小噺集   作:畑の蝸牛

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クトゥルフ神話TRPGで使った町についての物語。


とある町のはなし

その町の名を古霧と言った。海に面した気持ちの良い風が吹く町であり、強いて都会でもなく、田舎でもないと言ったちょうど良い町だった。住民も気立てが良く、迷う観光客などが居れば声を掛けて目的地まで案内してくれる程である。

 

このように、表面上は問題無いように思える。それはあくまで、99%の人にとってであり、ごく一部の人間からすれば大変な問題がいくつも存在していた。それこそ数えるのが馬鹿らしくなるほどに。

 

いや、数えることが出来るかも怪しい。その道に通ずる者からすれば、こんな所に住むのは正気じゃないとまで言える。その理由を列挙して行こうと思う。

 

古霧の町には川がある。だからどうした、と思われるかも知れないが、問題はこの川の来歴である。

 

その昔、山奥に大蛇がおり、定期的に捧げ物(生贄とかでなく、作物などと伝えられている)をすれば特に害があるという存在でも無かったそうだ。そのように少々奇妙ではあるが、穏やかな日々が村では過ぎていたらしい。

 

そんな村に、ある日白い尺八を携えた虚無僧がやって来て、珍しい来客に喜んだ村人はその僧をもてなした。ここまでは良かった、問題になるのはここからである。

 

宴が盛大に行われる中で、誰も手をつけない大皿があったのを不思議に思った僧が、何故かと問うたところ、「これは大蛇への捧げ物だ」というようなことを村人から聞くや否や、僧は怒りの形相で立ち上がり、すぐさま山へと向かって行ったという。

 

そのまま、その僧は戻って来ることが無く、また大蛇も姿を見せなくなったという。それから数ヶ月で山から水が流れてきて、今日の川が出来た、ということらしい。

 

書物に記されていたのはここまでだが、当時の農民たちの日記らしいものも見てみると、収穫量が減ったり、疫病が流行ったりと厄に憑かれた、とも言えることが次々と起こっている。

 

これが意味するのは、大蛇が土地神であり、それを失ったことによって、邪なるモノが町に入り込み易くなっている、ということである。通常であれば土地神や守り神、またはそれに類するものがある程度の邪悪を祓ってくれるのだが、古霧の町にはそれが無い。

 

ということは、邪悪なモノからすればこの町は最高の立地である。なんならこれを書いている今でも、地下で何が蠢いてるかわからない。この文章を書いている俺を嘲笑っているかもわからない。

 

このことに、この町の真実に気付いてしまった俺には町に居ることが耐えられない。

 

とにかく、どこか、遠くに…

 

 




古霧というネーミングの元ネタが分かったら凄いと思う。あと気づいたらホラーになってしまったです。
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