【episode01】
眩い朝日が東京を照らす。そんな中、モノレールに揺られながら、桜満集は大きな欠伸を零した。
高校生を経験するのはこれで2度目であり、今度こそは真面目に通ってみようと思ってはいるが、 いざ通ってみるとやはり頭の中にあるのは「帰りたい」という四文字だけだった。
義務教育を終えたら即座に働こうと考えていたのだが、集の義母である桜満春夏が「お願いだから高校だけは卒業して」と言ったため集は仕方なく天王州第一高校に入学し、今のところ無遅刻無欠席を1年間続けている。
まあ、だからといってやる気が出る訳では無い。そんな集の本性をよく知る人間たちはいつもこう愚痴られていた。
───受けたくもない授業を受け、入りたくもない部活に入らされる。これを不幸と呼ばずなんと呼ぶ、と。
その度に引かれる訳だが、当の本人はそんなこと気にしてすらいない。再度大きな欠伸をすると目じりに溜まった涙を拭う。
そんな集に近づく小さな影が一つ。集は視線をそちらに動かすと手を軽くあげた。校条祭。記憶を失った集からカウントすると、初めての友達。
「おはよう!集!」
口から漏れる大きな欠伸を噛み殺しながら、集は再び眠気眼を擦る。そんな集を見てか、祭は物言いたげな視線を向けた。その視線に集は思わず眉を顰めた。
「……俺に……いや僕に何かあるのかよ」
「眠そうだけど、昨日何かあった?」
何かあったかと言われれば、深夜に出歩いていたことだろうか。
世間一般では一般男子高校生に分類される集は、日中は目立った行動ができないためか、深夜に室戸菫という女性がいる大学病院に通いつめていた。
そこで、集めた情報をまとめたり、雑談したりと色々しているわけで───気がつけばいつもお天道様が登っているのだ。お陰様で周囲からは『不幸顔』『タロットの吊られた男』『死神』と称されるくらい幸薄な顔になってしまった。
周囲には寝つきが悪いと何とか誤魔化している集に気づいていない祭は心配そうに集を見つめた。
「気をつけてね集」
はいはいと手を振りながら、ふと窓の外を見やる。
その際、視界に最新鋭の戦車や武装したGHQの兵士が視界に写る。集は違和感を感じながら、視線を凝らす。
「……いつもより多いな」
その言葉に反応してか、祭は思わず首をかしげた。
「え、ニュース見てないの?」
そう言えば、身支度をしている際にそんなような内容を小耳に挟んだような気がしたが、本日の集の朝は忙しいの一言に尽きた。
「……颯太の野郎に映研のやつまだかって急かされてたんだよ。悪いか」
「はあ、ホントに集は」
「なんだよその溜息は」
「もういいよ。昨日テロがあったらしいよ」
懐かしい言葉を耳にした集は、眉間の皺を深くした。
昔の日本だったら絶対に聞かなかったであろう現実離れした言葉になんとも言えない表情になるのを感じる。
「そうか……テロ、か」
しかし、集には関係の無いことだった。
嘗ては天童民間警備会社に所属した民警であったわけだが、今の集は何処にでもいるただの男子高校生だ。
記憶を忘れているのはまったくもって幸せな事だ。
集は遠ざかっていくGHQの部隊を睨みつけながら、再び大きな欠伸をこぼした。
長い登校を終え、無事学校に着いたので席に着席する。そんな時に集の座席にやってくる影が一つ。
「───おい、集!」
「映研のやつならまだ出来てないから待ってて。じゃあな、おやすみ」
「そっちじゃない!いや、それもそうか……じゃなくて!」
どっちだよ、と内心呟きながら突っ伏していた顔を持ち上げた。颯太が顔を近づける。
「EGOISTのPV!しっかり見ただろうな!?」
EGOIST。利己主義者という意味を持つが、彼が言うEGOISTはそちらではなく今、熱狂的な人気を誇るネットアイドルのことだろう。
