漫才フェイズ -スキル-
野「わんちゃん…ねこちゃん…とりさん可愛い…」
零「随分と動物に好かれるな君は」
野「気づいたら来ちゃう」
零「君は魚も寄せるな」
野「おさかなさんは…ひれがヒラヒラきれい…鱗もきれい…」
零「そうだな。グッピーはそれぞれ個性があってきれ」
魚『きゃー!野薔薇ちゃん私をムニエルにしてー!』
零「…おっと、仕事疲れで幻聴が…」
野「おつかれ…さま?」
8/18 遊矢と野薔薇の先攻後攻を交代しました!
じ――――っ…
「……」
人差し指を唇に当てて、じーっと何かを見つめる少女を偶然通りかかった柚子は見てしまった。腰まである長い金髪の少女は、臙脂色のクラシカルロリータのワンピースを着ている。謎の少女はずっと何かを食い入る様に見つめていた。何の好奇心からかは分からないが、気になって声をかけて見た。
「ねぇ、貴方。何を見て…」
くるりと振り返った少女に、柚子は言葉を失った。艶やかな金髪に大きな(生気のない)青い瞳、薄桃色の小さな唇、白い肌。女性なら誰しも羨む様な豊かな胸部。この前見た雑誌で可愛いと思っていたモデルが頭からすっぽ抜ける程、可愛い少女だった。
「(び…美少女…!)」
よく周りからストロングと言われている柚子でもリアクションに困る程の可愛らしさだ。声をかけられた美少女は首を傾げたが、すぐに柚子から目を逸らし、視線を元に戻した。
「…はっ!な、なにしているの?」
ハッとして、何とか現実に戻ってきた柚子は恐る恐る美少女に声をかける。しかし美少女は柚子の呼びかけに気づいていないのか、一点だけを見つめる。その先が気になった柚子も美少女と同じ方向を見てみた。
彼女の視線の先には、カラフルなポップで書かれたドーナツのメニュー看板があった。その隣にはワゴン車が止まっている。それをじーっと見ては、人差し指をぷるぷるの唇に当てている。…あ、そっか。
「食べたいの?」
「…おかね、ない」
しょぼんと落ち込む声すら可愛い美少女。美少女は鞄を持っていない。多分散歩でもしている最中で、ワゴン車を見つけたのだろう。まるで捨てられた子犬の様な目でドーナツのメニュー看板を見つめる。その表情に柚子は胸が痛くなるのを感じ、「ぐぬぬ」と唸った後、鞄の中に手を突っ込んだ。
※
「(はむはむ)」
「(可愛い…)」
ドーナツを両手でつかみ、はむはむと小さな口で食べる美少女。食べる仕草は子リスを連想させる。それを見つめる柚子の目は暖かい。
結局、美少女のオーラに負け、ドーナツを何個か(遊勝塾の皆の分も)購入し、彼女の手を引いて遊勝塾へ連れてきた。ポカンとする美少女に紅茶を差し出し、「食べて良いよ」と言えば、美少女ははむはむと食べ始めた。嬉しそうなオーラを放つ美少女に買ってよかったと思いながら、柚子もドーナツを食べ始めた。
「ただいまー!」
「柚子姉ちゃーん!いるー?」
「あ、皆帰ってきた!」
近くの広場に遊びに行っていた他の塾生達が帰ってきた。バタバタと騒がしい足音が近づいてきて、部屋にやってきたのは3人の子供達だった。
「柚子姉ちゃーん!ただいまー!って、お客さん?」
「わー!本当だー!」
「入塾希望者?」
入ってきたのは元気そうな小太りの少年と活発そうで可愛らしい少女と聡明そうな少年。3人は美少女の近くにやってくると、美少女はドーナツを置いた。
「あーっ!ドーナツ食べてるー!良いなー!」
「皆の分、あるよ」
「本当!?」
「ねぇねぇ!入塾希望者~?」
「違う…見学?」
「見学かー!」
「あ、あの…どんなデッキを使うんですか?」
「見てみる?」
「いいんですか!?」
「いいよ…」
きゃっきゃと話してくる子供達に美少女は1人1人ちゃんと対応して、話している。柚子が思わず目を丸くしていると、また誰かが入ってきた。
「こらぁー先に行くな…って…えっ?」
「どうしたの遊矢~?って…えっ?」
入ってきたのは遊矢と素良。2人共入ってくるなり、目を丸くして、ポカンを美少女を見ている。柚子が「遊矢?素良?」と声をかけると、遊矢と素良は同時に言った。
「「柚子…」」
「な、何よ?」
チラリと見てくる2人に思わず柚子はビクリとする。そして…
「何で人形が動いてるんだ!?」
「何で野薔薇先輩がここにいるのさ!?」
「遊矢は失礼過ぎるでしょ!!」
スッパ――――ンッ!!
