ワンパンマン ~日常ショートショート~ 作:Jack_amano
喜びのあまり円盤を見返してしまいました!
そうしたら6巻おまけ回で気になった事が。書かずにはいられませんでした。
ネタばれゴメン。
"過去最大級の災害である宇宙人襲来から地球を救った功労として、ヒーロー協会主催一泊温泉『祝勝会・温泉旅行』のお知らせ"
なんて連絡がきたとき、もしかしたら私は少し舞い上がっていたのかもしれない。
だって私は幼かった頃から強かったから、ずっと研究所にいて普通の義務教育なんて受けなかった。だから修学旅行も、家族との旅行も、今まで行った事がなかったから。
本当は妹のフブキも一緒に行けたら良かったんだけど、残念な事にあの子はあの事件のあった時、いつもの様に"フブキ組"なんて弱っちとのお遊びに夢中でA市にはいなかった。だからフブキよりランクが低いのに、あの場に居たってだけのB級のハゲには旅行に参加する権利があって、あの子にはなかったの。
ヒーロー協会集合、みんなで貸し切りのバスに乗って出発。
S級に女は私しかいないけど、私を怖がらないオペレーターの女性スタッフが二人ついてきたので寂しく一人露天風呂なんてのは回避できた。でも
つまんない。やっぱりここにフブキがいればいいのに。
夕食はみんなそろっての大宴会。
宴会前恒例の、長ーいシッチの
私もグラスを合わせた方がいいのかしら? なんて思いながら隣を見ると、鬼サイボーグのグラスはもう膳に戻されていた。
・・・ちょっとぉ、なんで隣のB級ランクのハゲとはグラスを掲げておいて、反対側に座る私とはやらないわけ?! 私の方がヒーローランク、断然上なのよ!?
だいたいねぇ、コイツ新人の癖に態度デカイのよ
いつもいつも真っ先に前戦にシャシャリ出てきて『アグレッシブ』なんて言われてるけど、あんなの只の特攻じゃない。
S級16位の癖にS級2位の私を差し置いて前戦に出るなんて馬鹿げてる。
そもそも、この私が闘ってるのになんで突っ込んでくるの?
その癖すぐぶっ壊れて、綺麗な顔が台無しじゃない。イケメン5本指とか言われちゃってるけど、そんなに簡単に壊れちゃうならもう一回C級から出直したらどうかしら?
弱っちなお子ちゃまは強いおねーさんに守られてればいいのよ。なんて思いながら、膳を前に座る隣のガキんちょを見る。
感情の見えない作り物の横顔は、さっきからカクテルグラスにキレイに盛られたシャンパン色の箸休めを見据えたままだ。
・・・もしかして、中身が判らなくて食べるのを
声を掛けるか迷いながら持っていたままのグラスを口に運ぶ。
ダメね。やっぱりビールは好きじゃない。こんなの美味しそうに飲む奴の気がしれないわ、さっさとグラス空けて違うの飲みたい。
「ねぇ もういい、あげる」グラスを鬼サイボーグの前に差し出す。「やっぱりお酒って苦手」
彼はそれを手に取るでもなく、表情も変えずに固まった。
受け取るようにそのグラスを鬼サイボーグに近づけた途端、どこからともかく飛んできたハゲが私の手からグラスを取り上げる。
「苦手ってなんだよ、大人ぶりやがってよぉ。ガキなんだから酒なんて呑んじゃダメに決まってんだろ? ガキはオレンジジュースでも飲んどけって」
「はぁ?! あんたねぇ」
不愉快。
なんなのかしらこのハゲ! 私の身長が低いからって私を子供だと思ってるわけ?! 言いたくないけど、こう見えても私、28歳でアンタなんかより年上なんだから!