集は頬杖をつきながら欠伸を噛み殺し、適当に相槌を打つ。
「感想聞かせてくれよ!」
かつての相棒を想起させる元気っぷりに、集は非常に冷めた視線を送りながら答える。
「……映像を作る際の参考材料くらいにはなると思うよ。じゃあな、おやすみ」
「お前しっかり見たんだろうな!?」
「席につけー」
「後でしっかり聞かせてもらうからなー!!」
今度のホームルームは颯太が来る前に、トイレに逃げ込もうと決心した集であった。そんな集を見兼ねてか祭は小さく呟いた。
「颯太君、可哀想……」
あまりに聞き捨てならないその言葉に集はため息混じりに呟いた。
「……いいんだよ。颯太はああいう扱いで」
「ここは空気を読んであげようとか思わないの?」
「そんなこと俺が知った事じゃねえよ」
「口悪いよ」
「僕が知ったことじゃない」
この手の類の人間は下手に絡みすぎると余計なことを起こすので、表面上仲良くするのが大事である。と、集がこの世で最も嫌う師匠の言葉を思いしながら机に伏す。
そして、いつもと同じようにHR中にGHQの放送が入り、耳が痛くなるほど聞かされた音声が流れる。
“君たちには任せておけない”
“君たちには大切なものを守る能力がない”
等々。
だが、そんな状況をいつまでも続けて行く必要が無いことを集は知っていた。
元より、人間という生き物は束縛を拒む生き物であるので、そう遠くない未来に暴動が起きることは容易に想像出来てしまうのだ。どうせ、昨夜のテロもその手の類のものだろ、と一人集は愚痴る。
昨夜のテロは見せしめ、本番はここからになるだろうと集は予想しながら眠りについた。
時は変わって昼休み。
集は映研の作業をするために旧校舎に足を運んでいた。
「……結局、祭に拘束されるし颯太には付き纏われるしよ。今日は本当についてねえなぁ」
集は青い空を仰ぎながら、小さくボヤく。本来なら今頃は学校の屋上で寝ている時間なのだから、苛立ちげな声を上げるのも無理はない。しかし、作業を終えてなかったのは自分の責任だ、自業自得である。
どんなにゆっくり歩いていても、目的地には到着してしまうわけで、集は意を決して扉の取っ手に手をかけたところで───異変に気づいた。
「……鍵が壊されてる」
一瞬不良の悪戯かと思うが違う。不良ならばまず手頃な金属バットを使うであろうし、この破壊痕は銃撃によるものだ。サイレンサーを取り付けて発砲したからだろう、その手の類の音がすれば真っ先に目を覚ます集が起きなかった。
───集は緊張した面持ちで旧校舎に入る。
見たところ、荒らされた形跡はない。
安堵の息を吐き、視線を窓ガラスの方に向けたところで、集は思わず息を呑んだ。
少女がいた。美しいなんてものでは無い、芸術品のような少女が、そこにはいた。
その少女から漏れる歌声も、おさげのような髪も包帯から見える滲んだ血もすべてが美しく見えてしまう。
そんな光景に思わず魅了されていたせいか、集は下に落ちていた缶を蹴ってしまった。
「……ッ!」
「……!」
少女は歌うのを止め、集の方を振り向き警戒態勢に入った。何とか誤解を解こうと少女の顔を見た瞬間、集は戦慄した。
なんと、そこに居たのは巷で有名のEGOISTのヴォーカルである楪いのり本人ではないだろうか。
「……嘘だろ、おい」
集の呟きを否と取ったのか、いのりの背後から炊飯器のようなロボットのが出現、手からワイヤーを飛ばした。
「ッ!」
弁当袋を地面に落とし、横へ跳躍することでワイヤーを回避、集はいのりへに向かって地面を駆ける。
