ご注文はきんいろの日々ですか?(旧題:うさぎモザイク) 作:りゅーん
次回木組みの街に行くのでごちうさ難民の方はもう少しお待ち頂くようお願いいたします
オリ名前
九条礼樹(れいき)
カレンパパの名前
名前の元ネタは同じくカレンという名前の娘を持つとある神父から
天々座果鷲(かじゅ)
リゼパパの名前
果→果物→デザート
鷲→イーグル
でデザートイーグルから
それは、世間が間近に控えた夏休みに浮き足立つ頃のこと。
とある豪商が丸ごと買ったマンションにあるうちの一部屋で、購入者である男はリビングに何冊も積まれた雑誌があるのを見つけた。
少し気になった男が近寄って見ると、雑誌は女性ファッション誌など女性に向けたものが多く自分が読みそうなものはひとつもない。
「ああ、そういえば」
――古い雑誌があったから何冊か捨てようかしら。
昨日自らの妻がそう言っていたことを男は思いだし、適当な一冊を手に取れば確かに発行日は数ヵ月前になっていた。
恐らく廃棄する前に読んでおこうとここに置き、そして何かしらの用で席を立ったのだろう。
男は心のうちに生まれた些細な疑問を解決させ、その場を後にしようとしたが。
「せっかくだし、少しだけ見てみようか」
何だか後ろ髪を引かれ、男は先程手に取った雑誌――walkerとタイトルにあるそれを読み始めた。
しかし予想通りというか男の琴線に触れるような内容のものは無く、それなりの集中力で読んでいたのがやがて軽く流す程度になり――
「これは?」
ふと、とあるページを見て雑誌をめくる手が止まる。
男の目を引き付けたのはひとつの記事。
ある喫茶店について書かれたもので、「祖父から受け継いだお店 三姉妹の微笑ましさに思わず笑顔」という見出しの下に従業員らしき三人の少女の写真が添えられている。
高校生の娘を持つ父親として娘の同年代や年下が喫茶店を支えているのには興味があるし、また偉いものだと感心もしたが、それとは別に彼の目を引いたのはその名前だ。
「香風智乃、そして天々座理世。まさか今あいつらの名字を揃って見ることになるとはな。しかも銃のカタログじゃなくてカフェの記事で」
香風・天々座。
三人の少女のうち二人が持つこの名字は彼にとって悪友とも呼べる二人の男が名乗っていたものだ。
その名字は双方共に珍しく、少なくとも男は悪友以外に同じ名字をもつ人間と会ったことはないほどだ。
そんな名字を持つ少女が二人とも同じ喫茶店で働いているというのは偶然には出来すぎていて、男は何か感じざるを得ない。
とりあえず他のページに何か無いか探してみようと真剣に読み直すと、それは案外すんなりと見つかった。
「はは、やっぱりさっきの子はお前の娘だったか! ……にしてもあのお前がバーテンダーとはなあ」
バーテンダー特集とあるそこには、落ち着いた雰囲気を持つ男性と毛だるまにしか見えない動物――確かアンゴラウサギという品種のうさぎだったか――が写っている。
その下に香風タカヒロと書いてあるのを見て満足げに呟くと男は再び雑誌のページをめくるが、残念ながら「天々座」に関する記事は先程の喫茶以外に見当たらずうむむと唸る。
「情報は無し。だが香風があの香風ならやはりこの娘も天々座の子である可能性はあるな。 よし、少し遠出になるが車で行ける範囲だし、今度の土日でも冷やかしに行こうか」
久々に見た友の足跡を見て浮き立つ自分を自覚しながら、男は雑誌を元の場所に戻しその場を後にした。
「オハヨウゴジャイマース!」
「おはよう、カレン」
「はい、おはようございます」
「おはよー。今日も元気だなぁ」
「おはようカレン、今日もというか、今日はいつもより元気ね」
輝くような金色の髪を背中まで伸ばし、二つのヘアピンを十字にして前髪を留めたイギリス人のハーフ、九条カレンは見慣れた顔ぶれの四人の少女を見つけると満面の笑みを浮かべ彼女らに挨拶をする。
カレンはそれぞれ返ってきた挨拶を受け止め、自分の上機嫌にいち早く気付いたツインテールの少女――小路綾の方を向いた。
「ふっふっふ、よく気がつきましたねアヤヤ。実は夏休み、パパが旅行に皆を連れてってくれるって言ったんデス!」
「へぇ、良いわね……って、皆?」
「みんなって、わたしたちのこと?」
感心したように呟いた綾がカレンの台詞を正確に把握して首を傾げると、カレンがイギリスに住んでいた頃からの幼馴染みである純イギリス人、金髪ツインテールに簪を差したアリス・カータレットが綾の疑問を言葉にする。
