ご注文はきんいろの日々ですか?(旧題:うさぎモザイク)   作:りゅーん

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え? 一週間だって数日のうちでは(白目)
あ、いやまじすんませんお願いだから石は投げないで!


それはそうと最近すごく蒸してます。
インドア派の人でもスポーツドリンクかハチミツリンゴ酢か整理食塩水の携帯をオススメするよ!
ただの水で良いだろとか露骨な熱中症フラグなので要注意(作者は中学時代見事にフラグ回収した上腎不全一歩手前まで行った)


※父親三人組の出番がこの先望み薄なので、今回はごちうさ風後書きとさせて頂きます
お馴染みのBGMを脳内で再生しつつお読み下さい




第4羽 突撃! 隣の天々座邸

「みんなじゃーねー!」

 

「今度はお客として来てください。自慢のコーヒーで歓迎します」

 

「甘兎もよろしくね~」

 

「先輩にあまり迷惑かけないようにね!」

 

夕日の光を浴びながら、ココア、チノ、千夜、シャロが天々座家の前でリゼ達六人に大きく手を振る。

カレン発見後、彼女たちはココアに引き止められる形でリゼの観光案内に同行していたのだ。

 

「チヤ、チノ、シャロ、ココアお姉ちゃん! また明日デスー!」

 

リゼ達が手を振り返す中でも一際大きく、ぴょんぴょん飛び跳ねながら振っているのはカレン。

何故ココアを姉呼ばわりするのかと言えば、改めてみんなで自己紹介し直そうという流れになった際、ココアが

 

『保登心愛、ココアって呼んでね。もしくはお姉ちゃんでも可だよ!』

 

なんて言ったのを真に受けたからである。

当然というか、ココアお姉ちゃんとカレンに言われたココアは、嬉しさあまり涙を滝のように流しながらカレンに抱き着き存分に"もふもふ"した。

その光景何人かから不満が上がったりという一幕があったが、蛇足ゆえ詳細は省く。

ちなみに他四人の呼び方は普通にココア・ココアちゃん。

『何でお姉ちゃんじゃないの!?』『当たり前ですココアさん!』なんてやり取りがされたのはご愛嬌というやつだ。

 

「……行っちゃいましたね」

 

「そうデスね……でも明日があるデス!」

「そうだねカレン。あ、そうだ」

 

夕日に向かって消えていった四人を見てしばし空気がしんみりするものの、カレンは持ち前のポジティブさを発揮し夕日に負けないほどの笑顔でグッと握りこぶしを作る。

それを見ていたアリスがふと思い出したようにリゼの方を向いた。

 

「リゼ、色々あったけど今日は楽しかったよ。ありがとう」

 

「! そうデスね、リゼのお陰で今日は満足出来マシタ。感謝デス」

 

「道順もちゃんと考えてくれていたのよね。ありがとう」

 

「修学旅行のガイドみたいな眠くなるやつじゃなくて、リゼのは楽しかった!」

 

「ありがとうございますリゼちゃん。明日もよろしくお願いしますね」

 

何だろうと疑問に思った面々だが、アリスが今日自分達をガイドしてくれたことへのお礼を口にしたのを聞いてはっとした四人は次々にお礼を口にする。

 

「お前たち……」

 

泊まる相手はどんな人だろうと悩んだことがあった。

どんな道順を辿ろうか悩んだことがあった。

そもそもどこを見せれば良いか悩んだことがあった。

 

そして今日。

 

本当に紹介するのがこんな場所で良いのか葛藤した。

アリス達のスタミナを顧みてやれた自信が無かった。

見えるところにいるから大丈夫と高を括ってカレンを一人にさせてしまったし、綾が連れ去られるのも止められなかった。

 

振り返れば反省ばかりで、それでも案内された側から送られたのは感謝の言葉。

アリス以外は今気付いた!と半ば慌てての言葉だが、それでも気持ちは伝わってきて。

 

「……ああ、楽しんでくれて良かったよ」

 

リゼはちょっと救われた気がした。

六人の間に暖かい空気が流れるが、それは不意に聞こえた空腹時によく耳にする音が霧散させる。

 

「あ、ごめん。カレン探すときずっと走ってたからお腹空いちゃった」

 

「~~ヨーコ! 今ちょっといい雰囲気だったのに!」

 

「……ぷっ、そうかそうか。ここで立ち話もあれだしさっさと中に入ってしまおう。うちの料理人が腕によりをかけた料理を振る舞ってやるからな」

 

「よっしゃあ、豪邸の夕食だー!」

 

