歌舞伎町のよろず屋さん 作:誰そ彼
まずは簡単に私の事を話そうと思う。
私には産まれ付き、ある能力があった。
自分の触れている範囲で、考えたことを具現化することが出来る。他人の怪我だって治せるし、何も無い所から物も出す事が出来る。ただ、自分の病気だけは治せなかった。
小さな物を出すくらいなら大丈夫だけど、人の体を治すのは物凄く負担がかかった。誰かの為に力を使う度に、私は弱っていった。所謂、能力の代償というやつだ。
私には年の離れた8つ下の弟がいた。私と違って健康体で、そこそこやんちゃで元気なごく普通の男の子。私にとって、年の離れた弟は凄く可愛くて、何より大切な子だった。
弟が11歳の時に、運悪く交通事故にあった。しかも、私の所にお見舞いに来る途中で。
病院に運ばれた時はもう虫の息で、良く生きていたなと思った程の大怪我だった。
弟をみた瞬間、私は無意識に力を使った。結果として弟は奇跡的に意識を取り戻し、私は病院から出られぬ身体となった。
弟の姿に喜び、私の姿に悲嘆に暮れて涙を流す両親には申し訳無いと思うが、後悔はした事が無い。
元々いつまで生きられるか分からない欠陥品の姉よりも、健康体の弟が生きている方がいいのだよ。
私が最後に覚えているのは病院のベッドの上で沢山のコードに繋がれていた記憶。ピッピッと、一定のリズムで刻まれる鼓動と同期した電子音。
.朦朧とする意識の中で、両親と弟の声を聞いた気がする。
そしていつの間にかこの世界に立っていた。ここにいるといういう事は、恐らく私は死んだのだろう。走馬灯などは見なかったが。
ふわふわと足元が定まらない。どこまでも他人事の様で、現実味の無い出来事。
夢現とはこの事か...。
上を見ると、どこまでも青い空が広がっている。眩しいなんて感覚も久しぶりだなー。病院じゃ味わえなかったしなーなどと、とりとめも無い事を考えてボーッとしていたら怪しい集団に捕まった。
怪しい集団、服装は統一されていて黒い制服?のようなボタンの沢山ついた洋服。そこはいい。
だがなぜかこの集団、全員腰に刀を差している。何?コスプレ?中には明らかに30代を越えていそうな者もいる。しかもゴツいオッサンである。
ないわ~。オッさんの集団コスプレとかないわ~。
色々話しかけられていたようだが、自分の世界にどっぷりトリップした私が気付くはずもない。
何も答えない私に痺れを切らして、集団の1人が目の前に拳銃を突きつけた。
流石にそんな状況になれば、いくら私でも危険を感じる。
「おい、散々無視してくれるとはいい度胸じゃねーか。よぉー く見えるようにもう1つ穴開けて目玉増やすか?あぁん?」
「イエ、結構デス。今モチャント見エテマス」
「とりあえず、屯所までくるよな?お嬢さん?」
「ハイ、ヨロコンデ...」