雄二side
須川「しかし、坂本よ。そんなAクラスに挑むなんて勝てる要素が俺達にあるのか?」
盛り上がっていたクラスに水を差すような発言をする須川。
まぁ、こういう意見が出るのは予想していたさ。
雄二「根拠ならあるさ、このクラスには試召戦争で勝つ事のできる要素が揃っている」
俺の発言に教室がざわつく。まぁ、こんな最底辺クラスがAクラスに勝てる要素が有るなんて言われても信じられないよな。
仕方ない、ここで教えるとするか。
だが、その前に……
雄二「おい、康太。畳に顔をつけて姫路のスカートを覗いてないで前に来い」
土屋「……!!(ブンブン)」
姫路「は、はわっ」
必死になって顔と手を左右に振る否定のポーズを取って弁解しようとする土屋。いや土屋、顔に付いた畳の跡を隠しながら否定しても説得力が無いぞ。
本当なら不届きな事をしている土屋に説教をする所だが、今はそんな事をして時間を無駄にしたくないから無視だ。
雄二「土屋康太。コイツがあの有名な、忍び寄る影、ムッツリーニだ」
土屋「…………!!(ブンブン)」
土屋は自分がムッツリーニだとばれて焦っているのかさっきよりも強く否定する。ムッツリーニと言う名はこの学校ではよく知られている。その名は男子、女子の両方に謎の人物として尊敬されるが、俺は全くその気が無かった。
『ムッツリーニだと……?』
『馬鹿な、ヤツがそうだというのか……?』
『だが見ろ。ああまで明らかな覗きの証拠を未だに隠そうとしているぞ……』
『ああ。ムッツリの名に恥じない姿だ……』
周りが納得していると、土屋は否定しながらも頬に付いた畳の跡を隠していた。もう分かっている事なのに、あそこまで必死に否定すると逆に感心してしまう。
「???」
姫路だけが頭に“?”ばかり浮かべながら分からないと言う顔で首を傾げている。俺としては知らない方が良いと思う。
雄二「姫路のことは説明する必要もないだろう。皆だってその力はよく知っているはずだ」
姫路「えっ?わ、私ですかっ?」
雄二「ああ、ウチの主戦力だ。期待している」
姫路を一番の頼りにしているみたいに感じられるかもしれないが彼女はあくまでも1つの戦力だ。姫路だけに頼るようじゃダメだろうと思いながらも俺は続ける。
『ああ、そうだ。俺たちには姫路さんがいるじゃないか』
『たしかに彼女ならAクラスに引けをとらないな』
『ああ。彼女さえいれば何もいらない』
さっきから姫路や秀吉に熱烈なラブコールをしている奴は誰なんだ? 姫路や秀吉の事が好きなら思い切って告白をすれば良いと思うんだが……。いや、そんな事をしたら明久が黙っていないか。アイツは以前から姫路や秀吉の事が気になっていたからな。
雄二「木下秀吉だっている」
ほら、告りたい奴は告れ。
玉砕する未来しか見えないがな。
『おお……!』
『確かアイツ、木下優子の……』
おいおい、さっきまでラブコールを送っていた奴は何を考えている。秀吉の番になったのにラブコールをしないのは怖気づいたからか? 臆病者どもめ
雄二「当然、この俺も全力を尽くす」
俺はさっきまでのコールを出していた奴に失望しながら、代表として責任感を持った表情をしながら言う。
『確かに何だかやってくれそうな奴だ』
『坂本って、小学生の頃は神童とか呼ばれていなかったか?』
『それじゃあ、振り分け試験の時は姫路さんと同じく体調不良かなんかだったのか』
『実力がAクラスレベルが二人もいるって事だよな!』
いけそうだ、やれそうだ、そんな雰囲気が教室内に満ちていた。
うん、この調子だったら大丈夫そうだな。
雄二「それに、吉井明久だっている」
……シ~~ン―――
さっきまで上がっていた士気が、一気に落ちてしまった。士気云々はどうでもいいのだが、俺は思わず脱力してしまった。一体俺は何をミスしたというのだ!!
吉井「ちょっと雄二! どうしてそこで僕の名前を呼ぶのさ! 全くそんな必要はないよね!」
そこで俺は己の失策に気が付いた。
そうだ、吉井はこの学校では表向きでは≪学園一のバカ≫って言われているのを忘れていた!!
普段の吉井を見ている分、そっちの事を忘れるなんてこの上ない失敗だ!!
