リリカル・ルスキニア、リリカル・ルスキニア…言いにくいぜ!
漫才フェイズ -好きって素敵-
野「好きは素敵」
遊「どうしたの?急に?」
野「テレビでやってたの。好きは素敵って」
遊「そっかぁ…確かに好きは素敵だよね!」
野「遊矢好き」
遊「えっ!?」
野「遊矢はエンタメ好きだから、素敵なの」
遊「あ、そういう事ね…」
野「皆、個性があって好き。だから素敵」
「ヴィーちゃん、今日はどうしようか」
「んにゃー…」
はろぉ、野薔薇です。一昨日遊矢君と知り合って、デュエルで勝っちゃいました。まさか素良と再会しちゃうなんて思ってもなかったよ!でも元気そうで何よりだ。
そして今日でスタンダードもとい赤馬邸に住んで2週間。相変わらず中島さんのお料理は美味しいです。
何とか路上生活しないで済んでいるけど、ふと気になることが1つ。
「皆…大丈夫かなぁ…?」
「んみゃー…」
大きな済んだ青空の向こうに皆がいる融合次元があるのかな…?
「野薔薇ちゃんマジでカムバックッッッ!!」
「ふぇーん…今日で2週間ですよぉ…」
頭を抱えて座るスターチスにぐすぐす泣くトト。お互いに何故かボロボロ。理由は1つだけ。
「ユーリが荒れ放題で俺達じゃなにも出来ねぇし…」
「デニスさんが何とか機嫌直そうとしてるみたいなんですけど…駄目っぽいです」
「アイツ…気難しいからなぁ…」
ハァとお互いにため息をつく男子2人。ここはアカデミアにある野薔薇隊専用屋上庭園。2人は芝生に座りながら、思い出していた。
――― 野薔薇がいなくなった、と言うニュースはアカデミア中に広がった。勿論原因である『次元移動中の事故』の話も広がっており、野薔薇ファンが阿鼻叫喚状態で、色んな人達に影響を齎している。
中でも酷いのは野薔薇信者・モモ、野薔薇溺愛マッド・クロユリ、そして彼女の相方であるユーリの3人だ。
前者の2人はずっと野薔薇の名前を何度も繰り返しては部屋に閉じこもったままで、後者の1人はエースモンスターを使って周りに八つ当たりをしている。スターヴ・ヴェノムもユーリとシンクロしているのか、相当怒っている様で、多数ある口を使ってアカデミアの廊下の柱を食べるわ、壊すわ、芝生を腐らせるわ…もう滅茶苦茶だ。ユーリも目が既に瞳孔が開いており、「野薔薇どこ」やら「離れるなんて許さない」だとかブツブツ呟いては破壊しまくっている。今は落ち着いたのか、デニスが入れた紅茶飲んで、(超合金の壁で出来た)反省室で拗ねている。
「にっしても…本当にどこ行っちゃったんだろ、野薔薇ちゃん。…生きてるよね?」
「……と、思いたいです」
今頃、その彼女がスタンダードの赤馬邸で中島特製パンケーキを頬張っている事など、2人は知らない。
「そう言えば素良がスタンダードへ特別任務に行ったって知ってるか?」
「話は聞いてます。すごいですよね~最年少でしょう?」
「素良は真面目だからな。努力はするだろ」
「アイツは結果に拘る奴ですから」
「そうなんだー…って、え?」
「モ、モモさん!?」
いつの間にか隣に座っていたモモ。その可愛らしい顔はげっそりとしており、明らかに元気がない。引き籠ってから約2週間ぶりの再会だ。そのやつれ様にスターチスが恐る恐る声をかける。
「だ、大丈夫か?お粥食べるか…?」
「玉子豆腐…」
「あ、僕のお弁当に入ってますけど…食べます?」
そっとトトがお弁当箱を渡すと、モモは受け取って玉子豆腐をチビチビと食べ始めた。卵の味が口に広がっていく。
「お前…2週間どう過ごしてた?」
「ひたすら野薔薇様の秘蔵コレクションに話しかけてました」
「おぉ…重傷…」
「クロユリさんはもっとひどいですよ。お手製の野薔薇様人形を抱えてブツブツ言ってましたから」
「どっちもどっちな様な…」
「話戻しますけど、紫雲院は結果に拘ってますからねぇ」
お弁当箱の中身を全て食べきったモモは「ご馳走様」と箱をトトに返す。スターチスはモモの言葉に「あぁ!」と思い出した様に声をあげた。
「お前と素良って同期だっけ?」
「えっ、そうなんですか!?」
「えぇ。同期ですよ。後期の最初まで一緒でしたわ」
「仲が悪いーって話、知ってるぜ?お互い成績優秀者になる為に頑張ってたんだろ?」
「まぁ…私からすれば突っかかって来る紫雲院を懲らしめたくて…なんですけど」
モモは、話し始めた。
『ねぇ!そこのリボンの君!』
リボンと言われて、モモは振り返った。そこには何やら不機嫌そうな顔をした素良が立っており、モモは首をかしげた。
『何か御用?』
