Monster・Hunter・BREAKERS 作:しーちゃn
ってか、伝説の超解説回なのでよろしくお願いします……
え?今までも文章下手くそだったって?知らんな。
「リオ!早く起きてってば!
また遅刻するよ!?」
どこかで見たことのある光景が、
そこにはあった。
まだ寒さの抜けきらない春頃、
布団にくるまり芋虫となった少年、
もといリオ・クロードを
揺する少女、メイ・ルルージュ。
「うぅ〜ん……あと五分だけ……」
「はぁ……
いつまでたっても変わらないなぁ。」
懇願する少年をよそに、メイは一人、呟く。
「よし!」
そして決意したように立ち上がると、
芋虫の上に馬乗りになり、一つ深呼吸。
少年の気持ちよさそうな寝顔を見て、
一瞬だけためらった少女だったが意を決して、
未だ意識のはっきりしないリオの頬をはたく。
が、一度では終わらない。二度、三度。
俗に言う、往復ビンタというものだ。
ぺしぺしと間の抜けた音が部屋に響く。
しばらくその音が続いたが、
少年は一向に反応しない。
そのうち痺れを切らしたのか、
八度目からはぺしぺしからべしべしへと
変わっていた。
「さすがにっ…そろそろっ…起き……てっ!!」
べちこーん
言い終わると同時に、会心の当たり。
「いででででで!!」
約十五回目のビンタにして、ようやく
リオは意識を取り戻す。
その頬には、何重にもなった紅葉が
張り付いていた。
「さすがにひどいだろ!もうちょっと
優しい起こし方ないのかよ!?」
「だってリオ、十分くらい揺すっても起きないんだもん。仕方ないよ。」
「も、申し訳ございません……」
リオが顔の前で手を合わせ、謝罪の意を示す。
「それより、早く行こうよ。
あと五分で出ないと遅刻するよ?」
するとメイはそれを華麗にスルーし、
腰に手を当てて続ける。
しかし彼は合わせた手を顔の横にずらし、
赤くなっていた頬をさらに少し朱に染め、
独り言のように呟いた。
「あー……その前に、ちょっとどいてもらえませんかね?」
「え…………?
きゃっ!?ご、ごめんね、リオ。」
馬乗りになっていたことをすっかり忘れていた
メイは、慌てて横に飛び退いた。
それと同時にリオは起き上がり、
さらに周囲を確認し、
「よっし…………二度寝するか。」
と清々しく言い放ったのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ユクモ村の初春。
冬ごろまでは地面を覆っていた落葉も
すっかり姿を消し、その木々には
すでに新緑が宿っていた。
しかし、冬頃からの湯治客は未だ
その数を減らすことなく、
下町は一つの観光地、温泉街として
賑わっていた。
そんな中、村はずれの歴史ある訓練所では
新たな狩人の卵が、孵ろうとしていた。
百人ほどいた候補は、なんと
三十人程度へと数を減らし、
再び会場へ集まった彼らは、時を待った。
そこには、各地の貴族級の家柄の者も
当然ながら入っていた。
この訓練所は、
かつてユクモ村周辺を統治していた一族の
創立した、最古のハンター養成学校であり、
毎年、著名なハンターを輩出している。
この地方では、かなり有名であった。
つまりは、ーー
「ふー……ギリギリ間に合ったな。」
頬をパンパンに腫らし、涙を浮かべたリオが
会場へ到着した。
ーーエリートの為の訓練所である。
なぜこんなところに彼のような人物が
紛れ込んでしまったのか。
上述の通り、ここに集まるのは
能力の高い者達ばかり。
例を挙げると代々ハンターの家系にあるもの。
財力と知識、さらには技術をも併せ持つ、
名家の人間。
例年、そもそも訓練願い届けが百人分も届くはずがなく、入学試験などあるはずが無いのだが
この年にこれだけ候補生が集まったのも、
リオの幸運、はたまた悪運と言ったところだろうか。その中に紛れ込むことに成功し、
見事…かどうかはわからないが、合格。
なぜだ、おかしい、
彼の実情を知ったものは、
少なからず抗議するだろう。
『あの教官』の挨拶を聞かなければ、
の話だが。
会場では指定された装備、
所謂制服を身にまとった
狩人の卵たちが彼方此方で話に花を咲かせている。そんな中、
「お久しぶりですわね、下民。」
背後から、どこかで聞いたことのある高飛車な声。
二人が揃って振り向くと、そこには彼の予想通り
リース・ウィスタリアとティナ・グラウディオ
の姿があった。以前とは違って、
二人は自分たちと同じ、指定された装備を身につけていた。
すると
リオの表情が一気に嘲笑のそれへと変わり、
口元に手を当て、高笑いのようなポーズ。
「あれ?もしかして貴方は……最後の調合試験で俺に負けちゃったリースさんですか〜?」
そしてさらには馬鹿にしたような、
というより確実に馬鹿にしている口調。
これには流石に彼女も腹を立てたようで、
綺麗な白い手を握りしめ、言い返そうとするが
「ぐっ………ぅ…………」
確かに教官はより良いのはリオの方だと
判断しているので、
何も言い返すことができないリースは
口籠るしかなく、悔しそうに
唇を噛むだけだった。
「これは跪いていただく他ないぞ〜!