柚子の結構本気なハリセンアタックが遊矢の頭にヒットした。その音で美少女、野薔薇は素良に気付いた。
「あ、素良」
※
「へぇ~野薔薇さんって、素良の通っていた学校の先輩だったのか」
「うん!まさかこんな所で再会するなんて思ってなかったよ!」
「ね~!先輩っ」と素良はすりすりと甘える様に隣に座る野薔薇に擦り寄る。野薔薇も「久しぶり」と素良の頭を撫でる。テーブルを挟んで向かい側のソファに座る遊矢はもの珍しそうに「ほへぇ~」と見ていた。
「素良にこんな一面があったとは…」
もふもふとドーナツを食べつつ、野薔薇を見る遊矢。確かに可愛らしい顔をしているが、彼が先程言った様に「人形」の様な無表情。素良を撫でる時もずっと無表情だ。
「(笑ったら…どんな顔するんだろう…)」
皆を楽しませるエンタメデュエリストを目指す人間としては、ちょっと気になる所だ。じーっと見つめていると、野薔薇に抱き付いていた素良がジロッと睨んできた。
「何見てるのさ、スケベ遊矢」
「なっ!スケベ!?どういう意味だよ!」
「そのまんまさ。女の子をじーっと見てると勘違いされちゃうよぉ?」
「ち、違っ!」
「…スケベってなぁに?」
「変態って事さ」
「…遊矢、変態?」
「違うよぉ!」
大きな瞳で見つめられ、可愛い声で「変態?」と言われるなんて恥ずかしい。野薔薇の瞳は真っ直ぐ遊矢は射抜いている。素良は素良でんべーっ!と舌を出して、遊矢を馬鹿にしている。
「ねっ!ねっ!野薔薇先輩!僕とデュエルしてよ~!良いでしょ~!」
「駄目」
「えぇー!?なんでさー!」
頬を膨らませてぶーぶーと言う素良に野薔薇は頭を撫でる。野薔薇からすれば落ち着かせる為に撫でているのだが、素良の機嫌は更に下がっていく。
「(また子供扱い!)」
いっつもそうだ。背がちっちゃいから、年下だからと彼女はやたら頭を撫でる。彼女から見れば自分は未熟な子供なのだろう。
すると、野薔薇はスッと遊矢を指差した。
「遊矢とデュエルするから」
「えっ!?俺!?」
「嘘!?」
こくんと野薔薇は頷くと、じっと遊矢を見つめ、一言。
「…だめ?」
大きな瞳で見つめられ、こてりと首を傾げる野薔薇。生気のない瞳から「だめなの?」と訴えてくる。直接脳内に話しかけている状態だ。それに遊矢は「うっ」と胸を押さえる。断ったら何か駄目な気がする。何かを失いそうだ。
…結局遊矢は
「よろこんで…ッ!」
デュエルを受けた。
「はい!デュエルディスク!」
「ありがとう」
柚子から渡された貸出し用デュエルディスクを受け取る野薔薇。実は素良も貸し出そうとしてのだが、先に柚子に越されてしまったので、ぶすくれている。
コツコツと靴音を鳴らして、デュエルフィールドに入った野薔薇は辺りをキョロキョロ見回す。物珍しいのだろうか。
「野薔薇はアクションデュエル初めて?」
「あくしょん…でゅえる?」
「あ、知らないのか。じゃあ俺が教えてあげるね!」
「ん」
遊矢の説明はこうだ。
・質量装置によって作られたフィールドでデュエルをする(アカデミアも同じ)。
・フィールド内にアクションカードと呼ばれるカードがばらまかれる。
・アクションカードは手札に1枚しか入れられないが、使った後すぐに取るのは良し。
・自分もしくは相手のターンに、何枚も使ってよし。
・モンスターを使ってカードを探すも良し、モンスターによる邪魔も良し。
「…という事なんだけど…わかった?」
「ん…実践すれば何とか?」
「そうだよね。見てないからまずは実践で!柚子ー!フィールド頼むー!」
『オッケー!』
管制室にいる柚子に声をかければ、柚子は機械を操作し、1つのアクションフィールドを選ぶ。
『行くわよ!アクションフィールドオン!フィールド魔法『極楽天上』!』
ピッとスイッチを押せば、2人以外誰もいないフィールドが一気に変わっていく。
白い空に眩い太陽、神話に出てきそうな柱が何本も立ち、2人は雲の上に乗っていた。光と天の祝福世界、極楽というだけはあり、野薔薇は「ふぉ…」と呟きながら、自分が立っている雲をしゃがんで叩いてみる。もふもふと感触が跳ね返ってきた。
