野薔薇と愉快な仲間達   作:ちまきまき

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長らくお待たせしました!のばゆかです!!

漫才フェイズ-クリスマス-

野「クリスマス…チキン…食べたい」
零「中島。今すぐチキンの準備だ」
中「既に出来ています」
野「クリスマスと言えば…サンタさん…」
零「野薔薇は何か欲しい物はあるのか?」(メモ準備)
野「…………おっきな苺のケーキ」
零「今すぐ用意しよう」
中「準備できてます」
野「(……後堕天使の新規カードを10枚くらいほしぃ…)」




9 野薔薇、入院

「にゃー…」

 

ヴィーは困り果て、目は無いが今にも泣きそうになった。ヴィーのいるサイドテーブルの横にある大きな天蓋付きのキングサイズベットの上で眠る主人。微かに上下する胸が生きている事を証明しているが、それでもヴィーは心配で心配で堪らなかった。

 

――― 主人・野薔薇がこの状態になったのは3日前の事だ。

 

LDSの制服組の男性を助けようとして、例の襲撃者とデュエルしたらしいのだが、別の制服組が来た事で相手は逃げ、野薔薇は倒れたらしい。制服組によって助け出された野薔薇は医者に診てもらったが、外傷はなく、恐らく精神的疲労で眠っているだけと診断された。

 

ただ、それでも心配だ。

 

「…にゃっ!」

 

そうだ!ヴィーは思いつくと、近くにあったキャンディーの入ったガラス瓶を蔦を使って取り、蓋を開けた。そして中から1つキャンディーを取ると、植木鉢と一緒にぴょんっと飛んで、ベットに移動する。着地したのは野薔薇の枕元だった。そして、ヴィーはキャンディーを野薔薇の口に押し当てた。

 

「にゃにゃー!」

 

ママは甘いもの好きだからこれで起きるよね!

ヴィーが思いついたのは、キャンディーをあげたら元気になると言う考えだった。生まれてまだ2年しか経っていない、まだ幼いヴィーなりに頑張って考えた野薔薇の起こし方だ。ヴィーはいつもスターチスの作るお菓子を嬉しそうに食べる野薔薇の姿を見ていた。故にこの考えに辿り着いた。

 

…のだが、それでもやはり野薔薇は起きない。

 

「……にゃ……」

 

しょぼんと落ち込むヴィー。キャンディーはぱくりと自分で食べた。ころころと口の中で転がるキャンディー。甘くて、美味しいキャンディー。ヴィーは教えてもらった。これを食べれば元気になると。

 

「んにゃ…」

 

――― どうすれば起きるんだろ~?

 

ヴィーはキャンディーを食べながら考え出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひらり、ひらり

 

 

仮眠室で黙々と仕事をする零児の周りで真っ黒な蝶がひらりひらりと飛び回っている。種類はカラスアゲハだろうか。大きな漆黒の翅を持った黒蝶はぴたりと零児の肩に留まった。それでも零児は書類とパソコンから目を離さない。

 

「さて…話の続きを聞かせてもらおうか」

 

零児と黒蝶しかいない部屋で、彼はまるで誰かと会話をするかのように口を開いた。ぱたぱたと黒蝶が翅をはためかせる。

 

「野薔薇を病院送りにしたのは間違いなくエクシーズ次元の人間と言う事で合っているか?」

 

『先程も言った通りじゃ。アカデミアの名前に過剰に反応した挙句、自らレジスタンスと名乗りおった。その2つを合わせて辿り着く答えは1つだけだ』

 

部屋に、妖艶な女性の声が響く。これは野薔薇と融合した精霊・クロアゲハの声だ。零児は「そうか」と一言言うと、ちらりと自身の肩に止まる蝶を見た。

 

「…それにしても、君にこの様な特技があったとはな」

 

『妾は人間界にいる上に野薔薇と融合した形で本来の力の9.5割は出ない。だが0.5割ならこの姿で会話程度なら出来る』

 

「…精霊とは不思議なものだな」

 

『お前達が思っている以上に我らデュエルモンスターズの精霊は摩訶不思議なものだからな。神も入れば悪魔も天使もドラゴンもいる』

 

