野薔薇と愉快な仲間達   作:ちまきまき

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皆大好き(胸が)タイラー姉妹が登場だよ!ちょっとだけだけど!リンちゃんも登場!ちょっとだけだけど!…ちょっとが多いね!


Sixht 野薔薇とタイラー姉妹とリン

「野薔薇さん!お次はどれにしましょう!」

「トトの好きなやつでいいよ」

「えっ!いいんですか!?え、えっと…それじゃあ…!」

 

 

皆さん、こんにちは。覚えていらっしゃる方はいるでしょうか?野薔薇隊一番下っ端、トトです。今、僕と野薔薇さんはお茶会をしています。今日のおやつはチョコレート。スターチスさんの神がかったテンパリングの末に出来た可愛いチョコレートは、正直お店でも出せるレベル。美味しいんです。

 

一番下っ端な僕が野薔薇さんとお茶会なんて恐れ多いですが、折角のお誘いを断る訳にはいきません。

 

何より美味しいお紅茶とチョコレートを食べながら、野薔薇さんの存在を一番近くで感じられるなんて、素敵すぎませんか?

 

「あら、トトと野薔薇じゃない」

「珍しいな」

「あ、グレース様!グロリア様!こんにちは!」

 

屋上庭園にやってきたのは『アマゾネス使い』として有名な双子姉妹、グレース&グロリアのタイラー姉妹さんです。でも何で屋上庭園に?と思いましたが、すぐに思い出します。そうでした。ここは野薔薇隊所有の屋上庭園ですが、誰でも出入りは可能でした。お茶会が楽しくてすっかり抜けていました。集中しちゃうと他の事、考えられなくなっちゃう癖、直さなきゃ。

僕が慌てて立ち上がって頭を下げて挨拶すると、グロリア様が「そんなに畏まるな」と言ってくれた。グレース様はクスクスと笑っていらっしゃる。はわわ、笑われてしまいました…!

 

「お前も立派な野薔薇隊の一員じゃないか。ある意味一番の出世頭だぞ」

「そ、そんな…出世頭だなんて!ただ僕はモモさんに誘われただけで…!」

「運も実力のうちだ」

「そうよぉ。あら、チョコレート。美味しそうね。スターチスが作ったの?」

「あ、はい!」

「食べる?」

 

そっとお皿を差し出す野薔薇さん。グロリア様が「貰おう」と言えば、グレース様が「ありがと」とお礼を言う。

 

「ん、美味いな」

「やだ美味しいじゃなぁい!良いわね、野薔薇隊って毎日こんな美味しい物食べれて…」

「えへへ、僕達、スターチスさん以外料理出来ませんし…」

「グロリア、グレース。エクシーズ次元部隊入りおめでとう」

「あ、そうでしたね!おめでとうございます!」

「ふんっ、当然だ!」

「あらあら、姉さんったら照れちゃって!野薔薇が褒めるなんてないもんねー?」

「グレース!何を言っているんだ!」

 

あわあわ慌てるグロリア様にクスクス笑うグレース様。実はグロリア様、野薔薇さんの事が好きみたいです。あ、恋愛とかの好きじゃなくて、愛でたい可愛いと思っての好きです。普段から勇ましく、男前なグロリア様が実は可愛い物好きなんて、ギャップだなぁと思います。グレース様もその事に気づいているのです。流石は双子。互いの考えなんてお見通しなんですね。

 

「そう言えば聞いたぞ!また海に飛び込んだと!!」

「そうよ!今度は東の塔から!」

「そうなんですよ!」

 

そうなんです!お二方の言う通りです!…まぁちょっと事実と違うけど。

 

 

――― それは一週間前程の話

 

 

「えっ!ユーリ様が女の子を攫ってきた!?」

「そうなんですよ!聞き捨てなりません!?」

 

ぷんぷん!なんて効果音が付きそうなほど可愛らしく頬を膨らませて怒るモモさん。何でもあのユーリ様が女の子を攫ってきたそうで、今、その子をアカデミア本校舎の東にある塔、名前もまんまの『東の塔』に閉じ込めているとか!えっ、だってユーリ様って野薔薇さんとお付き合いをしているんじゃ…?