「ほら、入るぞー」

 

一転、わいわいと賑やかになった彼女たちを見て明日はもっと上手くやろうと心に決め、リゼは五人を自宅へ案内した。

 

 

 

 

 

 

 

夜。

月明かりの照らす木組みの街を、バッグを抱え何かに気付かれぬよう忍び歩く二人と、彼女たちから一歩離れて普通に歩く二人の四人組がいた。

彼女達は遠くからでも見えるリゼの家を目指していたが、リゼの家の前の曲がり角でこそこそしていた二人――ココアと千夜は急に歩みを止め、身の丈をゆうに越える生け垣に身を隠しチラチラと門の様子を伺いだす。

 

「コードネームU、門の前には見張りが二人いるよ」

 

「そうね……どう中に入ろうかしら? コードネームH」

 

「何やってるのよ二人とも」

 

いきなり謎の名前でお互いを呼び始めた二人に、なんなんだこの茶番と普通に歩いていたうちの一人、シャロが二人の会話に割り込んだ。

もう片方の正体であるチノもティッピーを頭に乗せ同意を示す。

 

「何やってるもなにも、今の私たちはこっそりお家に入ってリゼちゃんを驚かせるというミッションを受けたエージェントなんだよ!」

 

「ミッションを成功させる為には門を見張る人たちに見つかっちゃいけないの。分かった?シャロちゃん」

 

「とりあえずあんたたちを止めた方が良さそうなのは分かったわ」

 

シャロの正論を聞いた二人は裏切りが出たと大袈裟にリアクションを取ったあと、再び侵入の算段を練り始めた。

やめないんかい!と思わずツッコんだシャロの隣で、チノがううんと険しい顔をしてこめかみに指を当てる。

 

「心配してるの? 大丈夫、私たちなら出来るようにチノちゃん――いや、コードネームK」

 

「誰がコードネームKですかココアさん」

 

ため息じゃなくて大声を出してやろうか。

門番さんこの人ですと大声で叫びたくなったが、それをすれば近所迷惑になるのでチノはグッと口をつぐみ、肺に蓄えた空気を叫ぶ代わりにため息にありったけ詰め込んで消費する。

 

「チノちゃんは香風智乃だからKなのよ。ココアちゃんは保登心愛だからH、私は宇治松千夜だからUね」

 

「その理論だと私もKよね」

 

「「――はっ!」」

 

横合いからかかる声にその発想は無かった!とシャロを見る二人。

途端におろおろしだす二人を見てちょっと胸のすく思いがしたシャロだったが、二人は尚も唸り続け――

 

「どうしよう千夜ちゃん、コードネームKが二人いるよ!」

 

「うーん……そうだ、二人が飼ってるうさぎの頭文字を足して区別すれば良いんじゃないかしら」

 

「飼ってるうさぎ? じゃあチノちゃんはティッピーだからKTってこと?」

 

「そうそう。それでシャロちゃんはワイルドギースだから――KYね」

 

 

 

――シャロに酷いコードネームが付けられた。

 

 

 

「ちょおおおっと待ったああああ!」

 

「どうしたのかしらシャロちゃん」

 

「どうしたもなにも無いわよ! ワイルドギースなら「W」でしょ!? なんでわざわざ『ワイ』ルドギースでYにするのよ!」

 

「さすがシャロちゃん、ナイスツッコミ」

 

「わざとかぁーーー!」

 

ワイルドギースという単語を曲解して名誉毀損待ったなしのコードネームに変えた千夜へ詰め寄ればまさかの確信犯で、シャロは即座にツッコミの追撃を飛ばす。

 

千夜には漫才やノリの良いやり取りを愛するあまり、ツッコミ欲しさに日常生活でも時折ボケをかますという困ったところがある。

わざとボケるだけならまだ良かったのだが、彼女自身天然キャラだというのだからもうどうしようもない。

そして、芸人気質と天然のハイブリッドな千夜と幼少期から仲の良いシャロは、かなりの速度でツッコミを入れてしまうのだ。

悲しきは慣れである。

 

「はぁ……あ」

 

やいのやいのの大騒ぎに一人だけ参加していなかったチノは顔を上げ、一人の男を目にする。

 

ところで。

彼女達がいる時間帯は夜だ。

となると辺りは昼より静かなはずで――

 

「おや、お嬢の親友の方々じゃないですかい」

 

