アンジュ・ヴィエルジュ *Skyblue Elements*   作:トライブ

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最終話 ”スカイブルー・エレメンツ”

 残念ながら、頭が導き出した結論は「もう無理だ」だった。

 

 でも、諦めたくなかった。

 

 諦めて、たまるか――

 

 

…………

 

 目を覚ますと、見慣れない天井が見えた。最高にふかふかなベッドの上に春樹はいた。上手く回らない頭で、そうだ、高等部の保健室だ。と思い出した。暮れなずむ斜陽が室内をオレンジ色に染めている。そしてどうして自分がここにいるのか考え始めた。考え――と、急に頭が冴え切った。

 ――俺は、負けたのか?

 いや、負けたに決まっている。お互いに限界だったが、テルルの攻撃を受けた琉花。あれが致命傷になって春樹は意識を手放したのだ。

 でも、あまり悔しくはなかった。むしろ、自分たちがこれからどこを鍛えていけばいいか、はっきりとした。忍は、もう今更何を教えようと言うんだというほどに素晴らしい攻撃を見せてくれた。琉花は、防御は素晴らしかったが攻撃の手段に欠けていた。美海は――

 そこで、春樹はガバッと跳ね起きた。

 ――美海!

 フラッシュバックする、地面にうずくまった美海。高所から墜落して――

 慌てて跳ね起きたはいいものの、なぜか体に力が入らず、またベッドに倒れ込んでしまった。その時、ベッドを仕切るカーテンの裏で『あら?』と言う声が聞こえた。

『目覚めましたか、春樹様?』

「あ、えーっと……確か、デルタさんとこの……」

『ニーアでございます。ご無事で何よりです。少々お待ちくださいませ。今、人を呼びますので。えーと、コールボタンはどこかしらん……このアームやっぱり使い辛いですね……サーに言っても変えてくれないし、いっそ私が作っちゃおうかな……』

「あ、あの、美海は? 美海は無事なんですか!?」

 春樹が必死で叫ぶと、ニーアは『まあまあ』と春樹をいなした。

『大丈夫ですよ。誰も後遺症が残るような怪我をした方はいらっしゃいません。ただ、セニア様だけは少しの間入院かもしれません』

「よかった……って、セニアが?」

 セニアが覚醒したとき、彼女の関節から血液が流れ出ていたことを思い出す。

『はい。あの装備が関節に相当な負担を掛けたようでして。出血は志賀龍姫先生のエクシードによってすぐに治癒しましたが、摩耗した関節部分はそう簡単には治りません。ああ、ご心配なく。必ず治りますので。あぁ、これですか』

 何やら机の上をがさがさと荒らす音がした後、ポーン、と少し間の抜けたコール音が響いた。黙って待っていると、スライド式のドアが開く音とともに足音が聞こえてきた。

「ありがとう、ニーアちゃん」

『お礼には及びません、龍姫先生。家でお留守番も暇なものなので。では私はこれで。春樹様、どうぞお大事に』

「あ、ありがとう……」

 妙に人を食ったような慇懃なAIが入ったキャタピラ付きアームは、キュルキュルとキャタピラ音を鳴らしながら部屋から出ていった。と同時にカーテンが開けられた。養護教諭の志賀が、にっこりと微笑んでいた。

「よかったぁ。気がついて。冬吾くんはもう少し早く気づいたんだけれど」

「み、美海は!?」

「慌てないの。大丈夫よ。少し頭を打っちゃったみたいだけど。もう治ったわ。でも大事をとって、今は寝かせてるの。とっても貴方に会いたがってたわ」

 それはそうだろう、などとは口が裂けても言えない、というかそんなことよりも差し迫った質問はいくつもある。

「なら、琉花は……」

「琉花ちゃんも大丈夫。ちょっとノックアウトされちゃってたけど、もう治ったわ」

 忍……は、大して攻撃を食らっていなかった。味方2人は戦闘不能にされたのに、やはり彼女はすごい。

 そして――

「それで、その……バトルの結果は……」

 春樹が言いにくそうに質問すると、志賀は少し表情を引き締めた。

「そうね。とっても意外な結果だったわ」

「え? 意外?」

 ――俺らが負けたんだよね? 俺らが負けたのが意外だったってこと?

 頭の中に疑問が浮かんだ春樹の表情を見て、志賀がくすっと笑った。

「結果はね、引き分け(・・・・)だったの」

「ひ……引き分け?」

 ブルーミングバトル。どちらかのαドライバーが倒れた時点で勝負が決まる。

「引き分けなんて、あったんですか? 俺、いくつか動画見たけど、そんなん見たことないんですけど」

「システム上はあるみたいなのよね。貴方と冬吾くんは全く同じタイミングで倒れたから、引き分け」

「…………」

 なんだろう、この釈然としなさは。しかし、バトルの運びを見れば実質的に負けのようなものだ。だが、冬吾も同じく倒れたのなら、かなり食い下がれたということでうれしくもある。

