Guilty Bullet -罪の銃弾-   作:天野菊乃

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先程は誤って投稿してしまいました。申し訳ありません。
そんなわけでメリーロストクリスマスです。リア充の方々が軒並みキャンサー化するのでニッコリです。
今回からサブタイトル導入です。アンケート結果は救いありの方らしいです。ありがとうございました。
ですが、ここの章はポロリコースです。大変になりそうですね。


The Everything Guilty Crown
【Episode:01】


白き華は黒く染まった。

 

闇に蝕まれた体は、誕生を忌み嫌う。

継ぎ接ぎだらけの肉体は、創生を忌み嫌う。

錆び付いた心で、悪夢のように引き金を引く。

 

虚無とする死が。

生を断ち切る死が。

幸せだった華の世界を喰い尽くす。

忌むべき惡が、華に纏わりつく。

 

審判の炎が大地に降り注ぐ。

壊れた時と人と夢。

華は業火に灼かれていく。

 

黒き華は消えていく。

この世界を呪うように。

 

 

-The Everlasting Guilty Crown-

 

 

 

「なあ、集!聞いたか!?今日から米の配給が始まるらしいぞ!!」

 

 太宰治の『人間失格』を枕に仮眠をとっていた桜満集は、腹に突然訪れた衝撃に目を覚ました。

 

「……あ?」

 

 忌々しげに目を開けると、干からびたパンを貪りながら喋る魂館颯太が集の腹部にやたらと食べ物が詰め込まれた紙袋を落としたようだ。

 殴る気は不思議と湧かなかったので集は枕代わりに使用していた本を手に取ると、颯太に見せつけるようにしてから開口。

 

「おい人間失格。米の配給ごときで俺の貴重な睡眠時間を奪うんじゃねえよ」

「お前俺に対してやけに当たり強くないか!?」

「んなことはねえよ、人間失格」

 

 ギャーギャー喚く颯太の声を聞き流しながら、集は部室である廃校舎の2階を見下ろした。

 スクラップと化した自立施行型エンドレイヴの上にいのりが座り、その横にはふゅーねるが何やら操作をしている。情報でも抜き取っているのだろう。

 

「……あまりいい思い出ないから早く処分して欲しいんだがな」

「あんたが『この自立施行型のデータを抜き取ってくれ』って言ったから潜入中の私がここにやってきたのに!なんなのさ、そのセリフ!!」

 

 集がボヤくように言うと、端末を操作していたツグミが睥睨。集は手をひらひらと振って本に目線を戻した。

 その態度が気に入らなかったのか、ツグミは肩をわなわなと震わせると集にドロップキック。完全に警戒心を解いていた集はそれをモロに喰らい、壁に叩きつけられた。

 

「ぐえっ!?」

 

 苦悶の声を漏らしながら集はツグミを睨む。

 

「て、てめっ、いきなりなにしやがるッ!?」

「それはこっちのセリフよ!!私のことなんだと思ってんのよ!!」

「趣味の悪いパイロットスーツ着た猫耳に決まってんだろッ!!」

 

 ちなみに現在のツグミの装いは東京周辺の中等部の制服だ。颯太は「え、何の話?」と会話に割り込もうとしたが、集に鳩尾を蹴られてくの字に曲がった。

 

「なんですってぇ!?」

 

 ギャーギャー喚きながら引っ掻き攻撃を繰り出してくるツグミの猛攻を避け、集は外に飛び出した。

 

「ったくよ……」

 

 屋上、廃校舎、家が集が静かに眠れる空間だ。

 集の家は天王州第一高校から数駅離れているところにあるのだが、歩いて帰れない距離では無いため、集といのりがここにいる必要は本当はない。

 しかし、現在自宅周辺はGHQが完全包囲しているために帰ろうにも帰れず、屋上は避難してきた余所者で溢れかえっているのでとてもむさ苦しい。

 消去法として廃校舎にいたのだが、約二名ほど喧しい人間がいるお陰で気が休まるどころか疲れる一方だ。

 

「今年に入ってから風穴空くわ死にかけるわで本当についてねえよな……」

 

 集は曇り空を見上げながら、体育館へと向かう。

 

「おい先生、いるかよ」

 