くすくすと笑うクロアゲハに零児はまた「そうか」と一言言った。

 

『話を戻す。あの男は紛れもなくエクシーズ次元の者。推測ではあるが、アカデミアのデュエリストを倒し、そいつのディスクを解析して、次元移動とカード化を得たのだろう。使うデッキは…『RR』と名の付いた鳥獣族だったな。見た目は完全に機械族だが』

 

「それは本当に鳥獣族なのか?」

 

『ディスクのテキストに鳥獣族と書いてあったから間違いはない。メカファルコンと一緒じゃ』

 

「…そうか」

 

『アカデミアも罪が重い。まったく馬鹿な事をせんでも良いのに…』

 

「君はアカデミアの目的を知っているのか?」

 

零児のその言葉にクロアゲハは翅をはためかすのをやめた。

 

「…知っている様だな。因みに聞くという選択肢は?」

 

『ない。大体野薔薇も守れない小童に言う気は起きん。それにどっち道、真実は知るだろうな』

 

野薔薇も守れない。そう言われては零児も黙るしかなかった。実際に野薔薇を守る事が出来ず、入院中だ。零児は悔しさを胸の中に隠しながら、立ち上がり、近くにあったミニ冷蔵庫から例の物を取り出す。

 

『ところで、どれを持っていくの気だ?』

 

「全て持っていく」

 

『おい、流石に全部は野薔薇の腹が壊れるわ』

 

零児が取り出したのはクリーム色の箱だった。青い文字で『氷結界シャーベット』と書かれている。これは舞網どころか世界進出を果たし、大成功したスイーツ会社『氷結界』の2大名物の1つ、さっぱりとした味わいと種類が豊富なフレーバーが人気のシャーベット『氷結界シャーベット』。しかも1つ300円と、シャーベットとしてはかなり高いが、そこはLCの社長赤馬零児。例え10個セット(3000円)だろうが、はした金。愛しの野薔薇が食べたいものは全て記憶している。彼女の為ならば金を惜しまない。

 

―――― わざわざ野薔薇に聞いて、わざわざ自らの足で氷結界の店舗へと向かい、わざわざ自らの財布を開けて彼女を喜ばせようとした矢先に、入院。

 

取りあえず野薔薇を襲ったエクシーズ次元の男は色々と後悔させるとして、零児は愛しの乙女に会いに行く為に立ち上がった。

 

『取りあえず、きな粉味と抹茶味とイチゴ味を持ってけ。野薔薇が喜ぶぞ』

 

ピッ

 

「中島。今すぐ野薔薇の病室に冷凍庫を準備しろ。サイズは小さめで良い」

 

『おいコラ金持ち』

 

 

 

 

 

零児とクロアゲハがシャーベットについて言い争いをしている頃、野薔薇はと言うと…。

 

 

「ふわふわ…」

 

「くぅ~ん」

 

 

しっかり起きて、病院の庭で何故か青い毛の犬を撫でていた。犬はパタパタと長い尻尾を振り喜んでいる。首輪もしていないから、野良犬だろうか?丁度成犬になった柴犬くらいの大きさの犬。

 

――― 何故病院の庭にいるのか?

 

――― 何故この犬の体毛が青いのか?

 

――― 何故野薔薇は意外とピンピンとしているのか?

 

もしスターチス辺りがいれば、ツッコんでくれただろうが、今はおらず、今日も絶賛トトと共にスターヴ・ヴェノムから逃げている。

 

そんな事になっているとは知らず、野薔薇はただただ犬を撫でる。

 

 

「もふもふ…!」

 

「きゃぅ~ん」

 

 

 

 

 

 

――― 場所は変わって、とあるボロ小屋。

 

ボロ小屋と言っても見た目だけで、中は電気も水道も少しだが通っている。人が住んでいたのか、多くのインスタント食品があった。おかげでこうして今日もユートと黒咲は生きながらえていた。つい先日ユートが見つけたというこのボロ小屋(黒咲曰くレジスタンス・スタンダード支部)で、ユートと黒咲はずるずるとカップラーメンを食していた。

 