 ――つまり、俺らが途上なのは変わらないってことか。

 その事実は、別に勝利したとしても変わらないということにようやく気づく。

 どちらも未熟者だ、と。

「身体、痛まない?」

「大丈夫です」

「じゃあ、仕上げね。貴方が起きて動いちゃわないように掛けた封印を解くわ」

 志賀が春樹に右手の平をかざすと、そこから暖かさが溢れてきて、春樹の身体を優しく包み込んだ。すると、今まで入らなかった力が、体に入るのを感じた。

「ありがとうございました」

 春樹がお礼を言うと、志賀は優しく微笑む。

「今回は貴方達に、とってもいいものを見せてもらったわ。お客さんもみんな大興奮だったし、先生方も素晴らしいって褒めてくださっていたわ。

 私はね、この青蘭学園出身だけど、初めてバトルに出たのは2年生の秋だったわ。貴方達はその半年も前に、いちプログレスよりもずっと重要なαドライバーという立ち位置でバトルした。その経験は決して無駄にはならないし、誇っていい――ううん、誇るべきことよ」

「は、はぁ」

 志賀が青蘭学園出身だったということは、3年間知らなかった。彼女は春樹の頭をよしよしと撫でた。

「よく頑張りました、春樹くん。えらいえらい」

「…………」

 志賀のような天使の如き美女に頭を撫でられて、思わず赤面する春樹。すると、コンコンとドアがノックされた。

「どうぞー」

「失礼しまーす」

 軽く声を掛けながら入ってきたのは雄馬だった。やけに穏やかな笑顔を浮かべている。

「よ、春樹。お疲れさん。龍姫も治療終わったのか?」

「もう、学内では『志賀先生』って呼びなさい」

「別にいいじゃん、どうせもう勤務時間は終わりだし、ここには春樹しかいないし」

「まったく……公私をちゃんと分けない男性はモテないよ?」

「生憎、モテなかった経験がないもんで」

「あ、やらしー。ね、春樹くん? こういう勘違い男、イケてないわよね?」

「え、えぇ?」

 今どき「イケてる」とか「イケてない」というのは、少し古いのではないだろうか。と心の中で突っ込みを入れる春樹。それよりも、2人ともやけに親しげである。一緒にいるところをあまり見たことがない――生徒にとって、教職員のプライベートは謎だらけなのだ――が、この親しさは……結構前に偶然知った志賀の年齢を考えると……

「もしかして、お2人って青蘭学園で同期だったりします?」

 我ながら、よくこんなバカバカしい質問ができたもんだと思っていると、雄馬が、

「あれ? 言ってなかったっけ?」

 とあっさり肯定した。

「龍姫は俺とおんなじ28歳。いわゆるアラサーだな」

「……雄くんにそう言われると、妙に歳をとった気がするわ」

 志賀が諦めたように、雄馬の愛称を交えて呟く。志賀はプログレスだから、例え28歳ですと言われたところで到底信じられないような、若く瑞々しい美貌を保っている。雄馬も雄馬で、恐らく本人の底知れない活力と気さくな雰囲気が、彼を実年齢より若く見せている。そんな、歳の割に妙に若々しい2人の掛け合いのせいで、春樹はすっかり呆然としてしまった。

