野「零児」
零「何だ」
野「私のお洋服って、何であんなにフリフリしてたの?(フリル過多のゴスロリなど)」
零「アレはクロユリとやらの趣味だな」
野「じゃあ今のは?(カーディガン&ワンピース)」
零「……これが世間一般な服だ」
野「そうなの?」
零「そうだ」
野「じゃあこれなぁに?(森ガール雑誌)」
零「…………今度の事業の参照に…」
野「そっか」
零「(決して今度着せてみようなどと思ってはない…筈)」
「にゃーにゃー!」
ててーん!とヴィーちゃんが見せびらかすのはキャンディポット。赤、青、緑、黄色、ピンク。カラフルな飴玉がたくさん入ったビンをヴィーちゃんは「見て見て!」と見せてくる。最近、飴玉にはまっているのかビンに詰めている。
「ヴィーちゃん、飴玉好きね」
「にゃ!」
根元からしゅるしゅると蔓を出して、きゅきゅと器用にビンの蓋を開けると、ヴィーちゃんは飴玉を1つ私に差し出してきた。『食べていいよ!』という事だろう。掌に乗った水色の飴玉を口に含んで、ころころ転がす。ん、ソーダ味!
「ありがとう、ヴィーちゃん」
「にゃー!」
お礼に栄養水が入った如雨露で、お水をあげる。それにしても飴玉大きいなぁ…。いつになったら溶けるんだろ…。
2年前、黒咲隼は可笑しな出会いをした。
それは瑠璃がジュースを買いに行って、黒咲がデパートのベンチで待っている時だった。隣に小さな少女がちょこんと座っていた。
『なっ…』
(いつの間に…)黒咲は内心驚きながらも、細心の注意を払い、小さな少女が怯えない様に平常心をなるべく保った。もし大声でもあげて、怯えさせて泣いたら厄介だからだ。少女は瑠璃と同じくらいに見える。服はゴスロリとでも言うのか、暗い青のワンピースに後頭部に同色の大きなリボンがついていた。長い金髪で、左目に大きなアイパッチを付けているから、怪我でもしているのかと思った。
ちょこんと大人しく座っている少女に、黒咲は何だか気まずい気持ちになってきた。
『……』
『……』
『……(気まずい…)』
喋らない。当然だ、知り合いでもないし。だが、黒咲は試しに声をかけてみる事にした。
『お…おい…』
『?』
きっとここに瑠璃がいれば、『初対面の人に『おい』はないでしょ!』と注意してくれるだろうが、今はジュースを買いに行ってる。黒咲の声掛けに少女は黒咲の方を向いた。ハイライトのない目が黒咲を見つめる。
『…ま、迷子か…?』
ずっとそれが聞きたかった。幼い子供が大きなデパートで1人だけでいるなんて、迷子しか考えられないと黒咲は思っていた。しかし少女は首を傾げた。
『……まいごってなぁに?』
『は?』
少女の発言に黒咲は固まった。
『(まいごってなぁに?だと…?コイツ、迷子もしらんのか!?)』
少女の目を見る限り、嘘をついているようには見えない。むしろ目で『まいごってなぁに?』と訴えてくるのだ。黒咲は頭が痛くなった。
『迷子とは、親もしくは兄弟とはぐれた子供の事だ』
『はぐれた…こども?』
『お前だな。親は?兄弟は?』
なるべく(黒咲的に)優しい声色で話しかけてみる。少女はまた首を傾げた。
『おや…きょーだい…いない』
『…は?』
『スターチスときた』
『スターチス?』
花の名前を出されて今度は黒咲が首を傾げたが、
『野薔薇ちゅわぁあああああああんッ!!』
ダダダダッ!キキィィッ!!
勢い良く走ってきて、甲高くブレーキ音をかけながら、ベンチの前にやってきたのはキャラメル色のショートカットの青年。少女が『スターチス』と呼んだ事から、人の名前だったのかと黒咲は気づく。スターチスは穏やかな顔を不安でいっぱいに染めながら、野薔薇と呼んだ少女を抱き上げるとぎゅーっ!と抱きしめた。
『良かったァアア!急にいなくなったから吃驚したよ―――!』
『ごめんなさい』
『無事なら良いよぉ!あ、お兄さん、もしかしてこの子見ててくれた?』
『ま、まぁ…』
『ありがとうございます!ほらっ、野薔薇ちゃんも!』
『ありがとうございます』
野薔薇を下ろしたスターチスが頭を下げる。黒咲は『あ、あぁ…』と返す。スターチスは頭をあげ、野薔薇を抱えると黒咲に背を向けた。
『それじゃ!さよなら、お兄さん』
歩き出したスターチスの肩越しから野薔薇が黒咲を見た。そして手を伸ばすと、
『ばいばい、とりさん』
ひらひらと手を振った。黒咲が驚く中、2人は人混みに紛れて消えていった。
『……何故俺が鳥獣族を使う事がわかったんだ?』
ぽりぽり ぽりぽり
「ポップコーン、うまうま」
やっぱりポップコーンは塩に限る。キャラメルも良いけど、しんぷる・いず・べすと!ソルトが好き。舞網市のポップコーンは美味しいなぁ。トウモロコシからこぉんな素敵なお菓子が生まれるとは…野菜も甘く見てはいけない。最近野菜チップも美味しいし。食べ歩きポップコーン最高だぜぇ!!