"戦慄のタツマキ"なんて呼ばれているこの私が怒りに身を震わせているのも気にせず、
「いま注文してやるから。ジェノス、お前まだ未成年なんだから酒は呑むなよ? お前もジュースのお代わり頼むか?」
は? コイツまだ二十歳じゃないの? でもサイボーグに未成年とかって関係あるのかしら? 大体、向こうじゃ子供だってワインやシードル飲んでんじゃない。
考えている間に、ハゲは私の手から取り上げたビールを一気に飲み干した。
ちょっと待って、もしかして私、ハゲと間接kiss?!
やすやすとビールを飲み干したハゲは、鬼サイボーグを挟んで向こう側にある自分の卓膳にコップを置いた。
よく見ると膳の上にも横にも、いっぱいから
これ・・・全部コイツ一人で空にしたっていうの? でもこのハゲ、まるっきり酔ってる様子ないじゃない!
・・・なんかムカつく・・・酒を飲めるからって大人だと思ってるんじゃないわよ。
だいたい! 隣のこいつがさっさとグラス受け取らないからいけないんじゃない!
その上ずっとハゲの方ばっかり見て、私はシカト?!
「あんたねぇ上座に座る先輩にお酌の一つもしないで、よくもいけしゃあしゃあと座ってられるわね」
「・・・上座だと?」
あら、私の言葉にやっと反応したわね。自分の無礼さにようやく気付いたのかしら?
「そーよ、私はS級2位。その上あんたより上座に座ってるのよ! 少しは先輩を立てるって事を―――」
鉄の額を床に打ち付けた音が周囲に響く。
いきなり、S級16位のクソガキは隣に座るB級のハゲに向って勢いよく土下座をした。
「先生!申し訳ありません!知らぬ事とは言え先生を差し置いて上座に座ってしまうとは!!」
ちょっと、
「あん? 別にいいよ。大体、何時もお前が左にいるのに慣れちまって気にも止めてなかったわ」
ちょっと待って!
「いえ! それでは弟子として申し訳がたちません!」
私の立場は?!
「いーから。俺、もう食い終わったし。もう一っ風呂浴びてくるわ」
「はっ! ではお供します!!」
一升瓶を開けて立ち上がるB級を追って、鬼サイボーグは散歩に連れて行ってもらう犬の様に後に続く。私はただ一人席に取り残された。
・・・・・・・・・。
む・・・無視? 無視なの?! 今回も?! この私を?!
ム・カ・つく~
ハゲ! タコ! ゆでたまご! 電球! アボガド! 間抜け顔! 妖怪! 虫!
許せない・・・! ちょっと酒の量が飲めるからって、調子に乗ってるんじゃないわよ!
ハゲの癖に!ハゲの癖に!ハゲの癖に!!
いけない! こんなところで
落ち着くのよ、落ち着くのよワタシ。そうよ、この私は子どもじゃないのよ。私はあいつ達より年上なの、実力者なのよ。
深呼吸、深呼吸。
そうよ。私は大人なんだから。
「中居さん、オレンジジュースじゃなくて"龍ごろし"の一升瓶を一つちょうだい」
ふん。私だって飲もうと思えばそのくらい飲めるんだからね!
・・・その後の事は、なんだかよく覚えてない。
ただ、それから飲み会では、忘年会も新年会もお花見でさえも、私にお酒を勧める人はいなくなったし、私がグラスを持つと大慌てで童帝君がオレンジジュースを注ぎに来るようになった。
タツマキが荒ぶる神になったのは、先生のせいだけじゃなくて、弟子のせいも半分。
というお話し。
無自覚に執着しているタツマキちゃんです。
判り辛かったかもしれません、ぜひ⑥円盤特典『ゾンビマン殺人事件』をご覧ください。
あざとい童帝君と寝起きのカッコいい金属バット君。通常営業の師弟がとても良いです。話はまぁ題名からオチが丸見えですが・・・ 必見です!!
ところで、弟子が箸休めの料理を見つめていたのは、先生がそれを美味しいと言ったので、家で作れないかと分析していたのでは?と思うのですが・・・
彼の家事の腕はどうなんでしょうね。