ご注文はきんいろの日々ですか?(旧題:うさぎモザイク) 作:りゅーん
第1話も変える予定
夏の長期休暇に入って数日の過ぎたある日。
綺麗な長い黒髪を持つ少女、宇治松千夜がラビットハウスと書かれた喫茶店に訪れていた。
「いらっしゃいませ、千夜さん。ココアさんなら今外出中ですが」
「あ、ごめんねチノちゃん。何だかコーヒーが飲みたくなっちゃったから、今日はお客さんとして来たの」
「そうでしたか、失礼しました。ではお席にどうぞ」
千夜を出迎えたのは彼女にも劣らぬ長さの青みがかった銀髪を靡かせ、頭にアンゴラウサギを乗せた少女、千夜の友達でもある香風智乃だ。
どうやらチノは千夜がいつものように友達を呼びに来たと思ったらしいが、純粋にコーヒーが飲みたかったと話し席へ案内してもらう。
千夜の実家で彼女自身も看板娘として働いている甘味処の和風な感じとは異なる、しかし落ち着きのある店内の雰囲気をひとしきり味わった後、千夜は何を飲もうかしらとメニューに手をかけた。
「うーん、分かってはいたけど、一口にコーヒーと言っても種類が多いのよね。迷うわ……」
そのまま1分ほど考えていた千夜だが、納得の行く答えが出せたのでチノを呼び出す。
「チノちゃん、カプチーノお願い出来るかしら」
「カプチーノですね。かしこまりました」
注文を受けたチノはカウンターへと行き、コーヒーを淹れる。
その様子を見て、千夜は違和感に気付いた。
「あら? チノちゃん、ココアちゃんとリゼちゃんは?」
そう、ラビットハウスで働いているはずの他のアルバイトがいなかったのだ。
ラビットハウスはチノの他、千夜の友達である保登心愛⚫天々座理世という二人のアルバイトがいてバイトのうち二人以上は大抵いるのだが、どういうわけか件の二人はチノを残して姿をくらませている。
「ああ、リゼさんの方は家に来客があるらしくて、今日は休ませてくれと事前に連絡を受けてました」
「そうだったのね。ココアちゃんはどうしたの? 『チノちゃんを一人には出来ないよ!』なんて言いそうだけれど」
「ココアさんは……」
疑問に思った千夜にチノが答えるが、ココアの話になると言い澱む。
暫し瞑目した後まるでやんちゃな妹を見るような顔でふうと一息吐いてから彼女が告げた内容に、千夜は「あら~」と曖昧な反応しか返せなかった。
元々今日のシフトはチノとリゼで、リゼが用で外れるものの一人で大丈夫だと判断したチノは一人でやろうとしたのだが……
なんとココアはリゼが休暇を取ったのを知らず、『チノちゃんを一人にしてサボるなんてお姉ちゃんとして見過ごせない!』と宣言したかと思うと一目散に店を出ていったそうなのだ。
ちなみにココアとチノに血縁関係はなく、ココアの自称である。
「それは何ともココアちゃんらしいわね」
「ココアさんの行動力は認めますが、空いたシフトを自分で埋めるという発想は浮かばなかったのでしょうか……あ、これご注文のカプチーノです」
「ありがとう。それじゃいただきます」
頼んでいたカプチーノが出来上がったので、一旦話を切り冷める前に味わう。
自身の味わってきたお茶とは違う風味と苦味を味わい、飲み干した所でそう言えばと再びチノに話しかける。
「チノちゃんって確か、コーヒーで占い出来たのよね?」
「カフェ・ド・マンシーですか? カプチーノだけですが出来ますよ」
「ならちょうどいいわ。ひとつ占ってくれないかしら?」
「分かりました。では」
チノはこくりと頷き、コーヒーカップを手に取りソーサーの上に逆さまに置く。
カフェ⚫ド⚫マンシーとは飲んだ後に数滴ほどコーヒーが底に溜まっているカップをひっくり返し、それにより出来た模様から占いの結果を読み取るもの。
神妙な面持ちの千夜とカップから顔を上げたチノの視線が合い――
「良いか悪いかで言えば、良いと思います」
「やったわ!」
チノから告げられた結果に、千夜は嬉しそうな笑みを浮かべた。
「具体的に言うと、悩んだ時は初心に返ると良いことがあるそうです」
「初心に返る……分かったわ。今から甘兎のメニュー名考えてみようかしら」
「千夜さん今悩んでなさそうじゃないですか」
ツッコミも虚しくぶつぶつと呟きながら自分の世界に埋没していく千夜を見て、チノはとりあえずティーカップを片付けることにした。
千夜のネーミングセンスは非常に独特なもので、かつてリゼ、ココアと共に甘兎――千夜の実家兼勤め先の甘味処のこと――に行ったときは三人揃って漫画の必殺技みたいだと漏らしたことがあるし、またチノの通う中学でのクラスメートが『魔女の家でスキルが売ってる』とコメントしたりするほどだ。
初見の客の為に指南書を制作してるのがせめてもの救いだが、それは千夜のネーミングが確信犯である動かぬ証拠でもある。
(千夜さんは何であんな名前をつけるんでしょうか?)