ぽふぽふと何度も夢中になって雲を叩く野薔薇の姿に遊矢は思わず「アハハ」と苦笑いするが、初めてだからしょうがないと割り切る。
『野薔薇先輩頑張れー!遊矢ー!野薔薇先輩傷つけたらタダじゃおかないからねー!』
「お前!今日は随分と俺に対して口悪くないか!?」
『だって僕、野薔薇先輩の味方だもん!』
『私もー!』
『俺もー!』
『ご、ごめんね遊矢お兄ちゃん!今日は僕も野薔薇さんの味方!』
『遊矢ー!泣かせたら許さないからね!』
「俺の味方はいないのか―――!!」
青と黄色のポンポンを持って野薔薇を応援する気満々の素良とすっかり野薔薇に懐いた子供達と柚子に裏切られた遊矢。ショックでその場で体育座りで落ち込むが、野薔薇が近寄ってきた。野薔薇は落ち込む遊矢の後ろに立つと手を伸ばし、ぽんっと遊矢の頭に手を乗せた。
「ふぇ?」
「…遊矢…いい子いい子…」
なでなで。泣いている子供を落ち着かせる様な優しい手つきで、遊矢を撫でる野薔薇。身に染みる様な優しさに遊矢はうりゅりと目を潤ませる。
「うわぁ――――ん!野薔薇だけだよ!俺の味方――――!」
思わず野薔薇の腰に腕を回して抱き付く遊矢。野薔薇は何も言わず「いい子いい子」と撫で続けるだけだ。それを観戦ウィンドウで見ていた素良が怒った。
「あ―――――!!ずるい!遊矢!野薔薇先輩に変な事したら僕より怖い人達来るからね!!」
一方、その頃融合次元…。
「はっ!何だか素良に俺呼ばれた気がする!」
「スターチスさん!そんな事言ってる場合じゃなぴぎぃいいいいいいいい!」
「トト―――――ッ!!くっそ!モモとクロユリさんはずっと野薔薇ちゃんの名前呟いて使えねぇし…!誰かユーリとスターヴ・ヴェノムを止めてくアッ―――――!!」
話は戻ってスタンダード。
「それじゃあ!行くよ野薔薇!」
「ん」
すっかり元気を取り戻した遊矢と野薔薇は向き合い、デュエルディスクを構える。そしてお決まりのコールを口にする。
「戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」
『モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡る!』
『見よ!』
『これが!』
『デュエルの最強進化系!』
『アクショ――――ンッ!』
「「デュエル!」」
YUYA VS NOBARA LP:4000
掛け声が終わると同時に極楽天上内にカードがばらまかれる。今回のコールは野薔薇は知らないので、不参加だ。
「さてさて。先程は情けない姿をレディの前で見せてしまって大変申し訳ありませんでした」
「?」
突然口調が変わり、右手を左胸に当てお辞儀をする遊矢に首を傾げる野薔薇。だが遊矢は続ける。これが彼なりのスタイルだ。
「心優しきレディへの感謝を込めまして、この場お譲り致します」
「…いいの?」
「えぇ、勿論。エンタメデュエリストたるもの、相手への感謝は忘れない物ですよ」
ぱちん。なんて星でも出てきそうなウィンクをした遊矢に野薔薇は「??」と首を傾げる。観戦ウィンドウで素良がそれを見て「本気でデッキ調整しようかな…?」なんて呟いていた事など知らずに。
「それじゃあ遠慮なく…?」
野薔薇が手札に触れた。
「手札の『ヘカテリス』の効果。メインフェイズに手札から墓地に送る事で、デッキから永続魔法『神の居城-ヴァルハラ』を1枚手札に加える」
金色の鳥のようなモンスターがデッキから野薔薇へ1枚のカードを渡す。
「先攻譲ってくれたお礼に教えてあげる。ヴァルハラは自分フィールドにモンスターがいない時、手札から天使族モンスターを特殊召喚出来る」
「レベルに関係なく特殊召喚だって!?」
「ん。じゃあ続ける。手札の『堕天使イシュタム』の効果。このカードと『堕天使』カードを1枚墓地へ送る事で、2ドロー出来る。『イシュタム』と『堕天使の戒壇』を墓地へ送って2ドロー。更に『堕天使 アムドゥシアス』の効果。このカードと『堕天使』カード1枚送って、墓地の『堕天使』カード1枚を手札に加える。『アムドゥシアス』と『スペルビア』を墓地に送って、『堕天使の戒壇』を手札へ」
