ワンパンマン ~日常ショートショート~   作:Jack_amano

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最近の雨、降る時はめっちゃ降りますよね。


攻防

「先生、お願いですから、洗濯機を買う許可を下さい!」

 また、何度めかのジェノスの直談判(じかだんぱん)が始まる。

 コインランドリーに行く時に雨が降ると何時もこれだ。ここのとこ時期的に雷雨が多いので、その頻度も高くなっている。

 

「今はいい洗濯機がたくさん出ています。節水型とか、ドラムに穴が開いてないタイプとか、風呂水もリサイクル出来ますし、横型ドラムなら雨の日用にいい乾燥機能のついた機種もあります。長い眼で見れば、コインランドリーよりよっぽどお得です!」

 電気屋で集めてきたパンフレットを手に、力説するジェノス。

 何時も家事の時に着付けているピンク色のエプロンをしたまま言われると、お前は主婦か?!って突っ込みを入れたくなる。

 こいつは電化製品を買うとき、スペックを調べまくるのが大好きで、ネットで見た後、わざわざ電気屋まで出かけて実物を見に行っているのを俺は知っている。

 つまり、もう奴の中では洗濯機を買う事は決定事項なのだ。

 

 そうはいくか、お前の欲しい物はいつも最新式で値段が高過ぎる!

「でもなぁ、うちの洗面所にそんないい機能のついた洗濯機入らないって」

 空いてる隙間は45cm。

 そんな狭さじゃ、ジェノスが言うような多機能型のはムリ。シンプルな単身者用の洗濯機しか入らない。

 俺も一度洗濯機を買おうか迷った事があって、俺なりに色々検討した結果、今に至っているのだ。

 

「ですが、コインランドリーに40分ずっといる事を考えると、納得いきません。時給換算で0.5時間、約500円の損になります!」

 理詰めできたか。

「でも、水道代に電気代が浮くだろ? うち、基本アンペア低いから、ブレイカー落ちるかもしれないし… 」

 それに、Z市の無人街近くにあるコインランドリーは、夜はほとんど俺達しか使わない。何時行っても待たないので実質、自分の物みたいなもんだ。

 洗濯が上がるのを待つ時間だって、大抵、怪人退治や何やらで時間をつぶせる。

 決して只ポケっと待っている訳じゃないのだ。

「ですが、先生ほどの方がそんなつまらない事に労力を使われるのは―――せめて、俺に任せて下されば――― 」

「気にするなって。俺が行きたいから行ってるんだから。なっ? ちゃぶ台割れるぞ」

 思わず机を叩くジェノスを(たしな)める。

 奴の体重は200キロを有に越える。

 一点にその重みを集中させられていた安い合板のちゃぶ台は、イヤな(きし)み音を立てて()り反っていた。やっぱり、お安いものはお安いなりなのだ。

 このちゃぶ台は3台目なんだから、もうちょっと気を使ってほしい。

 

「大体さぁ、給料前に万単位の買い物ってありえないだろ?」

 諦めきれないジェノスに、俺は買わない最大の理由を投下した。 

「じゃあ俺が、日頃の感謝を込めてプレゼントしますから!」

「もっとダメだろ!」

 弟子に貢がせるとかあり得ねぇ! どんだけ駄目師匠なんだよ!! それに、こいつに買ってこさせたら、絶対とんでもない値段の買ってくる!

「大体、俺、感謝されるほど師匠らしい事なんて何にもしてねぇし!」

「いえ、そんな事はありません、サイタマ先生は素晴らしい方です。先生の対する俺の感謝の気持ちはこんなちっぽけな洗濯機なんかで表せるものではありません。なんならもっと――― 」

 また始まった~! 却下! 20文字にまとめろ!!

「あ~、この話はもうなし!」

「でも――― 」

 なおも食い下がろうとしたジェノスを手で制止、俺はマンガを掴んで横になった。

 

 

 数日後―――

 定期メンテナンスから帰ってきたジェノスは、爽やかな笑顔で言った。

「クセーノ博士が研究所の洗濯機を入れ換えると言うので頂いて来ました。タダですので文句はありませんよね?」

 嬉しそうに肩に(かつ)いできた戦利品を下ろすジェノス。

 

 まったく、タダなら俺が文句言わねぇと思うなんて、お前の中で俺はどんだけ貧乏なんだ?

「お前… S級のイケメンサイボーグが街中、洗濯機(かつ)いで帰ってくんなよ」

 そんな派手な事して、ツイッターとかとんでもない事になってなきゃいいけど。

「どうせなら、今日から使いたいと思いまして。これで40分はタイムロスがなくなります」

 涼しい顔でジェノスが言った。

 

 このヤロウ。ついに実力行使に出やがったか。

 俺の楽しい憩いの一時(ひととき)を奪いやがって。

 あのコインランドリーはなぁ~ 漫画雑誌が充実してたんだぞ!

 来週からのジャンプやサンデーをどうしてくれる?! 雑誌買って読むこと考えれば断然お得だったのに!

 しかし、クセーノ博士も何でまたタイムリーに洗濯機なんか―――――― まさか。

 

「おいジェノス、もしかしてお前… クセーノ博士にわざと洗濯機をプレゼントして、古いのもらってきたんじゃねぇだろうな?!」

 俺を見つめるジェノスの口元は笑っているが、目は笑っていない。

「いえいえ… そんな事は、いえ全く――― 」

 あ、やっぱりそうなんだ。お前、つくづく誤魔化すの下手だよな~

 

「でもこれで――― 俺と手合わせしていただける時間もできますよね?」

 ジェノスの黒い声に、一気に部屋の温度が下がった気がした。

 




ジェノスの持って来た洗濯機は、クセーノ博士のお手製なんでしょうか?
だとしたら、とんでもないの機能がついてそうです。

家事用の焼却砲と組み合わせると乾燥機機能が追加されたりして。
しかし、あの部屋のどこに、ジェノスの持って来たリュックの荷物が収まってるんでしょうね?



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