Guilty Bullet -罪の銃弾-   作:天野菊乃

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遅くなりました。申し訳ありません。
文章がやっつけ仕事みたいな感じになってしまいましたが、合間を見て変えていくのでよろしくお願いいたします。


【episode33】

 剣と刀がぶつかり会う度に、火花が飛び散り甲高い金属音が鳴り響く。ユウの持つ剣の方が、集の持つ刀よりも質量が大きく、鍔迫り合いになる度に押し込まれるものの、王の能力によるオーバーアシストで何とか防ぎ切っていた。

 しかし、状況はあまりいいとは言えなかった。

 木更との戦闘の傷が未だに癒えていないのに加え、戦闘で時間がかかりすぎている。加えて、いのりは祭壇のような場所に磔にされているため悠長にはしていられない。一刻も早く助けにいかなければならないと言うのに、目の前のユウはその時間稼ぎをするかのように集の行く手を阻む。

 

「……いのりさんでなにを企んでやがる」

「企む?人聞きの悪い。ボクたちはイヴを復活させようとしているだけですよ」

「それをたくらみって言うんだろうがッ!」

 

 悪態をつきながら後方に跳躍。ホルスターに納められたXD拳銃をドロウするなり、ユウに向けて2、3発発砲。しかしユウに直撃する寸前、見えない壁が阻み、甲高い金属音を撒き散らしながら真鍮色の銃弾は地面に落ちた。

 カートリッジを地面に放り捨てながら集は悪態を着く。

 

「ちっ、反則だろ」

「あなたが言いますか」

 

 両者は地面を蹴り、距離をとると互いを睨めつけ合う。すると、ユウは何を思ったか剣を地面に突き立て、ヴォイドをいのりの中へと戻した。

 その幻想的な光景を訝しげに睨みつけていた集は、静かに呟いた。

 

「……お前は一体何がしたいんだ」

「言っているでしょう。ボクはあくまでイヴの復活だけが目的です」

 

 集はその言葉に刀の切っ先をユウに向けて言い放った。

 

「復活復活っててめえはそれだけしか言えねえのかッ!桜満真名を復活させたらいのりさんはどうなる。どうせいのりさんは死ぬとかそんなことだろう!」

「ええ、その通りです」

「ふざけるんじゃねえぞッ!」

 

 ふと、あの地獄のような風景を思い出して吐き気がしたが、足を踏ん張ってぐっと堪える。歯を噛み締めながら集はユウを睨めつける。

 

「……いのりは返してもらう。いのりはこれからの世の中に必要だッ。天童式抜刀術の一の型の一番───」

 

 ───滴水成氷。ユウと集の距離は実に3メートル。普通の刀のリーチでは届くはずがないが、この技ならば、ユウに難なく当てることが出来るだろう。

 集が右足を踏み込み、刀を思いっきり振るったその時だった。

 

「───返す?そこの娘は元から我々のものだ」

 

 そう声が聞こえた瞬間、集の右腕を銃弾が貫いた。

 鋭い痛みに刀を落とし、宙に舞った刀を左腕でキャッチ。勢いをそのまま、結晶だらけの床を2、3度ほどバウンドしながら地面を滑る集。

 すかさず起き上がるとユウといのりの間に白髪の青年が立っていた。

 ユウはほくそ笑みながら言う。

 

「遅かったでは無いですか。シュウイチロウ」

「ああ。少しばかり時間を取られた」

「お前は───」

 

 確か、茎道修一郎という男だ。

 元特殊ウイルス災害対策局長で、アンチボディズの指揮官。逮捕されたと聞いていたが、なぜこんな場所にそんな男がいるのだろうか。

 

「……ふん、お前呼ばわりとは随分と偉くなったものだな。桜満集よ」

 

 そんな集を見下ろしながら茎道は言う。同時に、ユウが茎道の横に移動しながら言った。

 

「貴方が『楪いのり』と呼ぶものは、マナと意思疎通を図るためのインターフェース用インスタントボディ───我々が作った人工生命体です」

「作った、だと?」

 

 震える声で呟く。

 