淡々とプレイングする野薔薇に遊矢は思わずポカンとする。デュエルディスクの画面で見たが、イシュタムはレベル10、アムドゥシアスはレベル6、スペルビアはレベル8とかなりレベルの高い大型モンスターを野薔薇はポイポイと墓地へ送る。しかし堕天使にとって、墓地も戦術の1つ。
少し飛ばして行こうではないか。
「魔法カード『堕天使の戒壇』を発動。自分の墓地にいる「堕天使」を1体選んで守備表示で特殊召喚する。墓地にいる『堕天使 スペルビア』を特殊召喚」
堕天使 スペルビア ☆8 DEF/2400
現れたのは黒い体と茶色の翼を持った堕天使。このモンスターの能力は堕天使にとっては嬉しい効果だ。
「『スペルビア』の効果。墓地から特殊召喚に成功した時、スペルビア以外の墓地にいる天使族モンスターを特殊召喚出来る」
「そっか!高レベルモンスターを送っていたのはスペルビアの効果を最大限引き出す為…!」
「『堕天使 イシュタム』を攻撃表示で特殊召喚」
堕天使 イシュタム ☆10 ATK/2500
スペルビアが左右に体を動かすと、墓地から妖艶な堕天使・イシュタムが蘇る。クスクスと笑う姿は色気たっぷりで、観戦ウィンドウにいたフトシが「痺れる程綺麗だぜー…」と見惚れていた。それに気づいたイシュタムがヒラヒラと手を振って、笑顔で応えるとフトシは目をハートにして「痺れる――――!!」と歓声を上げた。
「そして『クリバンデット』を通常召喚」
『クリバー!!』
ぽんっと軽い音と共に現れたのは黒い毛玉。黄色いバンダナを巻き、左目に眼帯をしたモフモフだ。ただちょっと目つきが悪いのが難点だが、それも愛嬌。野薔薇の前に浮かぶと鋭い爪を遊矢に向け、『なぁに野薔薇様に手ェ出そうとしてんだアァン!?』と思いっきり睨み付ける。爪でぶっ刺す気満々である。
だが、
「カードを1枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ、クリバンデットは召喚に成功したターン、リリースする事でデッキトップから5枚を見て、その中から1枚選んで手札に加える。…んと、魔法カード『堕天使の追放』を手札へ。残りは全部墓地」
『クリッ!?』
『え?自分これだけ!?』と野薔薇を見るクリバンデットだが、野薔薇は「ばいばい」と手を振っている。涙ぐみながらクリバンデットは墓地へ行った。
野薔薇 手札:5⇒2(うち1枚は『神の居城-ヴァルハラ』) LP:4000
堕天使イシュタム(攻撃表示) 堕天使スペルビア(守備表示) セット1
「遊矢、先に言っておくけど、一部を除いて堕天使カードにはある共通効果があるの」
「共通効果?」
「1ターンに一度、ライフを1000払う事で、墓地にある『堕天使』魔法・罠カード1枚を選んで効果を『適用』する効果」
「適用って…」
「この効果を使えば、魔法・罠にかかれたコストを払わずに効果だけを使える。適用したカードは適用後、デッキにかむばっく」
「効果だけを!?」
野薔薇のフィールドには守備力2400のスペルビアと攻撃力2500のイシュタム。手札には自分フィールドにモンスターがいない時効果が出来る永続魔法のヴァルハラが1枚と他。今、言った様に堕天使の効果を使えば、1ターンに1度だが墓地の罠・魔法の効果を使える。
彼女が無表情な事もあり、その考えを読む事は難しいが、先攻を譲った遊矢も気を引き締めなければならない。
「俺のターン!ドロー!野薔薇!見せてあげる!俺のとっておき!」
「とっておき?」
「俺はスケール1の『星読みの魔術師』とスケール8の『時読みの魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!」
2枚のカードがプレートの両端に置かれ、デュエルディスクが七色に光り、白と黒の魔術師が光の柱をなる。
「はわ…」
「これでレベル2~7のモンスターが同時に召喚可能!と、その前に『EM ソード・フィッシュ』を通常召喚!」
EM ソード・フィッシュ ☆2 攻撃力600
