六月二十五日、水曜日、天気は雨、図書館にて。
男子一名、女子一名。貸し出しカウンターに座っている。図書館に他の人は居ない。二人っきりだ。
「だーれも来ないな」
欠伸をしてから男子が言う。
「・・・・・・」
「どうしてこんなに読書日和な天気なのに、開店休業に追いやられてんだろな」
回転椅子を女子の方へ向け、男子が言う。
「・・・・・・」
「…あんまり売れてない書店で店員やるのって、こんな気分なんだろうな、な?」
距離感は取りつつ、しかし近付いて男子が言う。
「・・・・・・」
「ねぇ!?なんで乗ってくれないの!?ただでさえジメジメしてんのにオレの涙で余計にジメっとするぞ!?本が痛むぞ!?」
心からの叫びであるように、男子が言う。
「…言わなかった。」
ようやく、女子は男子の方を見た。横目ではあるけれど。
「なんだって?」
「返事して、とか。会話してくれ、とか。乗ってくれ、とは言わなかった。そうして欲しいなら言わないと伝わらない。あとウザい」
横目のまま、女子は言う。
「そうかそうか。人間言わないと伝わらないもんな〜ってアレ?いまウザいって言わなかった!?酷くない!?」
腕を組んで、さも納得した。と思いきや流し切れなかった点に男子がツッコミを言う。
「私の喋る声と比べたら圧倒的にウザい。事実だから酷くない。あと誰もいないからって図書館でウザいって人としてどうなんだろう?」
ウザい、とは言うもののそれほどには思わず、適当に女子は言う。
「うん、図書館で騒ぐのがよろしくないのは分かってるけどさ?転校して来たばかりの寂しさを、ちょーっと慮ってくれないかなーって」
あわよくば態度が軟化しないかな、と期待しながら男子が言う。
「転校前の友だちの幻覚が見え始めたら、さすがに思いやり必要かなーって思うけど。」
そんな場面を頭に浮かべつつ、口角を数ミリ上げながら、女子は言う。
「え、なに。教室の隅で膝抱えてればいいの?」
期待が別のシーンへと切り替えられ、凹みながら男子が言う。
「うーん。そのまま鍵が閉められちゃえばいいの」
そうしたらきっと泣くんだろうな、とか思いながら、女子は言う。
「よくないよ!?誰も望んじゃいねぇよそんながっこうぐらし!普通に恐いよ!?色々と!」
そんな状況になったら、と想像した感想をそのまま男子が言う。
「・・・・・・」
飽きたのだろうか。女子は本を読み始めていた。
「・・・・・・」
その姿に顎が落ちそうになる男子。
これが、初期の古霧小学校、図書委員の惨状である。