『誰だよ、吉井明久って』
『いや、知らん』
『でもアイツ、以前から教師達に説教されてた奴じゃないか?』
吉井「ホラ! せっかく上がりかけてた士気に翳りが見えてるし! 僕は雄二たちと違って普通の人間なんだから、普通の扱いを――雄二、なんで僕に呆れた視線を送るの!? 士気が下がったのは僕のせいじゃないでしょう!?」
雄二「士気は関係無い。俺が呆れているのは、自称“普通の人間”であるお前が、どうしてこうもみんなにバカにされているのか、そこを詳しく聞かせてくれないか?」
吉井「うぐっ!」
俺の台詞に、吉井は痛い所を突かれたかのように押し黙った。どうやら身に覚えがあるみたいで、俺に何も言い返せないみたいだ。しかし、これは吉井が普段からバカの演技をしていたから出来た芸当だ。これからは気を付けなければいけないな。
雄二「そうか。皆は余り知らないようだから教えてやる。こいつの肩書きは《観察処分者》だ」
須川「……それって、馬鹿の代名詞じゃなかったっけ?」
言うまでもなく、その肩書きは他の生徒も知っていた。
しかし、こいつらは吉井が進んで≪観察処分者≫になったという事を知らない。
今回はそこに付け込ませてもらおう。
吉井「ち、違うよっ!ちょっとお茶目な十六歳につけられる愛称で」
雄二「そうだ。バカの代名詞だ」
吉井「肯定するな、バカ雄二!」
《観察処分者》。学園生活を営む上で問題のある生徒に課せられる処分で、明久がこの学園で唯一、その処分を受けている。
どうしてその処分を受けたのかと俺は過去に明久に聞いたのだが、当の本人は当然の報いだからと言ってはぐらかしている。アイツは俺達に迷惑を掛けない様に気を遣っているんだろうが、何を今更と思った。けどアイツがそこまで頑なにしていると言う事は、誰かを守る為に敢えて自らそんな汚名を被って守ろうとしたのだろうと俺は考えた。あんなに決意に満ちた眼差しで俺を見ていたのだから。
と、俺がそんな事を考えていると……。
姫路「あの、それってどういうものなんですか?」
姫路が首を傾げながら何なのかと俺に聞いてきた。まあ、成績優秀の姫路には、とても縁の無い物だから知らないのは当然だろう。
そんな姫路の質問に俺は答える事にしよう。
雄二「具体的には教師の雑用係だな。力仕事とかそう言った類の雑用を、特例として物に触れられるようになった召喚獣でこなすと言った具合だ」
俺の姫路からの質問の解答に姫路はキラキラと目を輝かせながら、明久に若干の羨望と尊敬の篭った視線を送る。
そんな姫路の視線に……。
吉井「あはは。そんな大したもんじゃないんだよ、姫路さん」
吉井は姫路に向かって手を振りながら否定した。
実際、吉井の言うとおりだ。
召喚獣を自分の思い通りに動かせると言うのは凄く便利で、腕力も普通の人間の何倍もある。その気になれば岩だって砕く事が出来るだろう。
確かに一見、素晴らしい機能だと思われる。だがそれとは裏腹にかなりのデメリットがあった。
何故なら、召喚獣は教師の監視下で呼び出さないといけないからだ。つまり、吉井が便利に使えたくても使えない。教師が召喚獣を使っての雑用作業を明久に任せ、吉井は教師に頼まれた雑用作業をする。ただそれだけの事だ。だから先ほど言ったメリットは教師の監視下でやっているに過ぎなく、吉井には自由に召喚獣を活用する事が出来ない。
……そう、表向きには。あいつは実は教師がいなくとも召喚獣を呼ぶことは出来る。
それはいつもアイツが「ある事」をなすために特例として許可されているからだ。
しかし、それに加えて物理干渉が出来る召喚獣に負担が掛かると、何割かが召喚者の明久にフィードバックされる。簡単に言えば、召喚獣が重い物を持って移動している最中に疲労していると、召喚者にもその疲労の何割かが返ってくるのだ。更には物にぶつかった時の痛みも、そのまま帰ってくる。聞くだけで、これはもう罰だろうと思うだろう。
……そんな役職に、自分から付いたアイツの覚悟。それはアイツが過去に「守れなかった」後悔から着くことになった物だ。お前は、何でもかんでも背負いすぎなんだよ。
だからこその《観察処分者》だ。凄い事でも便利でもない。学園にとって問題児とされる相手に課せられるペナルティ。俺が頷いて言ったバカの代名詞と呼ばれる理由がそこにあるのだ。
