ご注文はきんいろの日々ですか?(旧題:うさぎモザイク)   作:りゅーん

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アニメごちうさ1期でココア、2期でチノが歩いたあの道をきんモザ勢に歩かせるの忘れてたああああああ(絶望)

やっぱごちうさの出だしはあれだよな(キリッ)とかプロット考える段階で言っといてこのざまだよ!



※前話において次回予告を「おとまりパーティー」としていましたが、作者の都合によりカレン捜索についての話となったことを、更新の遅延共々ここに謝罪します。

今後ともこのクロスオーバーをご愛顧頂けると幸いです。


第3話 カレンをさがせ!

「大人しくお縄につくデス! デアエデアエー!」

 

時代劇のような声を上げながら、カレンは街をひた走る。

その目に映るのは自信の二メートル前を行く白くもふもふしたうさぎただひとつ。

絶対に捕まえるデスと追いかけるものの、なかなか距離は縮まない。

 

ぴょんぴょん。

たたたた。

ぴょんぴょんぴょん。

たたたたた。

ぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょん。

たたた、たた、た……た…………

 

「ぜぇ……はぁ……な、なかなかやるウサギデス。これがイダテンってやつなのデスね……」

 

街中とはいえ日々弱肉強食の世界を生きるうさぎと帰宅部女子高生の体力勝負はうさぎに軍配が上がり、体力を切らしたカレンは膝に手をついて息を整える。

カレンが足を止めたのに気付いたうさぎは『もう大丈夫?大丈夫かな?』と言いたげな瞳をカレンに向けた後、先程の疾走が嘘のようにのんびり歩き出す。

 

「うう、ここで引くわけには行かないデス」

 

相手がのんびり歩くなら好都合、と今度は鬼ごっこが再開しないようごっそりと後を付けるカレン、気分は犯人を尾行する探偵だ。

 

「ここは……」

 

うさぎを追った先にあったのは、先程の公園とは異なる小さな公園。

うさぎの行く先を目で辿ると十羽近いうさぎがたむろしており、それを見たカレンの体に活力が戻る。

これだけいれば一羽くらい行ける!と内心でガッツポーズを取りながらそろりそろりと近寄るが、タイミング悪くカラスが鳴き声を響かせながら近くの樹へと飛来したせいでうさぎは蜘蛛の子を散らすように逃げだしてしまった。

 

「oh no……」

 

うさぎ一匹残らないがらんとした空間に一人残されたカレンは不満げに空を見上げる。

うさぎが逃げる原因となったカラスは木で羽を休めているが、どうやら団体客だったようで追加で数匹ほどにカラスが飛んできた。

それが次々と木に止まり――

 

「あ」

 

着地姿勢を取ろうとしたカラスがポイ捨てした何かがカレンの方へ落ちてきた。

もしかして鳥類が落とす例の汚物かとカレンは咄嗟に落下予定地点から離れるが、逆光で見辛かったそれのシルエットがはっきり見えると慌ててキャッチする。

カラスから落ちてきたのは、一部をを除いて黒い色をした、頭にちょこんと王冠を被ったうさぎだったのだ。

 

「カラスからウサギが落ちて来まシタ……ナゼデス?」

 

上を見る、カラスは呑気に枝で休んでいる。

下を見る、うさぎは自分を抱くカレンを不思議そうに見上げている。

何でカラスからうさぎが落ちて来たのかとか色々疑問が浮かび上がるが……

 

「ウサギ、ゲットだぜ!デス」

 

とりあえずカレンはこの棚からぼた餅な状況を喜ぶことにした。

 

「うわあ、もふもふで暖かい……」

 

では早速と腕の中のうさぎを撫でてみる。

カラスの足から紐無しバンジーというアグレッシブな登場の割にこのうさぎは大人しく(むしろ大人しいからこそカラスに連れ去られても落とされても動じないのか)初対面のカレンが背中を撫でてもじっと見上げるだけ。