 体育館の受け付けを顔パスで通過すると、珈琲を飲んでいた室戸菫が入口付近に立っていた。菫は集の姿に気づくと、クマに縁どられた瞳で集を見つめた。

 日頃外に出たがらない彼女がこんな所にいるのはどうせ「死屍累々としたこの光景を見るのが楽しい」という理由で来たに決まっている。

 聞いてもいいが、ろくな答えは返ってこないだろう。心の中で勝手に決めつけながら菫の真横に立つ。

 

「おや桜満くん。君が私に呼ばれずして来るとは珍しいじゃないか」

 

 大概は放送によって呼び出される集であったが、自らここに赴くとは思っていなかったのか驚いた表情をしている。集は髪をガシガシとかいてから諦めたような表情でボヤく。

 

「何処もうるさくてたまらねえからな」

 

 ポケットに手を突っ込みながら死屍累々としたこの光景を一望する。

 体育館は避難してきた中でもキャンサーが発症してしまっている患者たちで溢れかえっていた。軽症のもの、重症のもの───天王州病院から派遣されたであろう菫は大きな欠伸を零しながらカルテを集に隠すようにしてファイルの中に入れた。

 

「見せてくんねえのか?」

「残念だが、医者には守秘義務があるんだ。見せるわけにはいかないよ」

 

 変なところで医者としての側面を見せてきた菫に驚く集。『もし見たかったら医者になるといいさ』と言った菫に、適当に答えてから再びキャンサー患者たちの方に視線を戻す。

 その中には患者の中の一人の手を握る寒川谷尋の姿も見えた。しかし、どこかその表情は苦しげだった。

 

「……哀れだな」

「おや。意外だね、君からそんな言葉が聞けるなんて」

「生命維持装置。いのりの血の投与。あそこまでやって回復が見込めないってことは寒川潤自体に生きる希望がないからだ」

 

 集は谷尋を睨めつけながら言い放つ。

 

「そんな人間を生かしていても仕方ねえだろ。殺してやるのも救いなんじゃねえのか」

 

 集のつぶやきに菫は瞑目した。

 菫の知っている蓮太郎も同じようなことを言っていた。

『助からない人間は俺が殺す』『ガストレアになりかけていた。だから殺した。それが慈悲だ』と、自らの心を殺して呪詛のように、何度も何度も言い聞かせていた。

 正義の味方から悪の敵になり果てた蓮太郎には誰かを救うことさえも、世界を救うことの二の次だった。

 結果、蓮太郎は死神になった。

 そのことを、集は知らない。菫は教えるつもりすらない。

 いつどこで集の中にいる里見蓮太郎という人間が表に現れるかわからないからだ。もし、蓮太郎が表に出た時は───

 

「……」

 

 ───桜満集という人間は死に、アポカリプスウィルスによって汚染されたこの世界は、里見蓮太郎という死神が滅ぼしてしまうのだろう。

 

 

 

 

 体育館を出た時には空は分厚い雲に覆われ、陽の光が遮られていた。

 集は左手をポケットに突っ込んだまま、舗装されていない廃校舎へと続く道を歩いていた。

 

「……いのりとあった時もこんな天気だったな」

 

 集はボヤきながら再度空を見上げた。

 まるで自分の心の内を映し出したようだった。相変わらず占いのコーナーでは最悪だったが、出会いはあるという本日の占いコーナーの内容を思い出しながら、苦笑いを浮かべる。

 

「何回も出会いがあってたまるかってんだ」

 

 そう呟きながら視線を元に戻して、緩んでいた表情を引き締めた。

 集の真正面から少女がこちらへと近づいて来ていたのだ。それだけなら何らおかしなことでは無いのだが、数秒前まで確かに集の目前には誰もいなかった。

 年齢は十代半ば程だろうか。薄い青髪のショートヘア、茶金の瞳に白を基調としたコートにベレー帽。

 そして、何処かいのりと似た雰囲気を身に纏う儚く朧気な少女。

 

「……みーつけた」

 

 ───刹那、少女の瞳が()()()()()()()

 

 地面を蹴って集の目前に肉薄した少女は集の胸部目掛けて鋭い掌底を放った。

 

「……ッ!」

 

 すかさず腕をクロスして防御。それだというのに、集の防御を突き抜けて衝撃が胸に突き刺さった。堪らず喀血し、視界がぐにゃりと歪む。

 