『君だよね?モモって』
『そうですけど?』
実はモモはトトやスターチスと違い、野薔薇隊に入る前から「モモ」だった。
『今回のテスト…君が1位なんでしょ?』
『えぇ、仰る通りですわ。2位の紫雲院君』
ハッと鼻で笑うモモに素良はカチンと来たのか、顔を歪ませている。元々モモはあまり素良が好きではなかった。自分よりも小さい物が調子づいている(と思っているだけ)人間が嫌いだからだ。
だが、それは素良も同じだった。
『ふっ…なぁに?たった1回勝っただけでしょ?今まで2位のモモちゃん?』
『!』
素良の言う通り、モモの成績は今まで素良に次いで2位だった。それが今回勝ったのだが、ちゃんとこうして話すのも顔を合わせるのも初めてだ。今まではずっとお互い別の部隊で授業をし、お互いの名前だけは憶えていた。
――― いずれ潰す相手として
『『覚悟しとけ。お前を潰すのは僕/私だ』』
以来、素良とモモは、モモが野薔薇隊に入る後期の初めまで、毎回毎回争っていた。
「(同族嫌悪…)」
「(モモさんと素良君…似てますよね…)」
「何か失礼な事考えてません?」
「「いやいや」」
あざとい素良と可愛らしいモモ。どっちも己の可愛さを分かっていて、人の警戒心を解くのが得意だ。そして野薔薇が好き過ぎる『野薔薇好き好き(過激派)』。デッキも可愛らしいファーニマルとシャドールで、融合召喚をするとその姿が一変する。
スターチスの言う通り、一種の同族嫌悪かもしれない。
「…野薔薇様は何処へ…はっ!まさか別次元の男にあんな事やそんな事を…!?きっとそうですわ!嗚呼!可哀想な私の野薔薇様!クズな男に破廉恥な事をされて私に助けを求めているのですね!!ぐへへ…待っていてください野薔薇様!この貴方の忠実な側近たるモモが助けに行って、そのままハネムーンですわ―――!どこが良いでしょう!?ハワイ?グアム?沖縄も良いですわね―――!!」
「お兄さん、お前の謎の想像力の強さにビックリだよ」
「あんな事やそんな事…って何ですか?」
「トト、お前は知らんで良い」
「きゅ?」
いつの間にやらスタンダードの旅行雑誌を取り出して、ぐへへと口の端から涎を垂らしながら雑誌に食い入るモモ。変態な彼女にスターチスが引くが、とりあえずトトをモモの傍から離す。これ以上聞いたらトトが穢れる。
すると、後ろからサクッと芝生を踏む音が聞こえた、と同時にじゅわりと何か溶ける様な音も聞こえ、トトとスターチスは跳ね上がった。
「……ねぇ……今、野薔薇って言った……?」
底冷えする様な低い声にトトとスターチスはギ・ギ・ギと油の切れたロボットの様に後ろを振り返った。後ろには―――― 紫色の鬼と龍が立っていた。
「「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」」
「あら、ユーリ…って芝生溶けてますけど!?」
恐怖から女の子の様な悲鳴を上げる男子2人と芝生の一部が溶けている事に初めて気付いたモモ。そうだった。モモは今まで引き籠っていたからユーリの現状を知らなかったんだった。
ユーリが一歩踏み出すと、踏まれた部分がじゅわぁ…!とドロドロに溶けてしまった。彼の龍、スターヴ・ヴェノムの影響か。スターヴ・ヴェノムは毒と飢えを生まれながらに持っている。故に芝生を溶かすくらいは容易いのだが、ユーリの感情と繋がって、ユーリ自身にまで影響を与えている。
昨日のユーリはこんな事になっておらず、スターヴ・ヴェノムだけがアカデミア中央庭の物を片っ端から食べたり、溶かしてただけなのに!!
「ユ、ユーリ…?」
「ねぇ、野薔薇どこ?どこって聞いてるんだけど?」
「お、落ち着け…落ち着けよ…!」
(なぜだ。確かデニスが反省室で彼の機嫌を取っていた筈なのに!)とスターチスは思ったが、ふとスターヴ・ヴェノムが何かを咥えている事に気付いた。
…恐らくデニスであろう人の下半身がスターヴ・ヴェノムの口からぶらんと出ていた。
「デニ――――スッ!?」
「ぴゃああああああ!!デニスさ―――ん!」
「あら…惜しい奴を無くしましたわね…」
「そう言ってる場合か!?」
「野薔薇どこ?」
「お前は取りあえずハウス!!」
ツッコミを入れつつも、年下のトトとモモを背に庇うスターチス。兄貴分の鑑だ。ジリジリと迫ってくるユーリ。スターヴ・ヴェノムは軽くモゴモゴと口を動かした後、ぺっ!とデニスを吐いた。デニスが無事な芝生の上に落ちたのは幸いだった。彼の上半身はスターヴ・ヴェノムの唾液でベットベトだった。うわ、ばっちぃ!
