ホームルームが始まるまでまだ一時間と少し。僕らは会議室で生徒の書類を改めてチェックしていた。
「はぁ・・・あまり言いたくはないけれど、しょうがないのかなぁ。」
例の事件があったとはいえ、晴風は期間が延びてしまった海洋実習として成績がつけられている。もちろん功績もあり甘めの成績となっているが。
「まぁ、晴風が元々劣等生ってわけじゃないけどさ。戦艦や軽巡に比べたらそりゃ・・・けど、何人かは少し致命的ではあるだろ。ひいきなしで、それは正直問題だ。」
手元の資料には岬明乃艦長、宗谷ましろ副艦長、立石志摩砲術長、黒木洋美機関助手の4人の名簿が。その下には赤文字で報告書の再提出・・・つまり、海洋実習において問題点が多かった生徒に与えられる課題だ。理由は前から『艦長としての職務放棄』『自信過剰、不幸と言う言葉への退避』『事件の原因となった生物への不用意な接触、それによるアウトブレイク寸前まで事態を追い込んだ。』『宗谷副艦長への異常なまでの崇拝、それによる艦長批判』…ええ・・・なにこれ。真顔だよ。
「岬艦長は・・・」
「まぁ、僕が早いうちに手を打たなかったのが間違いだったかな。あの事故もあって、『海の仲間は家族』って意識が強すぎたみたい。後はましろだけど・・・正直、僕も一度メスを入れないとって思ってた。不幸って言葉でいろいろ逃げてるからね。正直、艦長希望だって聞いてたけど・・・」
ましろには絶対に任せることが出来ない。そういいかけた言葉を飲み込んだ。
「・・・お前も案外手厳しいよな。」
「そうかな。海の上じゃ何があるかわからない。完璧は求めないけれど、自分の仕事や影響力って言うのが大きいって言うのを理解してもらわないといけない。教官としてこの学校にきたからには・・・うん、それなりの覚悟がないわけじゃないよ。」
そんな書類の中にもう一枚。武蔵からのクラスわけで一人が晴風クラスに転入することになっていた。
「・・・学校もなかなかえげつないことするな。」
「そうだね。・・・って、林檎。お前もそれに近い状況になったの忘れてない?試験中に主砲打ってまさかの無人島に命中。留年になりそうだったのをとめたのは誰だっけ?」
「・・・日向をはじめとした野球部です。はい。」
「そうだね。美甘ちゃんへの手紙が見つかって大騒ぎした挙句全裸で海に飛び込んだのを先生にごまかして伝えたのは?」
「同じくです。」
「本来なら退学ものなんだけど・・・まぁいいや。とりあえず行こう。・・・朝一番にこれを伝えるのも痛い話だけど。」
席を立つ僕の手元にある書類。そこには生徒名と赤字でこう記されていた。
『知名もえか 晴風艦長/クラス委員長 岬艦長を副艦長へ降格。』