現れたのはその名の通り、剣になった水色の魚。赤いサングラスと蝶ネクタイをつけていて、どこか愛嬌がある。
「ソード・フィッシュの効果!このカードが召喚に成功した時、相手フィールドにいる全てのモンスターの攻撃力と守備力を600下げる!」
空から降ってきた剣がスペルビアとイシュタムの周りを囲む様に地面に突き刺さる。
堕天使イシュタム 攻撃力2500⇒1900
堕天使スペルビア 守備力2400⇒1800
「あう…下がっちゃった…」
「えへへ、ごめんね。でもお待たせ!行くよ!揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け!光のアーク!ペンデュラム召喚!」
天空に描かれた魔法陣から2つの光が降りてくる。その光に野薔薇は目を奪われた。
「レベル4『EM ヘイタイガー』!そしてレベル7!雄々しくも美しく輝く二色の眼!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」
EM ヘイタイガー ☆4 攻撃力1700
オッドアイズ・ペンデュラム ☆7 攻撃力2500
現れたのは赤い兵隊服を着た二足歩行の虎と赤い体に赤と緑のオッドアイズを持ったドラゴン。リリースも無しに現れたオッドアイズは大きな雄たけびを上げる。
見た事もない召喚法に見た事もないカード。見た事ない素敵な事に野薔薇は少しだけ微笑んだ。
「ペンデュラム…きらきら…素敵…」
「!」
小さく微笑みながら、パチパチと拍手を送る野薔薇。まるでサーカスを見て心を奪われた子供の様で、拍手を送られたオッドアイズとヘイタイガーは思わず「いやぁ…」と照れる。遊矢は野薔薇の小さな微笑みに胸がとくりと鳴ったのを感じながらも、ぶんぶんと頭を振って、考えを振り払う。
「(ダメダメ!集中集中!)ソ、ソード・フィッシュの効果!自分がモンスターゾーンに存在して、自分がモンスターの特殊召喚に成功した時!相手フィールドのモンスターの攻撃力と守備力を600下げる!」
また剣が降り、2体を囲む剣が増える。スペルビアは無表情だが、イシュタムは少し苛立っている様だ。
堕天使イシュタム 攻撃力1900⇒1300
堕天使スペルビア 攻撃力1800⇒1200
「また下がった…」
「あ、ご、ごめん!」
しょぼんと落ち込む野薔薇に思わず遊矢が謝る。何だか下げた張本人ならぬ張本魚であるソード・フィッシュも申し訳なさそうだ。
「え、えっと!と、とにかくヘイタイガーでスペルビアを攻撃!」
爪を立ててスペルビアに向かっていくヘイタイガー。しかしこのままで終わる野薔薇ではない。
「リバースカードオープン」
ふわりとイシュタムが野薔薇に近づくと、彼女の右頬に手を添え、ちゅっと左頬にキスを落とした。
「んなっ!?」
「あ――――っ!!」
「痺れる程羨まし―――――!!」
驚く遊矢、絶叫を上げる素良とフトシ。3人の反応にイシュタムはクスクスと笑う。素良に関してはグルルルと獣の様に唸り、もうフィールドに突撃しそうだ。
野薔薇は「ほわぁ」と言うと、デュエルを続ける。
「罠カード『背徳の堕天使』。自分の手札及び自分フィールドから表側表示の「堕天使」モンスターを墓地に送って発動。フィールドのカードを1枚破壊する。私はイシュタムを墓地に送って、ヘイタイガーを破壊」
バサリとイシュタムが翼をはためかせ、突風を起こすとヘイタイガーに直撃し、爪がスペルビアに届く前に破壊された。イシュタムは仕事が終わったと言わんばかりに墓地へ行く。さっきのは別れのキスだったらしい。
「ッオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンでスペルビアを攻撃!時読みと星読みのP効果で自分のPモンスターが戦闘する時、相手は罠と魔法は発動できない!螺旋のストライクバースト!」
オッドアイズが螺旋状の炎を吹き、スペルビアは炎に包まれ破壊される。
「ソード・フィッシュで野薔薇を攻撃!」
『遊矢!傷つけないでよー!』
「…や、優しくね?」