「デニス―――!生きてる―――!?」
「…いぇーす…」
「あ、良かった!お前、何でユーリを押さえてなかったんだよ!」
「…だって…野薔薇ファンクラブが嘆いたのを聞いたから…ユーリ思い出しちゃったみたいで…」
「ファンクラブかぁあああああ!?」
ヒュンッ!とスターヴ・ヴェノムの尻尾がスターチスの横に飛んできた。慌てて2人を抱えて避けたが、完全に2人は怯えていた。いくら何でも怖い!
一方でユーリはずっと「野薔薇どこどこ」と言い続けており、スターヴ・ヴェノムもそれに合わせてグルグル唸る。
「ユーリ!話し合おう!話し合うんだ!」
「野薔薇野薔薇野薔薇野薔薇野薔薇野薔薇野薔薇野薔薇野薔薇野薔薇野薔薇野薔薇野薔薇野薔薇野薔薇」
「話聞いてぇ!!」
もはや聞く気も起きないらしい。
「野薔薇なんでいなくなっちゃったのさ。馬鹿じゃないの?君は僕の相方なんだよね?僕の相方なんでしょ?だったら僕の傍にいなきゃダメでしょ?大体クロユリも馬鹿じゃないの?次元転送装置作ったのお前だよね?ならちゃんと管理するのもお前の役目だろ。殺すぞ。嗚呼野薔薇野薔薇野薔薇野薔薇野薔薇。僕の野薔薇。可愛い野薔薇。僕の友達。どこどこどこどこどこっ!!!」
『ギュルシャアアアアアアアッ!』
「駄目だこりゃ!!」
怒り狂うユーリとスターヴ・ヴェノムを見て、嗚呼もう仕方ない!とスターチスはポケットからある物を取り出す。それは長く細い筒状の物で、片側を口に付けると、フッ!と息を吹きかけると、ピュッ!小さな物が発射され、その物体はぷすりとユーリの首に刺さった。
「あっ…」
すると、ふらっとユーリが倒れた。装着者が意識を失ったのを察知し、デュエルディスクの機能が停止した事でスターヴ・ヴェノムも消える。
倒れたユーリと消えたスターヴ・ヴェノムを見た野薔薇隊はホッと安堵の息を吐き、座り込んだ。
「た、助かったあ…」
「スターチス…今のって…」
「あ、これ?吹き矢。即効性の眠り薬を塗ったやつだよ。ユーリが暴れ出した頃から作り始めてね。いやぁ~まさかここまで威力があるとは!」
スターチスがユーリの元に近づき、彼がユーリの首元から何かを抜く。それは細い針の様な物。針に薬をもう仕込んでいたという事だ。すやすやと眠るユーリの口元に手をあて、寝ている事を確認する。
「良かった…薬の加減出来てて」
「すごいですね…ユーリさんが一発で…」
「元々睡眠不足だったんだろうよ。野薔薇ちゃん不足で、よっこいしょ!」
スターチスがユーリをおんぶして持ち上げる。すやすやと眠る彼を穏やかな目で見るスターチスの顔にもう恐れはない。スターチスからすればユーリも年下であり、彼の性格を理解はしている。だからこそ、今回は怒る必要性もないのだ。
「デニスー、動ける様になったら風呂入っとけー。スターヴ・ヴェノムの唾液は強力な痺れ薬みたいだからなー」
「おーけー…」
「デ、デニスさん、タオルと車椅子持ってきましょうか?」
「おねがい…」
「トトー、ゴム手袋も用意しとけー。拭いたタオルに素手で触ったらデニスの二の舞になるぞー」
「は、はい!」
「手伝いますわー」
とたとたと走っていくトトとモモを見送って、スターチスはユーリの部屋へと向かう事にした。背中では穏やかな寝息が聞こえる。
「すぅー…すぅー…」
「…まったく、寝顔だけは可愛いんだから」
苦笑いするスターチスの乾いた笑い声が長い廊下に響いた。
一方、スタンダード次元。
「(もきゅもきゅ)」
「野薔薇、美味しいか?」
「ん。中島さんのパンケーキ美味しい(もきゅもきゅ)」
「んにゃー!(もぐもぐ)」
楽しいおやつタイムをしていたとさ!
・ヴィーちゃん
正式名称「ギガ・ヴィーナスフライトラップ」。ついに復活し、現在植木鉢で生活中。当初は零児にもビビられていたが、今では平気。最近では中島の料理もお気に入りらしい。