「そして見るがいい。これがこの世に再び君臨するイヴだ」

 

 茎道の背後に階段が現れ、その最上部には桃色の髪の少女が眠っていた。

 一糸纏わぬ姿で紫色の光の中で膝を抱え宙を漂い、その周りにはどんな用途で使うかも分からない機械が少女を覆っている。

 集はその人物を知っていた。

 

「いのり?いや……違う、あいつは……あの女は……桜満、真名ッ!」

 

 守られている様にも、捕らわれている様にも見える機械の中で真名が静かに眠りについていた。

 

「マナは石に触れ、『アポカリプスウィルス』の第一感染者となり、肉体を失った。彼女の魂は新たな肉体に注がれ、今再びこの世に舞い戻る」

「何を……言っている」

「そして、古き世界は終わりを迎え……新たな世界が始まる。私はその証人にならなければならない」

 

 茎道は一方的に集に言葉をぶつける。

 まるで人間では無いかの様な残虐性と狂気的な不気味さを感じた。

 

「ふざけんじゃねえ!新世界の証人だと……てめえの自分勝手な理由で人様の命を弄ぶなッ!」

「そんなことを言っても無駄だ。もうイヴの復活はすぐそこにある」

 

 対話も交渉もコミュニケーションの通じないと、集はほぼ本能的に感じ取った。集は沸き上がる怒りを抑えられずに睨む。

 そんな集を嘲笑うかのように、ユウは言う。

 

「桜満集。貴方は結局、イヴの記憶を全て取り戻すことは出来ず、アダムたる資格を放棄した愚か者よ」

「……元よりそんなものに興味はない」

 

 アダムだのイヴだの言われても、集には理解できない。

 

「残念です。イヴを……桜満真名を救えるのは貴方だけだったというのに」

「救えるだと?」

「貴方が彼女の意思を汲めば、彼女は目覚め黙示録の再来となる。今度はこの国に留まらず、世界中にアポカリプスウィルスによる淘汰が始められたというのに」

 

 ユウは指を鳴らすと、静かに言い放った。

 

「残念です、ダァトは貴方を高く評価していたというのに。貴方自らの手で人類を次なる進化へ導くという計画が台無しだ。仕方ない、まず貴方から最初に脆弱な肉体を捨て、新たな世界へと導くと───」

 

 刹那、発砲音。最後のカートリッジを装填した集がユウに銃口を向けて発泡していた。

 

「戯言ほざいてんじゃねえぞ!」

 

 集は凄絶な怒りを静かに言葉に秘めた。

 

「お前らが思っているほど人間ってのはヤワな生き物じゃねえッ」

「かつて腕と足と光をガストレアに奪われたあなたが言いますか」

「黙れッ!」

 

 刀を両手で持ち、ユウに出鱈目な軌道で刃を振り下ろす。

 しかし、どこからともなく現れた強化外骨格が集の身体を背後から拘束し、地面に押し倒した。

 集は怒気を孕んだ表情でユウを見上げた。

 

「さっきのあれはこいつらを呼ぶための合図ってことか……ッ」

「そういうことです」

 

 ユウは強化外骨格の一人から拳銃を受け取ると、照準を集の眉間に定めた。

 逃げようにも、強化外骨格たちに四肢を拘束され、身動きが一切取れない。

 

「───さようなら、桜満集」

 

 ユウは引き金を絞り、集の眉間に発砲した。

 ユウの表情から吊り上げた様な笑みが消え、無表情になる。

 

「……最期まで我々と敵対するとは───愚かなものです。桜満集、あなたが選択を誤らなければ、その命を奪わずに済んだものを」

 

 ユウの言葉には、失望の色が込められていた。ユウは集の背を向けると、ユウはいのりと茎道がいる段上にやってきた。

 

「要は済んだのか」

「ええ……シュウイチロウ。儀式を始めましょう」

「……ああ、言われずとも」

 

 ユウは茎道に歩み寄る。

 すると段上の中央。いのりの目の前に細い台座が伸びた。

 ユウが始まりの石を取り出し、手をかざすと、石が砕けて、2つの小さな指輪へと形を変えた。

 