今度聞いてみましょうかとチノがぼんやり考えてると、店の扉が勢いよく開きバタン!と大きく音を立てる。
もの静かな店内に相応しくない轟音にびくりと肩を一瞬跳ねさせてからチノがそちらを向くと。
「チノちゃん、リゼちゃん連れてきたよ!」
先程話に出てきたバイトの一人、肩までかかるストロベリーブロンドの髪で桜の花飾りを付けたココアと、長い髪をツインテールに纏めた――
「「その人誰!?」」
「はぁ……はぁ……だから、私はリゼさんじゃ、ないってば……!」
リゼに髪型と髪色と声の似た別人――ちょうど木組みの街を訪れていた綾が立っていた。
時は遡り、綾がカレン達と共に木組みの街を訪れた頃。
「私は今回案内を勤めさせて頂く、天々座理世と言います。どうかよろしくお願いします」
「よろしくー」
「よろしくデス」
「「「よろしくお願いします」」」
五人は豪邸の前でこの家のご令嬢であるリゼと互いに挨拶を交わしていた。
「カレン、ヨーコ、いきなり失礼だよ!」
「ごめんごめん。ついクセで」
「うーん。アリスの言うことも分かりマスが、私は堅苦しいのは苦手デス」
初対面の相手に対していきなり砕けた態度を取る二人にアリスが怒るが、それを見ていた忍はくるりとリゼの方を向くと。
「リゼちゃんも私たちと年が近そうですし、もう少しフレンドリーに話して良いですか?」
「シノ!?」
まさかの裏切り発覚。
アリスは固まった。
「り、リゼちゃん!? その呼び方は……まあ、あいつらで慣れてるし良いか。それはともかく、これから三日ウチに泊まるんならいつまでも他人行儀じゃ堅苦しいよな」
「そうデスそうデス。折角だから、ついでにお友だちになっちゃいまショウ!」
「ふふ、よろしくカレン」
忍の裏切りにアリスが愕然としたそのわずかな時間で、あれよあれよとカレンが話を進めていく。
アリスはまだ固まっている。
「改めて、私は天々座理世だ。これから三日間よろしくな」
「私は猪熊陽子、よろしくな!」
「私は小路綾、仲良くしましょうね」
「九条カレンと申すデス! これからお世話になりマース」
「私は大宮忍。よろしくお願いしますね」
「忍。お前が言い出したんだから、そんなにかしこまらなくても」
「リゼ、これがシノの普通デスよ」
「そうだったのか。……チノみたいな奴だな」
「ほら、あとはアリスだけですよ」
「はっ、シノ?」
やがて自己紹介をする流れになり残りはアリスのみとなった時点でようやくアリスは再起動に成功し、慌てながらも何とか挨拶をした。
「あ、あの! わたしはアリス⚫カータレット! これからよろしく、リゼ」
「ああ、アリスもよろしく」
気が動転したのかアリスが伸ばした手を掴み、握手をしながらリゼが応える。
その直後忍の方から「シェイクハンズ、シェイクハンズですよ陽子ちゃん! 日英会談です!」と無性に興奮した声が聞こえて来たが、話を振られた陽子がこちらを見て「いつものことだから気にしないで」と言ったのでリゼは助言通り気にしないことに。
「さて、挨拶も済んだしそろそろ行くか」
「「「「「おー!」」」」」
「仲良いんだなお前ら」
一糸乱れぬ返事に苦笑しつつ、リゼは一行に背を向けて歩き出す。
五人は期待に胸を膨らませながら、その後ろを追いかけ始めた。
その後一行はあちこちを散策し、少し休憩を入れようかというリゼの提案で休んでいた。
「いい街だね、リゼ」
「はは、ありがとうアリス。自分の住んでる街が褒められるのは何だか嬉しいな」
「でも本当に素敵な街です、ここに引っ越してみたいですね」
「シノ、引っ越すの……?」
「大丈夫です、手紙は書きますから」
「いや、否定しろよしの! て言うかアリスはしのの家にホームステイしてんのに何で別れる前提なんだ!」
「綾、案内を始めてからずっと挙動があれなのだが、忍はその……」
「ええ、実はしの、すごく外国に憧れてて。リゼさんの住むこの街はイギリスに近い街並みだから……」
「なるほど、琴線に触れたというわけだな」
ちょうど見つけた店で購入したクレープを頬張りつつそんなやり取りをする。
リゼが父から来客の案内を頼まれたときは不安もあったが、道中話しながら進んだお陰で友達になった後も僅かに残っていた壁のようなものも消え去り仲良くなれたように思える。
(こいつらを一度皆に会わせてみたいな。きっと仲良くなりそうだ)
特にアリスはココアが見れば『妹が増える!』とか言い出すだろう、と頭の高さを見比べながらさりげなく失礼なことを考えるリゼ。
次は私の職場に案内してやろうかとベンチを立ち上がり四人に声をかけようと――
(ん、四人?)