すかさず次のワイヤー攻撃を仕掛けるロボットだったが、集は逆にワイヤーを掴み、自身の方へと引き寄せる。引き寄せた勢いを集の肘に当て、一時的に機能を停止させる。そのまま滑り込むようにいのりの元に辿り着いた集は、恨めしそうに睨むいのりにロボットを投げ渡しながら口を開く。
「……不法侵入はそっちだろ、EGOISTの楪いのりさん」
しかし、治療のためだろう、はだけた状態で胸元を隠していた彼女は突然渡されたロボットを誤って受け取ってしまう。
当然、隠されていた胸元は露わになり、見えてはいけないところを集は目視。慌てて視線を背けるも、時すでに遅し。
いのりから注がれる視線が羞恥と憤怒に変わるのにはそう時間はかからなかった。集は目を逸らしながらポリポリと頬を掻く。
「いや……わざとじゃないんですけど……流石に悪いとは思ってます」
「変態」
「返す言葉もありません」
絶世の美少女であり、歌姫である彼女にこのような視線を向けられるのは今は集だけである。
ずっと、本当にずっと後になっていのりが「あの時のことは忘れない。責任を取って」とせがまれたのは余談である。
「……」
しかし、今はなぜこんな美少女に睨まれなければならないのか、と疑問に思うばかりでそんな事は知る由もなかった。
そんな時間がずっと続く───そう思った時だった。
くぅぅー……
そんな間の抜けた音が旧校舎に響いた。集が視線を向ければ、今度は空腹による腹虫の音に真っ赤に顔を染める彼女を見て、頬をかいた。
「……」
「……えっと、とりあえずおにぎり食べる?」
いのりは警戒を少し解きながらこくんと頷いた。
集は手に持った床に投げつけてしまった弁当袋を拾い上げるといのりの少し前に置いた。
不思議そうに首を傾げるいのりに、全部あげると言った集は後ろを振り向き、着替えを促す。
集の意図を察してか、いのりはゴソゴソと動く。
後ろで、しかも美少女が着替えている状況にドキドキしない訳では無い。とてもじゃないが、「振り向いたら殺す」というオーラがひしひしと伝えて来る少女の方を振り向く勇気は集にはない。
そして、数十秒ほど経過した頃。
「……いいよ」
いのりからの許可が降りたため、集は後ろを振り向いた。
しかし、格好にあまり大差はなく、思わず目頭を押さえた。なんで服の前が全開なんだよと心の中で堪らず愚痴る。そんな集を見つめながら、いのりは胸の前で手を交差させると頬を赤らめて
「変態」
「……心の声を読むのはやめてくれないか?」
いのりは集に睨みを浴びせたまま、弁当袋に手をかける。紐を解くと、中から四つのおにぎりが出てきた。明け方、眠気眼の集が即興作ったものである。
僅かに目を輝かせた彼女はおにぎりに手を伸ばすと、それを思いっきり頬張った。
凄まじい速さでおにぎりを平らげていき、四つあったおにぎりはあっという間に、残り一個になっていた。
昼御飯と夜御飯を兼用してこの量だったというのに一気に平らげてしまったいのりを見て、思わず頬を引き攣らせる集。そんな集に気づいていないのか、いのりはお腹に手を当てると呟いた。
「……足りない」
「はぁ!?」
集は思わず発叫した。
「うるさい」
いのりは集に一言そう言うと、どこからともなくあやとりを取り出し、二階へと上がる。
そして、地面に座るとあやとりで梯子を作りながら、ロンドン橋の歌を口ずさむ。
いつ聞いても物騒な歌だな、と思いながら集はいのりに声をかける。
「えっと、楪いのり……さん?」
「……とって?」
いのりは集にあやとりの手をむける。
集は頬を掻きながら苦笑いを浮かべた。
「ごめん。あやとりのやり方なんてもう忘れたよ。昔はやったんだけど」
その言葉にいのりは首を傾げて言葉を続ける。
「とって……えっと」
「ああ、名前か。里……桜満集。桜に満腹の満に集めるって書いて、桜満集」