 

「言っておきますけどトト、ユーリ様と野薔薇様は付き合ってませんからね」

「えぇ!?そ、そうだったんですか!?僕てっきり付き合っているとばかりに…!」

 

だって僕見ちゃったんですよ!?野薔薇さんが寝ている時にユーリ様がほっぺちゅぅしてたの!えっ、それで付き合ってないんですか!?おかしいでしょう!?

 

「って話を戻します!何でも別次元から連れてきたって噂なんですよ!」

「べ、別次元って…どこの次元からでしょうか?」

「さぁ?そこまでは分かりませんわ。私もそこまで詳しい事は知りませんわ」

「で、ですよねぇ~…」

「それで!問題はここからですわ!」

 

ビシッ!とモモさんが僕を指さしてくる。えっえっ?って驚いていると、モモさんはこう言いました。

 

「東の塔と言えば!?」

「え?え?えっと…塔だから…高い?」

「正解!よぉーく考えてください!…高い所に野薔薇様がいたら?」

「ハッ!」

 

モモさんにそう言われてピーンッ!ときましたよ!!野薔薇さんを高い所にいさせたら絶対飛び降りちゃう!!だって野薔薇さんだもん!

 

「ふっ、気づきましたね!」

「はい!」

「さっきスターチスにも言ったのですが、東の塔にはいかせないように!西の塔も同様ですわ!!」

「了解です!」

 

 

その時の僕は、後にあんな事になるなんて知らなかったです。

 

 

「と、モモさんに言われて試しに来てみたは良いですけど…高いですねぇ」

 

僕はモモさんと別れた後、東の塔に来ていた。何だか気になってしまって、来てみたは良いけど、やっぱり塔だから高いです。当然ですね。

 

高さどれくらいあるんだろうって思って、僕は上を向いた時でした。

 

 

 

―――― 真上から金色の髪の人が落ちてきているのが見えた。

 

 

 

「ッカンナホーク!!」

『ピャアアアアアアッ!』

 

僕は即座にデュエルディスクを展開して、愛用モンスターである『精霊獣 カンナホーク』を呼び出し、彼に落ちてくる人物を受け止めてもらった。僕のカンナホークのスピードはアカデミア一だと自負はしているけど、後もう少し遅かったら煉瓦だらけの地面と激突していた。

 

救助に成功したカンナホークが僕の所まで降りてくる。僕が駆け寄って安全確認をすれば、紛れもなくその人は野薔薇さんだった。

 

上で一体何が―――!?野薔薇さんの安否は取りあえず確認できた。後は原因を調べるだけ。野薔薇さんには悪いけど、暫くカンナホークと共にいてもらう。もう1体のカンナホークを召喚して、彼に乗って上を目指す。

 

ぐんぐん上に行って、頂上まで着いた時、僕は目を疑った。

 

塔の頂上は部屋になっていて、開かれた扉の先には呆然と僕を見つめる女の子の姿。黄緑色のふわふわとしたショートカットにぱっちりとした目。服から見て、アカデミアの制服ではないから生徒ではないのが分かるけど、僕がもっとびっくりしたのは『塔の上に女の子』が本当にいたという事だ。

 

カンナホークから降りて、恐る恐る部屋に入っても、彼女は呆然とこちらを見ているだけだった。

 

「(ほ、本当にいた…!)」

「……っあ!ね、ねぇ!さっきの子は!?」

「さっきの子?」

「女の子!左目に包帯してて…そこから飛び、飛び降り…っ!」

「!」

 

