彼らの歩んだ道   作:紅氷(しょうが味)

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初めまして。紅氷(べにごおり)と申します。
元々は読み専でしたが、幾つもの作品を見ている内に、「自分も書いてみたい」と思うようになり、今回『リリカルなのは』を基として創作、投稿させていただきました。

よろしくお願いします。


何処か遠い記憶
第一話


 

 ――――ダメだった。

 

 薄れゆく意識の中、少年は壁に身を預けながら崩壊していく壁や床を眺め身を震わせる。

 隣には最後まで共に戦ってくれた相棒が同じくして壁に身を預けていた。

 その身体は血にまみれ、呼吸はしているものの今にも消え入りそうなほど酷く消耗している状態だ。

 

 少年も同じ状態に陥っているのだが、こちらはまだ幾らかは身体の自由はきく。

 彼女が身を挺して少年を守ってくれたお陰だ。しかし、それももうすぐ終わりを告げようとしている。

 

『ごめ……ん。お前を、巻き添えにしてしまって……』

 

 しゃべるのも億劫になっているが、どうしてもこれだけは言いたかった。

 鉛のように重くなった右腕を持ち上げ、そっと自分の元へと引き寄せながら一言言う。

 

 対して彼女は少年の肩にもたれ掛かりながら、掠れるような声で告げる。

 

『いえ、こちらこそ……申し訳ありませんでした。主を……―――を守りきることができずに、この身の最後を迎えてしまうとは……。本当に……』

 

 一筋の涙を浮かべながら少年に幾度も謝罪する。 

 だが謝らないで欲しい、このような事態に陥ってしまったのは他でもない…自分のせいなのだから。

 

 己の過去を振り返りながら少年に謝り続ける彼女の頭を撫でる。

 

 自身の持てる力をフルに行使してこの有様だ。我ながら本当に情けないと思う。

 周囲の崩壊は止まらない。そして助けも来ない。まさに絶体絶命。

 

『本当に、バカだなぁ……俺は。何もかも欲張った結果がこれ、なんだもんな……』

 

 嗚咽に混じって自身の行いを悔いる。

 これが始めての経験では無いと解っていても……解っているからこそ、心底彼は自分が嫌になる。

 何度同じことを繰り返せば気が済むんだ、と。

 

『そんなに……自分を、卑下しないでください。主は、何も恥じるような行いはしていませんよ。私は、あなたが主で本当によかった、と誇りに…………思え…ます』

 

 一息で消えてしまいそうな、そんな彼女が慰めるように少年の右手を自分の頬に寄せながら言う。

 最後まで変わらないやつだ、と何処からか自然と笑みがこぼれた。

 

『ありがとう、――――。俺は、もう一度往く(・・)よ。今度こそ……きっと……頑張ってみせるから』

『はい。――――なら必ず……』

 

 そこで彼女の言葉は途絶えた。

 途端に肩にかかる重みが増し、視線をそちらに向けてみるとどこか幸福そうな笑みを浮かべたままの亡骸が一つ、無情にも彼の視界を埋め尽くしていた。

 

 今この瞬間、少年にとってこの世界での理解者たる少女の人生が幕を閉じることになった。

 耐え難い絶望、苦しみや悲しみ……。それらに自身の内を支配されながらも彼は、天井を見上げた。

 その頭に過ぎるのは、もう一つの大切な……大切な―――。そして――――達の姿。 

 

 ――――俺は我がままで、欲張りだ。

 

 彼は片方を手に入れるのにもう一つを切り捨てる、何て出来ない人間だ。

 しかし彼の持つ手は、自身の我がままを貫き通せるほど大きくは無かったらしい。

 

 何時だかの自分は諦めて身を委ねてしまおうか、と考えたこともあった。

 でもその度に、あいつの……そして隣にいる彼女の笑顔が頭を過ぎる。 

 

 ――――だから、やってやる。

 

 少年は決意する。

 例えバカの一つ覚えだとしても絶対に、こんな馬鹿げた未来なんて俺が幾らでも書き換えてやる、と。

 

 既に感覚の無い四肢に意識を向け、目を閉じ、集中する。

 

 直後に瓦礫の破片が頭に直撃する――――関係ない。

 そのせいで血反吐を吐くが――――無視する。

 肺から酸素が無くなり、呼吸が出来なくなる――――これも無視しろ。

 周囲の音が聴こえなくなる――――関係、ない!

 

 その後も絶え間なく身体に致命傷を負うが、どれもこれも無視し続けた。

 痛みや苦しみなどは当の昔に消え去っている。少年が今どんな姿になっているかは想像に難くない。

 今生きているのか、死んでいるのか……。

 

 だが彼は今、自身の安否よりも集中――極限まで集中する必要があった。

 これから行使するは自身に宿るある能力(チカラ)

 

 他でもない――から授かったチカラ。

 

 少年――――は、今一度……転生(・・)する。

 これから先のことは記憶に留めておく事は不可能に近いだろう。

 だから魂に刻むことにする……今この一瞬のすべてを。

 そして願おう。

 

 今よりもほんの少しでもいい。みんなが笑っていられる幸福な世界、を――――。 




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