逃げないなら好都合と、触れたところから感じるじんわりと暖かい体温と撫で心地をひとしきり楽しんだ後、ふと辺りを見渡すと。

 

「あれ、ここどこデス?」

 

ようやく全く覚えのない場所にいることに気付いた。

恐るべきはうさぎの放つもふもふオーラか、猪突猛進なカレンか。

迷子の二文字が脳内に浮かんだカレンはしばらくおろおろした様子を見せるが、やがてその慌てぶりが嘘のように静まった。

 

「ふー、初めて来る場所で迷子になるのってやっぱりワクワクシマスね。でもそろそろリゼに電話しまショウ」

 

なんとこの日英ハーフ、見知らぬ土地というシチュエーションに冒険心をくすぐられてわざと迷子の振る舞いをしていたらしい。

そろそろ電話するデスと余裕たっぷりに鞄を探るカレンだが、やがてフリじゃなく本当に焦った顔をする。

 

「ケータイが無い!?」

 

一瞬遅れて、電池が切れて邪魔なだけだと忍に預けたしまったのを思い出す。

さっきの余裕を投げ捨てて必死に手荷物を漁るが、手がかりはカレンが父からもらったパンフレットのみだった。

 

「手元にあるのはパパがくれたパンフレットの地図だけ……そうだ、パパが迷子になったらラビットハウスってパパの友達のお店かリゼの家のどっちかを目指せって言ってたデス」

 

リゼの家は豪邸だったが、流石にパンフレットには無い。

故にカレンの取れる選択肢はラビットハウスのみ。

そうして思考を何とか落ち着かせながら現状をひとつひとつ理解してったカレンはポツリと一言。

 

「もしかして、リアルな探検ごっこ出来るチャンスデス? テンション上がってきまシタ!」

 

文明の利器を失い、地図一枚だけで目的地目指し知らない土地を行く。

それは規模は小さいものの、紛れもない探検だとカレンには思えて。

 

「よーし。カレン探検隊、いざ出発デス!」

 

落ちてきた黒うさぎをお供に本日最高潮のテンションを引っ提げ、一人と一羽の探検隊はラビットハウス目指して一歩を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

陽子は右に左に顔を忙しなく動かしながら木組みの街を走る。

体力があると見込まれてリゼから提案されたのは、あちこちをランダムに探し回り、陽子自身が迷わないようリゼと定期的に連絡を取ることで土地勘をカバーするというものだ。

色々と無茶のある作戦だが、十キロのランニングをほぼ日課とする陽子には少なくとも移動に関して何ら支障はない。

 

「っとお、もう定期連絡の時間か。もしもし」

 

『ああ、こちらリゼだ。調子はどうだ?』

 

「さっぱり。聞き込みしようにも私は知り合い居ないしな~」

 

『そうか。こっちもまだ見つかってない』

 

「お互い頑張らないと。それと今私は駅の方だから」

 

『駅となると……そうだ、一回ラビットハウスに顔を出したらどうだ? さっきアリス、忍が協力者を集めてきてくれたんだが、そっちが有事の駆け込み先に選んだならカレンが来るかもと待機してる奴が一人いるんだ』

 

「へー。さっきリゼには携帯番号教えて良いっていったけど、一回『私が陽子だ!』ってその人に教えておいた方が良さそう」

 

『頭に毛玉みたいなうさぎを乗せたチノって女の子だ。それじゃまた』

 

「はいよー」

 

リゼとの連絡を終え、陽子は額に指を当てて唸る。

綾の誘拐騒動は無事解決したと既に連絡は受けたのだが、肝心のカレンが全く見当たらない。

あの時綾とココア(綾を拐ってった女の子の名前らしい)に気を取られた数十秒で、完全に見失ったのだ。

 

「一体どこをどう行けばはぐれるんだあの短時間で!」

 

いっそ首輪とリールつけてやろうかなどと割と本気で考えつつ、一度パンフレットを見やった陽子は進路をラビットハウスへと変えた。

 

 

 

 

 

 

「シノ、しっかりして!」

 

