真霜さんの告白を無理やり断った僕は、宗谷家の庭でタバコをふかしていた。成人になったのと回りにあわせようと思って買ったはいいけれど、まったくつかってなかったもの。肺にいれるのは、まだ少しつらい。
「けほっ、けほっ。林檎のやつ、何が一番吸いやすいやつなのさ・・・」
煙をくゆらせ月を見上げる。そして思い出す。過去のこと。
過去の沈没事故での出来事。友人を失った。自分の弱さが憎たらしかった。
夏の甲子園の後の海洋実習中の事故。小型潜水艇の事故。共に甲子園で戦った、その数時間前までは馬鹿を言い合ったあいつの顔が頭に浮かぶ。
「お前がタバコ吸うなんてなぁ。ぐれたか?」
「別に20は過ぎてるし。吸うなら一本だけね。」
「吸ったら母さんがうるさいからパース。」
真冬がいつの間にかに縁側に座っていた。気配を感じなかった・・・いつから同期は忍者になったんだろう。というか酒臭い。
「明日仕事なのに飲んでるのかい・・・」
「明日から非番なんだよー!弁天が定期検査とやらでな。後有給たまりまくってるんだと。」
「あっ、そういえば僕もたまってるんだった。早く使わないと・・・またどやされる。」
そんなたわいのない話。高校入学時から変わらないこの関係。友人というより親友だ。僕にとっては。
「んで、真霜姉の告白を断ったのはどうしてだ?日向のことだ。断らないと思ってたが・・・」
・・・
「今は、まだ無理ってだけだよ。正直、自分の心の準備もまだなのにさ。」
「あのなぁ・・・姉さんの気が変わっちまったら台無しだぞ?」
「・・・そうなったら、旅にでも出ようかな。」
「しゃれにならんから本気でやめろ。」
・・・そんなたわいない?話をしていると時間も忘れる。時計を見れば既に3時。今日は学校に挨拶に行かないといけないのに、気がついたらかなり夜更かししてしまってたみたいだ。
「まぁ、悔いはすんなよ。姉さんはそう簡単にそんな心変わりはしないと思うが。」
「だといいけどね。女心は難しいっていうだろ。」
女性の扱いなんて学校で習わなかったしね。しょうがないね。
そういえば、買ったプレゼント・・・まだ渡してなかった。後でそっと置いておこう。かなり早いクリスマスプレゼントかな。
喜んでくれればいいけど、そうじゃなかったらまぁ・・・しょうがないか。
そういえば、もう少しでミケともえかの誕生日だっけ。入学祝も出来てなかったし、今度の夏休みにどこかに連れて行こうか。
なんてことを考えながら、タバコの火を消して部屋に戻った。
翌日、タバコが見つかり真雪さんに怒られたのは言うまでもない。