この作品のタグにもありますが、どちらかというとマブラヴのほうに影響は受けていますね。
もちろん、Alternativeほうですけど。
名作です。
本来、国家保安省は戦後にできますが、ここではすでに出来ている想定でお願いします。
大日本帝国は今や、極東においての最大軍事国として東シナ海、日本海、太平洋の3つの海を防衛する重要な要となっている。
しかし、深海棲艦の猛攻で劣勢に立たされていながらも、大国であるソ連やアメリカ合衆国からの支援が望めない今、大日本帝国はその力を徐々に失いつつあった。
そんな時、アジア圏で初となる国軍と国連軍の共同開発基地が建設された。
それこそが、大日本帝国横須賀鎮守府である。
その面積は既存の海上設備を数倍にも拡大した巨大なものとなっておいた。
しかし、国連軍と大日本帝国海軍の仲が良好か? と聞かれれば首を振らざるを得ない。
扉一枚を挟んで、反対側はグレーと黒の鉄骨が向き出しである大日本帝国側と白を基調に丁寧に塗装されている国連軍側で別れているところから、一目瞭然である。
かつての戦友であり、艦娘になる前からの親友である大鳳は国連軍教導隊の教官となっていた。
前線から離れた職場にいるが、かつては出撃のたびに戦艦級を数隻必ず撃沈するエースとして活躍していた。
扉を抜けると、国連軍の奇異の視線が痛いほど突き刺さった。
しかし、そんなことなど気にもせず那智は進んでいく。教導隊詰所をノックすると、案の定返事は帰ってこない。
「ん? 誰」
「私だ」
「入っていいよ」
「あぁ」
来客を予想していたのだろう。
突然部屋に入ったというのに、大鳳は驚いた様子を見せることなく那智に座るよう勧めてきた。
素直に行為を受け取る。
「久しぶりだな、那智」
「……一人か」
「そうよ。今、お茶出すから」
「長居するつもりはない」
聞こえているのかいないのか、大鳳は返事をすることなく台所へと姿を消した。
那智はため息をつくも、黙って待つことを決める。
「……教導隊は忙しいか?」
「どうだろうね。前線ほどではないよ」
「そうか……」
「はい。持ってきたよ」
「ありが……」
「……?」
目の前に差し出されたものを指差しながら、那智は尋ねる。
本当にこれでおかしくないと思っているのか? それとも私の目がおかしいのか?
「なあ」
「なに?」
「これはなんだ」
「お茶」
「どうみても、カレーなのだが」
「大鳳カレーだよ」
「大鳳……カレー?」
「おいしいから、大丈夫」
「そ、そうか……」
そうだ彼女はそういう人だった。
何かと自作のカレーを出して自慢したがるのであった。
久しぶりの友人のテンションに戸惑いつつも、那智は茶の湯に入っているカレーをすする。
味は悪くない。むしろ、大日本帝海軍の食堂で出るカレーよりも数段おいしい。
「で、何の用?」
「貴様が私を呼びつけたのだろう?」
「あぁ……そういえばそうだった。吹雪のことを聞こうと思って。優秀だけど純粋でしょ?」
「貴様が教官だったのか……」
大鳳は何も言わずに悪戯っぽく笑うと、那智の目の前に座る。
感情丸出しの表情をしているのか、那智は唐突に当ててあげようか? などと言い出した。
「あの子は、妙高に似てる。だから、放ってはおけないけど怖くて直には触れられない。違う?」
「それは……」
「わかるよー。物腰はすごく丁寧なのに、たまにすごく強気に出るところとか。戦争に正義を求めるところとか。誰よりも仲間を想うところとか……」
「やめてくれ」
那智が机を叩く。
上に置いてある灰皿が音を立てて床へと落ちていった。
聞きたくない。
姉さんの話は聞きたくない。その話だけは、誰からも聞きたくはないのだ……。
「そんな話は……聞きたくない」
「あれは……妙高自身が決めたこと。だから、いつまでも那智がウジウジしていても仕方ない」
