夜もふけたころ。食事を済ませた私は呉の街中を二人で歩いていた。
「大丈夫?ずいぶん酔ってるけど。」
「へーきへーき!明日は久しぶりのお休みだし、ゆっくり寝ちゃうんだから~」
呉の街並みはどこかあわただしくもどこか横須賀に似た空気をかもし出す。
それは隣にいる彼のおかげかもしれない。
「ほら、姉さん部屋のかぎだして。・・・まさか片付いてないなんてことないよね?」
「え、えーっと・・・あっ、鍵お願いね?」
「ねえ、姉さんこっち見て。姉さん?」
とりあえず鍵だけお願いしましょう。後は寝ちゃえば問題ないよね。
「おおう・・・こんな部屋なんだ・・・」という言葉を最後に私は眠りに落ちた。
・・・・・・夢を見た。
子供のころの懐かしい記憶。私と真冬と日向の三人で神社で絵馬をかけてる夢。まさか三人ともその夢をかなえるなんて思いもしなかったけれど。
ゆっくりとした時間は、私たちを少しづつ変えていった。それは良くも悪くも。
・・・そういえば、もうひとつ内緒で絵馬を書いたっけ。なんて書いたっけ・・・よく、思い出せない。けど、確かとっても大切で、叶えたい夢だった気がする・・・
でも。とりあえず今が幸せなら大丈夫・・・よね。
・・・・・・・
翌日目が覚めると部屋が幾分かきれいになってた。日向ったらソファーで寝ちゃって・・・
・・・ありがとう。私の大好きな人。
・・・姉さん、姉さん!
「姉さん!おきて姉さん!」
私を起こす声。あれ、日向・・・?
「姉さん!なんで寝てるの!?もうみんな来るよ!?」
「あら・・・あれ?私なんで・・・」
窓の外はすでに日が落ちようとしているところ。晴風クラスの皆が来るまでもう時間がないことを私に教えてくれていた。
「まったく・・・姉さんってば疲れてるなら一言言ってくれればよかったのに・・・」
見れば資料や報告書の山が机にたまっていた。そういえば最近よく眠れてたかしら・・・
「姉さん、こっちおいで。」
見ると日向がベットに座ってひざをたたいていた。
「少しだけ、休もっか?」
にっこりと優しい笑顔で私を迎えてくれる彼。そうだ、私は・・・
ずっと、この笑顔に救われてきたんだ。
他の何を失っても、目の前のこの幸せだけは失いたくないって思える、そんな場所。
「ねぇ、日向。」
「どうしたの姉さん。」
「ううん。今度またアイス食べに行きましょ?」
私たち二人を、周りはどう見てるんだろう。
ほかにふさわしい人がいるのにって思う人もいるのかな。
けど、きっと二人ともそんな言葉にはなびかないと思う。きっと、今のこの幸せを感じてるのは、私だけじゃないから。
大好きだよ、日向。