はて、私が案内するのは五人だったような。
今の自分の思考に疑いを持ったリゼは休む彼女達をもう一度見回してみる。
……アリス……忍……陽子……綾……カレ……ン?
「あれ、カレンはどこだ!?」
そう、四人がたむろする中で彼女だけ姿が見当たらない。
リゼの叫びを聞いて四人もあちこちを見渡し、一瞬遅れて事態を把握しガタッとベンチから立ち上がる。
忍を除いて。
「皆さん、カレンならあそこでうさぎさんと遊んでますよ?」
何で慌ててるんだろうと不思議そうにする忍が指差す方向を見れば、距離は離れてるが確かに芝生の上にしゃがみこむカレンの姿が見えた。
迷子かと焦った一同は、力が抜けたようにへにゃへにゃとベンチに座り込む。
「なんだよもー、いるんなら早く言えって」
「本当にね。本気で焦ったんだから」
「まあまあ二人とも、シノも悪気があったわけじゃないんだから……」
「よし、とりあえずカレンの所に行こう。見失ってからじゃ遅いから――」
探し人の所在が分かったことでふっと緩む空気。
だが遠くにいることに変わりは無く、リゼが注意を四人に促しつつへ視線を向け――今度こそその顔が明確に歪む。
「待て! どこに行くつもりだカレン!」
リゼの視線の先ではカレンがうさぎを追いかけていたのだが、その方向が自分達から離れていく方向だったのだ。
これはまずいと声を荒げるリゼだが、距離の遠さが災いしカレンはリゼに気付かない。
このままではじきに見失ってしまうだろう、それだけは避けなければ。
「お前たち、今すぐカレンの後を追うぞ!」
「――分かった!」
鬼気迫るリゼが駆け出したのに真っ先に反応したのは陽子だ。
運動部からもスカウトされる身体能力で彼女はリゼの後を追随し、そこから1拍遅れて残された三人も動き出す。
そうしてリゼを先頭にすぐ後ろが陽子、そこから走力の差で少し離れてアリス、忍、綾という並びでカレンを追いかけるが、ここでひとつの不運が彼女達を襲った。
「リゼちゃんみーーーーつけたーーー!!」
そんな明るい少女の声が聞こえた次の瞬間、綾がその少女に誘拐されたのだ。
「きゃあっ!」
「綾ちゃん!?」
「アヤ!」
まだ五人が1ヶ所に固まっていたのなら全員で押さえることが出来たのだが、集団の行動よりカレンの確保を優先したことが仇となり先行していたリゼと陽子はUターンが間に合わない。
突然の出来事に驚きつつも一番近いアリスと忍が反射的に手を伸ばすが。
「あ、アリス! しのーーー!」
綾と彼女を連れた何者かにその手が届くことは無く、二人の手は虚しく宙を切った。
「そんな訳で、私はここに連れてこられたの」
誘拐犯――ココアによってラビットハウスに連れてこられた綾は、連れてきた本人であるココア、ココアの友達でチノと名乗った年下の少女、そしてたまたま店を訪れていた、こちらもまたココアの友達である同年代らしき千夜という少女の四人でテーブル席を陣取り三人に事の詳細を話していた。
綾が話を終えると、チノと千夜が急におろおろしだす。
「ど、どどどうしましょう千夜さん。ココアさんが誘拐犯に」
「え?えっと、その……とりあえずクローゼットに隠したら良さそうかしら?」
「二人とも落ち着いて!」
そんな二人を見てココアが落ち着くように促すが、『そもそもココアさんのせいでしょう!』とチノから言葉の刃を受けテーブルに轟沈する。
誘拐から目まぐるしい展開を見せる周囲に思考停止気味だった綾は、そこでチノ達が何を慌ててるかようやく思い当たった。
「えっと、私は大丈夫よ? ほら、何かされた訳でもないし。それにリゼさんの友達なら信用出来るから」
勘違いの上で起きたこととはいえ、これは歴とした誘拐だ。
だが自分が許せば丸く収まるのではないか、そんな思いでそう告げると、チノとココアの目が途端にキラキラし始めた。