「YES! 今度パパが知り合いに会いに行くのデスが、オシャレな街だったから私も行きたいって言ったら『じゃあ観光でもしようか』って旅行にくことになったんデス。その時パパが友達も連れてきて良いって言ったので、みんなのことを伝えときマシタ。きっと気に入ってくれると思いマス」
彼女からの唐突な、しかもまるで確定事項のように語られた内容に「いや、初耳なんだけど」という四人の心の声がシンクロしたが、それが口を突いて出る前にカレンが高速でバッグから雑誌を取りだし、先制攻撃とばかりに付箋を貼ってあったページをばっと開いて押し付けるように見せた。
「さあ、どうデス!」
バーン!と効果音が出そうな程の勢いに見せられた四人はたじろぐも、やがてその眼差しは熱心なものへ変わっていく。
そこに写っているのは木組みの家に石畳の敷かれた本当に日本なのか疑わしいレベルで西欧らしさに溢れる街で、またカレンの言う通りオシャレと呼ぶに値するものだったからだ。
「へー、何かヨーロッパっぽいな!」
「わたしもそう思う。シノはどうかな?」
「……」
そんな写真に茶髪をショートヘアにした明るい少女、猪熊陽子が好反応を示すのを見つつ、アリスは大親友であるおかっぱの少女シノ――大宮忍へと感想を求める。
しかし忍からの返事は無く、じれったくなったアリスが忍の方を向くと。
「はぁ~」
普段はおっとりしている忍がものすごく目を輝かせていた。
忍の背後が輝いているのをアリスは幻視したが、きっと朝日のせいに違いない。
(シノ、すっごいキラキラしてる)
(やっぱり、シノなら食いつくと思いマシタ)
――大宮忍は自他共に認める西欧文化、金髪好きである。
その好きのレベルは忍をとても大切に思っているアリスや他の三人すら時には一歩距離を置く程で、そんな忍が西欧の街並みに近いこの街に食いつかない筈がなかった。
「イギリス風の街……ステキですねえ……」
「しののいつものが始まったわね」
「あはは、でもこの写真見てると故郷を思いだすよ。マム、元気にしてるかな」
そんなこんなでワイワイ騒いでいた彼女らだったが、陽子がハッと何かに気付くとまるで某弁護士が異議あり!と言うようにビシッと人差し指をカレンに向ける。
「って、カレン! その手には乗らないぞ!」
「どうしたのですか? ヨーコ」
「どうもこうも、夏休みは海って言ったじゃないか!」
「あー」
陽子の言葉にカレンは去年遊びに行くなら海か山かについて繰り広げた壮絶な戦い(カレン視点で)思い出すが、それは既に織り込み済である。
「心配はいりまセン、海水浴とは別の日デスカラ」
「なーんだ、なら早く言ってくれよ」
「ヨーコには去年譲ってもらいマシタから、旅行とは別に海水浴の予定もあるデス」
「おお、ありがとカレン。でも私旅行なんて初耳だから行けるか分かんないぞ?」
陽子との約束についての配慮は忘れなかったカレンだが、さらっと告げられた内容に「そんなバカナ!?」と驚愕を見せ、そのままぐるりと申し訳無さそうに目を逸らすアリスと綾が見えた。
そもそもカレンが父からこの話を持ちかけられたのが昨日の話で、もう皆行くものだという前提で誘ったカレンの自業自得なのだが。
しかし、陽子の突然誘われた側としては当然の保留に猛然と食って掛かる存在がいた。
西欧大好き少女、忍だ。
「陽子ちゃん、こんな機会滅多にありませんよ! ここは無理をしてでもイギリスに行きましょう!」
「いやしの、ここイギリスじゃ無いんだけど」
「そんなのは些細なことです!」
西欧好きのスイッチが完全に入った忍が猛烈な勢いで捲し立てるのを両手で押さえた陽子だが、ぐいぐいと何かヤバイ目で陽子の眼前に迫る忍は謎のパワーに溢れており、五人の中では一番力のあるはずの陽子が押されるという状況。
後日陽子に「あれはヤバイ、3日ご飯抜きのライオンでも逃げ出すよきっと」と語らせる気迫と膂力を以て、忍は陽子を追い詰める。
「ちょ、しの落ち着けよ!」
「いいえ、イギリスに行く機会だけは手放す訳に行かないんです!」
「だから日本だってばー!」
あーもうしのはイギリスが絡むとホント色んな意味で凄いわてかそろそろ私マジでヤバイなー、と現実逃避気味に内心冷や汗をかいていた陽子だが、天は彼女を見放さなかったらしい。
キャットファイトと呼ぶには一方的なそれが終わらないのに業を煮やしたのか、とうとう綾が噴火したのだ。
「二人ともいい加減にしなさいよーーー!」
何故か顔を真っ赤にして二人の間に割って入った綾に、忍と陽子はもちろん隣で観戦ムードだったアリスとカレンすらビクッと肩を震わせて硬直する。
その生まれた空白をどう捕らえたか、当の本人がただでさえ赤い顔を更に赤くして必死の釈明をし始めた。
