さんが)!しかし、これで全てが終わり、という訳には い神裂。
ちなみにステイルさんの魔法力はこの時点で、イノケンティウスを2体同時召喚できるので、原作よりも更に強いです。身体能力も、蹴られて壁に激突する前に受け身を取れる程度には強くなっていますね。

今回も読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
これからもよろしくお願いします!
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