「じゃあ、ひょっとしてブルーミングバトルに出たってのも、雄馬先生のチームで?」

「そだな。最初の一回は、なんかみんな気合入れすぎたせいで試合前に全員負傷――って、この話前にしたよな?」

「でも、龍姫先生って高速治癒のエクシード使えるじゃないですか」

「あの頃は未熟だったってことだな。お前らと同じ高校生だったんだぞ? しかもあの頃の龍姫と来たら、心がポッキリ折れちまって、エクシードが使えなくなって――」

「も、もういいでしょ雄くん! 春樹くん。あ、あんまり言いふらさないでね?」

 志賀に涙目で睨まれたら――繰り返すが天使のような美女だ――首を縦に振るしかない。

「まあ、ともあれ、無事に終わって良かったよ。結果は聞いたけどまだ試合内容は見てなくて。家に帰ったら見るからな」

「は、はい。ありがとうございます」

 と、そこでまたドアがノックされた。志賀が返事をすると、ドアが開かれ、そこには――

「冬吾?」

 春樹が呟くと、冬吾は無言でずかずかと春樹に歩み寄り、いきなり胸ぐらを掴んでねじり上げた。

「ちょ!?」

 驚く春樹、悲鳴を上げる龍姫、呆れ顔で肩をすくめる雄馬。冬吾は怒りと屈辱に顔を歪ませていた。

「どうして美海ちゃんが攫われたって、僕に言ってくれなかったの!? 言われれば僕らだって探すの協力したのに!」

「え?」

 思わず素っ頓狂な声が出た。その後、ようやく何を言われたか理解できた春樹は、「い、いやぁ……」と言葉を濁しながら、

「お前、セニアのとこには……」

「行った! 今までずっといたよ! そしたらニーアが入ってきて『それにしても、春樹さんは災難でしたね』とか言ってきたから問い詰めたら……」

「だって、喧嘩してたじゃん」

「そんなの関係ないだろ! 大事な美海ちゃんが攫われてたんでしょ!? しかも、春樹も無理してひどい怪我したって聞いた! なのに試合前に僕のところに来て……」

「そ、そんなことバトルには関係ないだろ」

「関係なくない! 春樹はそんなに! そん、なに……」

 激情に駆られていた冬吾は、急に言葉が詰まったように勢いを失うと、今までの剣幕が嘘のように弱々しく言った。

「……友達、だろ……? 喧嘩してたって、僕らは友達だろ……?」

「……そ、だな。まあそのぶっちゃけると……」

「何?」

「……忘れてた。そういえば、お前がいたな……」

 本当のことを告白すると、冬吾は毒気を抜かれたような表情になり、へなへなと手を離した。

「……これじゃあ……僕の完敗じゃないか……僕なんかよりも春樹の方がずっと……」

 うなだれてそう呟く冬吾に、春樹は――また手を差し出した。バトルの前にしたのと同じように。

「引き分けだ」

「え?」

「引き分け、だったろ? だったら、喧嘩両成敗だ」

「……それ、喧嘩両成敗とは言わないよ? それは仲裁人が言うセリフだ」

「じゃあ、なんて言うんだ?」

 冬吾は呆れたように微笑むと、春樹の差し出した手をしっかりと掴んだ。バトル前とは違い、もっと強く。

「それは、仲直りって言うんだよ」

「……そか。勉強になった」

 2人はお互いの手を、硬く握り締める。

「……酷いこと言って、あと殴った。ごめんな」

「それはお互い様だよ。僕も、ごめん」

「次は勝たせてもらうぞ」

「僕だって同じさ。次は、勝つ」

 春樹と冬吾は、お互い試すような目つきで睨み合ったあと、照れくさくなってどちらからともなく手を離した。それを横から見ていた雄馬は、「いやぁ、やっぱ青春っていいねぇ」と苦笑しながら言った。

「やっぱ、男同士ならこうでないとな」

「なんか、一生分の青春した気分です」

「いいんだよ。こんくらい青臭いのが高校生ってもんだぜ? 俺だってやったわ、殴り合い」

「ど、どうして殴り合いしたこと知ってるんですか?」

「だってお前ら、朝会った時どっちもほっぺ腫れてたからよ。春樹がコロシアムから逃げ出したことも知ってたし」

 そう言われて、昨日今日の行いが急激に恥ずかしくなった春樹は、唸りながら布団に顔をうずめた。すぐそばでは、冬吾も雄馬も志賀も笑っている。穴があったら入りたい、という言葉の意味を嫌というほど実感していた。しかし、少し時間が経つと、先ほどまでの自分の滑稽さが一周回っておかしくなり、布団に顔を押し付けたまま春樹も笑った。

 そうして、皆してひとしきり笑ったあと、

「それじゃ、俺はもう帰るな。2人ともよく頑張った。あとでバトル、見させてもらうからな」

 と言って保健室から出ていった。次いで冬吾も、

「じゃあ、僕も行くね。みんな待ってるから」

 と退出する。最後に志賀が、

「私、少し職員室でやらなきゃいけないことがあるから、席を外すわね。ちょっと休んだら、帰っていいからね」

 と言って出ていき、春樹は保健室にひとり取り残された。先程までの賑やかさが嘘のように静かな部屋。日が沈みかけ、部屋の中はだんだんと夜の色に染まっていく。妙な虚しさに囚われた春樹は何をするでもなく、ベッドに寝転がった。自分の家のとは違う、慣れないベッドの寝心地に身を埋めながら、空っぽの頭で天井を見つめている。

 すると、急にドアが開いた。びくりと身体をすくませながら起き上がると、そこには――

「――美海?」

 美海は冬吾と同じように無言で春樹の元に近付き、

「春樹くん!!」

「み、美海?」

 気づけば春樹は、美海にしっかりと抱きしめられていた。小さくとも、最上級に温かく柔らかい美海の身体の感触が、春樹を優しく、そして激しく包み込む。

「心配したよ! 気絶するまでバトルしてたって! でも無事でよかった! 良かったよぉ……!」

 美海は、泣いていた。嗚咽を飲み込みながら、春樹の背中を一心不乱に撫でている。

「俺だって……心配した! お前が墜落して、心臓止まるかと思ったぞ! 心配させやがって……!」

 春樹も泣いていた。ひょっとすると美海以上の号泣かも知れない。泣きながら彼女を抱きしめ返した。もう二度と離さない、そういう意思表示であるかのように、2人はさめざめと泣きながら、お互いをきつく抱きしめ合う。が、

「いやぁ、お熱いねぇ」

 と投げかけられた言葉に、ハッと反射的に反応してしまった。見れば、ドアのところに琉花と忍がニヤニヤしながら、そして兎莉子が泣きそうな表情で立っていた。その兎莉子が、