「この、技は……ッ!?」

 

 三陀玉麒麟。薙沢彰磨が使っていた技に限りなく近い技を繰り出してきた少女に戦慄が隠せない集。

 

「余計な雑念は命取りになるよ?」

「るせえ……ッ!!」

 

 後方に跳躍し、グロックをドロウ。トリガーを引く。

 乾いた発砲音と共に放たれる銃弾を、少女は目視してから最低限の動きで回避。そして、コートから取り出したサバイバルナイフを手に持つと、集に向けて猪突猛進。

 やばい。そう思った時には咄嗟に体が動いていた。

 

「ちッ!」

 

 横に転がり込んで回避。即座に立ち上がって、百載無窮の構えを取る。

 少女は真っ赤に染った瞳を細めると、小さく笑った。

 

「今の避けるんだ。流石だね」

 

 肩を竦めて、掌で何度もナイフを回しながら集を見つめる少女。

 

「でも、私には及ばないよッ」

 

 鬼の如き脚力で再度集の目前に肉薄する少女。振り下ろされたナイフを紙一重で避けてから、集は少女の右足を踏みつけた。すかさず集は天童式戦闘術三の型九番『雨寄籠鳥』を繰り出す。

 僅かに少女の体勢が崩れた隙を逃さず、鳩尾目掛けて鋭い左手でアッパーを繰り出す。僅かに浮き上がった少女の身体を掴み、地面に投げつけてから少女の眉間にグロック拳銃を照準した。

 

「……形勢逆転だ。お前の動きは確かに速いが、直線的すぎる」

「あらら、失敗しちゃった」

「……巫山戯てんじゃねえぞ。お前、何者だ」

 

 集の問いに少女は余裕の表情を浮かべたまま答える。

 

「知ってどうするの?王様」

「答えろッ!」

「はあ。最近の若者は怖いなぁ。私はキャロル。業突く張りでケチんぼな守銭奴(スクルージ)の仲間。だから女の子に向かってお前っていうのはやめてよね」

 

 溜息をつきながら少女は答える。

 スクルージ。何かと集に関わってくる赤いフードの男だ。

 精神世界でしか会ったことはないが、少なくとも目前の少女───キャロルはダァトの敵だということはわかった。

 

「……二つ目の質問だ───なぜ、その力を使える」

 

 感情を押し殺して声を絞り出す。

 その力はあってはならない力なのだ。平穏とは言い難いこの世界では絶対にあってはならない力なのだ。それを、目前の少女は───

 

「……その力?」

 

 目を瞬かせながら少女はその小さな口を開いた。

 

「惚けるなッ!その力は……その力は……ッ!!」

「ガストレアウイルス抑制因子を持っていて、ウイルスの宿主となっている人間。通称『呪われた子供たち』。王様はどうして私がそれを持っているかを知りたい、そういうこと?」

「そうだ!」

 

 グロックを持つ手が震える。手汗が滲んできて、少しでも手を緩めれば手から滑り落ちてしまうかもしれない。

 キャロルは苦笑いを浮かべながら集のグロック拳銃に手を添えた。

 

「答えて上げたいのは山々なんだけど、私も正直この力のこと知らないんだよね」

「嘘をつくなッ」

「本当だってば。気づいたら向こうの世界の記憶と一緒にこの力を持ってたんだよ」

 

 キャロルの言葉に、集の拳銃を持つ手が僅かに緩んだ。

 

「話を聞きたくない?だったら私から離れて貰えないかな。王様」

「……話すのが先だ」

「ちえっ、流石に死神様には通用しないか」

「……死神?」

 

 集がうわ言のように呟いた言葉に、キャロルは複雑な表情を浮かべながら口を開いた。

 

「やっぱり、あなたは何も知らないんだね」

「……?」

「自分のこと。黒い銃弾(ブラック・ブレット)のこと。そして、あの世界のこと」

 

 憐れんでいるのか。悲しんでいるのか。蔑んでいるのか。

 

「……あんまりだよ。全部忘れちゃうなんて。そりゃあ、スクルージよりはまだマシだけどね?」

 

 それとも、喜んでいるのか。

 集にはわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 真っ赤な空。荒れた大地。屍が積み上げられた山。

