ライナとフェルナが離されそうになったとき、天才と呼ばれていた父親であるリューラがその頭脳を駆使した。
二人が離れてしまわないように、二人が腐った世界でも生きていけるように。
ライナは人間である限り、一定以上は強くなることはできない。
フェルナは吸血鬼である限り、血を求めてしまう。
ライナもフェルナもお互いにお互いを守っていける方法を探さなければならなかった。
そして、リューラは見つけた。
帝鬼軍が作り出した鬼呪装備を見つけた。
己の息子を鬼にして、己の息子を鬼呪装備にする。
リューラにとってそれは造作のないことだった。
イルナを二人をつなぐ架け橋として術に組み込んだ。
自分自身の命を代償にしてフェルナを鬼にした。
それは二人が互いに互いを守っていけるための手段だった。
そうすることで人間だったライナは吸血鬼のように強くり、腐ってしまった世界でも生きていける。
そうすることで吸血鬼だったフェルナは普通の吸血鬼よりも血を求めることが少なくなる。
ライナは生粋の人間ではなくなるし、フェルナは生粋の吸血鬼ではなくなる。
それでも、二人が離れずに生きていくためには必要なことだった。
そうしてライナは鬼呪装備そのものになり、フェルナは鬼になった。
◆
どれぐらいたったのだろうか。
いろいろなことを思い出したライナにとっては長い時間だったが、本当は短い時間だったかもしれない。
それでも、出ようとするフェルナを安定して押さえ込むことができるようになったきた。
これでようやくリューラがどこかに残しているはずのフェルナの身体を探しにいける。
フェルナが出ようとする反動の苦痛と常にフェルナを押さえ込むために力を使っているせいで、呼吸を整えることができない。
それでも、いつまでこの状態が続くかわからないのでライナは動くしかなかった。
苦痛できしむ身体に鞭をうって、いつの間にかなっていた膝たちから立ち上がる。
ずっと忘れていたが、ようやく二人になれるのだ。
ようやく家族に生身で会えるのだ。
「お、おい・・・・・」
そこでようやくミカエラがいたことを思い出した。
「あ~なんか・・・ごめん。とりあえず、大丈夫、だから」
優一郎が世界で一番大切で自分のことを犠牲にしてでも守りたいと思っているであろうミカエラが、心配そうに自分の事をみているのに気付き、ライナは無理して笑顔を作った。
彼には自分を心配するほどの余裕はないはずなのだ。自分と優一郎のことで精一杯のはずなのだから。
「盛大にやってるねぇ」
これからどうするか、と思考を変えようとしていたところである意味では聞きたくないが現状の全てがわかっているであろう声が聞こえた。
「おい」
全てがわかっているからこそ、このタイミングで目の前に現れたフェリドにむかってライナは声をかける。
「なんだい?」
「わかってるんだろ」
「わかってるね。だから僕はここにいる」
しばらく、二人の間に沈黙が流れる。
先に沈黙を破ったのはフェリドだった。
「思い出したみたいだね。僕についてくるといいよ。・・・・・・いや、今は難しいかな?そうだ。ミカくんがライナくんを運んでくれないかな?」
フェリドのその提案は非常に嬉しいものだが、先ほど会ったばかりで何も知らないミカエラが自分を運んでくれるとは思えない。
「いや、俺は大丈夫だからさっさとーー」
そう言いながら立っているのでさえ辛い状況のまま思いのほか身体は動かず、足がもつれて倒れそうになる。
そこから、体勢を整えれるほどの余裕もないので諦めて地面にぶつかる衝撃に備えて目を瞑ったが、いつまでたっても衝撃が来ることはなかった。
「あれ?」
「あれ?じゃないから」
目を開けると真横にミカエラのあきれた顔が見えた。どうやらミカエラが倒れそうになったところを支えてくれたらしい。
「これで貸し一つだからね。その分きちんとさっきの約束を守ってもらうからね」
ミカエラはこちらを向かずにそう言った。
なんだかんだ言って、ライナを背負いなおす彼も優しいのだ。
そんなところもまた、優一郎とそっくりで、血はつながっていなくても本当の兄弟なのだろう。
「悪い」
「よし、まとまったようだね。ちょっと急ぐからちゃんとついてきてね?」
そして、フェリドとライナを背負ったミカエラはその場から文字通り一直線で目的の場所に行くために、走り出した。
◆
「さて、ミカくん。その背負ってる今にも死にそうな人をこの部屋に放りなげてくれない?」
目的の場所に着いたらしく、フェリドは開口一番に胡散臭い笑顔でそう言い放つ。
そんな三人の目の前には金庫かとおもうような、ごてごてとした扉がつき、中は真っ白な部屋があった。
ここにくるまでは、フェルナを必死に抑えていたのでどこに向かっているのかわからなかったが、部屋を見て理解した。
ここは新宿からつれて帰られて一番最初に目が覚めたところだ。
「相変わらずなやつだな」
ミカエラが不機嫌そうに言いながらも、優しくライナを地面に下ろす。
「自分では入れるか?」
「ああ。これぐらいなら問題はない」
そういってライナは身体を引きずりながらも部屋に入っていく。
「あとは中にいる人がどうにかしてくれると思うから」
扉が閉められる直前にフェリドがそういってきたのが聞こえた。
つまりここには誰かがいるということで、それはライナのことを知っている人ということで。
そんな人物は一人しか思いつかなかった。
「久しぶりだね、ライナ」