だって約束したからなー!!
それとも何だ?
どこぞのお嬢様ともあろう者が、
約束を守れないとでも?」
さらに調子に乗ったリオは、
リースの立場を利用し、どんどん煽りに出る。
数週間ぶりに会ってすぐだというのに。
「いつまでケンカしてるの……もぅ。」
ティナは半ば呆れ顔で頬を膨らませた。
「リオ……何だか小っちゃい子みたい。」
メイが哀れむような視線を向けるが、
当の本人は、そんなことは全く気にしていない。
「さぁ!今すぐここで跪いてもらお……」
まさにリオが言い終わろうとした瞬間だった。
「みなさ〜ん、おはようございま〜す!」
バターン!と、勢いよくドアが開き、
何処かで見たような教官と、
その補佐らしき男性が姿を現した。
さすがエリートと言ったところか、
候補生達はすぐに黙り込み、指定された席に
座り、次の言葉を待った。
リオも悔しそうに席に戻り、
教官を睨みつけた。
「はい、皆さん初めまして……
じゃ無い人もいるかな?
私がハンター養成学校ユクモ村本部、
校長のイリーナ・ハイレーンです!
あ、ついでにこいつは補佐の……何でしたっけ?」
「アルザックですよ!何回言えばいいんですか!」
校長が冗談めかした自己紹介を終えると、会場が一気にどよめいた。
「イ、イリーナ・ハイレーンだって!?」
「あぁ、たしかに言ったぞ!!
どういうことだ………?」
「イリーナ・ハイレーンっていったら、
あの『鳴天のイリーナ』か!?」
周りが興奮した口調で囁く中、
一人だけは違った。
「なぁメイ、イリーナって誰?」
「う〜ん…私もよく知らないけど、
すごいハンターなんじゃない?」
二人して世情に疎い人間である。
だがこの二人は、義祖母を亡くして以来必死で生活してきたのだ。そんなことを気にする余裕はなかったのだろう。
「てかさ、あの人って……
今は眼鏡かけてるけど、
『調合試験』の時の教官だよな?」
次にメイが、そう言えばそうだね。
と返そうとした。しかしその暇が与えられることはなく、未だざわざわとしていた会場は、
教官の一言によって一瞬にして静寂を迎える。
「んんふ……んっふふふふふ………!