『おいおい。《観察処分者》って事は、試召戦争で召喚獣がやられると本人も苦しいって事だろ?』
『だよな、それならおいそれと召喚出来ないヤツが一人いるってことだよな』
当然、そんなペナルティを課せられた奴が自分から戦闘に参加する気は無い。召喚獣が戦闘中によって受けた痛みが自分に帰ってくるのだから。
雄二「気にするな。どうせ、いてもいなくても同じような雑魚だ」
吉井「雄二、そこは僕をフォローする台詞を言うべきだよね?」
ただ単に吉井の恥を暴露した様に思えるセリフを吐くがこれは建前だ。
アイツは、不測の事態の時に動いて貰う為にあんまり参加してほしくない。
雄二「ま…まあ、他の召喚者達とは違って、召喚獣の扱いには慣れているから、それなりの役には立つぞ」
吉井「…………雄二、今更フォローしても遅いんだけどね」
雄二「と…とにかくだ。俺達の力の証明として、まずはDクラスを征服してみようと思う」
実はさっきから秀吉が物凄くこっちを睨んでいることに気が付いた俺は冷や汗を掻きながら自信を持って言い切った。
雄二「皆、この境遇は大いに不満だろう?」
『当然だ!』
雄二「ならば全員筆ペンを執れ! 出陣の準備だ!」
『おおーーーっ!!』
雄二「俺たちに必要なのは、卓袱台ではない! Aクラスのシステムデスクだ!」
『うおおーーーっ!!』
姫路「お、おー……」
「…………………………………」
下準備が出来たと言わんばかりに俺が号令を出すと、クラスの生徒達は一斉に雄叫びをあげる。姫路も小さく拳を作り掲げていた。
俺は、吉井が今回の“試験召喚戦争”を起こすのに反対だったのを予想していた。
でなければクラス全員に鼓舞させるかの様な演説と、勝利の鍵を握っているであろう土屋、姫路、秀吉。そして吉井を持ち上げたのだから。俺も自分の過去の功績を利用して、見事にクラス全員の心を掴んだ……吉井の方は余計だったが。そして最後には参加しようと号令をして、クラス全員は“試験召喚戦争”に参加しようと意気込んでいる。
雄二「明久にはDクラスへの宣戦布告の使者になってもらう。無事大役を果たせ!」
吉井「……下位勢力の宣戦布告の使者ってたいてい酷い目に遭うよね?」
吉井は少し不安げに俺に聞いてくる。
まぁ、確かに下位クラスが上位クラスに宣戦布告何てすればひどい目に遭うだろう。
しかし、だからこそ今回の戦争をDクラスにしたのだ。
雄二「大丈夫だ。やつらがお前に危害を加えることはない。騙されたと思って行ってみろ」
吉井「本当に?」
雄二「もちろんだ。俺を誰だと思っている」
吉井に優しく諭す様に言う俺であるが、ここまで言うのには理由が有る。なぜなら、Dクラスには「アイツ等」が居るからだ。
雄二「大丈夫、俺を信じろ。俺は友人を騙すような真似をしない」
吉井「……わかったよ。それなら使者は僕がやるよ」
雄二「ああ、頼んだぞ」
俺の言葉を受けた吉井はDクラスへ向かう為に教室から出て行った……。
「……さて、雄二。少しO☆H☆A☆N☆A☆S☆I死体のじゃが? 良いかのう?」
雄二「え?」
「!!!」
俺は声をかけられて後ろを見ると、顔に影を落とした秀吉が立って居た。
それを見て、俺は死を悟ったんだ。
あ、あと秀吉? お話ししたいって文字のしたいが死体になっているぞ、それはまずっぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!
雄二side out
吉井side
吉井「でも、Dクラスか~誰か知り合いは居るかな?」
僕はそう思いながら廊下を進んでいるといつの間にか、Dクラスの前に付いていた。
吉井「ここか、……すいませ~ん!」
僕はそう言ってDクラスの扉を開ける。
するとDクラスの人たちが僕を見てひそひそと話し始める。
「誰だ、あいつ?」
「ほらあれだろ? 例の≪観察処分者≫」
「あ~吉井君、今日もカッコイイなぁ~」
「分かる~! なんか、あの纏っている雰囲気がね~」
「でも、何の用で来たんだろ?」
平賀「……吉井? 吉井じゃないか!!」
え、この声って……
吉井「え、平賀君じゃないか!! Dクラスだったんだ!!」
平賀「そうだよ! 久し振りじゃないか!! 元気そうでよかったよ」
吉井「そっちこそ、良かった!! あれから何もないみたいだね!!」
僕はこんな所で友人と会えるなんて嬉しい事も有るんだな!!
