「プリンツが
「そのようです。まさかプリンツ少尉が……」
「その情報は確かなんだろうな、レーベ少尉」
「僕の調べに間違いはありません」
「……艤装の回収は?」
「艤装も完全に破壊されていました。もう二度と、プリンツという船の魂を宿した存在はできないです」
「……黄色いサル目がッ!」
ビスマルクが机を叩く。
大きな音に数人の兵士達は体を震わせた。
それだけの覇気がビスマルクから感じることができた。
「落ち着いてビスマルク」
「グラーフ……」
「プリンツのことはすごく残念よ。それでも未だに戦況が変わったわけじゃない。彼女のためにも私達は必ず今回の作戦を完遂させるの」
「……あぁ。黒の艦隊は今どこに」
「現在、陸路と使って横須賀へ向かってきています」
「迎撃部隊は?」
「既に向かっています」
「誰に行かせている」
「秋月と摩耶です」
「……せいぜい派手に暴れてもらうとしようか」
〇●〇●〇
「お前はどうして武装蜂起に加わったんだ?」
隣で同じく車に揺られている摩耶が声をかけてきた。
正直な話うるさいと思ったが、なんとなく自分語りがしたくなった。不思議なもので時より自分が何者なのかを、自分がなにをするべきなのかを誰かに話さなくてはただの名無しに戻るような時があった。今はたまたまそんな気分だったからこそ、話したくなっている。そう自分に言い訳をした。
「私ではない、でも私の中の魂が恨みを持っている。秋月として初月には死んでもらわなくてはいけない」
「そうなんだな」
「貴女はどうして?」
「理由はない」
意外な回答に少しだけ驚く。
海軍の中でも任務に忠実で姉御肌で仲間を率いていくことで有名な彼女らしからぬ答えだと感じた。
「意外ね」
思ったことをそのまま口にした。
摩耶はなぜかニヤリと笑う。
「意外じゃないぜ。アタシはアタシの力を存分に引き出せる場所を見つければ誰の味方にも敵にもなる。少しだけ飽きてたんだ、深海棲艦の相手をすることにな」
「……」
意思も信念も感じられない軽い言葉。吐き気がした。それでも秋月は何も言わない。ここで仲違いをしても意味はない。摩耶が私の思っているよりも幾分おつむの弱い存在であっても利用価値は充分にある。ならば、利用するだけして最後は見殺しにでもすれば良い。
一度死んでしまっている私の魂は、仲間を見捨てることに戸惑いなど持つわけがない。
「見えました!」
運転手の声が聞こえた。
フロントガラスには対向車線を走る車両が目に入る。
「さぁ……次こそは死んでもらう!」
秋月は荷台から飛び出した。
突然の乱入者に向かってきていたハンドルを切り、バランスを崩して横転した。
倒れた車から這い出してくる者がいる。
「次こそ……来ると思った」
「初月ッ! 待っていた!」
「おいおい、一人だけか?」
「私達はチーム。他の味方を逃がすために囮にもなる」
「それが一度、仲間を見殺しにした奴がいう言葉かッ! 手を出さないで摩耶! 貴女は他の奴らを追いなさい」
「へいへい、わかってるよ」
摩耶を止めようとする初月に速射砲が放たれる。初月は摩耶を取り逃がし、悔しそうに秋月を睨み付けた。
「貴女に私を睨むことができて?」
「私は二度と仲間を見捨てない。一度捨ててしまった魂を仲間が取り戻させてくれた」
「綺麗事を言うな」
「秋月、貴女の魂はいつまで死んでいるの?」
「……」
こいつは何を言っているんだ?
怒りで頭がぼうっとする。
誰のせいで深い深い憎しみを背負っていると思う。
秋月としての生を阻害した張本人が言って良いことと悪いことの区別もつかなくなってしまったようだ。
「お前が言うかァァァ!」
私は連射砲を初月へ放った。