「あの、これはこのままだと陽子と忍がキ、キキキキキスをしちゃいそうでねだからその」
「アヤヤ、落ち着くデス」
もはやトマトにも並ぶ程の綾だったが、Be cool、Be coolデスとカレンが繰返し呟くのが効いたのかさほど時間を置かず落ち着きを取り戻した。
最後に大きく息を吐き完全に落ち着いた様子なのを――忍はいつの間にか正気に戻ってる――確認し、引っ込めていた雑誌を出そうとしたカレンだったが、その手を止めたのはそれまでおろおろしていたアリスの発した絶叫だった。
「アリス、どうしまシタ?」
「じ、時間が……どうしよう、学校に遅刻しちゃうよ!」
悲痛な顔でカミングアウトするアリスに四人は待ち合わせ場所に立てられた時計に目をやり――揃ってその顔を真っ青にする。
特にカレンは自分が話を振ったせいでという罪悪感と、脳裏をよぎる「とある先生」のせいでさらに青い。
「だ、大丈夫。まだ走れば間に合う!」
「ここから学校まで!?」
「アヤ、わたしも頑張るから一緒に頑張ろう?」
「よーし、それじゃ行くぞっ!」
「アリス、一緒に走りましょうか」
「うん!」
「かけっこデスか、ヨーコ? 私も負けないデス!」
「うう、やってやるわよ!」
陽子の提案に運動が苦手な綾が渋い顔をするが、カレンは乗り気だし忍はいつも通りの調子だし、おまけに綾同様運動苦手なアリスは何やら覚悟を決めた顔で綾を見上げていて、何より自分でも歩くだけでは遅刻すると理解していた綾は陽子を皆と共に追い掛けた。
なお、慌ただしい朝のせいで忍を除く四人――誘いを持ちかけたカレン含む――は旅行の話がすっかり頭から抜け落ちてしまい、数日後に相談し直しとなったことを追記する。
ちなみに忍が覚えていたのに旅行の話が数日間出てこなかったことについて、
「話をしないのは不思議でしたが、みんな家に話を持ち帰ってスケジュール調整してるんだろうなって思って待ってました」
「いや覚えてたんなら一言言えよしの!」
そんなやり取りが陽子との間にあったとか無かったとか。
数日後の夜。
『はい、こちらラビットハウスです』
『実はそちらに勤めているバーテンダー、香風タカヒロという方に用があるのですが』
『香風タカヒロは私ですが、何のご用でしょうか?』
『そうかあなたが……久しぶりだな香風。私だ、九条だ』
『九条……まさかお前、礼樹か? 久しぶりだな。それで用件は?』
『なんだ、つれないな』
『ラビットハウスに電話をかけてきたのだから、こちらも相応の対応をしないとな』
『いやだって個人の連絡先知らないし』
『ふむ、なら後でこちらの連絡先を送っておこう。用件はそれだけか?』
『おっと、そうだった。実は夏休みに入ったらそっちに妻と娘とその友達連れて遊びに行こうと思うんだが、何回見てもホテルが見当たらないんだ。どっか心当たりないか?』
『当店に関係のないご質問は申し訳ありませんがお断り致します、と言いたい所だが顔馴染みだし目を瞑ろう。確かにこの街は宿泊施設に乏しいな……そうだ、果鷲の家に行くのはどうだ』
『果鷲……ひょっとして天々座か? やっぱりこの近くに家を構えてたか』
『なぜ分かった?』
『お前の所に天々座理世っていただろ? それでもしやと思ってな』
『成程。お前の予想通り、彼女は天々座果鷲の娘さ。それで話を戻すと、果鷲のやつは近所でも有名な豪邸に住んでいてな。お前の家族と娘の友達を合わせて――』
『八だな』
『八人か。八人くらいなら話せば泊めてくれるかもしれん』
『そんな場所に住んでるのか天々座のやつ』
『ああ、後で私の連絡先共々送っておくから聞いてみたらいい』
『じゃあ頼む。また今度な』
『ああ』
「お父さん、何だか楽しそうです」
「チノちゃん?」
「何でもありません。行きましょう、ココアさん」
アリス「シノが、シノが……」
綾「どうしたの?アリス」
アリス「アヤ。実は昨日テレビでね」
テレビ
――自分ののそっくりさんを見たら、決して目を合わせてはならない。なぜなら――
アリス「にゃあああああ!」
アリス「……ってことがあって」
綾「ふふ、そっくりさんなんてそんな居ないわよ」
アリス「でもわたしこけし持ってるし、そのせいでシノに何か起きたら……!」
綾「いや、こけしってアリス……(どうしよう、一体なんて慰めれば)」
♯2 ドッペルゲンガーに会うとヤバイらしい
リゼ「see you next time」
アリス「アヤのそっくりさん!?」
これから後書きはきんモザ風にしてみようと思います
きんモザ映画化とか嬉しすぎてヤバイ