「今回の作戦は、大規模作戦前に行われる敵艦載機の漸減が目的だ」
「漸減……?」
聞きなれない単語に吹雪は聞き返す。
那智は何か納得のいったような顔をすると、説明を始める。
「そうか、吹雪は初めて聞くのか。初月はわかるか?」
「存じております」
「では、吹雪のために簡単に説明をしよう。知っての通り、艦隊決戦において制空権の有無は重要だ。だが、今や我が帝国海軍だけでなく世界中の海軍が、その制空権を維持できていない。理由は簡単だ。深海棲艦の圧倒的な物量に押されているからにほかならない。それを少しでも改善するため、大規模作戦前は、近海の敵空母部隊に戦闘機吶喊をしかけ次回の作戦時に参加する敵艦載機の数を減らしている。今回の作戦の目的がまさにそれだ」
那智は吹雪に視線を向けると話を続ける。
「我々の今回の作戦海域は太平洋南海だ。目標数は、3000だ」
「3000!?」
「ちょ、多すぎません!?」
目標数3000。
その数を僅か1時間足らずで行えと言っているのだ。
五十鈴と夕張が驚きの声を上げるのもおかしな話ではなかった。
「それほど次回の作戦は、重要だということだ」
「1隻の空母に約50機の艦載機があるとして……およそ60隻ですか……」
「……すごい」
初月の補足に不知火も目を見開く。
そもそも60隻も敵空母がいる海域に吶喊するなど、本格的に自殺しにいくようなものだ。
大本営はいったい何を考えているのか。
那智以外はその疑問を浮かべていた。
「もちろん、この数字は目標数字であり、作戦終了時間になり次第、目標数に達していなくとも作戦終了とする。わかっていると思うが、戦闘機吶喊の際の制空権は敵が握っている。支援砲撃はあるが、基本的にはそれぞれの部隊の地力で完遂しなくてはならない」
「他の参加部隊にはどのようなものがあるのでしょうか?」
「良い質問だ五十鈴。呉鎮守府から第22水上艦隊・第45戦闘機吶喊艦隊、舞鶴鎮守府から第33機動部隊、第2水上打撃連隊、中国海軍から第88水上大隊が陽動及び戦闘機吶喊に参加する手はずになっている」
「補足だが、兵站に関しては今回は中国海軍との共同作戦となっている」
「……中国海軍」
「大丈夫かな……」
マックスの捕捉に夕張が不安そうな声を上げる。
中国海軍。
世界の中でもかなりの数の戦力を保有している軍事大国の一つである。
しかしながら、その装備のほとんどがソ連から卸された旧式の装備であり質という面ではいさささか不安を感じさせることが多々あった。
それでも、圧倒的に数の少ない日本海軍としては中国海軍の力を借りざるを得なくなっていた。
「合計で90隻以上の艦艇、5000人以上の将兵が参加する大規模漸減作戦だ。いいか! 我ら第666部隊の誇りと意地、そして先立って行った者たちの屈辱を晴らすため、必ず成功させるぞ!」
「おお!」
「部隊則……はじめ!」
「己の力の限りを高め使え!」
「死を望まず拒み、生ある限り立ち続けろ!」
「我らは守護せし者なり!」
「敬礼っ! ……なおれ!」
「以上だ、解散!」