「なら、集。やればできるかもしれない……でも、やらないと絶対に出来ない。桜満集は臆病な人……?」
一理あるな、と思いながら集はあやとりに手を伸ばす。
「……。失敗しても知らないからね」
感覚で覚えていたのか、覚束無い手付きながらもあやとりをとることには成功した集。安堵の息を吐きながら、集は天井を仰いだ。
「えっと……楪いのりさん」
「なに?」
小動物っぽく首をかしげてくる。
「なんでこんなところにいた?」
「……この子を涯に届けるため」
「この……子?」
さっきのロボットを集の前に出してくる。
その時だった。
扉を蹴る音が旧校舎に鳴り響き、アンチボディズの兵達が中に入ってくる。
「ふゅーねる」
そう呟いていのりは下へと飛び降りる。自分を犠牲にしてまで守るなんてそこまで大事なものなのか、と集はその目的意識には俺は感心する。
ロボット───ふゅーねるは前に進もうとした瞬間、力なく項垂れた。
「っ……!」
「おっと」
撒こうとするがすぐに親玉らしき人物に捕まる。
「うっ……!?︎」
一人の兵がライフルでいのりの腹を殴り、気絶させる。支え役など当然いないため、いのりさんは地面に倒れされた。
二階から一部始終を見ていた集に親玉らしき人物が鋭い視線を向ける。
「学生か?」
威圧するように言うが、集は飄々とした調子で答えるだけだった。
「はい。で、こんな古びた校舎に一体何のようです?」
動揺した様子は見せない集に、一瞬目を丸くした親玉だったが、直ぐに表情を元に戻す。
「この女は犯罪者だ……ないとは思うが、もし庇うのであれば君も同罪として浄化処分するぞ」
兵二人が俺にライフルを向ける。集は手を上げてとんでもないと言わんばかりに首を振った。
「……まあいい。それで、データ照合の結果は?」
「六本木の、葬儀社の一員に間違いありません」
葬儀社という言葉に、集は己の眉間の皺が濃くなるのを感じた。
「フン、テロリスト風情が!」
親玉は容赦無くいのりの腹に蹴りを入れた。いのりの口から小さな呻き声が漏れる。
「連行しろ」
「ハッ!」
数分と経たないうちに、いのりは連行された。
嵐が過ぎ去ったような静けさに、半ば呆然としていた集の元にふゅーねるがやって来る。
「……ん?」
ふゅーねるは集に近づくなり、頭の部分を開けると地図を表示する。
「……そういえば、この子をガイに届けるとかなんだとか言ってたけど……」
集はふゅーねるの中を恐る恐る開ける。
そこに入っていたのは、何かが入れられたシリンダーであった。
「……これを、俺に届けろってこと?」
ふゅーねるはただ無言で視線を向けてくるだけで、集の問いには答えない。本来ならば、集が届ける義理はどこにもない。しかし、いのりを助けなかった自分にそんな価値があるのだろうか───と、集は自問自答した。
そして───シリンダーを胸ポケットに入れ、顔を上げた。
「……行くしか、ないのか」
近くの机を蹴る。そして避難用に使われていたであろう地下通路へと続く扉を開ける。
「六本木にはここから行けたはずなんだが……面倒事に巻き込まれないといいな……」
気乗りのしない集は六本木へと足を運んだ。
「……やっぱりこうなったよ」
一時間ほどの時間をかけて、集は六本木に到着した。
酷い有様だった。壊れた街並み、抉れたアスファルト、曇った空。かつて、都会と言われた街並みは見る影もない。
そして、ガタイのいい青年が三人。
「おいお前」
気乗りのしない一番の理由はこれであった。
兎も角治安が悪いのである。集はため息をつきながら、引き攣った笑みを浮かべて答えた。
「なんです?」
「それ、炊けんの?」
「……はい?」
青年から出されたその理解不能な質問に、集は素っ頓狂な声を上げた。
