アンジュ・ヴィエルジュ *Skyblue Elements*   作:トライブ

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3幕【Gate of 『G』】
第0話『門を開け。』


 

 

 甲高い金属音が鳴り響いている。

 

 

 鳥かごの中に閉じ込められて、何もできない。

 

 

 吐き気が止まらない。身体が別の何かに変わろうとしている。今までとは全く違うものに。

 

 

 

 

「たすけて」

 

 自分の足元の地面が崩れていくのがわかった。

 

「たすけて」

 

 自分の真上の空がひび割れていくのがわかった。

 

「たすけて」

 

 自分の友達が枯れていくのがわかった。

 

「たすけて」

 

 自分の家族が死んでいくのがわかった。

 

「たすけて」

 

 

 

 

 凍てついた地面に突き立っている、ボロボロの緑色の剣。それの上を這う虫。

 

 

 赤い槍は折れ、青い盾は砕け、白い蛇は干涸らび、鉄の爪はバラバラになっている。

 

 

 虫が糸を吐いて繭を作った。

 

 

 

 

 門を開け。

 

 

 目の前にあるのは、大きな緑色の、透き通った結晶。その中で、弱々しく光が明滅している。

 

 

 門を開け。

 

 

 結晶がひび割れ、砕けた。中の弱々しい光は一瞬抵抗するかのように強く輝いたが、消えた。

 

 

 門を開け。

 

 

 青い光が見えた。もっと強い光が。あまりの強さに、否応なしに吸い寄せられていく。

 

 

 門を開け。

 

 

 身体が熱い。直火に焼かれているかのように身体が熱い。

 

 

 門を開け。

 

 

 身体の表が暖かくなった。それと同時に、身体の裏が寒くなった。

 

 

 門を開け。

 

 

 手が痛み指が震えた。まるで指がもう何本か生えようとしているかのように痛む。

 

 

 門を開け。

 

 

 

 

 自分の足元の地面が崩れていくのがわかった。自分の真上の空がひび割れていくのがわかった。自分の友達が枯れていくのがわかった。自分の家族が死んでいくのがわかった。「たすけて」自分の足元の地面が崩れていくのがわかった自分の真上の空がひび割れていくのがわ「たすけて」かった自分の友達が枯れていくのがわかった自分の家「たすけて」族が死んでいくのがわかった自分の足元の「たすけて」地面が崩れ自分「たすけて」の真上の空がひび「たすけて」割れ自分の友達が枯「たすけて」れ自分の家「たすけて」族が死「たすけて」んで「たすけて」自分の自分の自分の自分の自分の自分の自分の自分の自分の自分の自分の自分の自分の自分の自分の自分の自分の自分の自分の自分の

 

 

 世界が 消えていくのが わかった。

 

 

 

 

「たすけて」

 

 

 

 

 甲高い金属音が鳴り響いている。

 

 

 ずっと誰かが喋っている。頭の中が話し声で溢れ、頭蓋骨が決壊する。

 

 

 鳥かごの中に閉じ込められて、何もできない。

 

 

 背中の中で、何かが蠢いた。背中の皮を突き破り、外に出ようとしている。

 

 

 吐き気が止まらない。身体が別の何かに変わろうとしている。今までとは全く違うものに。

 

 

 地を這うことしかできない人間が、空を飛べるようになるように。

 

 

 

 

「たすけて……おねがい……」

 

 

 

 

 繭の中の蛹の中で、ドロドロに溶けた幼子は、目覚めの刻をただ願う。

 

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