Monster・Hunter・BREAKERS 作:しーちゃn
そろそろ序章終わりかなぁ。
「はい、合格ですね。よく出来てます。
あとは、キノコを切るときに大きさを
もう少し小さくしたほうが、よく出汁が
取れていいと思いますよ。では、次。」
列はメイを先頭に、リース、ティナ、リオの順番で並んでいた。
アドバイスと合格の押印をもらい、
嬉々とした顔でメイは一歩横にずれた。
そして次はリースの番だ。
「もう一度確認しますわよ?
貴方が私に敗北したら『土下座』……
このルールは、きっちりと守っていただきますわ。」
「ああ、それでいい。」
リオは無表情、無感情で応えた。
その顔はすでに真っ白に燃え尽きている。
「なら構いませんわ。
それでは教官殿、こちらを。」
彼女は前に向き直り、手にしていた瓶を
差し出した。
「では、いただきます。」
女性の教官は、回復薬を一口だけ啜ると、
カッと目を見開き、興奮した様子で言った。
「この味…まさか、ウィスタリア家の
お方ですか?」
その様子は、必死に叫びを抑えている、
とでも言わんばかりのもので、
後ろで待機していたリオ達でも
恐怖を感じる部分があった。
「え、ええ……確かに私は、
ウィスタリア家長女の、リース・ウィスタリア
ですわ。」
すると、息つく暇もなく教官が奇声とも
取れるような声を上げ、早口でまくし立てた。
「どおりでこの味!
ウィスタリア家専属の薬剤師が作った
最高級の回復薬の感覚を受け継いでいる!!
もう一度、もう一度味わいたかったこの味、
この香りがこんなところで得られるなんて!
なんてミラクル!!」
興奮する教官とは対照に
げんなりする四人だったが、
リースが気まずそうに
「ところで、評価の方は如何程でしょう?」
と切り出した。
「もう満点ですっ!完璧!パーフェクト!!」
この教官の一言にリースは、後ろを向いて
「わかりましたわ。ありがとうございます。」
と言って、リオの顔を見て
フッ、とでも言わんばかりに満面の笑顔……
というよりは蔑んだ笑みを浮かべ、
メイの隣へと陣取った。そして次に、
「お、お願いします……」
と、ティナが自信なさげに瓶を差し出した。
多少興奮が収まった教官は、
一口だけ啜ると冷静に解説を始めた。
「貴女はグラウディオ家の方ですね。
おそらく、習ったときと素材が違うと思われます。グラウディオ家には特殊な製法が
伝わっていると聞きますから。
ですが、この回復薬も十分な出来ですね。
合格です。」
教官がいい終わった途端、
少女の顔はぱっと明るくなり、
「やった!やったよリース!」
と、またもやリースに駆け寄って抱きついた。
そして、ティナはリースの服の裾を
掴みながら、教官に
「ありがとうございました!」
と言い、今度はその視線をリオに向けた。
とうとう彼の番が来た。来てしまった。
彼に残された未来は三通り。
一つ目はリースを跪かせ、
ハンターになるという未来。
これがリオにとって最も幸せであり、
万々歳もいいところだ。
そして、二つ目の未来。
ハンターにはなれたものの、
土下座させられるという未来。
これは、結果として一つ目と大差ないものの、
彼のプライドが許さない。
そして三つ目。最も最悪な展開で、
ハンターにもなれず、
土下座させられるという結末だ。
この未来に当たると、おそらく彼は
人間を辞めるだろう。
しかし、確率的にはこの三つ目にあたる
可能性が最も高いと言える。
絶望が一歩、また一歩と
近寄ってくるのと同時に、彼もまた
一歩一歩教官へと近づいていった。
「お、おおおねがいっいいいいしますすす」
これぞ挙動不審の真髄とでも言うべきか、
つい十数秒前までは冷静だった彼だが、
落第を目の前にし、滑舌と呂律はもちろん
体全体が麻痺したように動かなくなっていった。
「君、大丈夫ですか……?」
教官は心配そうに薬瓶を受け取る。
そして注目の中身は、大変な事になっていた。
まず色がおかしい事は言うまでもなかった
通常、回復薬は青汁のような色のはずなのだが、彼のは一目で毒薬とわかるレベルの
紫色をしていたのだった。
そして、本来取り除くはずのアオキノコらしき
塊が底の方に溜まっていた。
極め付けはすりつぶしきれていない薬草がさらにグロテスクさを演出していることだった。
良い点を挙げると、異臭がしないことのみだろう。
「うっ……」
あまりの見た目に、今まで良質なものから
悪質なものまで様々な回復薬を飲んできた教官も、さすがにこの見た目には
嫌悪感を示さざるをえないらしい。
しかし、そこには教官たるもののプライドがあるのだろう。
鼻をつまんで、リオ特製の回復薬を
一気に飲み干した。
あれほどえげつない回復薬を作れる人間は
そういない。むしろ毒薬系の仕事をしたほうが
いいんじゃないかとも思える。
周囲にいた誰もが思っただろう。
あぁ、終わったな、と。その時だった。
教官がまたもや目をカッと見開き、言った。
「ア……」
「あ…………??」
リオが聞き返すと、教官は叫んだ。
「アメェェェイィィジィィィィィング!!