「(ごくん)……さてと、隼。話してもらおうか」

 

「…何をだ?」

 

「惚けるな。――― 俺に殴られる前に戦っていた人物についてだ」

 

「……」

 

それを聞いて、黒咲は静かにカップと箸をコンクリートの床に置いた。瞼を閉じると、思い出す。黒い衣装を纏った金髪碧眼の少女。機械的で、不気味な雰囲気を放っていた。

 

「…アカデミアだ。この次元にアカデミアが来ていた」

 

「何だと!?」

 

「女だ。金の髪と青の目を持った、人形みたいな女だった」

 

「………何だと?」

 

 

―――金の髪と青の目を持った、人形みたいな女のアカデミア

 

それを聞いてユートの脳裏に浮かぶのは当然、先日出会った少女・野薔薇。懺悔の涙を流すうつくしいひと。その人が隼と戦った?フッとユートの表情に影が差すが、黒咲はそれに気づかず、話を続ける。

 

 

「あの女め…大人しいと思えば急に豹変した。やはり女とはいえアカデミアだな。次こそは必ず仕留めて…」

 

「隼」

 

「なんだ」

 

「彼女に手を出したのか…?」

 

「…知っているのか?」

 

「あぁ。酷く―――――うつくしいひとだった」

 

「……………あ?」

 

何言ってんの?コイツ的な目線でユートを見た黒咲だが、ユートの目からハイライトが消え、ぎょっと驚く。見られている事も気にせず、ユートは目からハイライトを消したまま、火照った頬を両手で押さえ、さながら恋する乙女の如く言い始めた。

 

「彼女は繊細で儚くて美しくて麗しくて純粋で例えるなら高級なガラス細工の様な女性なんだアカデミアというゴミ以下の悪い連中に騙されているんだきっとそうだそうに違いないだったら救わなければなああそうだ救わなければいけないダークリベリオンだって彼女に懐いているし彼女のためなら頑張ってくれるとわかっている嗚呼野薔薇を救えるのは俺しかいないのかもしれないそう思うと毎夜胸がぎゅうぎゅう締め付けられて寝付けなくてでも野薔薇の事を思うと幸せすぎてどうしようもなくてまるで俺が野薔薇の騎士みたいで恥ずかしいけど嬉しくて堪らないんだああもしも願いが叶うならば少しだけで良いから手を繋いでハートランドを案内して美味しいものを食べさせてあげたい俺が彼女のお腹を満腹にしてあげたい癒してあげたい笑ってほしくてたまらないんだ

 

――― どうすればいいと思う?隼」

 

「寝ろ」

 

 

もうそれしか言えない黒咲だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぷっくちゅっ!」

 

「きゅぅん?」

 

「…ん、誰か噂してる?」

 

「わおん?」

 

「大丈夫、風邪引いてないから。ね、フェンリル」

 

「わぉん!」

 

マイアミ中央病院の庭は広くて良い。しかも今日は快晴でポカポカ陽気だからすごく眠くなっちゃう。ベンチに座った私の足元にいる青い毛のわんちゃん、名前付けました!トトが図書室から借りてくれた本の中に『フェンリル』という名前のオオカミがいたから、そう付けました。え?厨二過ぎないって?……気にしない気にしない!!

フェンリルの毛は青というか、真っ青じゃなくて、少し薄い。何というか青紫色に近い。長いふわふわの毛は魅力的!!尻尾ももふっもふ!アニマル好きな私としては高得点!!しかもお利巧!お手も出来るし、伏せも出来る!本当に野良ちゃんですか?

 

「おや、君は…」

 

「ん?」

 

ふと、誰かが私に話しかけてきた。横を向くと、松葉杖をついた男の人がいた。おや、知っているぞこの人。長年続く有名な少女漫画『ペルチャイユの薔薇園』に出てきそうな、妙に見た目が印象に残るこのお方は…!

 

「…あ、あの時の人…」

 

「ボクを助けてくれたマドモアゼルじゃないか!」

 

「まども…?」

 

そうだ!この人はあの時、倒れていたお方じゃないか!!そうだそうだ!不審者さんに追われていて死にかけていたあの人!!