ドサッ!
そうそう、どっさりとした白菜もあま……おろ?
「う…うぅ…!」
首を横に向けてみると、何か路地っぽい道に男の人が倒れていた。
……おーまいがー…!こ、これはアレですね!倒れている人を見つけて、助けたら『魔法が使える少女になって、ミーと契約しておくれよ!』的なやつですね!この前見たアニメ『超決闘戦艦・デイビット』でやってた!!有名なアニメだよ、決め台詞は『おいおい、これじゃあミーの勝ちじゃないか!』だよ!
あ、そんな事思ってる場合じゃないや。
「…だいじょーぶですか…?」
「うっ…君…逃げるんだ…!」
「逃げる…?なにから?」
「見つけたぞ、LDS!」
逃げるって何からぁ?とか思ってたら、突然低い声がやってきた。
……不審者だ!!!!
黒いロングコート!サングラス!怪しいスカーフで隠した口元!どっからどう見ても不審者!!やっべぇ!マジもんだぜ!?同じサングラスでも中島さんと全然違う!あっちはヤの付く職業!こっちは不審者スタイル!サングラスってこんなに差が出るんだ…。
「君…逃げるんだ…!」
「邪魔立てするなら貴様も……ッ!?お前は!?」
えっ?何か驚かれた…。
「お前は…あの時の?何故スタンダードに!?」
「…だぁれ?」
「……覚えてないか。当然だな…」
覚えてないって…そりゃあ記憶喪失ですからねぇ。3年前からないですよー!…あ、男の人気絶した。
「どけ、その男に用がある」
ガシャンッとデュエルディスクを構える不審者。おや?この動作は見た事あるぞ。
「カードにするの?」
「ッ!?」
あ、固まった。やーいやーい図星~!
「何故カード化の事を!?」
「…私、アカデミア…」
「アカデミアだと!?」
不審者が大声を上げた。もしかしてこの不審者はアカデミアなのかな?だったらこの人の次元転送機能を使って、アカデミアに帰還をしたいなぁ!
「――― アカデミアは俺が潰す!!」
あ、何かこの人のスイッチ押しちゃった系?しかも全然違うじゃん。
「デュエルディスクを構えろアカデミア!!レジスタンスの恨み!」
ぶつん
ゆらりと野薔薇は立ち上がった。顔を俯かせ、ガシャンッ!と黄色いラインが特徴的な青いデュエルディスクを装着する。(やっとか)と黒咲もデュエルディスクを構えるが、ふとおかしい物が視界に入ってきた。
しゅうしゅうと音を立てて、野薔薇の
「(なんだ!?)」
黒い蔦にも手にも見えるそれは、本数を増やし、しゅるしゅると野薔薇を包んでいき、繭の様な形になっていく。そしてパシュンッと弾けた後、黒咲は目を見開いた。
服が変わっていた。さっきまでスカートがパニエの様に広がった可愛らしいワンピースを着ていたのに、今は真っ黒なノースリーブのワンピースを着ていた。両腕には3段のフリルが揺れる黒のアームカバー。太腿まである黒のサイハイブーツ。全身黒で包まれた野薔薇は、ゆっくりと顔を上げた。
「目標確認」
先程の少々舌足らずな口調からハッキリとしているが、どこか機械染みた口調になり、
「敵意確認 反応・エクシーズ レジスタンスである事を確認しました 対応――――」
そして右目をゆっくりと開け、
「 【デュエルで殲滅した後 カード化】 」
デュエルディスクのプレートを展開した。
「ッデュエル!」
「デュエル」
KUROSAKI VS NOBARA(?) LP:4000
「(明らかに様子がさっきと違う!何だ、何があった!?)」
初手5枚を手に黒咲は探る様に野薔薇を見る。明らかに様子が違う。先程は不思議な、浮世離れした雰囲気をしていたが、今は何か末恐ろしい雰囲気を放っている。まるで機械だ。右目は青から、赤に染まっており、黒咲でもゾッとした。
「(理由は不明だが…とにかくデュエルを早く終わらせ、話を聞く他ない!)俺のターン!!」
流石に黒咲でもこの場合だけは頭が冷えた様で、冷静に判断した。
「俺は『RR-バニシング・レイニアス』を召喚!」
RR-バニシング・レイニアス ☆4 攻撃力1600
現れたのは黒咲のデッキで重要な役割を果たすある意味特攻隊長とでもいうべきモンスター。
「バニシング・レイニアスの効果!召喚・特殊召喚に成功したターンの自分メインフェイズに1度だけ、手札からレベル4以下の「RR」を1体特殊召喚する!『RR-シンキング・レイニアス』を特殊召喚!!更に魔法カード『RR-コール』を発動!自分フィールドにいる『RR』1体を選択し、手札・デッキから同名モンスター1体を特殊召喚する!『シンキング・レイニアス』を選択し、デッキからもう1体の『シンキング・レイニアス』を特殊召喚!」