こくりと頷いたソード・フィッシュは素早い動きで野薔薇の足元まで泳ぐと、ぺちっと鰭で優しく叩き、遊矢の元へ戻っていく。
「?」
首を傾げる野薔薇。しかし観戦ウィンドウの素良は満足そうだった。
野薔薇 LP:4000⇒3400
「これで俺はターンエンド!」
遊矢 手札:6⇒1 LP:4000
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン(攻撃表示)、EMソード・フィッシュ(攻撃表示)
Pゾーン 星読みの魔術師(スケール1)、時読みの魔術師(スケール8)
「私のターン、ドロー」
野薔薇 手札:2⇒3
「魔法カード『堕天使の追放』を発動。デッキから『堕天使の追放』以外の『堕天使』カードを手札に加える。『堕天使イシュタム』を手札に。そして永続魔法『神の居城-ヴァルハラ』を発動」
「最初にヘカテリスの効果で手札に加えた天使族専用の永続魔法…!」
「自分フィールドにモンスターがいないので、効果発動。今、『イシュタム』を手札から特殊召喚」
またもやふわりと妖艶な美女堕天使が手を振りながらやってくる。
「魔法カード『死者蘇生』を発動。私の墓地にいる『堕天使スペルビア』を守備表示で特殊召喚。スペルビアの効果で墓地からアドゥムシアスを蘇生。アドゥムシアスの効果。LP1000払って、クリバンデットで送った墓地の罠『魅惑の堕天使』を選択し、効果適用。エンドフェイズまで相手のモンスターのコントロールを得る」
「コントロールを!?」
「おいで、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」
野薔薇 LP:3400⇒2400
野薔薇がちょいちょいと手でオッドアイズを招く。何も警戒していないオッドアイズは『なになに~?』と無防備に彼女に近づいていく。
「オッドアイズ!?」
「デュエル終わったら、お菓子あげる。だから手伝って」
『ギャオ―――!(わーい!)』
「オッドアイズゥウウウウウ!?」
お菓子をくれると言った野薔薇にオッドアイズは喜びの声をあげ、彼女のフィールドに立った。お菓子と主人、どっちが大切かと言えば…遊矢も大切だが、オッドアイズ自身お菓子も欲しいのだ。仕方ない様な、そうではない様な…。
「俺とお菓子どっちが大切なんだよ!!」
『ギャウ!』
オッドアイズはすりすりと野薔薇に顔を寄せる。…どうやらお菓子を選んだらしい。
「オッドアイズの浮気者――――!!」
「あ、『魅惑の堕天使』デッキに戻さなきゃ」
「野薔薇の泥棒猫――――!!」
浮気者だの泥棒猫だのぴーぴー騒ぐ遊矢を尻目に野薔薇はちゃんと効果の処理をする。デュエリストとして、効果の処理は大切だ。
堕天使イシュタム 攻撃力2500
堕天使アドゥムシアス 攻撃力1800
堕天使スペルビア 守備力2400
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力2500
「…バトル。アドゥムシアスでお魚さんを攻撃」
アドゥムシアスがパカラッパカラッと蹄音を立てながら、ソード・フィッシュに近づくと、ぺいっと前足ソード・フィッシュを蹴った。どうやらさっき野薔薇に手加減のダイレクトアタックをしてくれた事へのお返しらしい。
遊矢 LP:4000⇒2800
「イシュタムでダイレクトアタック」
「ちょ!アクションカード!」
迫りくる美女に遊矢は慌てて、アクションカードを探そうとするが、そこにアムドゥシアスの背に乗った野薔薇が妨害する。
「の、野薔薇!?」
「…遊矢、デュエル始める前、ルール説明した。…モンスターでの妨害良いって…」
「そうだった――――!!」
人間である遊矢の足とアムドゥシアスの翼の速さを比べると、その差は一目瞭然。アクションデュエルは『モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡る』。つまり、モンスターに乗っての妨害もありだと言っている様なもので…。
「れっつごー、イシュタム」
スッパァアアアアアアンッ!!