「それ、炊けんの?」
「いや、流石に炊くのは無理だと思いますけど……」
「置いてけよ」
「いや……それは、無理です」
集がそう言った瞬間、青年は急に殴り掛かってきた。
「……危ねえな、おい」
その瞬間、集は動いた。拳による一撃を腕で受け止めて、青年の首筋に回し蹴りを叩き込んだ。
「グフッ……!?」
「陸戦用かよ……ってな」
集は体勢を崩した青年の顔面に膝蹴りを叩き込んで着地。そして、首を回して髪を上げる。
「───おいお前ら」
集の雰囲気が大きく変わる。柔和だった雰囲気が鋭利な刃物のようなものへ。口調も荒々しいものに変り、周囲を一瞥。
集は口角を上げながら手招く。
「お前らはこれが欲しいんだろ?たかが高校生一人だ、俺から奪ってみせろよ」
「てめぇ!」
残りの三人が一斉に飛び掛る。集は最低限の動きで攻撃を避けながら有効打を次々に与えていく。
「死ねぇ!」
「格好いいねえ」
ふゅーねるを垂直に投げ、右手で男の頭を鷲掴みにしてから、集は自身の体重と勢いを使って地面に叩きつけた。
「ヤス!てめぇ……許さねぇ!!」
「おいおい威勢だけはいいな」
上から落ちてきたふゅーねるをボールのように蹴り飛ばし、相手の顔面に叩きつける。転がってくるふゅーねるを回収しながら、痛みに悶絶する青年の股間を踏みつける。
「やりやがったな!」
最後に残った青年はナイフを取り出して集へと猪突猛進してくる。集は体を地面に蹲る青年を蹴り上げ、盾にした後、ナイフを突き立ててきた青年を睨めつけた。唖然とする青年の顔を睨めつけながら集は呟く。
「武器は使うなよ」
天童式戦闘術一の型五番『虎搏天成』。空気を唸らせながら繰り出される神速の拳が、青年の胸に突き刺さり、青年は血反吐を吐いた。
「二度とそのツラ見せんじゃねえッ」
坊主頭の暴漢の頭を踏みつけながら一言言い放つ。暴漢たちの鎮圧に成功した、その時。
突如として無数のライトが集に向けて照らされた。あまりの眩しさに思わずめを細める。
「やあ、死人の諸君」
「あ?」
金髪の青年が俺を見下す形でそういった。
長い金髪。端正な顔立ち。高い背。
誰もが知っている有名人。日本犯罪史上最悪最大犯罪者の一部に入る指名手配犯。
「……
涯はそれを笑みで返した。集は小さく舌打ちをすると、静かに接近してくる少女にふゅーねるを投げ渡す。
「ちょっ!なにするのよ!?」
「俺の用事はお前らにこいつを渡しに来だけだ。じゃあな」
この場を立ち去ろうとした集の目の前に、涯が降り立ち目線を合わせる。集は思わず舌打ちをつきながら、涯を睨んだ。
「なんだよ」
「───あれと一緒にいた女はどうした?」
ふゅーねるを指差しながら涯は言う。集は吐き捨てるように答えた。
「連れてかれたよ」
「……見捨てたのか」
涯から注がれるのは侮蔑の視線。集は大仰に肩を竦めてみせると言う。
「いいか?俺は善良な一般市民だ。伝説の傭兵ならまだしも、ただの男子高校生じゃ無理だ」
ただのを強調して言う集に涯は訝しげな視線を向ける。
「……」
「お前に聞くぜ、恙神涯。お前なら三十もの兵士を一人で制圧出来ると思ってんのか?」
その言葉に涯は一度息を吸ってから口を開こうとして───集たちのすぐ近くで大きな爆発が起こった。
「涯!GHQの白服共が街に入り込んで来てます!」
その言葉に辺りはパニック状態になりかけていた。葬儀社のメンバーは取り乱し、悲鳴をあげ逃げ出す人間も少なくは無かった。
「うろたえるなっ!!!」
涯の一言で全員の動きが止まり涯の方に注目した。
「死にたく無ければ俺の指示に従え!」
取り乱していた者も、逃げ出そうとしていた者も全てが涯の言葉に雄叫びを上げた。
「ツグミ!綾瀬は!?」
「綾ねぇ達は……左方に機影!」