RR-シンキング・レイニアス ×2 ☆4 攻撃力100
これで同レベルのモンスターが3体並んだ。と、なると当然、
「レベル4の『バニシング・レイニアス』と2体の『シンキング・レイニアス』でオーバーレイ!! 雌状の隼よ。逆境の中で研ぎ澄まされし爪を上げ、反逆の翼、翻せ!!エクシーズ召喚!ランク4!『RR-ライズ・ファルコン』!!」
体が機械となった鳥獣が甲高い声を上げて翼を広げながら、舞い降りる。主人同様にアカデミアの気配に敏感なのが、野薔薇に向かって大きく鳴く。
「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」
黒咲 手札:2 LP:4000
RR-ライズ・ファルコン セット1
「私のターン、ドロー」
野薔薇 手札:5⇒6
「私は手札の『堕天使マスティマ』の効果を発動。手札から『マスティマ』以外の『堕天使』カードを2枚墓地に送る事で『マスティマ』を特殊召喚出来る。私は『堕天使マリー』と『背徳の堕天使』を捨て、『マスティマ』を特殊召喚」
堕天使マスティマ ☆7 攻撃力2600
現れたのは銀色の体を持つ堕天使。頭部には他の堕天使達と同じ赤い輪が浮かんでいる。
「マスティマの効果。LPを1000払い、墓地の『堕天使』魔法もしくは罠カードの効果を適用する」
「適用だと!?つまりコストを払わずに済むと言うのか!?」
「墓地の『背徳の堕天使』の効果適用。フィールドのカードを1枚選び、破壊。目標の伏せカードを破壊」
マスティマが拳を振り上げ、地面に叩き付けると、風圧が起き、黒咲の伏せていた『RR-レディネス』が破壊される。
「更に魔法カード『堕天使の戒壇』を発動。墓地の『堕天使マリー』を守備表示で特殊召喚。そして」
野薔薇が1枚のカードに手をかけると、黒咲の背にゾクッ!と悪寒が走った。
「マスティマとマリーをリリースし、アドバンス召喚」
それは堕天使の中で最も高いレベルを持つ最上級堕天使、
「傲慢なる黒翼の堕天の王よ 今こそ我が呼びかけに応じ 抗う者に断罪を」
その名を――――
「 いでよ 傲慢なる我が僕 『堕天使ルシフェル』 」
バサリと黒い翼をはためかせ、降臨するは傲慢を司る堕天使。白い髪に白い肌。端正な顔立ちをし、女性受けが良さそうだが、手には剣を持ち、その切先を黒咲に向ける。2体の堕天使をリリースしただけあって、威圧的なオーラを放っている。
「これが…お前のエース…!」
「ルシフェルの効果。アドバンス召喚に成功した時、相手のフィールドにいる効果モンスターの数だけデッキから『堕天使』を特殊召喚す」
パシッ!
る、と続く言葉はルシフェルがデッキに触れようとした野薔薇の腕を掴んだ事で遮られた。
「何!?」
「……」
これには黒咲も驚く。まさかモンスターが主人であるプレイヤーの行動を止めるなど想像もしていなかった。野薔薇は無機質な目を一度自分の腕を掴むルシフェルの手を見ると、ルシフェルの顔を見上げた。
「離せ」
そう、野薔薇が言ってもルシフェルは離さなかった。むしろ更に力を込める。ルシフェルは悲痛そうな顔をしていた。そしてふるふると首を左右に振る。
「離せと言っている」
ルシフェルはパクパクと口を動かした。デュエル中は声が出ないのだろう。しかし黒咲はルシフェルが何を言っているのかが分かった。
『 や め ろ 』
「誰だ!?そこで何をしている!?」
黒咲の背後から声がやってきた。振り返ればさっき倒した男と同じ制服を着た男。仲間だろう。すると、しゅるしゅると先程と同じ音が野薔薇から聞こえ、見ると彼女は元の服に戻り、ふらふらとしていた。ルシフェルも手を離している。そして、倒れた。
それを見て黒咲はチッと舌打ちをすると、デュエルディスクを外し、逃走を開始する。ここで捕まっては意味がないからだ。
「待て!」
正直待てを言いたいのはこっちの方だ。野薔薇に聞きたい事が山ほどあったのに!黒咲は走る。
途中でRR達の悲しそうな声が聞こえた気がした。
・黒咲隼
皆大好き無言の人。2年前、エクシーズ次元のデパートで野薔薇と奇妙な出会いを果たしている。以来、野薔薇の事は忘れていたが、再会した途端に思い出す。
実はアカデミアだったので、敵意を向けるが、突如として様子が変わった野薔薇に疑問を抱く。なお、この後ユートの腹パンから逃げたらしい。