皆さん、皆さん今年は
本当にベリィィィィアンビリィバボォォウ
アンド、インタレスティィィィング!!!」
会場の誰彼もがポカーン、と口を開けたまま静止してしまう。それもそのはずで、
ここに集まっている者たちは皆、
有名なハンターに憧れを抱き、
過酷な訓練にも耐え抜き、自らの意思によってここにやって来た。
もちろん『鳴天』に憧れた人間もいただろう。
だが彼らが教えられ、憧れてきたのは
ハンターとしてのイリーナだった。
多少変わっている、とは聞いていても
ここまでの変人だったとは誰しもが思いもしなかったはずだ。
しかし当のイリーナは、
そんなことは知ったことではない
という様子で、話を続ける。
「候補生のみんなは知らなかったかもしれないけど、
私が校長に就任したのは今年からなんです。
だからあえて、入学試験では
ちょっとした変装をして『調合試験』を
見させてもらいました。うん、もちろん
みーんなエレガント、アーンドエクセレント
でした!!」
以前として、候補生の約9割は
口をパクパクさせているが、『鳴天』の女は
構わず声を張り上げ続ける。
「それで今、
なんで自分が合格したのかわからない、
自分の家柄で受かるとは思っていなかった、
って人もいる思います。
理由は簡単です。
今年からは選別の仕方を、
完全な実力主義にしたからです!」
唐突な制度改革宣言。
その言葉でやっと意識を取り戻したのか、
会場の雰囲気は一気に変化した。
完全な実力主義、つまりは
個人の能力が極めて高い人間が
選ばれているということ。
それはライバルの増加を意味し、
さらに過酷な生存競争を
強いられることとなる。
「だから今年はかなり人数が少ないです。
でもね、この学校の伝統だから
やらなきゃダメなんですよねぇ。
『訓練合宿』……」
会場の空気は、さらにピリピリとしたものとなる。空気の変化を感じ取り
真剣な表情となったメイとは違い、
相変わらず間抜けな表情の
リオ・クロードを除いてだが。
『訓練合宿』とは、イリーナも述べたように
この訓練所の伝統であり、
候補生たちのさらなる選別の場である。
合宿は、訓練中の候補生たちに一度だけ
行われる物であり、それまでの成果を見る
実戦形式での試験を兼ねた行事だ。
そしてその結果により、約三割の人間が
この訓練所から左遷され、
地方の訓練所へと飛ばされることとなるのだ。
経歴がその後の狩猟人生に
大きな影響を及ぼすハンターという職業では、
ユクモ村本部で訓練を受け、
認定をもらったという事実だけでも、
ギルドでの待遇が大きく変わるのだ。
「ん?そんな怖い顔して……みんな、
どうしたんだよ?」
「はぁ……」
と、メイは一つため息をつき、
リオを哀れみの目で見るが、そこは一応
幼馴染を超えた、家族だ。
リオを気にかけ、
「とりあえず今は真面目な顔してて。」
と囁くのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……はい、まぁ話が長くて紆余曲折あったけど、最後に言いたかったことを言います。」
今まで少しだけ笑顔を見せつつ話を進めた
イリーナもやはり校長、
表情は一転し、最後は真剣な顔で締めに入る。
それに連動して生徒たちも態度を改めた。
「とりあえず君らは無事合格できています。
明日から、かなり過酷な訓練の日々が
続くと思われます。ですが、諸君らは
選ばれた者です。選ばれなかった人間の分まで
努力する義務があります。
それを肝に銘じておいて下さい。
以上です。」
それだけ言ってイリーナは、
茶色の髪を揺らして退出していった。
「…それじゃあ候補生のみんな、
僕についてきて。色々配布する物があるんだ。」
アルザックと名乗った補佐は、
イリーナとは逆方向の出口へと
彼らを誘導していく。
ギャップがかなり大きかったためか、
移動の間にも、そこには微妙な空気が流れていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
基本的に、リオ・クロードは頭が良くない。
いや、頭が良くないというよりは
世の中を理解しなさすぎだいると言うべきか。
「それじゃ、
お楽しみの時間と行こうじゃないか。
リース・……なんとか!
俺に跪くがいい!」
装備、武器を配布された後、
訓練所を出てすぐのこと。
あらかたの生徒は先に寮に入っているが、
この四人は、リオがモタモタしていたおかげで
すっかり遅くなってしまった。
「リース・ウィスタリアですの!
人の名前くらい一度で覚えなさって
はいかがですの!?」
「でも、名字が覚えにくいんだよな。
ウィスタリアって何だよ、
ウィスタリアって。」
リオが小馬鹿にした口調で続けると、
「このっ……何百年も前から続く
由緒ある家名を……!!」
家柄のことが癪に触ったのか、
初めて見せる怒った顔。
体格と顔は大人っぽさを醸し出すリースだが、
その表情には子供らしさを残していた。
「お、怒っちゃダメだよ、リース!
きっとそういう事を
教えてもらってないだけだよ。」
ティナが諌めるが、どうもリースの怒りは
治りそうもない。
それもそのはず、リオは聞く耳も持たず
口笛を吹くふりをしている。吹けないくせに。
「ご、ごめんね。私も家柄とか、
あんまり分かんないんだ……」
メイも申し訳なさそうに続くと、
ならばとティナは話し始めた。
「なら、私も詳しくはないけど……
家で教えてもらったことくらいなら、
知ってるよ。」