「大丈夫ですよ~」

 

「シノー!」

 

アリスが必死に忍の名を呼ぶが、忍は生返事をするだけで視線はどこか違うところを見ている。

そんな忍を見てアリスが忍の腕を掴んで揺らすが、正気に戻った様子はない。

 

「名付けて『イギリス酔い』ってところかしら?」

 

「アヤも現実を見て!?」

 

二人のやり取りを少し離れたところから見ていた綾が遠い目をしてそんなことをぼやく。

アリスと忍は携帯を持ってないため陽子のような方法が使えず、携帯を持ってる誰か――慣れてる顔ぶれが良さそうという理由で綾が抜擢された――と同行という形で捜索に出た……のだが。

カレン捜索に乗り出してから既に三回、こうして忍がイギリス風な街並みを見て思いにふけては現実に戻しを繰り返しているのだから、綾がちょっと現実から目を背けるのも仕方がないというものだ。

だが綾までも別世界に旅立つとアリスが孤軍奮闘しなければならないので、綾は頭を左右に振って思考をクリアに戻し、街並みに酔いしれる――イギリス酔いという命名はまさに正鵠を射る例えだ――忍へつかつかと歩み寄る。

 

「ア、アヤ?」

 

「いい加減しっかりしなさいしの! 早くカレンを探しださないと――」

 

そこで綾はぐっと息を溜める。

矢を番えた弓がきりきりとたわむ光景をアリスは綾の後ろに幻視した。

 

「カレンの髪の毛が真っ黒に染まっても知らないわよっ!」

 

クリティカルヒット。

綾の言葉は忍の急所を正確に撃ち抜き、劇的な効力をもって忍を現実へと呼び戻す。

 

「あ、あああ綾ちゃん今のは一体どういうことですか!?」

 

「そのまんまよ。しのがそうしてこの街に魅入ってる間にカレンの髪は…………」

 

「わー! アリス、綾ちゃん早く探しにいきますよ!」

 

もちろんこれは綾の嘘だ。

そもそも、色水に浸した紙のように短時間で自然と金髪が黒髪になるなど常識的な観点からして(流石に今このタイミングで髪を染めるなどしないだろうし染髪は考慮しない)あり得ない。

あり得ないのだが、金髪・イギリスが関与するとこんな子供騙しの嘘でも引っ掛かるのがこの忍という少女。

鬼気迫る表情の忍にアリス共々手を引かれながら上手くいったと安堵する綾だが、効き目の予想外な強さに苦笑いを浮かべた。

しかし、予想外とはいついかなるときでも起きるわけで。

 

 

「金髪!」

 

曲がり角の向こうからやってきた金髪碧眼の少女が視界に入ると、先程までの忍がいつもの忍に戻ってしまったのだ。

 

「いきなり何!?」

 

「しの! ああすみません何でもないんですお気になさらず」

 

「え?え~と、次は気を付けるのよ。…………何かこの子、リゼ先輩に似てる」

 

少女も出会い頭に金髪と叫ばれるなんて思いもよらず、状況がよく読めなかったがとりあえず慌てる綾の謝罪を受け入れる。

その後少女が小声で続けた一言が聞き取れずアリスが「何か言った?」と問いかけたが、流石に初対面で知り合いに似てるなどと言われていい気はしないだろうと少女はお茶を濁した。

 

「それじゃ私はいくから。じゃあね」

 

場は収まったと見て少女はその場を後にしようとするが、忍がそれを呼び止める。

 

「あ、待ってください。あなたはこの街の人ですよね? 聞きたいことがあるんですけど良いですか?」

 

「ええ、少しなら」

 

「でしたら――綾ちゃん、カレンの写真お願いします」

 

「! 分かったわ。……すみません、この金髪で髪の長い子なんですけど何処かで見ませんでしたか?」

 

別れる雰囲気になってなお呼び止める忍を制止しようとしたが、忍の意図に気付いた綾は携帯にあるカレンの画像を相手に見せる。

綾から携帯を受け取った少女は「ん?」と首を傾げて何故か自身も携帯を取りだし――

 