真っ青な顔で、僕の肩を掴む彼女の手は震えている。今の言葉で僕は、彼女が言っている女の子が野薔薇さんだと言う事を理解した。きっと何らかの理由で野薔薇さんはこの子の前で飛び降りたのだろう。

 

ブルブル震える女の子を落ち着かせる為に、僕は僕より背の高い彼女の両肩に両手を置いた。

 

「落ち着いてください!大丈夫ですから!僕のモンスターがちゃんと助けましたから!」

「ほ、本当…!?」

「はい!カンナホーク!」

 

僕が外に向かって呼べば、下にいたカンナホークが超特急でやってきた。僕を乗せたカンナホークが足で野薔薇さんを掴み、部屋へと放り投げた。あ、ちょっとカンナホーク!もうちょっと丁重に!!

放り投げられた野薔薇さんを見た女の子が慌てて野薔薇さんに駆け寄って、口元に手を当てると、ふるふると背中が震え始め、そして…

 

「う、うわぁあああああああんっ!ごめんなさいぃぃぃ…!」

「えっ!?」

 

何と野薔薇さんに向かって泣きながら謝り始めたじゃないですか!!ど、どうしよう!ぼ、僕女の子の泣き止ませ方なんて分からないよ…!なんて思っている間にも女の子はずっと野薔薇さんに謝り続ける。ふと視界に女の子の履いている白いブーツに黒い足枷みたいなのが付いている事に気付いたけど、今はそれどころじゃなかった。

 

 

結局、女の子が泣き止むまで相当な時間がかかった。

 

 

彼女が落ち着いた後、僕は話を聞いてみた。名前はリンさん。訳もわからず突然ここに閉じ込めてしまったらしい。試しに使う召喚法は?って聞いたらシンクロって言ったから、きっとシンクロ次元の人なんだと思う。

 

さて、何故野薔薇さんが飛び降りたかと言うと、自分の言葉が原因なんだと彼女は言った。

 

急に訳も分からず連れてこられて、閉じ込められて、不安だらけだったリンさん。脱出を何度も考えたが、それは出来ない。何故ならリンさんの足に付けられた黒い足枷みたいな物。これは見た事があると思ったら、それは電流が流れるタイプの足枷だった。

 

――― ここアカデミアの訓練に耐え切れず、逃げ出してしまう人もいる。その生徒を捕まえて、二度と脱走なんて考えない様にする為に付けさせられるのが、この足枷だ。

 

『脱走者の汚名』と言われているこれ。この島全体に人の目では認識できないセンサーが張られており、それに引っかかる(反応する)と付けている人間に強い電気ショックを流す代物だ。リンさんもそれを聞かされた上で、逃げられないらしい。アカデミア生の僕が言うのもアレだけど酷い。

 

不安だらけの生活をしていたら、突然扉を開けたのは野薔薇さんだったと言う。

 

 

『…あ、貴方は?』

『……』

 

突然の来訪者に驚くリンさんに野薔薇さんは何も言わなかった。でもリンさんからすれば野薔薇さんだって憎きアカデミア生だ。それで突っかかってしまったらしい。

 

『どうして私を閉じ込めるの!?私はただユーゴと一緒にいたいだけなのに!!約束したの!フレンドシップカップで!私達の作ったDホイールで優勝するって!!』

『……』

『返して!ユーゴの所に返して!!―――ッアカデミアなんていなくなっちゃえばいいのに!!』

 

 

 

『――― いなくなれば良いの?』

 

 

 

初めてそこで野薔薇さんは口を開いた。彼女が見たのは野薔薇さんが、笑っている所だった。穏やかに、さながら恋する乙女の様な顔で、野薔薇さんは肩を掴んでいたリンさんの手を優しく離すと、段々と後ろへ向かって歩いていき、そして…と言う訳みたい。

 

「わ、私…死んで欲しいとか思ってなかったの!ただ…ただ…!ユーゴの所に返してほしくて…!」

「わ、分かってます!ただちょっと野薔薇さんは特殊と言いますか!何と言いますか!」

 