ペルチャイユのオチュカー(仮)さんはご丁寧に「隣、いいかい?」と尋ねて、それに頷くと、隣に座った。ふむ、ちゃんと確認を取る所は点が高いぞな!

 

「君も入院しているとは聞いていたが…もういいのかい?」

 

「はい…元々体は丈夫…です」

 

「随分と華奢に見えるが…強いデュエリストは体も資本だからね!うん!」

 

えっ、デュエリストって強さで体の頑丈さが出てくるの?…デュエリストって何?

 

「それはそうと…君の名前を聞いていなかったね。僕はマルコ。君は?」

 

「野薔薇です…」

 

「ふぅむ、野薔薇。野に咲く可憐な薔薇。いい名前だね!」

 

「ありがとうございます…」

 

「わんっ!」

 

「ん?その犬は…」

 

「さっき友達になった、フェンリル、です」

 

ねっ?と聞けば、フェンリルはばふばふと尻尾を左右に振りながら、「わんっ!」と鳴く。心なしか嬉しそうなので私もとっても嬉しい!マルコさんはフェンリルを見て「そうかい」と言う。

 

「おっと、僕は検査の時間だ。それじゃあね、野薔薇」

 

「さよなら」

 

「わおんっ」

 

そう言ってマルコさんは去っていく。うむ、中々良い人だ。バレットさん並に良い人だ。私の周りにまともな大人と言うものはあまり存在しない。だってクロユリ先生がいるし。プロフェッサーは頭つるつるだし。アカデミアの先生はあまり知らないし。

 

 

「…………あ」

 

 

 

 

 

 

――――― そうだ、ユーリ今頃何してるだろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――― その噂のユーリは、と言うと……。

 

 

 

「…………野薔薇…」

 

がちゃっ

 

「おーい、ユーリーご飯……って何コレ気持ち悪ゥ!?」

 

スターヴ・ヴェノムを使って追いかけるのに疲れたユーリの部屋へとやってきた被害者・スターチス。片手にはユーリの為にと作った軽食が乗ったお盆を持っており、片手で部屋の扉を開けたのだが、彼の目に入ってきたのはとてつもない変貌を遂げた室内だった。

ユーリは汚れるのをあまり良しとしない、所謂潔癖症に近い物を持っており、また無駄な動作や事もあまり好きではない。故に部屋にあるのは生活で必要な最低限な物ばかりで、一番目立つのは野薔薇とお揃いの大きなベット。スターチスから見て、良く言えばシンプル、悪く言えば殺風景な部屋は、その面影すらない。

 

野薔薇を模したデフォルメ人形(サイズバラバラ)が床に大量に散らばり、(無駄に凄い)金の額縁に入った野薔薇の大きな肖像画が壁に飾られ、部屋の主は他の人形より一回り大きい野薔薇ドールを抱いて、ベットの上で寝ころんでいる。

 

野薔薇隊であるスターチスでさえ、悪寒を感じる程変わった部屋の中。ユーリはスターチスに気づくと、ころんと回転してスターチスの方を向くと、「ちょっと」と顔を歪めた。

 

「ノックくらいしてよ。後気持ち悪いとか言わないで」

 

「ノックしなかったのは謝るけど何コレ!?何で野薔薇ちゃんグッズばっかりになってんの!?あ、これモモのやつだな!?」

 

「正解。ちょっと借りただけ。………はぁ~野薔薇…」

 

すりすりと野薔薇ドールに擦り寄るユーリ。スターチスは思った。

 

「(あ、コイツぶっ壊れたな)」

 

主にキャラが。スターチスは遠い目になった。

 

 

 

 

――――― ただ早く、クロユリが野薔薇を見つけてくれる事を信じて。

 

 

 

 

 




・『ペルチャイユの薔薇』
有名な少女漫画で、主人公は男装の麗人ネズミ『オチュカル』。野薔薇の愛読書。

・マルコ
前話で倒れていた本人。この話ではカード化はされておらず、骨折のみで済んだ。現在治療で入院中。

・フェンリル
青紫色に近い毛並を持った犬。と、言うか狼に近い。野薔薇に懐く。また利口。


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