「この子よね?」

 

「私の送った画像!」

 

少女が開いた画像は綾が見せたものと同一で、思わず声を上げてしまった。

 

「これは私の先輩に貰ったの。『この画像の女の子を探してくれ』ってね」

 

「先輩から? 名前は何て言うんですか?」

 

「リゼ先輩。天々座理世って名前よ」

 

「「リゼちゃん(さん)!?」」

 

見知らぬ少女から出た名前に驚く二人だが、少女もまた驚いていた。

少女の方は写真を見せられた段階で忍と綾がリゼの知り合いだと薄々理解していたため、ここで会ったという偶然に対する驚きだが。

 

「この街で見ない顔だけど、リゼ先輩を知ってるってことは貴女達が先輩が今日案内する予定だっていう……」

 

「はい、小路綾です」

 

「私は大宮忍です」

 

「アリス・カータレットです!」

 

「私は桐間紗路。リゼ先輩の学校の後輩よ。それで悪いのだけれど、私も先輩の頼みでこの子を探してる最中だからどこにいるか分からないの」

 

「そうですか……」

 

カレンの画像を持ってることとまだカレン発見の報が来ないことから予想はしてたが、まだ見つかってないと聞いた三人はしゅんとなる。

 

「でも先輩あちこちに協力をお願いしてたし、先輩自身も探してるからきっとそんな時間かからないで見付かるわ」

 

「はい。あ、探してくれてありがとうございます」

 

「良いのよ。それじゃ私行くわね。お互い頑張りましょ」

 

落ち込んだ三人を優しく慰め、最後に上品な笑みを浮かべて少女は去っていった。

その姿を見て、忍がほわぁ~と変な声を上げる。

 

「お嬢様です。金髪のお嬢様……」

 

「シノ、しっかり!」

 

またもトリップを始めた忍をアリスが呼び戻そうとする。

そのアプローチが厳しいのはきっと気のせいだ、断じて他の金髪少女に見とれてたのに嫉妬したとかではない。

さっきより深いトリップにアリスは苦戦していたが、ジト目で忍を見る綾が呟いた「カレン 金髪 黒くなる」の三単語でしゅばっと覚醒する。

 

「それじゃ二人とも行くわよ」

 

「「はーい」」

 

綾の言葉にアリスと忍は揃って返事をし、三人はカレン捜索を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

捜索から一時間が過ぎた頃、千夜はカレンの消えた公園のベンチで休憩していた。

さっきまでは精力的に探していたのだが、千夜の体力は同世代平均を下回るので一時間歩き通しはなかなかに辛いものがある。

 

「はあ、カレンちゃんどこにいるのかしら」

 

綾から貰ったカレンの画像データを見ながら千夜は呟く。

ひょっとしたらと公園を見渡すが、カレンどころか金色そのものが見当たらない。

見当たらないが、そのかわり見慣れたストロベリーブロンドが視界に映る。

 

「あ、千夜ちゃんだ。私と千夜ちゃんとリゼちゃんはバラけるように動いてたのに奇遇だね」

 

そう言ってココアは千夜の隣に腰かけ、手に持っていた袋から何かを取り出す。

それもまた、千夜には馴染みの深いものだった。

 

「あら、うちの羊羮?」

 

「そうだよ。ほら、刑事さんがよく張り込みで食べてるでしょ? だから私も真似してみたの」

 

「それあんパンと牛乳じゃないかしら」

 

「うーん、でも羊羮美味しいし」

 

細かいことはいいんだよと羊羮を口にするココアをよそに千夜は再び公園を見渡す。

その瞳が憂いを帯びているのを見て、ココアは優しく千夜に話しかけた。

 

「やっぱり心配?」

 

「そうね……」

 

「そっか、そうだよね。私も心配だし」

 

この街は良い街だ、と自信をもって言えるが、それでも慣れない街で一人歩かせるのはどこに行かれるか分からないという不安がある。

 

