終わりのセラフと寂しがりの悪魔   作:モフノリ

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さわやかな腹黒

「ライナとフェルナは最初から人間と吸血鬼の双子だろ」

 

 その言葉にライナは身動きをとることはなかったが、シオンに向けて殺気を放った。

 

「お前の言葉次第じゃ殺すぞ」

 

 このせいでフェリスが来ることも考えたが、フェルナが対処してくれるだろう。

 

「まてまて、話を聞け」

 

 シオンは両手を上げて敵意がないことを示して来る。

 あわてた様子のシオンを見て、せっかく取り戻した家族を失うかもしれないと思ったせいで取り乱してしまったと反省をする。

 ライナは外でフェルナとフェリスが殺気を飛ばしあっているのを感じながら自分自身を落ち着かせた。

 もちろん、殺気も抑える。 

 

「わかった。話は聞く。ただ、事の次第ではフェルナを守るために殺す」

 

「そのときは殺してくれてかまわない。でも、俺からの提案は君ら双子にとっていいものだと思うよ」

 

「外でにらみ合ってるっぽい二人のためにも手短に頼む」

 

「まあ、そんなに長くならないさ。では、改めて自己紹介を。俺はシオン・アスタール。俺達は帝鬼軍からも吸血鬼からも人間を、人間だったものを救っている。たとえば、フェリスだ。彼女は帝鬼軍に毒された両親のせいであれだけの強さを手に入れた。まあ、彼女の兄のほうが強いけどね。そしてこのあと来るやつは帝鬼軍の元で実験体にされたやつだ。そんな人が出る前に救うのと、そんな人たちを救うのが俺達の目的でもある」

 

 シオン自身はどうなのだろうかとライナは思いながら口を挟まず話を聞く。

 

「そんななかでだ、とある情報で、帝鬼軍で人間に鬼を入れる方法を解明するための実験体がいたことを知った。その実験体は自身の中に鬼が入っていて、人間なのに吸血鬼のような身体能力と治癒力があったらしい。そいつが鬼呪装備そのものって状態なんだろうな。まあ、それに関しては十数年前の話だしあんまり信じてなかったんだけどね」

 

 それは間違いなく自分のことだろう。

 一体どこの情報だろうか。もし、帝鬼軍にばれる可能性があるのであればどうにかしなければならない。

 

「その話とは別に吸血鬼のなかに敵なのか見方なのかわからない人間がいるって聞いたんだよ。見た目は人間で吸血鬼側にいるくせに鬼呪装備で魔法陣を描いて帝鬼軍も吸血鬼も攻撃して、一般人だけには手を出さないっていうよくわからないやつ。情報を集めたら吸血鬼の中で人間なのに吸血鬼のような身体能力と治癒力をもった化け物って呼ばれてるじゃないか」

 

 帝鬼軍の情報も吸血鬼の情報も手に入れている目の前の男はにやにやと笑いながら話を続ける。

 

「そいつは常に一人で行動してたらしい。で、お前、さっきまで吸血鬼に首絞められてたのに、首に全く跡が残ってないけど何でだ?」

 

 これほど人の笑顔に殺意がわいたのははじめてだった。

 それと同時に自分の頭の悪さに頭を抱えたくなった。

 こいつは最初からライナをただの人間だとは思っていなかった。

 

 

「あ~はいはい。お前の話してた鬼呪装備そのものってやつも化け物だと吸血鬼たちに嫌われてたやつも両方俺だよ。で、なんで俺達が人間と吸血鬼の双子だと?」

 

「ん~。話すのだるいなぁ。ほら、俺天才だからピーンときたあてずっぽうみたいな☆」

 

「・・・・・・」

 

「いや、まあ人間鬼呪装備のやつがもともと人間と吸血鬼の双子だったって言う話をしってただけなんだけどね」

 

「天才とか関係ねぇじゃねぇか?!」

 

「あはっ☆」

 

「うぜぇええええええええええええええええ」

 

 あまりのうざさにライナは思わず叫ぶ。

 その様子をニコニコとしながらこちらを見てくるのがさらにうざい。

 これでもかというぐらいの鬱陶しいという気持ちをこめた視線を向けるが、シオンは何も見えていないかのようにさわやかな笑顔をこちらに向けてくるだけだった。

 

「で、お前はどうしたいの?俺たちを帝鬼軍に売る?さすがにそうなると――」

 

「俺はお前たちがほしいんだ」

 

「……は?」

 

 突然の言葉に思わず変な声が出た。

 こいつは何を言っている?

 

「俺はお前たちがほしい。何しろ俺たちは民間企業みたいものなわけだ。こちらに引き込めそうな人材はほしいに決まってるだろ」

 

 シオンの言葉にライナは怪しむことしかできない。

 

「お前のその言葉を信じろと?」

 

「別に信じなくてもいいさ。ただ、来ない場合は帝鬼軍にお前のことをばらす。人間鬼呪装備なんて技術、やつらは喉から手が出るほどほしがるだろうな」

 

「そうなる前にお前を――」

 

「残念だが、俺以外にもこの話を知ってるやつはいる。でな、今日の本当の俺の目的はお前たちなんだよ。俺が帰らなかったら情報は帝鬼軍にわたることになってる」

 

 笑顔でそんなことをいう。

 さらには

 

「逃げ続けるお前達の場所も逐一帝鬼軍に報告する」

 

 なんて言葉続ける。

 なんという策略家だろうか。

 むしろこれは嫌がらせに近い気もしてくる。

 人をいじめるのが大好きに違いない。策略家なんて評価して損をした。

 なんてことを思いながらも、ライナは受けない場合、どうするか考えてみる。

 が、めんどくさいことこの上ないことしか分からない。

 

「わかった。俺達はあんたらに付いてくことにしておくよ。ちなみに、裏切ったらフェルナがお前らを殺しにかかると思うからそのへん気をつけてね。弟に人殺しさせるのはいやだから殺させないようにはするけど」

 

 顔をしかめながらライナはシオンの元に行くところを承諾した。

 

「あーそれと、フェルナにはお前が本当のこと知ってるのを俺から伝えとくから」

 

 その言葉に

 

「弟思いなんだね」

 

 なんてシオンが言う。

 弟思いなのは当たり前だ。

 フェルナは我が身のように大切だ。

 

「さて、離している間に帝鬼軍の子と反抗期吸血鬼君もなにやら落ち着いたようだし、険悪になってるっぽいフェリスとフェルナを止めに行こうか」

 

 身体を伸ばして事務室の扉に向かって歩き始めたシオンは、ドアノブに手をかけると何かを思い出したかのように振り向いた。

 

「ところで、今のライナは人間なの?」

 

 まるで、お前の血液型は何? と聞いてくるかのように人間なのか?とシオンがきいてくる。

 それに思わずライナは苦笑する。

 

「さあね。俺にもわかんないな」

 

「お前もわからないのかよ」

 

 二人は少年のように笑いながら事務室を出た。

 

 

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