学生食堂。自炊や放課後は外食も許可されているこの学校の生徒にとってはもっとも安く、手ごろでお得なメニューが勢ぞろい。僕らも学生時代はよく集まった。そう、当時の野球部の面子は食欲も旺盛だった・・・
「・・・それまだ残ってたのね。デラックス定食ver野球部。」
目の前で林檎が食べているのは、当時の野球部員たちに対抗すべく、各船の炊飯委員たちが作り出したスペシャル盛りというデカ盛りメニューの数々だ。どんぶりや定食は普通の5倍以上の量を誇り、決して完食は不可能とされていたのを・・・僕らは完食し、さらにはおかわりを要求したことにより、OGとして来ていた真霜姉さんや古庄先輩に説教されたのは今でも野球部の伝説らしい。なんて伝説を残してくれたんだ。もっといい伝説なんて山ほど当時作ったのに。
「ふぃー・・・食った食った。このステーキ定食食いたくなるんだよなー。」
「少なくとも、当時からそれを頼むのは林檎だけだったけど。」
こいつの胃はどうなってるのか。なんでそんな足りない顔をしてるのか。そして「ちょっとデザート食いに明のとこいってくる」ってなに言ってるのこいつ。今や横須賀だけでなく日本全国の女性を虜にする坂倉屋の跡取り息子たちのところでもぐもぐ食べるというのかこいつは。やっぱり長い航海で疲れてるんだろう。今度の休みは病院だな。
「ここ、よろしいかしら?」
「・・・どうしたのそんな言葉遣い。歳かんがいだだだだだ!」
「あら~?日向ったら♪私にそんな口を聞くようになったのね?」
目の前に座ったわが女帝宗谷真霜。ああ恐ろしい。
「姉さん、ダイエットするんじゃなかったの?またパフェ頼んで・・・」
「きょ、今日は朝から会議で疲れてるの!日向だってたまにはあるでしょ!?」
「僕は適宜とってるからね。姉さんみたいに疲れた!パフェ!って考えにはならないし。」
「むぅ・・・ねっ、今日暇?」
「19時ごろからなら。買い物?」
「デートしましょ?」
なんて直接的なのだろう。そしてそんな笑顔で僕を見ないでほしい。
「デートって、その時間ならどこも開いてないんじゃ?」
「夜景デート。ねっ?」
・・・しょうがない、か。
「わかった、わかったよ。なるべく早く終わらせるからさ。」
「ん、よろしい。」
・・・ほんと、かなわないなぁ。
「それで、会議って?まぁ僕が呼ばれてないってことは内々のことなんだろうけど。」
「んー?たいしたことじゃないのよ?まぁ私にとって日向以外のことはたいていどうでもいいんだけどね?」
おい監察官。大問題発言を学生の前でさらっと言うんじゃない。
「・・・昨日の答え、私待ってるからね?」
「正直いつでも返事はしたいんだけど・・・まぁ、いろいろ考えることもあってさ。」
「・・・もう、一人じゃないんだよ?」
テーブルをたとうとする僕の後姿に、そんな優しい声色。
「あのときからどこか日向の笑顔は曇って。私がそれに気づかないわけないでしょ?」
「・・・その一文だけ聞いてれば、いい婚約者なんだけどね。」
「婚約者としてみてくれれば今はいいのよ。それに今じゃ先生だものね?」
「まさか初日からあんなことになるなんて思わなかったよ、それじゃあ補修生徒がいるから。」
そういい残し再び教室へ。一応4人来てくれていると思うけど・・・
めげないでね。ミケ。君は艦長として、より高い場所へいけるだけの力がある。今はそれに気づいていないだけなんだから。