Guilty Bullet -罪の銃弾-   作:天野菊乃

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改訂:2019年12月13日


【episode21】

 海の音と虫の鳴き声が綺麗な音を奏でている。

 関係の無い話、音楽に関して天童菊之丞のお陰(せい)で結構理解出来ているつもりでいる。

 

 ───来たか。

 

 集は目を開き、展望台から今回の目標である神社に偽装した研究所を睨む。

 

「おーい集」

「……遅刻だぞ、颯太」

 

 集は、薄ら笑いを浮かべながら、颯太の方を振り向く。

 

「ったく……なんだよ、こんな時間に俺を呼び出してよ」

「いや、向こうで話しづらいことだから───」

 

 表情を変えず、集は言った。

 

「颯太。なぜ俺といのりさんが同居してることを知っている?」

 

 颯太の表情が強ばる。表情を変えずに冷めた視線を送りながら、視線を泳がす颯太を睨みつける。

 

「答えろ」

「……い、いやぁ……だから、たまたま見ちゃって───」

「ストーカーだろ。あからさまな嘘をつくな」

 

 颯太の顔が更に強ばる。集は眉一つ動かさず、そのままの表情で言い放った。

 

「いのりさんに興味があるのは結構だ。だが、ストーカーは駄目だろ」

「ぐ、ぐぅ……そんなこと言わなくたって───」

「───そんなこと?ストーカーがそんな事だと?お前の言うそんなことで殺された人だっているんだぞ。それに、日本にはストーカー行為等の規制等に関する法律が2000年11月24日に施行されている。お前、犯罪者予備軍だぞ」

 

 何も言い返すことが出来ない颯太。

 悪い奴ではない。それは、いつも適当にあしらっている集でも分かる。しかし、偶に常軌を逸した行動を取るのは問題だ。

 集は表情を崩し、颯太に近づくと浴衣を掴む。

 

「いいかよく聞けよ颯太。いのりさんを襲ってみろ。お前の目を抉りとって二度と人様の顔を拝めないようトラウマを植え付けてやる。だが、俺は優しいからな。今回のことを警察に言うつもりもない」

「ほ、本当か!?」

「……お前、正真正銘のクズだな」

 

 左手が颯太の身体の中に沈み込む。左手を引き抜くと銀色の糸状のものが形を形成していく。数秒が経過。集の手元には近未来的なカメラの形をした颯太のヴォイドが収まっていた。

 肩に担ぎながら気絶する颯太を見やる。

 

「……格好悪いぜ、今のお前。正面から掛かって来いよ、颯太」

 

 意識のない颯太にそう呼びかけるとカメラを何も無い空間に向ける。

 

「───いるのはわかってるんたまよ。とっとと出てこい」

 

 景色が歪む。次第に灰色の布地に変わり、中から誰かが出てきた。

 その人物はツグミだった。集はカメラを下ろしながらなんだ猫耳かとボヤく。

 

「ぶっ飛ばすわよあんた!」

「ギャーギャーうるせえな。発情期かお前」

 

 相変わらず無駄にうるさいツグミに片耳を塞ぐ。

 

「……他の奴も隠れてないで出てこいよ。いるんだろ、どうせ」

 

 辺りの景色が一斉に歪み出す。集は自分の頬が引き攣るのを感じながら苦笑いを浮かべる。

 

「……お前ら光学迷彩の無駄遣いしてるんじゃねえよ」

「お前の行く末を見たかったのでな」

 

 涯が俺の目の前に現れて言う。

 

「……いのりさんは使ってねえぞ。残念だったな」

「いやお前ならいのりは使わないと思っていたさ。あくまでも奥の手を言ったまでだ」

「本当に性格悪いなお前」

 

 そう言いながら睨みつける集の視線を逃れるように涯はコートを翻す。

 

「そんな顔をするな。いのり、集。俺について来い」

 

 もう涯に何を言っても通用しないだろう。集は息を吐くと、涯の後に続こうとする 。集の隣を歩くようにいのりさんが集に近づいた。

 

「……」

「……いのりさん?」

「……格好よかったよ」

 

 癒愛なのかいのりなのか。どちらの人格が表に出ていたのか分からなかったが、思わずドキッとしてしまったのは余談だ。

 

 

 

 

 

 

「……何段あんだよ、この階段」

 

 神社に続く階段を登り始めてからかれこれ数分が経過しようとしていた。

 そろそろ着いてもいい頃合だと思うのだが、頂上は一向に見えてこない。

 古い記憶に天童菊之丞に登らされた思い出し、思わず苦い表情を浮べる。

 

「辛いか?」

 

 先にいた涯が不敵な笑みを浮かべながら集を見下ろす。

 

「んなわけあるか」

 

 軽口を叩気あっているうちに、ようやく頂上に辿り着く。表向きは普通の神社のようで、見張りの兵士はどこにも見当たらない。

 

「警備の目は問題無い。問題は内部だ。集、そのカメラでゲートを撮れ」

「わかった」

 

 涯の言う通り、カメラを施設の扉に向けて構え、シャッターを切る。

 子気味のいいシャッター音と共に、カメラから閃光が放たれる。するとロックが外れる音がして神社の扉が開く。

 どうやら厳重なロックが何個かかかっていたようだが、それは何の抵抗も無く開いた。

 

 ───科学の力、心の形(ヴォイド)の前では意味をなさず。

 

「魂館颯太のヴォイドは閉ざされたものを開くヴォイドだ」

 

 俺が質問する前に涯はそう言うと、手で合図し扉をくぐる。その後ろを集といのりはその背後を歩く。

 その後も封鎖された扉が現れたが、カメラのヴォイドのお陰で難なく通過することが出来た。

 だが、どこか可笑しい。集は眉間に皺を寄せた。

 

「……妙だな」

「お前もそう思うか」

「ああ。内部に一人も見張りがいない。兵士は何処へ消えた?」

 

 微かにした鉄の匂いに目を見開き、颯太のヴォイドを道の角に置く。咄嗟の判断で涯といのりに叫ぶ。

 

「涯、いのりさん!伏せろッ!!」

 

 ポケットからメリケンサックを取り出すといのりの目の前に飛び出す。

 

 ───瞬間、火花が飛び散る。

 

「───随分と手荒い歓迎じゃねえか」

「……へえ、私の剣戟について来れるようになったのね」

 

 ───視線と視線が交わる。メリケンサックを手に持つ俺の拳と刀が離れる。

 

「───久しぶりだな、木更さん」

「───ええ、久しぶりね。桜満くん」

 

 身体のラインがくっきりと現れるスーツを着た天童木更が集たちの目の前に現れたのだった。

救いは(期限:The Everything Guilty Crown 投稿まで)

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