黒の艦隊 裏切り戦線   作:ROGOSS

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全員を助けたい。
思いはあれど、結果はついて来ず。


第666部隊であるならば

「よし、各小隊ごとに残弾が少ない者から補給を開始しろ」

「了解」

 

 空中投下された補給用のコンテナに直接艦装を連結させるような形で、補給を開始する。

 艦装という鎧が開発された際に最も問題視されたのは、その稼働方法だった。

 ガソリン、電気、太陽光。

 様々な方法が試されたが、既にシーレーンが崩壊しようとしていた当時にガソリンの入手は難しく、同じく帝国内ですら行き渡っていない電気を一人の兵士に使うことは渋られた。

 そこで考案されたのが、電池パックだ。

 作戦地域に太陽光で発電することのできるコンテナをばらまき、残量が少なくなった部隊はコンテナから補給することで艦装を動かし続ける。

 一見非効率に見えるが、実際この方法を採用してからというもの深海棲艦の撃破率が飛躍的に向上していた。

 国内では、太陽光発電の装置を国内の産業のために使ってほしいという国民の声も多くあるが、軍部は完全に黙殺していた、

 

「吹雪、お前からだ」

「はい」

 

 吹雪は海上に浮かぶ補給コンテナに艦装を連結させる。

 各砲の砲弾とマガジンを取り出して、付属している弾薬庫から直接手に取り補充していった。

 手際の良い者たちはすでに、魚雷の換装まで始めていた。

 未だに慣れない手つきで時間をかけている吹雪は、急かすことなく待っている那智に内心感謝した。

 決して言葉には出さない。

 出してしまえば罵倒されると思ってしまう。

 その大きな背中を超えることの出来る日はいつか来るのだろうか……?

 メーターが限界まで振り切ったことを確認すると、吹雪は連結を解除した。

 

「大尉、補給終了しました」

「よし、交代だ。警戒を怠るな」

「はいっ」

 

 那智が砲弾のマガジンを手にしたその時だった。

 ノイズが走り、とぎれとぎれの通信が入る。

 今は停戦命令が出ているはずだ。

 だが、ノイズと共に聞こえてくる砲撃音は今も戦闘が続いていることを証明していた。

 

『こち……第45……吶喊艦隊……副隊長……雪……、誰か……返事……さい』

「第45戦闘機吶喊艦隊か?」

「なにかあったみたいだね。」

 

 第45戦闘機吶喊艦隊は、今回第666部隊と同じく敵空母の殲滅を担っている重要な部隊だ。

 マックスが難しい顔をする。

 吹雪の背中に冷や汗が流れ始めた、

 

「こちら、特殊連隊第666部隊旗艦那智だ」

『こち……、第45戦闘機……艦隊白雪です……。至急援軍を』

「白雪って……もしかして」

「白雪……ちゃん……?」

 

 吹雪は妹の顔を思い浮かべる。

 彼女が同じく吶喊艦隊にいるなど初耳だ。

 だが、今の声は間違いなく私の妹の白雪だ。

 那智がチラリと吹雪を見る。

 

「状況を説明せよ。」

『戦闘機吶喊後帰還中、未確認……戦闘機部隊と接敵……我が艦隊……甚大な損害を受けたり……至急援軍を……頼みます。急いで……ださい』

「わかった、もう少し待ってくれ。HQに取り次ぐ。ブラッディ1よりHQ。第45戦闘機吶喊艦隊が未確認の戦闘機部隊と接触し壊滅的な損害を受けた模様、援軍の許可を求む」

『HQよりブラッディ1。状況は把握している。だが、援軍は許可できない。貴官らは、撤退の遅れている中国海軍第88大隊及び帝国海軍主力部隊第22水上艦隊の援護に回れ。繰り返す、撤退の遅れている中国海軍第88大隊及び帝国海軍主力部隊第22水上艦隊の援護に回れ』

「……ブラッディ1、りょう」

「だめです! このままじゃ……白雪ちゃんたちが……!」

 

 わかっていると言わんばかりの視線を那智は向ける。

 マックス以外の誰もが吹雪から顔を背けた。

 どう言葉をかければいい思いつかないのだ。

 

「いい加減にしろ! 命令に従わないつもりか!」

「でもっ!」

 

 マックスの雄叫びに吹雪が抗議の声を上げる。

 やがて諦めたようにため息をつくと、初月は口を開いた。

 身内を同じ部隊で亡くした経験を持つ彼女から出てきた言葉に、吹雪は納得はいかないものの従わざるを得ない何かを感じる。

 

「辛いことをさせようとしているのはわかる。だが、命令は絶対だ」

「……!」

 

「多くの艦娘は、姉妹たちの危機に何も出来ないものだ! 姉妹に限らず、友だろうとも恩師だろうと家族だろうと何も出来ないのだ。見捨てる決断は……勇気だ」

「私は……私はそれでも……!」

「ちょ、ちょっと我が儘はよくないよ」

 

 珍しく五十鈴が吹雪を(たしな)める。

 彼女もまた、同じ戦場で多くの友を失っていた。

 

「だけど!」

『HQよりブラッディ1。どうした、応答せよ』

「大尉、私はっ!」

 

 その時、那智の鋭い平手打ちが吹雪の頬に決まった。

 吹雪は打たれた頬を抑え、無言で立ち尽くす。

 

「いいか、肉親だろうと恋人だろうと親友だろうと今は忘れろ。少数の命を捨てて多くの命を救う。それが私たちの使命だ。それが戦争というものだ。それが生き残るための、勝つための手段だ。戦争に……道徳などという贅沢なものは無い」

「くっ……!」

「ブラッディ1よりHQ。了解した。これより撤退の援護に向かう」

 

 

 

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