「これから、シュウイチロウが楪いのりを介して、マナへプロポーズを行います」

 

 茎道がああ、と返す。そんな時、途方もない寒気が茎道とユウと強化外骨格たちに襲いかかった。

 ふとユウが背後を振り向くと絶命したと思われていた集の姿がなかった。

 あの男は一体どこに。気の所為か?───ユウがいのりのほうに向き直った時だった。

 

「───()()()()を、どうするって?」

 

 前髪を血で真っ赤に染めた桜満集がユウの目前に立っていた。眉間にあったはずの風穴は完全に塞がっており、身体中にあった傷はどこにもない。

 ユウがなぜ生きていると叫ぼうとすると、集の右腕が閃いてユウの顔面を掴み、思いっきり地面に叩きつけた。

 

「シュウイチロウッ!はやく!!」

 

 茎道がいのりの指輪を嵌めようとする前に集が動き、茎道の横腹を蹴飛ばした。その際、指輪が茎道の手からこぼれ落ち、遥か下に落下した。

 同時に磔にされていたいのりが真名の元にゆっくりと浮上していく。

 集はその様子を見ながら舌打ちをする。

 

「な、なぜあなたが生きてい───」

 

 無言で振り下ろした木更の刀は、ユウの右腕を切断した。

 苦痛にまみれた絶叫と鮮血の飛び散る音が辺り一面に響き渡る。

 

「あ、あなた……一体自分が何をしたかわかって!?」

 

 集のブーツがユウの口の中に捩じ込まれる。そして、集が右腕を掲げると、宙に漂っていた銀色の非現実的な螺旋状の糸が集の右腕に纏まりついた。

 

「……」

 

 無言で己の右腕を見つめる集。

 

「……ま、まさか……あなたは……」

 

 ユウは目を見開いたまま集のその深淵を覗いた。覗いてしまった。

 そこに居たのは桜満集ではなかった。

 黒い喪服の上から黒いコートを着込んだ黒髪黒目の青年が此方を見上げていた。四肢は黒い金属の装甲に包まれていて、サイボーグというに相応しい外見をしていた。

 ユウは息をするのも忘れてその青年を凝視した。

 まさか、あれがあれこそが───

 

「そ、そんな馬鹿な……黒い銃弾(ブラック・ブレット)はボクらと同じ意志を持っているはず───ッ、なのによりにもよってなぜあなたがボクたちの邪魔をするのですかッ!!」

 

ユウの言葉に集は目を細める。

 

「別に俺はお前らと同じ思想なんて持ってねえんだよ。何を勘違いしたのかは知らんが、一緒にするな」

 

 ただ冷静に呟いた集は用済みとなったユウを蹴ると、その意識を狩る。

 そして、頂上に立つ真名の元へと向かうべく、長い階段を登り始めた。

 最初はゆっくり歩きながら、徐々に速度を上げ、途中から一段、二段と飛び越えながら頂上を目指す。

 

『───ッ』

「退け」

 

 横から飛び出してきた強化外骨格を裏拳で怯ませ、その隙に木更の刀を振るう集。袈裟斬りに斬られ、上半身と下半身を分けられた兵士は集の回し蹴りでトドメを刺され、その機能を停止した。

 

こいつ(コンタクトレンズ型義眼)は……今は使い物にならないか。視神経に直接電動を流し込んでどうたらって先生は言っていたが耐久性はまだまだだな」

 

 コンタクトレンズを外し、そこらに放る。そして、再び駆け出し始める集。

 遅れて強化外骨格たちも集の後を追う。だが、王の能力をフルに発揮した集に追いつくはずもなく距離はどんどんと話されて行く。

 強化外骨格たちは腕からミサイルランチャーを取り出すと、集に照準を向けて引き金を引いた。

 爆破音とともに階段が吹き飛ばされる。が、その場に集の姿はなく、集は宙を舞っていた。

 王の能力で駆け上がるようにいのりもとまで一気に走り抜け、いのりの拘束台を刀で一閃、切断する。

 集の胸元に倒れ込んできたいのりを受け止め、揺すると、いのりは瞼をゆっくり瞬かせながら小さく息を吐いた。

 