「あー、にしてもカレンちゃんはどこに行ったんだろう? まだ一時間も探してないけどこうも見つからないと悩んじゃうな~」

 

「ええ、悩むわね……悩む?」

 

ココアのぼやきに千夜が相づちを打ち、何か心に引っ掛かったような感覚を覚える。

一体何に引っ掛かったのか記憶を辿ると、カレンを探す前にチノとやり取りした会話が脳裏に蘇った。

 

(確かチノちゃんの占いで悩んだときには初心に返ると良いって)

 

チノの占いはかなりの精度を誇る。

そんな彼女の占いなら何か力になってくれるかもしれないと自らの"初心"を考えてみる。

浮かぶのはやはり自らの実家である甘兎庵だ。

 

(甘兎にいるのかしら? でもここに来る前に見てきたのよね……)

 

今の自分を形作る重要な要素である甘兎庵だが、なぜかしっくり来ない。

 

「どうしたの?」

 

「いや、カレンちゃんどこにいるのかしらってね」

 

「あー。私もこれ食べたら探しに行くから一緒に頑張ろ?」

 

考え込む千夜を見て心配そうに覗きこむココアに心配ないと笑いかけ、ふとココアと彼女が手にした羊羮が目に入る。

しばらくココアの顔と羊羮を千夜は交互に見やり――

 

「ココアちゃん、ちょっとその羊羮貰って良いかしら?」

 

――瞬間、千夜はこれだと閃いた。

 

「ん?いいよ」

 

気前よく羊羮をくれたココアの「千夜ちゃんもお腹空いたんだねー」との一言に苦笑を返し、受け取った羊羮を口にせず千夜はベンチから立ち去った。

 

(でも迷信レベルの捜索方法よね~、羊羮で人を釣ろうなんて)

 

千夜が向かうのはうさぎのたむろしやすいとある場所。

そこでたむろするうさぎたちに羊羮を差し出すというのが千夜の閃いた内容だ。

どう考えても発想がぶっ飛んでるし、そもそもうさぎに羊羮を与えて人を釣るなど目的と行為が全く噛み合ってない。

千夜自身もそれを自覚してるが、千夜がこんな行動に出たのは歴とした理由が存在する。

 

 

 

千夜の生きた17年間において甘兎庵とは切っても切れない仲であり、この後の人生も甘兎庵の看板娘として働くことを望んでいる千夜にとって生涯付き合うことになるだろう。

 

だが、『今の自分』を考えるとどうか。

それを考えると、ほんの一年前に起きた出来事も"初心"の候補として見逃せなくなってくる。

 

それはココアとの出会いだ。

 

千夜と特に仲が良い友達にはココア、お隣さんの幼馴染みである『彼女』以外にラビットハウスで働くリゼ、チノ、そしてチノと仲の良い同級生の二人がいるが、『彼女』を除くいずれもがココアと出会わなければ友誼を結ぶどころか知り合いにすらなれてない可能性が高い。

千夜の友達は高校にも少なくない数いるが、先に挙げた友達レベルの仲には届かず、唯一届くのは幼馴染みの『彼女』のみだが彼女は千夜と違う高校に通っている。

つまり今の自分が騒がしくも楽しい日々を送れているのは間違いなくココアに出会えたからで、それゆえに"初心"という意味合いからは少し離れてしまうとしても、ココアとの出会いが初心候補に挙がったのだ。

 

そこで本題のなぜうさぎに羊羮を差し出してカレンを釣ろうとするのかだが、千夜の運命を変えたココアとの出会いがまさにそんな状況だったからの一言に尽きる。

 

ココアと出会った日、千夜は甘兎庵のお得意様へ羊羮を届けた帰りに公園に寄っていた。

何となく自分のペット以外のうさぎを甘味で餌付けをしてみようかという気になったからだ。

うさぎの群れの近くにしゃがみこみ自作の栗羊羮を差し出すが当然食い付くうさぎは皆無(そもそも甘味をちらつかせるやすぐに飛び付く千夜のうさぎが普通じゃない)で、その代わりに食い付いたのがココア。