――つまり、静まった場所で騒げば、隠れたところで全く意味がない。

門の前にいた二人のうち一人がこちらに来たことで呆気に取られた三人の後ろで、静観していたためいち早く男を見つけたチノが「当たり前です」と小さく呟いた。

歳上三人が揃って固まったし自分が対応しないと駄目かと思ったチノだが、瞬時に復活を遂げたココアがまるで十年来の親友のごとくフレンドリーに会話を始めだす。

 

「あ、前リゼちゃんのお見舞いに来たときにいた人ですよね?」

 

「その節はうちのお嬢がお世話になりました」

 

「ううん、リゼちゃんは大事な友達だもの」

 

「そうですか、これからもお嬢をよろしくお願いします。んで、今日は何のご用で?」

 

「実はリゼちゃん家に遊びに来たんです。お客さんがここに泊まってるって聞いて」

 

「おや、お客人達のことをご存じですか?」

 

「うん。今日友達になったの」

 

「なるほど、そいつはちょうど良い。お客人達も慣れない場所で疲れてるでしょうし、お嬢も初対面の人間を家に泊めるってことで緊張していた部分があったので、行って安心させてくだせえ」

 

「任せて!」

 

とんとん拍子に話が進み、あれよあれよという間に天々座家へ入れる許可が下りてしまった。

一度顔を合わせただけの相手と僅かな時間で仲良くなるココアに、一同は尊敬の年を抱く。

 

「ココアちゃんすごいわね……」

 

「ある意味才能よね」

 

「…………羨ましいです」

 

まあ、ココアが得意気な顔をしたことで三人の敬意が明後日の方向に吹っ飛んでしまったのだが。

それもココアらしいと、千夜は微笑んだ。

四人は門番に門の前まで案内してもらい、もう一人の門番と共に見送られ天々座家の敷地へ足を踏み入れる。

 

「さて、ここからはリゼちゃんに見つからないようさっき以上にこっそり行かないとね」

 

「なんでそんな見つかりたくないんですか?」

 

「なんでって、リゼちゃんや綾ちゃん達をびっくりさせるためだよ。その為にリゼちゃんに何も連絡しないでここまで来たんだから、見つかったらもったいないでしょ」

 

「こんな悪戯に向ける熱意は一体どこから……あれ?」

 

しょうもないことに並々ならぬ熱意を注ぐココアに何度目かのため息を吐こうとし――何か聞き捨てならない言葉を聞いた気がして首を傾げた。

今この人、相手に連絡してないとか言ってなかっただろうか。

 

「ちょっと待ってくださいココアさん、今『連絡しないで』って言いませんでした?」

 

「え、これリゼ先輩に何も言ってないわけ?」

 

「うん? そうだよチノちゃんシャロちゃん」

 

今回の訪問はアポなし。

まるで何でもないことのように言うココアに一瞬納得しかけたが、いやいやいやとチノとシャロの二人がココアに詰め寄る。

 

「ココアさんこんな夜に他人の家に押し掛けといて連絡すらしてないとかバカですか!?」

 

「リゼちゃんだもんきっと許してくれるよ」

 

「そういう問題じゃないです!」

 

「非常識にも程があるわよ! ていうか驚いてないってことは、千夜は知ってたんでしょ。なら止めなさいよ!」

 

「でも驚かすのって楽しいわよ?」

 

「だよね千夜ちゃん」

 

この期に及んでまだズレたことをいう二人に「あんたらあああああ!」とシャロが吠える。

 

(この二人は本当にっ……! ついでに何で千夜の口車に乗せられたのよ私のバカー!)

 

シャロがココアに同行しているのは、千夜から受けた一本の電話がきっかけだった。

憧れの先輩であるリゼの名前を出され、お泊まりという言葉の魔力を巧みに操る千夜にそそのかされて承諾してしまった過去の自分に「千夜の甘言に踊らされちゃダメ!」と言ってやりたい。

そのうち詐欺師にでもなるんじゃないだろうか、なんなんだあの鬼畜和菓子。

 

(とりあえず、リゼ先輩に電話……いや)

 

シャロはチノを引き込もうとする二人からじりじりと距離を取り、リゼに連絡を取るべくポケットからそっと携帯を取り出す。

起動させるのはメール機能。

電話だと声を出した時点でばれてしまい、そしてばれてしまえば千夜とココアは全力で止めに来る。

最悪電話だけかけて何も話せない事態に陥りかねない。

 

(宛先……リゼ先輩リゼ先輩――あった)

 

ココア達に背中を向け自らの体を遮蔽物に携帯を操作するシャロ。

宛先を設定し終え後は文章を書くだけの段階で、千夜から声をかけられる。

 

「シャロちゃん?」

 