最高速度で近づいてきたイシュタムのビンタを遊矢は思いっきり喰らった。
「痛ってェエエエエエ!!」
『うわぁ…強烈ゥ…』
『アレは痛い…』
思わず観戦ウィンドウにいたメンバーもドン引きする様な良いビンタだった。
遊矢 LP:2800⇒300
「最後、オッドアイズ」
『ギャウ!』
お菓子の為――――!とオッドアイズがドシドシと走ってやってくる。しかし遊矢を目の前までやってくるとピタリとオッドアイズの足は止まった。
「…オッドアイズ?」
『ギャゥウウウン…』
しょぼん…。落ち込むオッドアイズに構えていた遊矢もハッとした。
「そっか…そうだよな…。俺達ずっと一緒だったもんな…」
『ギャウ…』
苦しい時も、辛い時も、楽しい時もずっと傍にいてくれたオッドアイズ。ペンデュラム・ドラゴンになる前からずっと見守ってくれた優しいドラゴン。そんな優しい子が遊矢を攻撃出来る訳が…
「オッドアイズ…」
『ギャウ…(遊矢…)』
攻撃出来る訳が…!
「オッドアイズ、シュークリーム追加してあげる」
『ギャゥウウウウ――――!!!(シュークリーム――――!!)』
「オッドアイズの裏切者ォオオオオオオッ!!」
あった。
遊矢 LP:300⇒0
Wiener NOBARA!
「さっすが野薔薇先輩!見事な勝利だったよ!」
「いぇーい」
ぱちんとハイタッチする素良と野薔薇。野薔薇を囲む子供達。向かい側では遊矢が床に座り込んで、のの字を書き拗ねている。オッドアイズに裏切られたのが結構ショックだったらしい。だがカードの効果だし、しょうがないのも事実だ。
きゃっきゃと子供達に囲まれていた野薔薇は遊矢を見ると、子供達に「ごめんね?」と言うと彼に近づき、遊矢の後ろに来るとしゃがんだ。
「…遊矢、私、勝っちゃダメだった?」
「ち、違うよ!?」
野薔薇の言葉に遊矢は慌てて振り返る。後ろにいた野薔薇はしょぼんとしており、遊矢の胸に途端に罪悪感がやってきた。
「ま、負けたのは俺が未熟だっただけだし!野薔薇が俺より強かっただけだよ!」
「…遊矢…元気、出た?」
「あ…」
こてんと首を傾げる野薔薇の言葉に遊矢は気づいた。
「(そっか…負けて落ち込んでたら、相手も心配して笑顔になれないよね…)」
楽しいデュエルは、終わっても楽しい気持ちになる筈だ。それがどうだ?今、野薔薇は遊矢を心配して、笑顔ではない。さっきペンデュラム召喚を見せた時は小さくも微笑んでいたのに…。
―遊矢はパンパンッ!と自分の手で両頬を叩き、喝を入れるが、さっきイシュタムにビンタされた部分がまた痛み始めた。
「痛って―――――!!」
「…だいじょうぶ?」
そっとひんやりとした小さな手が遊矢のジンジンと痛む頬に添えられる。ジンジン痛んで熱い頬にひんやりとした手の温度が丁度いい感じだ。ふにゃんと遊矢の顔が蕩ける。
「野薔薇の手…冷たくてきもちぃ~…」
「そぉ?」
野薔薇は初めて自分の手が冷たい事を知った。
「(冷たいんだ私の手…)」
「野薔薇?どうし」
スッパァアアアアアアンッ!!
「痛った!?」
「いつまで触ってんのさ遊矢…」
「素、素良!?」
ゴゴゴと怒りのオーラを背負い、柚子から借りたのか彼女のハリセンを担いだ素良はギロリと遊矢を睨み付ける。何か嫌ーな予感に遊矢は顔が青ざめていく。
「そ、素良…?落ち着こう…!話せば分かる…!」
「話せば分かるだって?ふざけないでよ。僕達はもう終わったんだ…!」
「素良…っ!」
素良はハリセンを振り上げると、
「遊矢…御命頂戴!」
「嫌だァアアアアア!!」
逃げる遊矢に追いかける素良。ぽつんと座る野薔薇は首を傾げ一言。
「ちわげんか?」
「「違うッ!」」
野「ルシフェル…引けなかった…」
ル「貴様ァ!!」
・柊柚子&紫雲院素良
野薔薇にメロメロ組。素良は野薔薇好き好き過激派。
・榊遊矢
野薔薇の無表情が気になるエンタメデュエリスト。彼女の堕天使にボッコボコにされたが、自分の弱さに気づき、向上心を高める。