「チノちゃん、私は今、綾ちゃんの後ろに天使を見たよ!」
「はい、この心の広さ。まさに天使です」
「ちょ、二人とも何言ってるのよ! 千夜さん何か言ってあげて」
感動に瞳を潤ませ祈り始めた二人に恥ずかしさで顔を赤く染めながら綾が千夜に助けを求めれば――
「今度のメニューは『舞い降りた天使の燐光』で決まりね」
「何の話!?」
こっちもこっちで謎の発言を投下し始め、いよいは四面楚歌の状態に。
綾はなんとか場の沈静化に成功したが、そこまで持ってくのに5分は費やした。
「……ふう、ごめんなさいね綾ちゃん。それで? 万が一の時に待ち合わせる場所って決めてるのかしら」
「ええ、一応ね」
チノがせめてものお詫びですと無料で入れてくれたコーヒーを口にしつつ、綾は千夜の問いに頷く。
旅行に来た5人にはカレンの父からあらかじめ地図の乗ったパンフレットが渡されていて、迷ったらここに向かうと決めたポイントがマーキングされている。
どこだったかしらねと綾はパンフレットを開き――
「ひとつはリゼさんの家、もうひとつはラビットハウスって喫茶店よ」
「「「え」」」
聞き覚えのある……いや、ありすぎる名前に三人が驚愕を顔に浮かべた。
「みんなどうしたの?」
「いえ、なんというか、すごい偶然ですね……」
「私と同じだね! 何だか運命を感じるよ~」
「……そういえばココアさんもでしたね」
「えっと?」
集合場所を教えたら二人がすごく盛り上がられ、テンションに全く付いていけない綾。
頭にクエスチョンマークを浮かべる綾に千夜が理由を説明すると、ココアに負けない大きさの叫びが店内に響き渡った。
「ここがラビットハウスだったの!?――あ、ごめんなさい、店内で大声を上げるなんて」
「大丈夫、今ここには私達しかいないから」
カラオケだって出来るよ!と力説するココアに綾が苦笑いを返したところで、鈴の音が店内に響く。
やって来たのは、綾にとって見慣れた二人の少女――アリスと忍だった。
「――アリス! しの!」
「やっぱりここにいたんですね綾ちゃん」
「アヤーーー!」
安堵ゆえの涙を流しながらアリスは綾に突進し、忍も肩の荷が降りたと微笑む。
ようやく再会できた喜びで綾も涙ぐむが、アリスの頭を撫でながらふと疑問が浮かぶ。
「あれ、しの今『やっぱり』って言ったわよね? 私がいることが分かってたの?」
「はい、実はリゼちゃんがここだろうって」
忍曰く、あの数秒間でリゼは誘拐犯がココアたとはっきり見えていたとのこと。
そしてリゼはココアが探していたことから、もしかするとうっかり自分が休みを取ったことを忘れ、更にうっかり自分と綾を間違えたのではとの憶測を立てたらしい。
「リゼちゃん探偵みたい。何から何まで正解だよ」
「正解なの!?」
実は街を案内されてる途中でもリゼと似てると(主に陽子に)からかわれていた綾だが、まさかそれが騒動の発端のひとつにまでなってたとは思いもよらず驚いた顔でココアの方を向く。
あんまりにもあんまりな理由に、いざ口を開こうとしても何を言えば良いのか分からない綾。
とりあえず綾は忍に先を促すことにした。
「うー……とりあえず続きをお願い」
「はい。それでリゼちゃんが綾ちゃんを連れ去ったのが誰か確認してすぐ、『小隊をアリスと忍、私、陽子の三班に分ける。私はカレンの捜索。陽子は携帯があるから連絡を私と取りながら同じく単独で捜索、アリスと忍は携帯が無いからパンフレット見ながらラビットハウスに直行し増援を呼んできてくれ。では作戦開始!』って言ったので私とアリスす来たんです」
「なるほど……でも陽子ちゃんって子を一人にしても平気だと判断したのは携帯で連絡を取れるからよね?」
「そうだよ。えっと……」
「宇治松千夜。千夜って呼んで」
「うん。それでチヤは何が気になるの?」
