小噺集   作:畑の蝸牛

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長らく放置すまない。詰ってもらって構わん。今回はリクエストをやっていきます。


サイダーと夕やけ

 

 

「今日も暑かったなぁ…」

 

独白に答えてくれるのは、涼しげな風鈴の音。確か、父の知り合いが作ったらしいソレは、物心ついた時から、縁側の住人だった。

 

下手したら僕よりも縁側にいた時間が長いかも知れない。カランと涼しげな音がした。こちらはガラスのグラスに入った氷の音だ。

 

このグラスも確か、どっかのお土産かなんかだったような気もするけど、今大事なことじゃあ無い。

 

そのグラスの傍らには、八割の人間が酒だと思うような、かなり上等な入れ物をした、サイダーがある。

 

送られてきた時は桐箱に入っており、最初はびっくりして落としそうになった。物に驚いたのも確かだが、贈り主にも驚かずにはいられなかった。

 

まず、あいつが贈り物をして来たこと、それにどうやら元気でやってるらしいということ。この二つが僕を驚かせるには充分な要因だった。

 

ちょうどいいタイミングで夕日が沈んでいく。サイダーの肴にはちょうどいいんじゃないか?そもそも、サイダーの肴、なんて使ったのは人類初じゃないかな。

 

あいつは僕の酒嫌いを知っていたらしい。言ったことなんて、あったかな?まぁいいや。とにかくこのサイダーは美味い。

 

その手の人じゃないから上手い感想かはわからんが、言えることはある。

 

透き通っている。透明度が高すぎて、そこまで見通せる、そんな川の水を飲んでいる。そんな気分になる。

 

もちろんサイダーだから炭酸が弾けるのだが、透き通り具合とケンカせずにいい具合に弾けている。

 

あいつ中々センスあるじゃないか。これ、こっちからもお返し奮発しなきゃかな。

 

夕日を眺める。7割ぐらいが地平線の向こうに沈んでいる。こんなにぼんやりと夕日を眺めたのはいつぶりだろうか。

 

小学生の頃だったような気もするし、あるいはもっと幼かったかもしれない。でも、これだけは覚えている。

 

「ゆうひはもぐってどこにいくんだろ」

 

今ならどんな原理で日が沈んでいるか分かってるし、自分が見えなくなった夕日を地球上の誰かが目にすることも知っている。

 

でも、そうじゃない。きっとあの頃のぼくが言いたかったのはそういうことじゃない。

 

"夕日にも帰るところがあるんだろうか"

 

今、言葉に起こせばこんなところになるのだろう。時間を経て、ズレを得ているが、確か彼が考えたのは、きっとこんなことだった。

 

誰にでも、それこそ夕日にだって帰る場所がある。そう思ってた。信じていた。一部の疑いも無かったんだろう。

 

それでも、短針も長針も止まってくれることは無くて、全てのモノがうつろい、流れていった。もちろん彼も止まることはできなくて、ついにこうなった。

 

彼は僕をみて、どう思うんだろう。何を言うんだろう。そのためだけにタイムマシンを作って見たいとも思う。

 

残念ながら天才科学者でない僕は想いを巡らすだけに終わるんだけど。天才科学者だったら作ってた。断言できる。

 

あ、彼の言うであろうことがひとつだけわかった。

 

「そのサイダーぼくにもちょうだい!」

 

きっと彼は、そんなことを僕に言う。




絶対にお題から脱線する病気のようなので詳しい医者の方がいらっじゃったら助けて欲しい。
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