「春樹さん!」

 と、こちらも胸に飛び込んできた。美海と2人抱え込む形になった春樹は戸惑う。

「兎莉子?」

「みんな私を心配させて! 酷いですよぅ! 美海ちゃんは高いところから落っこちるし、春樹さんは無理して気絶しちゃうし、琉花ちゃんはノックアウトされちゃうし! 見てて、死ぬほど心配したんですからね!」

 滅多に聞かない、兎莉子の強い口調に思わず気圧されたが、兎莉子もまた泣いているのを見てすぐに我に返り、彼女の頭を撫でた。

「ごめんな……無理しちゃって。俺、勝ちたかったんだ。まぁ、結局勝てなかったけど……」

 涙が少し引っ込み、落ち着いた静かな口調で囁くと、兎莉子も美海も揃って首を横に振った。

「勝ち負けなんて関係ないもん! 春樹くんと一緒に闘えて、嬉しかったし楽しかったもん!」

「見てるだけしかできなかったけど、勝ち負け関係なく、私、誇らしいです! だから春樹さんも誇るべきです!」

 2人して関係ないと言ってきた。しかも、

「引き分けってのはなんとなく腑に落ちないけどさ、裏を返せばそんだけ三島先輩のチームに食い下がれたってことじゃん? 私は嬉しいよ! ま、もっと強くなりたいけどな!」

「琉花殿の言うとおりでゴザル。多少は悔いが残った方が、次へのモチベーションは上がるものでゴザルよ。拙者もまだまだ未熟、皆一丸となって次のバトルに望みたいでゴザルな」

 琉花と忍まで後方支援に回る。春樹は、うーんと考えた末に、みんなの言うとおりにした。

「……そだな。終わったことをいつまでも気にしてちゃダメか」

 春樹は涙を拭って微笑むと、美海も兎莉子も――春樹の服で――涙を拭いて、にっこり笑った。

「ね、春樹くん。まだ、このチームを解散させるつもりでいるの?」

「え?」

「ほら、初めてみんなで集まった時に……」

 

 ――とりあえずチームを組むのは今回だけだし!

 

「……ああ、言ったな。そんなこと」

「じゃ、じゃあ?」

「解散」

「ええぇっ!?」

 春樹は、まるでこの世の終わりが来たかのような表情で驚く美海の頭に、優しく手を乗せた。

「なんて、嘘だよ」

「え、えぇ……ひどいよ……心臓止まるかと思ったぁ……」

「ごめんね。つい」

「何が『つい』だぁ。ひどいもん。もう許さないもん!」

 ぷんぷんと涙を浮かべながら怒る美海。

 ――やべ、ホントに怒らせちゃったか?

 一瞬の『やっちまったか?感』は、その後の太陽のような笑顔によって、すぐに解消された。

 

「ずっと、一緒だよ!」

 

 涙に濡れた笑顔は、いつの間にか浮かんでいた月の光に照らされて、見入ってしまうほどに煌めいていた。

 

 

…………

 

 セニアはベッドの上で横になりながら、窓から見える月を眺めていた。

 先程までは冬吾がいたが、どことなくぎこちない雰囲気だった。そして、ニーアから春樹のことを聞いた途端に、「ごめんねセニア。また明日来るよ。ちゃんと休んでね」と言って出て行ってしまった。

「マスター……」

 セニアは胸に手を当てて、その鼓動を感じる。

 命。

 関節の痛みはだいぶ引いたが、それでもまだ痛い。冬吾はこれの何倍の痛みに耐えていたのだろう。そう考えると、セニアは冬吾の目を直視出来なくなった。

 出血はすぐに治してもらえたが、摩耗した関節は時間をかけて治さなければならない。特殊な結界に覆われたこの部屋の中で安静にしていれば、志賀のエクシードを織り交ぜたこの部屋の『場』が、セニアの身体の異常を治していってくれるという。

 傷ついた、命。

「セニアは、マスターを、信じています」

 ぽつり、と呟いてみる。この部屋にはセニアの他に誰もいないのだから、当然誰も答えを返してくれない。

 当たり前だ。でも、それが不思議と、

「寂しいです、冬吾さん……」

 バトル中に感じた真っ赤な感情とは全く正反対の、白く、どこか青い感情がセニアの心を満たしていた。

 セニアは、青白く光る月を眺める。

 

…………

 