左方を確認すると、エンドレイヴがこちらへとやってくる。しかし、上から現れたもう一機のエンドレイヴがそれを踏み潰した。
集の目の前で再び大爆発が起きる。
「……」
爆炎で涯がなにか叫んでいた気がしたが、振り向くことなく集は地獄絵図と化した街の中へと消えていった。
✧
「……どこだ」
涯と離れてから数分が経過したが、いのりはまだ見つからなかった。肌を焼く暑さが汗を垂らす。
突き当たりを見つけた集は、道の突き当たりを見つるとさらにペースを上げた。
さらに右へ曲がると、道の先にフェンスが見えて来た。
集がフェンスに駆け寄ると、見覚えのある後ろ姿を見つける。
「いのりさん!無事だったか……!」
いのりが無事だったことに安堵する集。
しかし、いのりを中心に広がるその光景を見て思わず血の気が引くのを感じた。
───エンドレイヴと対峙してる。
フェンスを飛び越え、いのりの元へと駆ける集。身体が僅かに悲鳴をあげるが、そんなことをお構い無しに集はいのりの前に立った。
しかし、新たに現れたエンドレイヴが銃器をいのりに向ける。
「やめろぉぉおお!!」
集はいのりと銃器の間に割り込んだ。
その瞬間、胸ポケットに入ったシリンダーから、パキンッと鈴にも似た音が鳴り響く。
その直後、集の視界は銃口からの閃光に埋め付くされた。
「───っ、っ……死んで、ないだと?」
───目を開ければ、そこは奇妙な空間であった。
全面が雪の様な真っ白な空間に黒や銀で点や線の世界で、まるでコンピューターの仕組みを視覚的に表現した様な空間。
「ここは……一体…………」
呆然と呟く集の周りを回っていた線が、二重螺旋状になって縄のように左腕に絡み付いた。
「……っ!」
思わず呻き、そして左腕を見た。
「なんだ、これ…………?」
二重螺旋状の縄は既になく、代わりに左手の甲に奇妙な紋様が浮かび上がっていた。
「ねえ、お願い……」
その時、集の腕の中にいたいのりが口を開いた。
「私を…………使って……!」
いのりの周りに赤い二重螺旋が円になって取り囲む。
その時、集の頭の中に見覚えのない光景が繰り広げられた。
───取りなさい集。今度こそ…………
誰かの声が聞こえた。
いのりに似た少女が、助けを求めながら結晶に包まれ呑み込まれていく情景がの頭の中を横切っていく。
───これは力───
───人の心を紡いで形と力に成す───
───『
「……はぁ!」
集が左腕を薙ぐと、エンドレイヴは僅かにのけ反り、その距離をとる。
集は左手をいのりの胸元に手を伸ばし───その腕がそのまま中に潜り込んだ。
「……っあ」
肉体を抉る痛みなのか、いのりは顔を歪ませる。
その時、いのりの身体の中には到底収まる筈の無い、結晶の巨大な塊が集の左腕と一緒に引き抜かれた。
それを頭上に高く持ち上げた瞬間───結晶が砕け散り中から、巨大な剣が姿を現した。
集は伏せた顔をゆっくりと持ち上げる。
「───覚悟は出来たか、屑鉄共」
紅蓮に輝くその瞳で周囲を一瞥しながら集はゆっくり呟くと、その剣をひくく構えた。
桜満集
年齢17歳
記憶喪失で不幸体質、そして不幸顔。
運動能力は高いが、勉強能力は中の中。
その正体は元陸上自衛隊東部方面隊787機械化特殊部隊 新人類創造計画の里見蓮太郎の魂を宿す少年。
色々あって蓮太郎の側面が強く出ている。
救いは(期限:The Everything Guilty Crown 投稿まで)
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必要
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不必要