まさか!まさかこんな味が存在し得るなんて、
おかしい!!今まで飲んできたどんな回復薬より刺激的、かつ包み込むような甘さを持っている!こんな回復薬を作れる人間が
いたなんて!!合格!合格よっ!! 君、名前はっ!?」
あまりの剣幕に彼は一歩後ずさり、
「リ、リオ・クロードです。」
と、引き気味に答えた。
「リオ!リオ君ね!君がトップ、最高よ!
貴方が一番よぉぉぉぉぉっ!!!」
これだけ叫んだ後、女教官はぶっ倒れた。
「え………」
そして、少し間を置いた後、
「ええええええええええええええ!?!?」
少年の叫びが、訓練所中に響き渡るのだった。
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その後は大変だった。
メイには重病にかかったんじゃないかと心配され、
リースには不正だ、イカサマだ、と問い詰められ、
ティナはリースを止めるために抱きつき、
さらには、叫びを聞きつけた他の教官が
やってきて、怒られる始末だった。
そして、半分訓練所から押し出される形で
一応、試験は終了した。
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「リオ、あの回復薬、どうやって作ったの?」
温泉のすぐ近くの自宅へと帰り着いた
メイが、ともに帰着したリオに尋ねた。
「う〜ん、覚えてないな。
あの時かなり混乱してて、見様見真似で
やったからなぁ……」
「それじゃあさ、今度リオが作ってみてよ!
そしたら、また美味しいのができるかもしれないでしょ?」
少女が笑顔で頼むと、少年も快く了承した。
「あぁ、もちろん。
すごく不味くなっても知らないぞ?」
「ふふ、いいんだよ。
リオが頑張って作ったんだから。」
そして彼らはまた、暫くの日常を
謳歌するのであった。
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〜後日談〜
「メイ、できたぞ〜。」
「お、待ってまし……た………」
台所から、普段は着るはずもないエプロンを
つけたリオが姿を現した。
皿の上に乗っていたのは、
形容しがたい何か、人間の食べ物と呼んでも良いのだろうか。
自然と、メイの言葉尻もトーンが低くなる。
「じゃ、先食べといてくれ。
ちょっと片付けてくるから。」
リオはそう言って、再び台所へ姿を消した。
「う、うん……」
一人取り残されたメイは、数秒間
その謎の物体と向き合った後、
スプーンを手に取った。
そして、掬い取る。
嫌な感触が腕を伝ったが、
幼い頃からともに助け合って生きてきた
リオが作ったものだ。
彼女からすると、やはり食べざるを得ないのだろう。
「いただきます………はむっ。」
メイがその黒い物体を頬張り、
暫く噛んでいると、途端に顔色が悪くなる。
顔を真っ青にしたが、
なんとかそれを飲み込み、一言だけ叫んだ。
「不味いよぉっ!!!!」
多分これで序章終わりですね。
次回もよろしくですよ!
追記、
リオが美味しい回復薬を作れたかは不明です。
教官の舌が狂ってただけかもしれませんから。