「・・・・・・父さん」
さきほどまでは誰もいなかったはずのこの部屋に先ほどまでは忘れてしまっていた人が、死んだはずの人が、会いたかった人がいた。
記憶と寸分違わない優しい声で、優しい顔で、リューラは、父親は話を続けた。
「随分と大きくなったね」
「そりゃもう、二十歳だし。フェルナもきっと同じくらいだよ」
先ほどまでの苦痛も押さえ込むこともまるで必要がなくなったかのように収まった。
そのため、父親に駆け寄ることも、触れることも、抱きつくこともできるのだが、慣れていない上に自分は二十歳ということもあいまって近づくということもできない。
それはもどかしくて、なんとなく顔も直視できない。
「二人は本当にそっくりだからね。自慢の息子たちだ」
そういいながら、いつの間にか近くまで来ていたリューラがライナを抱きしめる。
「とりあえず、母さんにあっておいで」
その言葉が聞こえた直後、ライナは意識を手放した。
◆
そして、目を開けるとフェルナといつも会っている場所。
平坦な地面が無限に広がっている意識だけの世界。
そこには角の生えていないフェルナがいた。
その隣には黒髪で優しそうな女性が立っている。
後姿ではあったが、一瞬で誰かわかった。
しかし、どうやって声をかけていいのかわからない。
それでもいてもたってもいられず、無意識に足を進めてしまう。
こちらに気がついたフェルナが駆け寄ってくる。
それと同時に隣にいた女性も振り向く。
「ライナ!!」
飛びついてきたフェルナを抱きしめ返す。
「ごめん、辛い思いさせたよね。ごめん」
「こっちこそずっとごめん。それと、全部忘れた俺とずっと一緒にいてくれてありがとう」
「思い出したんだね!」
離れたフェルナは満面の笑みをこちらに向ける。
「思い出したよ。全部」
ライナはフェルナに微笑み返した。
次に、近くまで来ていた女性のほうを、母親のほうを向く。
「母さん」
ライナがそうつぶやくと、イルナはライナとフェルナをふわりと優しく、そして強く抱きしめた。
「二人ともこんなに大きくなって」
顔は見えないが声が震えているので泣いているのがわかる。
「僕たち、もう二十歳だからね」
先ほど父親としたような会話をフェルナと母親がしたのを聞いて心が温かくなる。
イルナはぎゅっと一度力強く抱きしめると、二人を放した。
「いつまでもリューラを待たせるわけにはいかないわね」
イルナの瞳にはまだ涙が残っている。
ライナとフェルナがそれを優しくぬぐう。
「ライナとフェルナは優しいわね。さて、フェルナ行きましょう」
いつの間にかできていた扉にイルナがフェルナを連れて行く。
それに不安になってしまう。
そのままフェルナがいなくなってしまうのではないか。
本当に一人になってしまうのではないかと、不安になる。
大丈夫だとわかっていてもそれでも不安になる。
それを察したのか、そうでないのかはわからないがフェルナが振り返って一言いう。
「また、後でね」
こちらを見て微笑むフェルナをみて、不安がすべて消えた。
「また後でな。あと、母さん!」
思い切ってイルナを呼び止める。
「どうしたの?ライナ」
「えっと・・・・・その。・・・・・・ありがとう」
どうしても照れてしまって目を逸らしてしまう。
そうしていると、またイルナに抱きしめられた。
「ライナ。愛しているわ」
「・・・・・・うん」
◆
次に目を開けたときは白い部屋だった。
「ライナ」
いつものように頭に響く声ではない、フェルナの声が耳に届いた。
恐る恐る声のするほうを見ると、そこには自分と瓜二つではあるがどこか母親であるイルナに雰囲気が似ているフェルナが立っていた。
「フェルナ・・・・・・やっとだ」
そういいながらフェルナに近づく。
フェルナもライナに近づく。
本当にお互いがそこにいるのかを確かめるように手を握り合い、額と額をくっつける。
そして互いがそこにいることを、一人ではなくなったことを実感する。
「うん。よかった。無事に成功したみたいだ」
向かい合って互いのことを実感していると、二人同時に頭を撫でられる。
「父さん」
「二人とも、今までちゃんと生きてくれてありがとう」
優しくリューラは微笑む。
それと同時に、リューラの身体は徐々に薄くなっていく。
「大丈夫。二人ならこれからも生きていける。なんたって僕とイルナの息子たちなんだから」
しゃべっている間もリューラの身体は実体をなくしていく。
「あ、でも、ずっと二人っきりじゃだめだよ?僕らは君たちに幸せになってほしいんだ。何にも怖がらなくていいから、結婚して、子供生んで、それで--」
「父さん」
「父さん」
少しでも多くのことを伝えようとたくさんしゃべろうとしていたリューラの言葉をさえぎって二人の声が重なる。
「ありがとう」
「ありがとう」
二人は涙を目に浮かばせながらそういうと、リューラは一瞬驚いた表情を見せたが、再び優しく微笑む。
「大丈夫そうだね。それじゃあ僕はイルナに会いに行くよ。ライナ、フェルナ。愛してるよ」
言い終わると同時にリューラの姿は完全に消えた。
頭を撫でられていた感触も消える。
そして、その場にはライナとフェルナだけになった。
怒涛の場面転換ばかりでもうしわけないです!!!!!!!!
なにぶん文才がないために
意味不明な部分が多いのではと恐れながらも投稿しております・・・・。
わからないところや矛盾などがあれば指摘していただけると幸いです。