終わりのセラフと寂しがりの悪魔   作:モフノリ

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初投稿です。

誤字脱字ありましたら申し訳ございません。

寛大な心で読んでいただけると幸いです。


新宿攻防戦
吸血鬼のペット


 助けた少女に教えられてシノア隊の五人は原宿駅の地下を歩いていた。

 気配をけして地下三階にたどり着いたところで暗闇の中に吸血鬼の姿を見つける。

 

「総員攻撃準備!!!」

 

 三葉のかけ声とともに全員が剣を抜く。

 

「仲間を呼ばれる前に--」

 

 仕留めるぞ

 と言葉が続く前に優一郎が掛け声とともに吸血鬼に向かって駆け出した。

 その動きはあまりにも突然で速く、誰も止めることができない。

 

「おおお!」

 

 優一郎の声に反応したのか、気配で反応したのかはわからないが、吸血鬼は実にゆっくりと、まったりと、落ち着いた様子で振り返った。

 

「んぁ? あんた、帝鬼軍の人?」

 

 斬りつけようとしていた吸血鬼から発せられた、気が抜けているという表現しか出来ない声に、優一郎は声の主の体に叩きつけようとしていた阿朱羅丸を思わずとめてしまった。

 

「あ、止めてくれるんだ。まあ、止めなくても斬られる気はなかったけどね。斬られたら痛いし」

 

 ヘラヘラと笑う青年は緊張感のない空気を全身から溢れ出させていた。

 そんな様子に優一郎は困惑するが、それを表に出さないように気を引き締める。

 

「お前、吸血鬼の癖におかしな奴だな」

 

 優一郎は阿朱羅丸を突きつけたまま、緊張を解かずに話を続けた。

 

「俺が吸血鬼? そんなわけないじゃん」

 

 青年はさも当然かのようにそう言うが、服は吸血鬼達が着ているものと同じだ。家畜扱いを受けている人間が着ているものとは明らかに違う。

 それでも、彼が言っている言葉は嘘ではないと思ってしまうほど、当たり前のことを言うようにさらっと言われ、さすがに優一郎は戸惑うことしかできなかった。

 いや、優一郎だけではなく、その場にいた全員が戸惑うことしかできなかっただろう。

 

「そんなことより、ここの人達を助けに来たんでしょ?なら、さっさとやってくんない? 俺が吸血鬼達にバレないようにしてといてあげるからさ。んじゃ、頼んだよー」

 

そう言って青年は踵を返すと片手をひらひらと振りながらどこかに行こうとする。

それを止めたのはシノアだった。

シノアは四釜童子を青年の首に突きつける。

 それに対して、吸血鬼の青年は慌てる様子はまったくなかった。

 

「そんなことを言いながらもあなたは仲間を呼びに行くんでしょう。させませんよ」

 

「いや、俺はペットだから。吸血鬼じゃないってさっきも言ったんだけどなぁ」

 

シノアとは反対側から青年の首に三葉も天字竜を突きつける。これでは青年も簡単には逃げられない。

 

「もしかして、誰も信じてくれてないわけ? こんなにもいい人っぽいオーラ出てるのに?」

 

「シノア、こいつはこちらに敵意がないようだ。吸血鬼共に人質が有効なのかはわからないが、情報も聞き出せるだろうし捕まえておこう」

 

 青年の言葉を無視して三葉は話を進める。

 

「俺の話きいて――」

 

「敵意がないっつっても、吸血鬼にはかわりない。油断はするなよ」

 

 君月も青年の言葉を聞いていないようだった。

 

「いや、うん。別にいいけどね? ただ、人質にはならないと思うしペットなんかが情報持ってるわけないじゃん。だからさ、ここは俺の言う通りに」

 

「足止めご苦労」

 

 突如現れた吸血鬼がシノア目掛けて剣を思い切り振り下ろす。しかし、その攻撃は近くにいる青年すらも巻き込んでしまうものにしか見えない。

 

「この人が見えませんか?今すぐ攻撃を」

 

「それがいなくなろうがかまわんわ!」

 

「だから人質になんかならないって言ったのに」

 