 校舎の入口のところで、ユーフィリアとテルルとナナが待っていてくれた。

「……待っててくれたんだ」

 冬吾が声を掛けると、3人とも淡く微笑んだ。冬吾は、それを見て言う。

「ごめんね。勝たせてあげられなくて」

「勝ちたいと言ったのは、冬吾ですの。テルル達はそれに従ったまでのことですの」

 テルルが感情の読めない微笑で静かに言った。

 冬吾は、悔しかった。実質的に完敗だった。バトル面でも、精神面でも。

 悔しかった。自分が、自分の精神の揺れが、自分の命令が、ほぼ敗北というところまでチームを追い込んだ。その事実が。

「初バトルなのに、僕のせいで、勝てなかった。ごめん」

 そう詫びて、冬吾は頭を下げた。何も反応がない。恐る恐る顔を上げると、ユーフィリアが目の前にいた。彼女が、震える声で問いかけてくる。

「冬吾さんは……貴方のせいでバトルに勝てなかったって言うんですか?」

「そう……だろう? 僕が未熟だったせいで、みんなに的確な指示を出してあげられなかった。それに、春樹たちの狙いにも気付けなかった。全部、僕のせいで――」

 冬吾が言葉を切ったのは、ユーフィリアが俯いて震えだしたからだ。

「……貴方という人は、いつもそうやって……私も……」

「ユフィ?」

 冬吾が怖々と呼びかけると、ユーフィリアはキッと顔を上げた。涙に濡れた、凛々しい顔――

「そうやって貴方は、いつでも全部自分のせいにする! 全部自分で背負い込んで、それでも笑顔を取り繕って!」

 叫んだ声は、まるでナイフのように冬吾の心を切り裂いた。

「貴方のそういうところが――昔から(・・・)私は、大嫌いです……!」

 大嫌い。

 言の葉の杭が、冬吾の心に突き刺さる。彼女は何か口にしかけて、それをぐっと飲み込んだ後、

「冬吾さんの、馬鹿!」

 乾いた音が響く。頬に走った衝撃は、春樹に殴られた時以上だった。ユーフィリアは冬吾の頬を平手で叩くと、そのまま冬吾の横を駆け抜け、階段を登っていってしまった。

 テルルが呆れた表情で、

「……ちょっと鈍感過ぎませんこと?」

「……そう、かな」

 奇しくも春樹が言った通り、尽く自分は他人の心を理解できないらしい。理解した気になって、みんなを気遣うようなことを言って、結果はこれだ。冬吾は呆然としながら頬をさする。

「テルルも正直腹が立って、思いっきり殴りたいですの。いいですの?」

「……それ、洒落にならないよ」

「なんで叩かれたか、分からないんですの?」

「…………」

 無言で考え込む冬吾の頭を、背伸びしたナナが優しく撫でた。

「冬吾さんはいつだって、みんなのことを考えていらっしゃいます。問題はそこです」

「え?」

 すがるような視線でナナを見ると、彼女は人を癒す力を持っているとしか思えない表情を浮かべた。

「みんなのことを考えすぎなんです。でもみんなにはみんなの感情があって、それは自分自身がどうにかするべきものなのに、冬吾さんはそれを全部まとめて抱えようとしてしまうから、ユフィさんは怒ったんですよ」

「……え、と、つまり?」

「冬吾さんは優しすぎ、且つお人好しすぎます」

「極度のお人好しは、寧ろ図々しいと言えますの」

 ナナに続き、テルルもそう言ってくる。冬吾は、昨日からのモヤモヤが晴れた気分だった。

 

 ――なるほど。春樹がああなる(・・・・)わけだ。じゃあ、僕が言うべきことは……

 

 冬吾は表情を改めると、口を開いた。

 

…………

 

 ユーフィリアは屋上に出て月を眺めていた。

 何をするわけでもなく、麗しい銀髪はただ静かに夜風に吹かれ、揺れている。

 ――ねぇママ! あの星には綺麗な(みやこ)があるって本で読みました! いつか行けるでしょうか?

 幼いユーフィリアに、彼女の母は優しく微笑んで。

 ――そうですね。いつか行きましょう。ユフィと、ママとパパで。

 思い返せば、馬鹿らしいことばかり両親に聞いては、彼らはそれを飽きもせずに、微笑みながら教えてくれた。

 月に向かって、そっと手を伸ばす。

 あの優しい笑みを二度と見ることができなくなるなんて、あの時は想像だにしなかった。それでもユーフィリアは、それを承知でここに来た。この、青く煌く世界に。

「パパ……ママ……」

 青白い月に、彼らの微笑みが浮かぶ。

「私……最低です。バトルに勝てなかった原因を作ったのは私なのに、冬吾さんはそれまで背負ってくれようとして……挙句、大嫌い、なんて……」

 ぽろぽろと涙がこぼれてくるのを、止められなかった。

 不意に背後でドアが開く音がし、びくりと振り返った。そこには、冬吾がいた。

 彼は何も言わずにユーフィリアに近付き、彼女の隣に座って月を見上げた。それを見てユーフィリアも、また視線を上に上げる。

 しばらくの沈黙。先に破ったのは、冬吾だった。

「名前が『冬吾』だからって訳じゃないんだけど、僕は冬が好きだ……って、前に言ったっけ?」

「いいえ……でも、似合います」

「冷たいってこと?」

「いいえ。冬の寒さの中なら、冬吾さんの暖かさは一層目立ちます」

「そっか。ありがとう」

 そうして、また沈黙。まだ寒さの残る夜風が、2人を優しく撫でた。

「……僕、さ。自惚れてた」

「…………」

「みんなのこと、理解した気になってた。でも、昨日春樹に言われたんだ。『お前はみんなを知ろうともしないし知ることもできない』って。それ、本当だったみたい。みんなのことを考えて、みんなの心は考えてなかった。だから、勝てなかった」

