さっきまで車のシートの感触じゃないことに気がついて目が覚める。いつの間にか家のベットに寝かされてたみたい。時間はまだ深夜三時を少し回ったぐらい。
告白が、ついさっきのように思える。確かに、お酒の勢いもあったかもしれない。けど、まさかあんなこといわれるなんて。
枕もとの人形を手に取る。初めて日向が私の誕生日に買ってくれた人形。
私のために、笑顔で贈ってくれた人形。
私は彼が好き。彼を本気で愛してる。
学校でも、一緒にいることは少ないけれど、それでも彼のことを見続けてた。
高嶺の花とかいわれているのも知ってた。たくさん告白もされた。
それでも、私の心が動くことは決してなかった。
約束してくれた日本一の景色。その景色を見せられなくてごめんと、申し訳なさそうな表情。けど、その裏で涙を流していたのを知っていた。私の前では、いつもの自分でいたい。そう聞いていたから。
けど、私にその姿を見せないせいで。彼は一人で背負い込んで、結局君は壊れてしまって。
誰にもそのことを伝えられなくて。私は仕事一筋で考える暇もなくて。気がついたら日向が・・・
そう考えるだけで人形を抱きしめる力が強くなる。そこに彼はいなくても。彼を少しでも感じていたい。ただそれだけ。
・・・会いたい。あの子を力いっぱい抱きしめてあげたい。そうだ、前に温泉に行きたいって言ってたし、休暇をとって二人で行くのも悪くないかもしれない。
そう、日向のため。全部日向のため。
「日向さえいれば・・・」
気づかないうちに私の中にどす黒い感情がわきあがる。その理由はひとつだけ。彼のことを愛しているのは、私だけじゃない。
岬明乃さんと知名もえかさん。晴風の事件の時より以前。彼の実家の孤児院で育った二人は、彼を兄として、気がつけば一人の男性としてみていた。彼も二人をかわいがっていた。その話を聞いてほほえましい私と、独り占めしたい私がいつもいた。
「日向・・・」
会いたい。抱きしめたい。抱きしめられたい。
そんな私の中の感情を、もう抑えるのは難しいって思うようになってきた。
だから、私のこの気持ちはしばらく抑えていよう。
けど、負けるつもりもない。私が、彼のことを一番よく知っているのだから。何も負い目は感じない。
私が、彼の止まり木になると決めたから。そのためになら、私は・・・
・・・なんて、そんなことを彼が望むだろうか。きっと望むことはないはず。
だから、今はただ、彼のそばに。それだけが私の幸せ。