 かわいた風に、死臭が乗って酷い匂いだった。フードの青年───スクルージは赤い瞳を顰めながらその道を進む。

 ぐしゃり。と、何かを踏みつけた音。腐ったトマトを踏みつけたような、なんとも形容しがたい感覚が足を伝って脳神経を刺激する。

 視線を足元に向けると、スクルージは眉間に皺を寄せた。

 死体だ。それも、死んでから数週間は経過している。不思議とウジは湧いておらず、ハエも集っていなかった。

 

「……相変わらずだな。ここは」

 

 スクルージは足を引き抜くと、そのままゆっくりとした足取りで歩き始める。

 それから数分、長い道のりを歩き続けていると、開けた場所に出た。

 半径一〇メートルほど広い空間に、一人の青年が佇んでいた。

 喪服の上から黒いロングコートを身に纏い、髪から覗く瞳は人のそれとは思えないほどに、昏く鋭い。

 青白い肌には無数の血痕がこびりついていて、サイボーグを彷彿とさせる。

 スクルージの姿を確認すると、青年は口を開いた。

 

「……帰れ」

「随分な言い草だな。ここは別にお前だけの場所じゃないだろ」

「……何しに来た」

「いや。数年ぶりに目が覚めたお前が何してるのか見に来ただけさ───里見蓮太郎」

 

 蓮太郎はホルスターから50AEを抜くと、スクルージに向けて照準した。

 

「御託はいい。用件を言え」

「威力が高い銃は好まないんじゃなかったのか?」

「言え」

 

 スクルージはやれやれと言わんばかりに首を振ってから目線を蓮太郎に向けた。

 

「お前、桜満集を使って何をするつもりだ?」

「……聞いてどうする?」

「まさか、ロストクリスマスの時と同じことを考えているんじゃないだろうな」

「さあな」

 

 スクルージの問いに蓮太郎は適当に暈す。スクルージは無言で蓮太郎に肉薄すると、右腕で50AEを掴みあげた。

 

「……ッ!」

 

 瞬間、異変が起きた。銃身が金属の結晶に包まれていき、引き金部分までそれが迫ってきたところで蓮太郎は地面に50AEを投棄した。

 

「……お前が何を企んでいるのかは知らん───だが、もしロストクリスマス(あの時)と同じことを考えているというのなら」

 

 スクルージの瞳が妖しく輝いた。

 

「俺がお前を殺す」

「……なら何度だって行ってやるよ、スクルージ」

 

 蓮太郎はスクルージの胸ぐらを掴みあげると、言い放つ。

 

「この世界は俺が殺す」

「まだわからないのか。狂っているのはお前の方だぞ」

「俺は狂ってなんかいない」

 

 蓮太郎はスクルージから手を離すと、屍の山へ向けて歩き出す。

 

「……そうやってお前はまた奪うのか?」

 

 蓮太郎は答えぬまま、闇の中へとその身体を消そうとしていた。

 

「待てッ!」

 

 スクルージが手を伸ばした時にはもう既に遅く、蓮太郎の姿は完全に屍の山の中へと消えていた。

 

 

 




Guilty Bullet
-罪の銃弾-
The Everything Guilty Crown

第2篇、始動。



スクルージ
ギルティクラウン外伝ロストクリスマスの主人公。集があのまま成長したらこうなるのかもしれない。イケメン。『The Everything Guilty Crown』のキーパーソンになるかもしれない。

キャロル
ギルティクラウン外伝ロストクリスマスのヒロイン。とても明るい。でも不憫。あざとい楪いのり。『The Everything Guilty Crown』のキーパーソンになるかもしれない。何故か呪われた子供たちと同じ能力を持っているようだが?


里見蓮太郎
新人類創造計画に加え、他の計画にも加担してるかもしれない。何かヤバい思想を抱えてるやべー人。
死神、黒い銃弾と読み方が一定しない人。幕間の物語、名前のない怪物から数年経過、死亡した彼。記憶は完全ではないが取り戻している。
『悪』を滅ぼす『悪の敵』に成り果てた里見蓮太郎が辿り着くかもしれない可能性の一つ。
正義遂行のためには女子供関係なく情け容赦ない殺戮を執行し、ただ処理すべきものを処理すべきように殺す人間に変貌している。
多くの悪を殺し続け、人々を救い続けたが、同時に殺した人間の数は救った人間の数よりも遥かに多い。
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