「そ、そんな……」

 自嘲気味の表情を浮かべてくすくすと笑う冬吾。ユーフィリアは反射的に心配してしまう。が、彼の言葉はそれで終わらなかった。

「でも、テルルとナナに言われて気づいたんだ。それは、傲慢だったって」

「ごう、まん……?」

「そ。誰だって心がある。気を遣うあまり、それを無視して自分の善意を押し付けるのは、傲慢だ」

「そう、ですね……」

 ユーフィリアは涙を拭うと、冬吾の顔を見上げた。その顔はいつ見ても、いかにもユーフィリア好みの端正な顔立ちだった。

「だから今回のバトル、勝てなかったのはみんなのせいだ(・・・・・・・)ってことで、いいかい?」

「……ふふ、そうですね」

 少し悲しげにユーフィリアは笑った。その頭に、冬吾は手を乗せた。

 

「だから、みんなでもっと強くなろう!」

 

 ――だから、みんなでもっとより良い未来を作ろう!

 

 ユーフィリアの瞳から、涙がこぼれ落ちた。月明かりを受けたそれは、まるで水晶のように煌き、地面に落ちて砕けた。

「とう、ご、さん……」

 もう我慢できなかった。ユーフィリアは冬吾に抱きつくと、嗚咽を上げ始めた。冬吾はその頭を、さらさらの髪を、優しく撫でる。

「……パパでいいよ。ほら、今は2人っきりだ」

「……2人きりじゃないですよ」

「え?」

 慌てて周りを見回す冬吾が可笑しくて、ユーフィリアはまだ涙をこぼしながら、くすっと笑った。

「ほら、お月様が見ています」

「は、はぁ……?」

「だから……今は、これだけですよ」

 そう前置きしたユーフィリアは首を伸ばして、冬吾の頬――先ほど自分が叩いた場所――に、そっと口付けした。

「……明日、セニアにも同じこと、言っていいかな?」

「明日じゃダメです。今言いに行きましょう」

「でも、寝てたら……」

「一晩寝てからの感情は薄れてしまいます。少し無理言って、今言いましょう」

「で、でも……」

 言葉を濁す冬吾を見て、ユーフィリアは少しいたずらっぽい表情に変わる。

「もしかして、怖いんですか?」

「……多少」

「私には言えたのに?」

「……じゃあ、勇気をちょうだい」

「仕方ないですね。パパは昔から、少しだけ臆病です。これならお月様も許してくれるでしょう」

 にっこりと笑ったユーフィリアと、不安げな表情の冬吾。

 月明かりの下、2人の唇が、わずかな水音と立ててそっと重なった。

 

…………

 

 まさか、高校生になってまで貝拾いをすることになるとは思わなかった。

「春樹くーん、いいの見つけたー?」

「俺はこれにすっかなぁ」

「私はまだー。ハル先輩、手伝ってー!」

「拙者は……うーん、微妙、でゴザルなぁ……」

「あっ、綺麗なの見つけました! 見て見て~」

 数日後、春樹達は、いつか美海と一緒に来た鐘赤島のコーラルビーチで、熱心に貝を拾っていた。美海が突然、

「このアクセサリー、みんなとお揃いがいいなぁ。ねえ、みんなで貝を拾いに行こうよー!」

 とか言い出したためである。彼女のはファントムに攫われた時に、ストラップの紐がちぎれてしまったので、これを期に全員新しいのにしよう! ということだ。

 ――高校生が5人、こんなところで貝拾い、とか……

 正直馬鹿らしいが、何かに一生懸命打ち込む、それはそれで気分が良いものだった。

 春樹と兎莉子は浜辺で拾っていたが、美海と琉花と忍は海に入っている。まだ水は冷たいが、5月上旬の日差しは、既に初夏の香りを漂わせていた。

 しかし、こうも長時間腰を折り曲げていると、正直痛い。美海達はたった今始めたかのようなテンションを保っているが、実際にはもう1時間も経っている。

「やっぱ、女子ってのはテンション高いなぁ」

 自分は満足いく貝を見つけたので、波打ち際から少し離れた砂浜にどっかりと腰を下ろした。以前に来た時は曇り空だったが、今は快晴。日焼け止めが必要かも、と心配になるレベルの快晴だ。

