ハイスクールフリート 希望への水平線へ   作:夢の防人

10 / 25
第9話 かわいい子には旅をさせよ

さて、時刻は0850。中ではホームルームが既に終わり、連絡事項・・・海洋実習の結果が返ってくることと、武蔵からの転入生が来ることが知らされている。

 

「ふぐ、ふぐぐっ!」

 

この変態は妹を見たいがために窓をよじ登っていた。どうしようもない、そう感じた。

 

「ほら、中に入るよこの変態。」

 

「はいはい・・・」

 

中から古庄先輩の声がする。僕らは扉を開け教壇に立った。・・・まぁ、同期の妹がほとんどのこのクラス、見慣れた顔も多い。

 

「さっき紹介したと思うけれど、今日から一年晴風クラスの副教官として赴任してきた山崎日向一等監察官と、伊良子林檎一等航海長よ。主に海洋実習やクラス内の講義など私のお手伝いとしてきてもらったわ。」

 

「ご紹介に預かりました。これから副教官として一年間みんなと生活を一緒にする山崎日向一等監察官です。・・・まぁ、何人か顔見知りはいるけどみんなの学生生活をやさしく、また厳しく。僕が経験した知識を教えられたらいいと思ってます。」

 

「同じく、伊良子林檎だ。美甘は俺の妹にあたるわけだけど、今は潜水母艦大鯨の艦長をしてる。最初に言っておくけど、俺は日向より甘くはない。けど、君たちが一人前のブルーマーメイドになれる協力はいくらでもしようと思う。」

 

「ありがとう。さて、そろそろ夏休みだけど海洋実習の結果によっては一部の生徒は補修、報告書の作成が命じられるのは知ってると思うけれどその結果は日向くん。お願い。」

 

ついにきてしまった。・・・この発表で、いったいどれだけの生徒が驚き、うらむだろう。

 

「最初に言っておくけれど、これは海洋実習が始まってから陸地に着くまでの全過程を成績としたものになる。・・・晴風クラス、残念ながら4名補修を命ずることになった。」

 

その言葉で愕然とする生徒たち。死地を乗り越え船までも沈んでしまった彼女たちを、これ以上追い込むのはつらさがある。

 

「・・・その4名を発表するね。黒木洋美さん。立石志摩さん。宗谷ましろさん。・・・岬明乃さん。以上4名は夏季長期休暇において報告書を作成するように。」

 

「ちょっと待ってください!なんで、なんで私が!」

 

「宗谷さん、君はマニュアルにとらわれすぎていてあまり冷静な判断ができていなかったね。自分の方が艦長に向いている、なぜ岬さんが艦長なのか。理由は、不幸を理由にして自分を正当化していること、名家だから私は・・・という根拠のない自信だよ。入学試験、君は解答をひとつずらしてしまっていたね。艦長とは、船を操り船員の安全を守り、海に生きる人々を守らなければいけない。つまるところ、その時々において冷静な判断能力が必要になる。・・・僕がもし君の直属の上司なら、君を艦長にするどころか、船にも乗せたくない。・・・たかが入学試験の解答をずらすなんて、実際の船の上でやられたら大変だからね。」

 

その言葉でましろは生気を抜かれたように椅子に崩れ落ちる。

 

「黒木さんは少々宗谷さんに入れ込みすぎてたね。確かに尊敬という感情を持つのは悪くはない。けれど、それを盾に艦長を批判したりするのは違うよね。立石さんは危機管理のなさ。例のねずみをポケットに隠し、アウトブレイクを起こしかかった。ひとつ間違えれば君たちも武蔵や比叡と同じようになって・・・大変なことになってたね。」

 

うなだれる生徒。そして・・・

 

「岬さんは・・・艦長としての職務放棄。船の仲間は家族、確かにそう教えたね。だからって自分が船を飛び出すということがどういうことかわかっていたかい?・・・だからこそ、こういわせてもらうよ。・・・君は、艦長には向いていない。」

 

・・・ついに言ってしまった。

 

「そして、既に連絡が言っていると思うけれど、武蔵クラスの生徒が一人・・・明日から合流することになる。そして、その生徒がしばらく晴風クラスの艦長、委員長になる。岬さんは副艦長に降格。・・・さて、合流する生徒は・・・」

 

教室の外から物音。ガラガラと音を立てて部屋に入る女子生徒の姿を見て、息を呑む生徒たち。

 

「・・・このたび、短い期間ではありますが晴風クラス、委員長を務めます。知名もえかです。」

 

・・・もかにこの話をしたとき、珍しく激高された。それは、幼馴染を傷つけることになるから。けれど、こうするしかなかった。

 

「・・・ということになる。4人はこの後生徒指導室へ。そのほかの生徒は寮に戻っていいよ。」

 

・・・その言葉を最後に、教室からは物音ひとつしなくなった。

 

 

「・・・無理しやがって。」林檎からあきれたような言葉が飛んでくる。

 

「別に。彼女たちにとっても乗り越えないといけないことだよ。こんなことであきらめるなら、元々ブルーマーメイドにはなれない。」

 

「美甘がすごいにらんでたんだけど。」

 

「千足のやつが新作スイーツ作ったらしいからそれでご機嫌取りかな。」

 

・・・

 

これでよかったんだ。そうだ。

 

 

 

 

・・・これで、あの日の事故のような犠牲者を減らせるのならば。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。