顔を両手で覆って泣くリンさんを慌てて僕が慰める。

 

……僕はリンさんを責められない。

 

だって部隊や地位が違うからと言っても、僕はアカデミア。紛れもなく彼女を攫ったユーリ様と同じアカデミアだ。間違いはない。

何より突然何も知らない状態で、連れてこられて、不安になるなという方が無理がある。突然大切な人と引き離されて…僕だったら耐えられないかも。

 

「ごめんなさい…その野薔薇さん、あっ、そこに寝てる人なんですけど…死にたがりと言いますか…目を離すと死のうとする人で…」

「えっ、そうなの!?」

「僕も理由は全然わからなくて…あ、でも野薔薇さんも僕もリンさんを傷つけるつもりないですから!!そこだけはわかってください!あ、でも結局アカデミアだから信用出来ませんよね!?ご、ごめんなさい!」

「……貴方、変わってるのね」

「え?」

 

僕がリンさんを見ると、彼女は目を丸くしていた。…え?どういう意味?

 

「貴方、アカデミアなのにアカデミアの人じゃないみたい。何か丁寧過ぎて…」

「き、気分を害してしまったなら謝ります!」

「そうじゃなくて…!悪い人に見えないなぁって」

 

 

そう言ったリンさんの笑顔を、僕はこの部屋に来て初めて見た。

 

 

 

「――― と、言う訳で東の塔から『自ら落ちた』んです」

「馬鹿だな」

「馬鹿ねぇ」

 

思わず呆れるタイラー姉妹様。あ、今お話した内容にリンさんの事はお二方には言ってません。内緒ですから。お二方には野薔薇さんには悪いけど、自分から東の塔に行ってもらった事にさせていただいた。後でちゃんと謝らないと。

 

「まったく…本当にお前という奴は…」

「いっその事私達も野薔薇隊に入っちゃいましょうか」

「だ、駄目です!」

 

グレース様の言葉に僕は思わず大声を上げてしまう。そ、それだけは駄目!

 

「何で駄目なの?」

「だ、だって!お二方が野薔薇隊に入ったら野薔薇さんといられる時間が無くなっちゃ…!……あっ」

 

今言ってしまった失言に僕は慌てて両手でお口を押さえる。段々とお顔が熱くなっていく。ちらっとお二方を見ると、目をパチパチさせていて、次第にニヤニヤと口元が緩んでいく。あぁああ恥ずかしいっ!

 

「そうかそうかぁ…私達に野薔薇を取られるのが嫌なのかぁ~」

「やだぁ~可愛いぃ~!」

「ふにゃああああ!」

 

ニヨニヨニヨ。お二方の微笑ましそうな笑顔がすごく恥ずかしい!「あー好きなんだなー」って感じの目がすごく伝わってくるよぉお!!あー!あー!あー!

 

「トト、可愛い」

「にょっ、にょ薔薇さんまでぇ!!」

 

相変わらず無表情だけど、どこか嬉しそうに見える野薔薇さんまで「可愛い」だなんて!!うぅ…暫くは絶対タイラー姉妹様にこれで弄られるよぉ…。

 

 

 

 

 

 

―――― その2週間後、野薔薇さんは僕の前からいなくなってしまう事に、僕は気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

 





・グロリア&グレース
皆大好きタイラー姉妹。グロリアは男前だが、実は無類の可愛い物好きで、野薔薇が可愛くてしょうがない。グレースも野薔薇を気に入っている様子。
ただ、姉妹と野薔薇ではまな板とスイカ並の差がある(どこがとは言わない)。


・リン
この時はユーリに連れてこられたばかりで混乱していた。騒動以降、時折野薔薇がトトと共にやってきたは話し相手になっている。トトの事を「丁寧な子」だと思っており、ユーゴとは大違いだとも思っている。
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