「ひゃいっ!?」

 

警戒対象から声をかけられたことで声が上擦る。

どうしようバレるどうしよう何か誤魔化さないと――

上擦った声を上げたせいで千夜には怪しまれているだろう。

シャロは目をぐるぐるさせながらも必死に頭を動かし、

 

(そうだ! うさぎが庭には入り込んでたから慌ててたって言えば)

 

幸いにも自分のうさぎへ対する苦手意識は周知の事実。

これならいける!とシャロは千夜の方に振り向いた――そう、振り向いたのだ。

 

 

携帯を持ったままで。

 

 

千夜と目線を合わせてから己の失敗に気付くももう遅い。

 

「あら? シャロちゃん携帯持ってどうしたのかしら?」

 

「はっ、まさかシャロちゃんリゼちゃんに連絡を!? 止めないと!」

 

おのれココアめ、と悪態を突く暇もあればこそ。

自分へと迫る二人に、シャロはメールの続きを打つことすら出来ず逃走を余儀なくされる。

 

(チノちゃん、あなたもお願い)

 

(わかりました)

 

「おっと、させないよチノちゃん!」

 

ふと目があったチノに視線で必死に訴えると通じたのかチノも携帯を取り出すが、完全にシャロの方を見ていたはずのココアがUターンしチノは携帯を動かす間もなく捕らわれてしまう。

動ける味方は自分のみとなったが、一対一となったことでさっきより負担は軽減され、何より千夜は体力が少ないのでいずれ余裕が出来るはず。

そんなシャロの憶測を裏付けるように千夜は走りから早歩きへ、早歩きから徒歩へとグレードダウンし、シャロは今が好機とすぐさまメール作成に取りかかる。

 

しかし、シャロは思い出すべきだった。

 

千夜の体力は低いが、彼女には大した危険のないちょっとした出来事で火事場の馬鹿力を発揮するという特性があることを。

 

「やああああああっ!」

 

「きゃあああ!?」

 

まるで別人のような俊足で迫る千夜にシャロは反応できず、手にしていた携帯を引ったくられてしまう。

千夜ちゃんすごーい!とココアの賞賛を耳にしながら千夜は携帯に目を落とし。

 

「メール送信に成功しました……そんな!」

 

画面の表示を読み上げてがくりと膝を落とす。

千夜が迫ってきた瞬間、シャロはもはやこれまでと文が未完成なのを承知の上でリゼに送信していたのだ。

書けたのは『来客に注意』のたった五文字だけ。

意味の分かりづらいメールを送ってしまったことをリゼに内心謝りつつ、うちひしがれる千夜に勝利を確信したシャロは歩み寄る。

 

「さあ千夜、そろそろ観念しなさい。あと携帯返して」

 

しかし、油断大敵と言うべきか。

シャロが投降を促すと、ガバッと千夜が起き上がりシャロの携帯を見せ付けるように持ち上げた。

 

「シャロちゃんストップ! この子がどうなってもいいの!?」

 

「んなっ!」

 

「ふふ、形勢逆転ね」

 

そこに表示されていたのは『先輩好きです、付き合ってください』という文面の書かれたリゼ宛のメール。

あんなものを送られた日には、リゼ先輩に合わせる顔がなくなってしまう。何とかしないと――と、シャロはこの状況を打開すべく必死に考えたが。

奪還?無理よ、この距離なら千夜が押す方が早い。

説得?それが出来るならこんな状況になってない。

 

「あーもう、分かったわよ!こうなったら最後まで付き合ってやるんだから!」

 

結局敗けを認めるしか道が無く、シャロは千夜に投降した。

そんな自分にとって嬉しくない逆転劇を見せつけられたチノは明らかに狼狽する――

 

「さあ、次はチノちゃんの番だよ!」

 

――だから、背後から抱き付く形で拘束していたココアが肩をつかんで体をくるりと回し、視線を合わそうとするのにだって抵抗が出来ず。

チノはココアのなすがまま回され、至近距離でココアと見つめ合う形になる。

 

「あの、ココアさん?」

 

「チノちゃんが「うん」って言うまでやめないから。じーー」

 

「いや、その」

 

「じーーーーーー」

 

過去に"もふもふ"させてと言われ抱き着かれたことはあってもこうして見つめあったことは殆ど無く、それが至近距離となればなおさらのこと。

ココアの吐息がうっすらとかかるほど近い距離で、チノは金縛りにあったかのように視線をココアから外せない。

 

「じーー」 

 

「ち、近いですココアさん」

 