 青年が気だるそうにそう呟いた次の瞬間、そこにいた誰もがなにが起きたのか分からなかった。

 ただ、先程まで四釜童子と天字竜を突きつけられていた青年が襲いかかってきた吸血鬼の剣を左腕で受け止め、反対の腕でシノアを抱いて守っているという状況になっている事実だけがそこには広がっていた。

 

「なぜ……」

 

「別にあんたを助けたわけじゃないよ。俺が死にたくないだけ」

 

 青年はそう言うとシノアを立ち尽くしている三葉にあずけ、吸血鬼に向き合った。

 

「貴様、そんなことをしてあのお方がゆるしてくださるとでも思っているのか?」

 

「あいつなら俺が死んだって、あ~あせっかくの玩具が死んじゃったかぁ、程度にしか思わないのは分かってるけどね。だからと言って痛いのも死ぬのも嫌なんだよ」

 

 緊張がその場を制圧しているにも関わらず、青年の態度は緊張とはかけ離れたままだった。

 にもかかわらず、青年にはいっさい隙がない。

 青年がどう出るのかわからない以上、シノア隊の全員はその場から無闇に動くことができない。

 

「裏切るのか?」

 

 吸血鬼が青年に問う。

 もし、青年がイエスと言うのであれば、吸血鬼だけを狙えばいい。先ほども青年はこちらに全く攻撃をしてこなかったから大丈夫だろう。

 しかし、答えがノーであれば、吸血鬼が斬りかかってきた瞬間、何をしたかも分からない程の動きをする青年とも戦わなくてはならない。

 シノア隊全員が今まで以上に緊張を高めた。

 

「いや、裏切るもなにも元から仲間じゃないじゃん」

 

 青年は呆れたようにそうはいた。

 

「そうか。なら、あの方にはこう伝えておこう。ライナ・リュートは人間共の奇襲の際、無残にも殺されたとな!」

 

 そして、吸血鬼が地面を蹴った直後、優一郎も走り出した。

 

「俺達に殺されるのはお前達の方だ!吸血鬼!!」

 

 優一郎は青年、ライナ・リュートの横を抜けて吸血鬼を斬りつけ、吸血鬼は鬼呪装備の力のせいで消失した。

 

「あぁ・・・・・・これじゃ俺、怒られちゃうなぁ。まぁ、俺がやったわけじゃないからいいよね」

 

 消えていく吸血鬼を見ながらそう呟くライナと呼ばれた青年ににシノアは近寄る。

 

「あなた、はどちらの味方なんですか」

 

 シノアは背の高いライナを見上げた。

 それにライナは困ったような顔をしてしばらく悩むような仕草をしてから口を開いた。

 

「俺はどっちの味方でもないよ」

 

 そう言ってライナは微笑んだ。

 

「俺は守りたい人達を守るだけ。人間だろうが吸血鬼だろうが、俺の守りたい人に手をしたら敵だ」

 

 その言葉に呆気にとられているシノアを見てライナは困った顔をまた作る。

 

「と言っても、俺は一人だから関係ないんだけど。ここの人間を吸血鬼から助けようと思ったのだって、ただの反抗意識ってだけだし。ちなみに」

 

 言葉を続けながらもライナは指を空間に走らせる。

 するとそこに魔法陣の様な模様が浮かび上がった。

 

「稲光」

 

 ライナがそう呟くと魔法陣から雷が放たれ、放たれた方角から誰かの叫び声が聞こえた。

 

「お前らもここの人を傷付けるなら容赦はしないからな?」

 

 何事も無かったかのようにそう呟くライナからは、さっきまでとは別人ではないのかと思ってしまうほど殺気が放たれていた。

 その殺気がライナを敵に回してはいけないということをシノア隊全員にわからせる。

 ライナの殺気に気圧され、動けなくなった五人を無視してライナは話を続ける。

 

「そもそも、お前らが最初から俺のことを信じてくれてたらこんなめんどくさいことになってなかったんだからな?」

 

 そこんとこ分かってる?

 と言いながらまた魔法陣を空中に描き雷を放ち、次々くる吸血鬼を倒していく。

 その光景はあまりにも一方的で、シノアたちを動けなくするには十分だった。

 

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