 しばらくそうしていると、兎莉子がこちらに歩いてきた。

「春樹さん。お隣、いいですか?」

「ん? 構わないよ」

 快く応じると、彼女は「失礼します」と言って、ぽす、と音を立てて小さなお尻を砂浜に下ろした。

「見てください。綺麗でしょう?」

「お、マジでキラキラだ。こんなんあるんだなぁ」

「春樹さんのは?」

「俺はこれだな」

「あ、こっちは形が可愛いです」

 くすくすと笑う兎莉子。それに釣られて春樹も笑う。それから急に頬を赤らめて、

「あの、春樹さん? 差し支えなければ、私のとそれ、交換していただけませんか?」

「俺のと? でもそっちの方が綺麗だぞ?」

「か、形が可愛いから! ダメでしょうか?」

「いや、構わないよ。はい」

 春樹は兎莉子に自分の貝を――ハート型をしていた――差し出すと、兎莉子はいよいよ真っ赤になって自分の貝を差し出した。

「あ、ありがとうございます! 大事にします!」

「喜んでくれたなら良かったよ」

 向こうでは、

「えいっ」

「ふぎゃ! る、琉花殿~! やったでゴザルな~! お返しでゴザル!」

「ちょ、シノ、冗談だって冗だ――ぎゃあ」

「みきゃ! 何? 水かけっこ? なら負けないよ~!」

 3人が水の掛け合いを始めてしまった。春樹は慌てて、

「お、お前ら! 着替えあんのか!?」

 と叫ぶが、

「いまいいとこなの! 邪魔しないで!」

 と返される始末。隣の兎莉子は楽しそうに笑っているので、まあいいとした。

「春樹さん、私、幸せです」

「ん?」

「みんな一緒。それって、素敵なことだと思いませんか?」

「……そうだな」

 水辺ではしゃぐ3人を見つめながら、そう返した。思えば、以前に来た時は、はしゃいでいたのは美海1人だった。2ヶ月で、自分の周りにはまたプログレスが集まった。

「俺も、幸せだ」

「……いつか、元の春樹さんのパートナーさん達にも、会いたいです」

 控えめに放たれたその言葉。少し前だったら過剰に反応していたかもしれないが、今は違う。無論、痛みはある。だが、もっとゆったりと受け止めることができた。

「会えるさ、必ずな」

 ここにいない4人の顔を脳裏に浮かべながら、今の4人の顔を眺める。

 少し前では考えられないほど、春樹は満ち足りていた。

 

「さあ、最終奥義いっくよ~!」

「あ、私も負けないぜ! いっけー!」

「あ、2人ともエクシード使うのは反則でゴザ――ぶはっ」

「ば、バカお前ら何やって――ぎゃあ」

「あわわわ……」

 美海と琉花のエクシードが衝突し、飛んできた水の塊が春樹と兎莉子まで包み込んだ。

 

 

…………

 

「どう、セニア? 痛みはない?」

「はい、大丈夫です、マスター」

「よかったぁ。これで完全復活! ですね、冬吾さん」

「セニア、おんぶするですの?」

「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ、テルルさん」

 同じ日の昼下がり、ようやく退院できるようになったセニアは、チームメンバーに囲まれて青蘭学園の前に立っていた。カラッとした快晴で、航空機動装備があればぜひ飛んでみたいと思うような天気だ。

 冬吾は「さて――」と背筋を直し、

「じゃあ、みんな揃って回復したところで、みんな、本当にお疲れ様」

 みんながそれぞれ頷くのを見て、冬吾は言葉を繋げた。

「今回のバトル、結果は正直アレだったけど、僕は、なんていうか――勝てなくて、良かったなって思う」

「でも、マスターは勝ちたいって言っていました」

「そうなんだけどね。でも、『勝てなかった』っていうのは、勝ったことよりも大事なことが多いと思ってさ」

 冬吾は4人の目を順番に見る。水晶のように透き通ったセニアの瞳。柔らかな快活さを秘めたユーフィリアの瞳。決意に満ち溢れたテルルの瞳。深い慈愛を湛えたナナの瞳。誰からも、逸らさなかった。

「みんなにいいところがあって、みんなに悪いところがあった。それがこのバトルの結果を導いたのだとしたら――まだ、みんなには伸びしろがある。それは、僕にも言えることだ。だから……僕らみんなで、強くなろう」

 4人の顔に、笑顔が浮かぶ。セニアのはまだぎこちなさがあったが、それでも彼女は、笑顔を浮かべてくれた。

「みんなで」

 セニアが繰り返す。

「それは、素敵なことですね」

 その言葉に、全員が笑顔になった。

「じゃあ堅苦しい演説はこれでおしまい! セニアの快気祝いに――」

「ご飯食べに行くですの! バイキングがいいですの!」

「いきなりそう来るか。でもテルルをバイキングに連れて行くと、終わった後になぜか僕が『勘弁してくれませんか』って店員さんに泣きつかれるんだよねー……」

「普通にレストランでいいじゃないですか。ね、セニアさ――」

「ユーフィリア。セニアのことは『セニア』と呼んでください」

「そ、そうでした。セニアは、何が食べたいですか?」

「そうですね……強いて挙げるなら、はんばーぐが、食べたいです」

「セニアちゃんがそう言うなら、決定ですね! じゃあ行きましょうか」

「セニアって意外に肉が好きなんですのね……」

 わいわいと賑やかになるチーム。その輪の中で、冬吾は思う。

 

 ――僕は、幸せ者だな。

 

「マスター、よろしいでしょうか?」

「うん、それじゃあ行こっか」

 冬吾を見上げるセニアの瞳。

 そこには、どんなに素晴らしい宝石にも勝る輝きが、はっきりと宿っていた。

 

