8月。世間では夏休みのど真ん中。学生は休暇と宿題を味わい、社会人でも一週間の休みがある人もいる。さて。僕らといえば・・・
「・・・がぁああ!おわらねぇ畜生!」
「林檎うるさい・・・まぁ、確かにこの量はなぁ・・・」
そう、僕らが対峙しているのは書類の山。一応出向という名目になっているためか、量は減っているがそもそもの絶対数が多い関係でこなさないといけない枚数は多い。
「なー日向ー・・・めどつくなら飲み行こうぜー」
「あー・・・いいかも。いつものとこ?」
「そうそう。それに今あいつがこっちに戻ってきてるんだと。合流してさ。明日は俺ら二人休みだし。」
仕事上、中々飲みにいけない現状。極秘事項を居酒屋なんかでぽろっと出してしまった日なんかは絶望的だ。
「んじゃ、とりあえず昼飯でもいくか。食堂開いてるだろ。」
林檎に続いて食堂へ。女子海洋学校の食堂はとにかく広い。それでいて食事代はかなり安い。男子のほうは種類は少なくも量が多いのが特徴だったけど。
「あら!二人とも夏休みなのに仕事?」
「そーなのおばちゃん!俺A定食!」
「僕は日替わりランチで。おばちゃんこそ休みは?」
「私たちも交代で出勤よー。夏休みだから人数は少ないけど。はい、お待たせ。」
おばちゃんから定食をもらって窓際に座る。A定食はカツ煮。日替わりは新鮮な刺身を使った定食だ。
「あっ、つぶ貝くれよ。」
「カツ一枚ね。」
このやり取りは学生時代から変わらない。あの時はクラス全体でこんなことしてたけど。
「それでさー、夏休みどうするよ?お前実家帰るんだろ?」
「それがさ。聞いてくれよ。夏休み帰るからって言ったら宝くじ当てて世界一周だと。おかげで予定の組みなおしだ。やってられないよ。」
そっとため息。こんなのが毎年だからなおさら有給がたまっていく。・・・あれ、本局からメール。どうやら林檎にも送られてきたらしい。
「おいおい、うわさをすれば・・・って、何で岬の名前もあるんだ?」
送られたメールには僕と林檎、そして明乃の名前の記載があった。三人で本局に出頭しろという指令。
「事件の後始末にしては早すぎるし・・・とりあえず明乃にメールして・・・」
「本局ねぇ・・・いくの面倒なんだよなぁ。」
「なーに言ってるのさ。ここがどこだと思ってるんだよ。スキッパーならいくらでもあるんだし、ちょっと借りていけば問題ないさ。」
実際、学校からスキッパーを借りれば本局のある東京台場フロートまで30分もかからない。学校教育の一環で最新型のスキッパーが常備してあるため、途中で故障なんてばかげたこともない。
「・・・とりあえず行こう。面倒だけど。」
残ってるランチをかっこむと明乃と待ち合わせた港へと足を向かわせるのだった。