Guilty Bullet -罪の銃弾-   作:天野菊乃

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【episode22】

 ───天童木更(てんどうきさら)

 集が前世に勤めていた天童民間警備会社の社長。聖天子の補佐官を務める天童菊之丞の孫娘で、天童式抜刀術の使い手でもある。

 本来は良家の令嬢なのだが、幼い頃に両親が親族達の陰謀で亡き者とされた事を機に一族から出奔している。

 そのため両親の死が引き金となって、ストレスから腎臓の機能障害を併発、俺が死に至るまで人工透析を受け続けていた。

 そのため長時間は戦えない筈なのだが、どうやら目の前の彼女はそういう問題は解決しているらしい。

 

「……万全なあんたと戦うのは骨が折れそうだな」

「あら。不幸顔にも分かるのね」

「……不幸顔は関係ねえだろ」

 

 そう言いい放つも、少しでも木更から目を離したら確実にこの首が跳ぶというプレッシャーに駆られていた。目の前の木更は間違いなく自分よりも格上の存在。下手に手出しをしたら、確実に負ける。

 ゆっくりと、相手の動きを観察しながら、一歩、二歩と後退する。

 

「───そんなに身構えなくてもすぐに切って掛かったりなんてしないわよ」

 

 木更の言葉に僅かに緊張感を弛める。

 もうすぐ目標の場所なのだろう。恐らくそれほど離れていない。木更が居るということは目的のものはすぐそこにあるということだ。

 

「……お前は」

 

 涯は身の覚えのない木更を睨みつける。当然だろう、目的のものがすぐそばにあるのに、それを妨害されるのは誰だって嫌がることなのだから。

 そんな涯に、木更は微笑みを浮かべた。

 

「───こんばんは恙神涯。あなたは運が無いわね」

 

 木更は腰を落として刀に手を添える。自在に動き出すことが出来る攻防一体の技。涅槃妙心の構え。集は弛んでいた緊張感を一気に引き締めた。

 

「今日、この場所でリーダーが死ぬなんてね」

 

 木更が抜刀。その瞬間、集が木更に向けて拳を振りかざした。拳につけたメリケンサックと刀が甲高い衝撃音を鳴り響かせ、集と木更は距離をとる。

 

「……。……行け。ここは、俺が相手をする」

 

 百載無窮の構え。腰を落として、構えを取る。遠くの方で自らの刀を見詰めた後、木更はこちらへと視線を寄越してきた。それはあまりに冷えた視線だった。

 

「……退いて。あなたじゃ私には勝てない」

 

 木更は無表情でそう言う。髪の間から覗くその瞳は俺の世界にいたガストレアを連想させた。

 後ろを庇いながら戦うのはあまり頭がいい戦いではない。

 

「涯、俺が時間を稼ぐ。行け」

「───だが、三対一で戦った方が有利だろ」

「そういう常識が通用する相手じゃねえんだ、早く行けッ!!」

 

 義眼、解放。XD拳銃を一発発砲すると、涯はやれやれと首を振る。

 

「……わかった。死ぬなよ、集」

「ああ。いのりさんも、涯について行ってくれ」

 

 いのりさんは首を縦に振らない。集は焦燥感に駆られながら、叫ぶ。

 

「迷ってるんじゃねえぞ、俺を困らせたいかッ!!」

「……ッ!!」

 

 集が催促するといのりさんは渋々ながら涯の後ろに着いて行った。

 木更が涯の元に駆ける。その間を阻むように集は隠禅・黒天風を繰り出す。

 油断を着いた蹴りに木更は反応が遅れ、遠くに吹き飛ばされる。指を鳴らす集に木更は冷たい言葉を吐く。

 

「邪魔よ」

「知ってる」

 

 集が一言言うと、木更は目を細くしながら刀の切っ先を集へと向けた。

 

「───その首、跳ね飛ばしてあげる」

 

 木更さんが足のバネを使って集に近づく。

 

「───天童式抜刀術一の型六番。彌陀永垂剣ッ!」

 

 超高速の居合によって対象を賽の目状に切り裂く技。集は咄嗟の判断で、体を捻り神速の突きを繰り出した。

 

「虎搏天成!」

 

 天童式戦闘術一の型五番のこの技。ほぼノーモーションで繰り出すことが出来るため、カウンターとして使用。凄まじい衝撃が腕に伝わるが、動かせないほどではない。

 屍だらけの空間に金属音が鳴り響く。集が連携技で蹴りを繰り出そうとすると、木更さんは後ろへ大きく跳び俺から距離を取る。

 

「どうした……」

「……あなたの武器、破壊させてもらったから」

 

 木更が言うと手に持つメリケンサックが粉々に砕け散った。金属片の一部が手の甲に突き刺さり、血が流れる。

 

「……耐久度なんて元々期待なんてしてねえよ」

 

 手に刺さった金属片を半ば強引に引き抜き、苛立ちげに木更の方に投げつける。こんな目に見えた攻撃では木更の足止めにもならず、刀の柄で防がれた。

 劣勢を強いる集に木更は提案を投げかける。

 

「恙神涯の首を差し出せば、あなたの命は奪わないであげる」

 

 その言葉に集は鼻で笑った。

 

「馬鹿言うなよ。そんなこと言うならその殺気をしまってから言ってくれ」

 

 今度は腰に下げていた警棒を取り出す。これは菫が作っていたものの不良品だが、バラニウムに勝るとも劣るくらいの強度なので、集が無断で拝借してきたものだ。無論、菫にはバレているのだろうが。

 

「へぇ、私と剣で語り合おうと?」

「剣術は少しだけだが齧ってるからな!」

 

 地面を力強く蹴って木更に近づく集。

 天童式抜刀術では木更が腕は上。まともに殺りあったら勝てる確率はまずない。距離を一瞬で詰め、剣を握っていない拳で木更を殴る。

 

「ッ!?」

 

 天童式戦闘術にない動きのせいで、木更の動きが鈍る。後ろに吹き飛んだ木更に追いつき、顎を蹴り上げる。宙に浮いた木更の腹を殴り上げ、天井近くまで飛ばす。同時に集も宙に飛び体を限界まで捻り、警棒を持つ手に力を入れる。

 

「俺は俺のやり方で、木更さん!あんたを超えてみせる───天童式戦闘術無の型一番!」

 

 放たれるのは神速の二撃。十字に切り裂くその技の名前は───

 

獅爪(しそう)黒十字(くろじゅうじ)!」

 

 カマイタチによる斬撃を繰り出し、とどめに踵落としを繰り出した。

 地面に着地すると、集はあることに気がついた。

 警棒の先がない。いや、完全にないという訳では無い。だがこの光景は目を疑うしかない。

 なぜなら金属では到底ありえない液化現象が起きていて───

 

「それはこの子の能力みたいなものよ」

 

 刹那、殺気。集が横に転がり込むと、さっきまでいた場所は一瞬にして溶けた。木更の方を思わず睨むと、集は固唾を呑んだ。

 木更の持つ刀から放たれる異様な熱。熱さとは反対に集の血の気が引いていくのを感じた。

 

「……あんた、機械には頼らないんじゃなかったのかよ」

「気が変わったのよ。勝つためなら何だってするでしょ?」

 

 木更の持つ刀が鋼色から熱を帯びた赤色の刀に変化した。




獅爪(しそう)黒十字(くろじゅうじ)
天童式戦闘術無の型一番で集が独自に編み出した技。内容としては使える技の集大成なので零の型は取らない。
元ネタ:BLACK CATの黒十字

救いは(期限:The Everything Guilty Crown 投稿まで)

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