「……わかってる」
「……まあ、いいや。で、使えそう? 吹雪は」
神妙な顔つきをやめると大鳳は話題を変えた。
那智も深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、正確に吹雪のことを思い出す。
彼女の技術、思想、装備……すべてから事象から導き出そうとするも、まだ一緒の部隊となってから一か月も経っていない彼女を、何もかも把握することができていなかった。
「わからない。使えなくはないと思うが」
「戦いに感情を持ちこんじゃうからね、あの子。多分、本人もそれじゃダメだってわかってると思うよ。だけど、やめられない。ううん、やめることを怖がっている。やめたら、ただの兵器になると思っているから」
「ただの兵器……」
「そんなことはない……って教えてあげるのが、部隊長の責任だよ?」
「言われずとも、わかっている」
「だったら、どうして避けるの? 那智……あなた変われないままじゃ、誰も救えないよ?」
「わかってる! 私だって……これでも変わった」
「……そうだね、ごめん。那智は変わったよ。すごく強くなった。私みたいに、前線から逃げて教導隊になった人から見れば尊敬に値するよ」
あの事件で傷ついたのは、何も那智だけではない。
そんなことは那智自身が一番わかっていた。
妙高は誰からも慕われていたし、誰よりも責任感が強かった。
だからこそ、不正を見て嘆く友たちの代表として立ち上がったのだろう。
悲しそうな笑みを浮かべたまま、大鳳は言葉を続けた。
「だけどね。私も教導隊になって、教官になったら感じることが増えた。教え子には死んでほしくない。だから、那智大尉。吹雪少尉の成長に手を差しのべていただけないでしょうか」
「……もとより、そのつもりだ」
気まずい沈黙が流れる。
先に我慢できなくなったのは那智のほうだった。
「もう、前線にはでないのか?」
「どうかな。ついこの間もインド洋に展開していた中国軍の空母艦隊がやられたしね……。戦場じゃ、私みたいなガス空母でも引っ張りだこになるだろうね。多分……吹雪たちの代が最後の教え子かな。現に、今は担当は持っていないしね」
「いけるのか?」
「大丈夫。教導隊は、エリート中のエリートなんだよ? 余裕だよ」
カラリと笑う大鳳に那智は何度目かわからないため息をつく。
彼女の前にいると、どうしても弱音を吐きたくなる。
そうなっては駄目だと喝を入れると、那智はなるべく小さな声で話し始めた。
「……最近、
「ドイツが? 確か、あなたの隊にも政治将校がいたわね」
「あぁ。しかも、近いうちに琉球諸島海域にある補給基地の奪還を行うらしい」
「今更……? もうあそこは数か月以上も前に壊滅したはずじゃ」
「おそらく……真の目的は」
「……東シナ海海底にあるとされる化石燃料か」
那智の顔色から何を言わんとするか読み取ると、大鳳は大げさに手を広げた。
こんな時でも、化石燃料の取り合い合戦が行われているのだ。
どの国よりもより多くの資源を。
国のお偉いがたは何を考えているのだろうか?
東シナ海よりも今は沖縄にいる島民の安全を確保するためにも、絶対防衛線の押し上げに努めるべきではないのか。
「あぁ……戦後のことでも考えているんだろうがただの馬鹿だ。今じゃ、あの周辺には深海棲艦の機動基地があるかもしれないとされているのに」
「…馬鹿だよね。まだ、深海棲艦にまともに勝ったこともないのに戦後の世界の覇権争いを始めようとしてるんだもん。それに、ドイツも噛んでるってことは……これじゃ第二次世界大戦もいつまた始まるかわからないね」
「気をつけろよ、大鳳。お前は、まだまだ後進の育成に励むべき優秀な軍人だ」
「那智こそ気をつけてね。あなたは、世界のために戦うべき大事な存在よ」