「だって携帯があるなら綾ちゃんに直接――は電話に出れなかった可能性もあるかもしれないけど、ココアちゃんに電話した方が早くないかしら?」
「あ」
千夜の言葉に一同が揃って『その発想は無かった』と呆け、まるでそこを狙ったかのようにココアの携帯が鳴る。
「もしもし」
『ココア!今綾はいるか!?』
「り、リゼちゃん落ち着いて! 綾ちゃんなら今一緒にラビットハウスにいるよ」
『そっか、そうだったのか……良かった。お前に拐われたときはどうなるかと思ったんだぞ』
「あはは、ごめんごめん。それよりリゼちゃん
、何でもっと早く、綾ちゃんを連れてく途中で私に電話しなかったの?」
電話越しにリゼの安堵のため息が聞こえたところでココアが千夜の疑問を飛ばす。
『………………………………』
沈黙。
「リゼちゃん?」
『……そ、そんなことよりもココアはラビットハウスにいるんだな? 忍とアリスをそっちにやったんだがいるか?』
からの露骨な逸らし。
リゼちゃんも忘れてたんだ~と言いかけたココアだが、まだリゼの案内する人が一人見付かってないのでぐっと堪える。
「いるよ。変わろっか?」
『いやいい、その代わりカレンに電話繋がらないのに心当たりは無いか聞いてくれ』
「分かった、聞いてみるー」
「何を聞くんですか?」
通話中のに目が合った忍が訊ねてきたのでココアはリゼの質問を復唱する。
それを聞くと忍はけろっとした顔で言ってのけた。
「カレンの携帯は電池が切れたそうで、持ってても邪魔だからとうさぎを追いかける前に預かってますよ?」
「なるほどー。あ、リゼちゃん? 充電切れたから忍ちゃんが預かったんだって』
『そうだったのか!? 繋がらないわけだ……』
カレンのスマホ不所持。
それはつまり手がかりナシで探せと言われてるに等しく、思わずリゼは唸る。
「リゼちゃんはお手伝いが欲しいって言ってたけど、今ちょうど千夜ちゃん来てるから頼もうか?」
『千夜もいるのか? だったら是非お願いしたい』
「分かった、後リゼちゃんシャロちゃんも呼んだら? きっと助けてくれるよ」
『シャロは今日休みだったからな。だが……いや、折角の休みに悪いがシャロにも手伝って貰おう。カレンの映った写メをそっちの協力者と私にメールで送ってくれ。シャロには私から連絡を入れておく』
「うん。お互い頑張って探そうね! 私も頑張るから!」
『ああ、特にココアは頑張れよ。話をややこしくした分』
「あはは……それじゃ切るね」
『分かった、また後でな』
通信の切れた携帯をじっとココアは見つめる。
それからいつになく真剣な瞳で周りを見回し、
「みんな、リゼちゃんに協力して!」
「もちろんです! カレンの為ですから!」
「わたしも頑張るよ!」
「途中で連れ去られたけど、今度はしっかり探してやるわ」
「ええ、今日は休みだし協力するわ~」
「私はここに残ります。カレンさんが来たときそれを教える人が必要でしょう。というか私も探しに出るとラビットハウスに誰もいなくなっちゃいます」
「よし。それじゃみんな、探しに行くよ!」
「「「「「おーーー!」」」」」
腕を高く掲げるココアに初対面だとか元被害者と加害者の関係とか関係なく全員が声を揃えて返事し、チノを残して店の外へと勢いよく飛び出していった。
忍「やってきました木組みの街!」
アリス「うわあ、ホントにイギリスみたい」
リゼ「ようこそ木組みの街へ。歓迎するよ」
カレン「WOW!うさぎがたくさんデス。一匹くらい持ち帰っても」
陽子「いや、駄目だろ流石に……」
カレン「諦めたら負けデスヨーコ! 私は絶対持ち帰りマス!」
カレン「うう、うさぎすばしっこいデス……こうなったらエサで釣るデス!」
リゼ「エサと言えば、羊羮で釣ろうとしたやつが私の友達にいるぞ」
陽子「なぜ羊羮!?」
♯3 カレンをさがせ!
千夜「see you next time. ふふっ♪」