物欲しげな顔でじーっと千夜を見つめるココアに栗羊羮を渡したのが全ての始まりだった。

 

 

そんなわけで、あの日をなぞるべく千夜はうさぎに羊羮を差し出しに来たのである。

 

「おいでおいで~」

 

千夜がうさぎの前に羊羮を差し出すとうさぎは鼻をひくひくさせるが、羊羮に食い付こうとするうさぎはやはり現れない。

 

「千夜ちゃん、何してるの?」

 

「ココアちゃん、実は今日、チノちゃんの占いで――」

 

千夜の行動を不思議に思ったココアにチノの占い、そして自分の思ったことを話す。

するとココアはしばらく懐かしんだ後、私もやると最後の一個を千夜の隣でうさぎたちに見せびらかした。

 

「ほら、美味しいわよ~」

 

「千夜ちゃん特製ようかんだよ~」

 

二人に増えても結果は変わらず、うさぎは「何これ?」と言いたげな瞳で二人を見上げるだけ。

やっぱり無理かと千夜が手を引っ込めようとするが……

 

「きゃっ! あ、あんこ!」

 

茂みの向こうから全体的に黒く頭に王冠を乗っけたうさぎ――千夜のペット、あんこが弾丸のごとく飛来し千夜の手から羊羮を引ったくっていった。

 

「わあ、今度はあんこが釣れたね」

 

「ええ、でもカレンちゃんは――」

 

「くろうさ、待ってくだサイ~~~!」

 

釣れたは釣れたが狙いとは違うことに少し落胆してると、あんこがやってきた茂みの奥から少しカタコトな日本語を叫ぶ少女の声が聞こえる。

くろうさとは恐らくあんこのことだろう。

 

あんこ出現からは予想も出来ない展開に千夜とココアが二人で顔を見合わせている間も声はどんどん近づいてきて、声の主は大胆にもあんこの通った茂みを強引に突っ切って二人の前に姿を表した。

 

「ふぅ……あ、ここにいたデスね。いきなり走り出すからびっくりしまシタ」

 

出てきたのは金色の長い髪を靡かせ、少しつり目な灰色の瞳をした少女。

その煌めく金にしばらく見とれていた千夜だったが、再起動するとすぐさま携帯を取り出す。

 

「……うそ」

 

捜索の助っ人をするため綾から貰った画像と目の前の少女は見に纏う衣装を除き全て合致していて。

 

「ええっと、カレンちゃん……で良いのかな?」

 

「What's? 確かに私はカレンデスが、誰デスカ?」

 

おずおずとココアが名前を聞くと少女はそれを肯定する。

それはつまり、彼女は探し人であることに他ならず――

 

「「ほ、ほんとに釣れたぁー!?」」

 

突拍子もない発想が結果を実らせたことに、二人は揃って絶叫した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の少女が驚愕の声を空に響かせた数十分後、今度は凛とした少女の怒声とどこかカタコトな日本語の悲鳴が響き渡ったそうな。

 

その音源が軍人然としたツインテールの少女と後ろ髪が腰まで届く金髪の少女だと言われているが、真相は定かではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




リゼ「ふー、ガイドなんて慣れないことしたから疲れたな」
千夜「お疲れさまリゼちゃん。そういえば今日はどこ行ってたの?」
リゼ「えっとだな……」

リゼ「フルール、私の学校、温泉プール……あと甘兎にも行ったな」
千夜「地元民だとどこ案内すれば良いか迷いそうよね」
リゼ「実際親父に頼まれてから悩んだよ」


ココア「リゼちゃんずるい!」
リゼ「いきなりどうしたココア」
ココア「リゼちゃん私に内緒で妹を増やそうとしてたんでしょ、それも五人!」
リゼ「私の話聞いてたか!?」

♯4 突撃!隣の天々座邸

ココア「しーゆーねく……えっと、またね!」

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