「……かはっ」

「大丈夫か」

「……大丈夫、です」

 

 青い瞳のいのり───癒愛が目を完全に開けると、小さく笑って見せた。

 

「蓮太郎さんは、大丈夫ですか?」

「……」

「蓮太郎さん?」

「……ああ、大丈夫だ。問題ない」

 

 集もいのりに釣られて小さく笑ってみせるが───その笑みはどこか悲壮感が漂っていた。集は静かに目を閉じて言う。

 

「……悪いな、癒愛。あともう少しだけ眠っていてくれないか?」

「終わらせるんですね」

「……」

「私たちの心は蓮太郎さんに預けます。この世界を救ってください」

「───ッ」

 

 集は一瞬癒愛から顔を背けるように顔を伏せたが、すぐにゆっくり面持ちを上げた。

 

「……俺に、任せろ」

 

 いのりの胸元が眩く輝く。集はいのりの胸元に手を伸ばし、それを躊躇いなく引き抜いた。

 手に握られるはいのりと同じ断罪の剣。これだけ見て、集はああ、やっぱりなと呟く。そして、左手に握ったままの木更の剣をどうしようかと考えた結果、いのりを安全な場所まで運んだ後、そこに木更の刀も置いた。

 そして、再び宙を駆けて真名の元にやってきた。

 

「……」

 

 集はいのりの剣を天高く掲げると両手で握りしめる。

 

「消えろ、桜満真名ッ」

 

 そして、集は剣を振り下ろした。

 

 

 

 

「いのりちゃん、この世界で唯一二つの魂をもってる君だから教えよう」

「なに?」

 

 話に興味を持ったいのりは菫と向かい合うようにして再度座る。窓に掛けられた遮光カーテンから微かに月光が漏れている。いつの間にか夜になっていたようだ。

 

「蓮太郎くんのことについてだ」

「……集の、もうひとつの魂がどうかしたの?」

 

 いのりは赤い大きな目を瞬かせる。菫は足を組みかえながら微笑を浮かべる。

 

「いのりちゃん。君は、彼についてどこまで知っている?」

「昔、聞いたことがある。天童民間警備会社の社員、または元陸上自衛隊東部方面隊第787機械化特殊部隊『新人類創造計画』の人間だって言ってた」

「……そうか。やはり彼は何も言わなかったのか」

「やっぱり?」

 

 菫の不可解な言葉に小首を傾げるいのり。菫はいや、すまないねと言いながら続けた。

 

「いのりちゃん、癒愛ちゃんと人格を交換出来るかい?」

「そんな事しなくても私と彼女は情報を常に共有してる。だから、私の口から直接話すことも可能。だけど、変わって欲しいと言うならば……即座に変わることは可能です」

 

 言っている途中にいのりの瞳の色に青みがかかり、数秒で青く染まる。人格が変わった証拠だ。

 こうやって蓮太郎くんも顕著に現れてくれると私としてもやりやすいんだがなと思いつつ菫は続ける。

 

「そうか。なら続けよう。癒愛ちゃんは自分が何年までいきたとか何が死因だとかそういうことは知っているかい?」

「……何が言いたいのですか?」

「いいから」

 

 渋々ながら、癒愛は答える。

 

「2031年。死因は第三次関東会戦」

「……辛いことを思い出させてしまって済まない」

「気にしてません……ところで、どうしてこんなことを?」

「確認の為、さ。なら知らなくても無理はないか」

 

 菫は隈に縁取られた瞳を一瞬閉じた後、ゆっくりと目を開けて言った。

 

「君の知っている里見蓮太郎は、彼の中にはいない。彼の中にいるのは、里見蓮太郎という存在が腐り果てた里見蓮太郎の成れの果てだ」




色々と明かされる新事実!そして超絶展開!!
次回!蓮太郎死す!デュエルスタンバイ!!

※死にません。

救いは(期限:The Everything Guilty Crown 投稿まで)

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