「じーーー……チノちゃんの瞳はキラキラした水色で綺麗だなぁ。ずっと見てられるよー」

 

「はうっ!?」

 

おまけにそんなことを囁かれたのだから、チノの顔が()()()()のように赤くなるのは必然だ。

チノは口説き文句を囁かれた気恥ずかしさと自分でも理解できていない感情(なにか)が胸の内で荒れ狂うのを押さえるのでいっぱいになり、「あう……」と生返事しか出来なくなる。

思考がぐるぐる回って、ついでに目もぐるぐる回していたチノだったが、彼女の正気を取り戻したのはココアでも千夜でもシャロでもない第三者の声だった。

 

「おや、君達は……」

 

聞きなれない低い声に四人がそちらの方を向くと、そこには眼帯で片目を隠した男と彼と同年代に見える同じ背格好の男が立っていた。

隣にいる人は知らないものの、眼帯を着けた方は全員見たことがあり、

 

「リゼ先輩のお父さん……!?」

 

そして今の彼女たちが最も顔を合わせてはならない人物だった。

先程顔を合わせた門番の時はココアのお陰で「来てくれたのか」とだけ認識され通してもらえたが、家主にはそんな誤魔化し通じない。

案の定リゼの父はいるはずのない来客に首を傾げていて、四人はその視線にうっとたじろぐ……いや、ココアのみは彼の登場に動じない。

家主であるリゼの父に見つかる意味を分かっているのかいないのか、ココアは気さくに話しかけ、

 

「あ、リゼちゃんのお父さんだ。こんばんは。この前のキャンプ楽しかったです!」

 

「こんばんは。そんなに喜んでもらえたならこちらも嬉しいな――で、うちの庭でこんな夜に何をしていたんだ?」

 

「リゼちゃんとお客さん達をびっくりさせたくてこっそり泊まりに来ちゃいました。家に入って良いですか?」

 

「「「ココア(さん)(ちゃん)!?」」」

 

何と返すのかハラハラしながら見守る三人の耳に届いたのはどストレートな台詞で、思わず声を荒げた彼女たちは悪くない。

怒鳴るリゼの父を幻視した三人は見てられないと咄嗟に目を逸らすが、しかし聞こえてきたのは楽しそうに弾む声だった。

 

「ほう? そうかそうか……よし。追加で四人泊まるとうちの使用人に伝えておくとしよう。無論、リゼに話が行かないよう言い付けておく」

 

「ありがとうリゼちゃんのお父さん!」

 

「これくらいお安いご用さ。さて、せっかくだから皆玄関まで付いてくるといい。悪いな礼樹、出掛けるのは少し待ってくれ」

 

「やれやれ、お前は相変わらずだな」

 

楽しそうどころかココアと同じくらいノリノリで家に戻ろうとするリゼの父と後ろを付いていくココアに我に返る三人。

ドッキリが親公認になるというまさかの展開にこちらがドッキリを受けた気分になるものの後ろめたい気持ちは大分減ったとシャロとチノは内心喜び、「親公認って何だか燃える展開ね」とか言いながらやる気を漲らせる千夜と共にココアを追いかけ天々座家へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、どこか遠い場所。

 

「うう、ココアからの手紙が来ない~。本当に1ヶ月も送らないつもりなんだ……ぐすん」

 

「いやいや、一昨日手紙が来たばかりなんだから来るわけないでしょうに」

 

「ココア……はっ、そうだ! 手紙は送らないと書いてはあっても来ちゃ駄目とは書いてない。つまりまた行けば――」

 

「あ、明日モカに抜けられるとこっちが厳しいわ」

 

「おかあさーん!?」

 

「でも午前中居てくれたらそれで良いから、午後は自由にして良いわよ」

 

「午後から……準備とか考えても明後日には向こうに行けるかな」

 

「ホントに行く気だったのねこの子……」

 

 

彼女たちと彼女との邂逅は近い。

 

 

 

 

 

 




礼樹(カレンパパ)


礼樹「久しぶりだな」

タカヒロ「ああ、本当に久しぶりだ」

礼樹「にしてもお前がこうしてバーテンダーをやってるとはな。おまけにこんなもこもこしたウサギを傍らに置いて」

ガシッ(礼樹がティッピーを掴む音)

ティッピー「ぐえっ、何をする!」

礼樹「……今、こいつ喋らなかったか?」

タカヒロ「……気にするな」


第5話 たんけんにいこう



※本来「話」ではなく「羽」ですが、次回がきんモザ風タイトルなので話の方にさせて頂きました
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