 

 ……その20分後。

 

「セ、ニ、ア~~~~~~!!!! ご退院おめでとうございますです~~~~~~!!!!」

 普段は誰にも見せないような満面の笑みを浮かべたカレンがその部屋に入ると……

「あれ? カレンちゃん」

「あら、志賀龍姫先生。ごきげんよう。セニアは……」

「つい20分前に出て行ったわよ? 冬吾くんたちが来て――カレンちゃん?」

 カレンは顔を俯けて怨嗟の籠った呟きをぼとぼとと落とした挙句、

 

「三島、冬吾ぉぉぉぉぉぉ!!!」 

 

 

 その後、みんなで行ったレストランに、いつぞやの如くカレンが襲来し、またひと悶着あった上で、結局カレンを含めた全員でセニアの回復を祝ったのであった。

 

 

…………

 

「まさか、あんな合体技を開発していたとは……」

「えへん。ちゃんと考えて水遊びしていたのです」

 げんなりする春樹に、胸を張る美海。

 全員ずぶ濡れになったあと、春樹は強制的に3人を浜辺に上げた。すると、忍は忍術で生み出した炎をエクシードで操り、その熱で温まった風を美海が操って、さらに琉花のエクシードで服の水分を抜き出し、全員の服をあっという間に乾かしてしまった。

 だが、水に濡れた私服姿の4人、その服の透け具合だとか張り付き方のいやらしさだとか、そういうものは、目に焼き付いてしまって忘れられそうにない。

 春樹達は鐘赤島のレストランに入って、赤の世界ならではの料理を食べ、昼食を終えた。美海は前回とは違うものを、他の3人は完全に初めてだったので、新鮮な表情で食べているのを見るのは、なんだか微笑ましかった。

「ねえねえ、ところでさ」

「ん?」

「私たちのチーム、名前無いの?」

「あ、それ、私も思った。動画だと名前付いてたもんね。無いの?」

「それを考えるのが、面白いんじゃないでゴザルか?」

「うーん……でも、変な名前だと笑われちゃうかもしれません……」

 美海、琉花、忍、兎莉子がそれぞれの反応を示す中、春樹は、

「実は……もう決めてあるんだよね」

「そうなの!?」

「なんでそんなに食い気味なんだよ。まあ、SMSのチーム名のところ変えといたから、それ見て」

 4人が一斉に携帯電話を取り出し、自分たちのグループを見る。少し前まで『青チーム!(仮)』としか書かれていなかったそこには、

 

 ――”スカイブルー・エレメンツ”

 

スカイブルー(空色の)……エレメンツってなあに?」

「元素、という意味でゴザルな」

 英語が不得意な美海に忍が教えている。正直、恥ずかしい。

「で、これ、どういう意図で付けたのさ?」

「わ、私も知りたいです」

 全員が目をキラキラさせてこっちを見てくる。春樹は頬が赤らむのを感じながら、ここで引いたら負けだと言わんばかりに、

「あらゆるものを形作っている元素を俺らに例えて、みんなで力を合わせれば、どんな困難なことでも、必ず解決できる――そういう意味、です、はい」

 結局尻すぼみになってしまったが、みんなからの評価は高かった。おぉ~、と4人分の拍手が降り注ぐ。穴があったら入りたかった。

 しかし、ここで美海から突っ込みが入る。

「でも、スカイブルーっていうのは? 別に関係ないよね?」

「それは……まあ、あれだな」

「どれ?」

「美海がプレゼントしてくれたマグカップ見てたら、いいかなって思って。ほら、全員この世界出身じゃん? 理由は後付けだけど、良くない?」

「いいと思う!」

「早いな!」

 というより、自分のあげたマグカップがチーム名に入ってしまったことが嬉しいらしい。

 恥ずかしさを振り払うために、春樹は手を叩いて場を仕切り直すと、

「じゃ、じゃあ、これから俺たち、いろんなバトルに出て行くわけだけど、どんな時でもみんなで力を合わせて、頑張っていこう!」

『お~!』

 ひとつのチームになった5人のポケットからは、綺麗な貝殻とクリアブルーのビーズでできたアクセサリーが光っていた。

 

 

 ――――後に違う意味で全ての世界に名を轟かせるその名前は、全ての始まりの島々の中で、青い空高く掲げられた。

 

 




 ようやく第1幕完結です! 長かった!
 アニメと同じく3ヶ月で12話投稿しましたが、終盤は結構キツかった……学校の課題もあるし、でもここまで来れて本当に嬉しいです。1回も延期しなかったのは、私の中で密かに自信になっています。
 ここまで付いてきてくださった読者の皆様には、本当に感謝です。ありがとうございました! 感想をいただけて、評価も付けてくださって、本当に励みになりました!

 第2幕【Relations confusion】は、構想はできていますが、まだ何も手をつけていません。リアル生活の方がキツいんでいつになるかはわかりませんが、ぜひ投稿していきたいと思っておりますので、その時にはどうぞよろしくお願いします。
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