そんな会話をしているともう1人の友人も入ってきた。
立花「何だ、トイレから戻ってみたら吉井がこのクラスに来てるなんて!! 久し振りか吉井!!」
吉井「立花君まで!! そっか、雄二の言っていた大丈夫だって理由は平賀君と立花君がいるから大丈夫だって事だったんだ!!」
立花「雄二? 雄二が何か言っていたのか?」
平賀「まさか、アイツ吉井に何かしたんじゃ?」
立花「よし、殺そう」
吉井「なんでそうなるの!? いや、違うから、なにもされていないから!!」
平賀「じゃあ、なんでDクラスに?」
あ、そうだった。危うく忘れるところだった
僕がDクラスに来た使命を果たさないと。
吉井「えっと、平賀君。このクラスの代表って誰かな?」
平賀「代表? それだったら俺だけど?」
吉井「本当? じゃあ、丁度良かった」
立花「おいおい、わざわざ代表に用があるって事は相当な事だよな?」
吉井「うん、平賀君……僕達、Fクラスは君たちDクラスに宣戦布告する!!」
僕の言葉にDクラスが騒然とした。
一部の男子生徒がこちらを睨んでくるが僕は平賀君をずっと見つめる。
それを受けて、最初は驚いていた立花君と平賀君は笑い出した
平賀「はははは!! まさか、吉井達から初日に宣戦布告されるなんて」
立花「全くだ、本当にお前と言い雄二と言い俺達の予想の斜め上を行ってくれるな!」
この2人は笑いながらも僕たちの挑戦に嫌な顔はしなかった。
それどころか待ち望んでいたようにも取れる言葉を言ってくれる。
Dクラスの他の生徒たちは半分は不安、残りの半分は期待に満ちた顔をしている。
……でも、その内の男子生徒たちが僕に近づいてくる。
「おい、お前。≪学園の恥≫の≪観察処分者≫だろ?」
「そんな奴が使者で来るとか、バカにしてんのか?」
「おい、こいつを締め上げてFクラスにとどけてやろうぜ!!」
「任せろ、腕の一本や二本をへし折ってやる」
あ、なんか物凄く危ない。
でも、逃げようにも1人に胸ぐらをつかまれていて逃げられない。
「おい、≪学園の恥≫。どこを何発殴られたい?」
吉井「出来れば殴られたくないな~」
「ふざけんな! やっちまえ!!」
1人の生徒の叫びと共に残りの生徒が僕の事を殴ろうとしてくる。
その時、
平賀「おい」
立花「テメェ等、吉井に何しようとしてんだ?」
底冷えするような声を発した2人によって僕の胸ぐらを掴んだ生徒と僕を囲んだ生徒の動きが止まった。
平賀「なぁ? 答えてくれないか? 何で、お前らはFクラスの使者に暴行をしようとしているんだ?」
「な、なんでって……下位クラスが宣戦布告してきたんだぞ!?」
「そ、そうだそうだ! 舐められたままで終われるかよ!!」
立花「うるせぇ、その口閉じて……眠ってろ!!」
立花君はそう言って僕の胸ぐらをつかんでいる生徒の顔面に容赦なくグーパンチをお見舞いする。
それを受けてその生徒は教室の床を転がる。しかし、立花はその人物の腹部をさらに蹴りあげる。
「お、おい! 何してんだよ!!」
「同じクラスメイトになんで手を出してんだ!!」
立花「黙れ、お前等は吉井に手を出そうとしたんだ。言っておくが、俺は吉井に手を出す奴には容赦はしない。良いか、加減じゃなくて容赦はしない」
平賀「それにさ~何にも知らないお前らが吉井達をバカにしてんじゃねぇよ」
平賀君も立花君も聞く者が震え上がるような声で宣言する。
それを受けた他の生徒は悲鳴を上げながら逃げて行った。
吉井「……なんか、ごめんね。迷惑かけちゃって」
僕は平賀君や立花君、それに他のDクラスのみんなに謝った
立花「気にするな、あれはアイツ等が悪い」
平賀「まぁ、これは後で生徒指導室に呼び出しかもな?」
吉井「……そうなったら僕も一緒に行くよ」
立花「まぁ、気にするな。俺がやりたくてやったんだからさ!」
平賀「まぁ、他のみんなも見ていたし大丈夫でしょう」
「そうだよ、吉井君。あんまり気にしないで!!」
「さっきのはこっちが悪いんだから」
「そうだぜ、あんまり気にしすぎるな~」
吉井「みんな……ありがとう!」
Dクラスの生徒たちの暖かい言葉を受けて僕は頭を下げた。
平賀「それじゃあ、吉井。開始時刻はどうするんだ?」
吉井「そうだね、試召戦争は今日の午後という事でいいかな?」
平賀「あぁ、こちらはそれで問題ない。みんなもそれで良いよね?」
「あぁ、大丈夫だ!」
「これで勝ったら、吉井君と一緒にお出かけできないかな~?」
「抜け駆けは禁止だよ!!」
「Fクラス相手だって油断しないぞ!!」
立花「……だ、そうだ。これで良いよな?」
吉井「うん、それじゃあまた後でね。2人とも」
平賀「ああ、楽しみにしてるぜ。吉井」
立花「お前が出てきても絶対に勝つからな?」
吉井「うん、でも……僕達も負けないよ!!」
僕はそう言ってDクラスを後にした