【習作】アイツが転校してこない世界で   作:死んだ骨

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2章 聖杯戦争編
魔術協会


 

 

 物心がついた時から、この世界は理不尽なものだと知っていた。

 親に捨てられストリートチルドレンへと落ちたやつは腐るほどいた。

 例に漏れず、俺自身もそうだ。

 この歳になって俺と似たような道を歩いたやつに聞かれたことがある。

 ――親に恨みはないのかと。

 親に対しての憎しみはなかった。

 そもそも記憶に無い。

 憎むだけの感情を記憶にもない親に抱けなかった。

 だがら、恨むとすれば相手は世界に対してだった。

 自分一つだけの命であるなら馬鹿げたことに使って果てていたと思う。

 くだらないことは理解している。

 けれど、弟が側にいたから踏みとどまれた。

 いや、踏みとどまれてはいなかったなと自笑する。

 悪魔に魂を売ったのだ。

 悪魔というより、死神だったのかもしれない。

 

 

 吹風に乗って入り込む砂埃と緊張で口が乾くのとで口内が不快だ。

 後ろに寄り添う弟を思いながら、彼は必死で打開策をひねり出そうとしていた。

 砂塵の舞う夜に、二人の影を追う姿がひとつある。

 二人は崩れた建物を背に身を潜める。

 二人には大きな身長差があり、兄弟でもある。

 青年と言える背丈の大きい兄は、背中にアサルトライフルであるカラシニコフ――AK-47を背負っている。

 AK-47はどんな環境にも適応する銃だ。例え泥水を啜り、ネジ曲がった弾倉でも遺憾なく性能を発揮する銃として争に好まれている。

 気候の変化の激しい地でも十全に機能を発揮するこれは模倣品も作られることが多々ある。

 設計図も複雑ではなく模倣品が出まわるのに時間はかからなかった。

 故に手に入れやすく、使い勝手のいいこれを兄は気に入っていた。

 装備はある理由で充実し"銃弾が効かない悪魔"の対策として、目と耳を守る準備はできている。

 自分がした行為に目を背ける。

 それ以外に方法はなかったのだから。

 背の低い弟が、息を切らしながら背後を警戒している兄に問いかける。

「レック、オレたち逃げきれるのか」

「逃げてみせるさ。リック、お前は先に行け。奴の注意はオレが惹く」

「ダメだ! 一緒に逃げるって言ったじゃないか。相手はあの"銃弾の効かない悪魔"なんだぞ!」

「それは勘違いだと俺は思う」

 弟を諭すように兄のレックは言う。

「奴には確かに銃弾は効かなかった。以前、内戦で奴と遭遇した時確かに胴体に打ち込んだが怯んだだけですぐにオレに銃弾を打ち返してきた」

「だったら尚更無理だ」

「だが、気づいたことがある。奴はスナイパーの射線上にはでない。つまり、奴でもライフル弾は効くってことだ。奴が以前半年ほど前線に出てこなかったのは、療養していたからに違いない。300m離れた建物の四階に銃と弾薬を設置してある。場所は簡単だ、この地域でまともに残っている建造物はあそこしかない」

「レックが囮になって、オレに銃で狙撃しろってことか?」

「前にやりかたは教えたな。オレの命、リックに預ける」

 リックは不安そうな顔で兄を見る。

 弟の不安を吹き飛ばそうと、兄のレックは精一杯笑ってみせた。

「大丈夫、お前の眼の良さと射撃の上手さは一級品だ。オレにはなかった才能を持ってる」

「……うん、わかった」

 兄のレックが弟のリックの肩を叩き、建物へ向かうように促した。

 そんな時だった。

 眩い光が視界を覆い尽くしたのは。

 思わず悲鳴が漏れる。

 条件反射で視界を腕で塞ぐ。

 兄のレックは、今自分たちが何を食らわせられたのかを咄嗟に理解した。

 閃光手榴弾(フラッシュ・バン)。"銃弾の効かない悪魔"が多用する戦術の一つでもある。

 奴は凄腕の名でも知られていて、遠くに投げつけた閃光手榴弾を銃弾で撃ちぬく腕を持つ。

 正確無比なそれは、数秒で相手の視界と聴覚を奪う。

 だが、あくまで多用された戦術だ。対策は十二分にされている。

「行け! リック!」

 背中を蹴るようにして、無理矢理にでも走らせる。

 レックは背負った銃を構えて物陰から現れる敵を迎える。

 サイトをあわせ、何時でも撃てるように引き金に指を添える。

「お前ら二人だな。深夜に子供を一人拉致して交渉をふっかけてきた輩は」

「………………っ」

 耳をふさぎたくなる声掛けを無視する。

 もう後戻りは出来ない。

 やり直しは無いんだ。

 微塵も油断する気はない。

 相手は"銃弾の効かない悪魔"。

 自分がするべきことは弟を信じて時間を稼ぐこと。

 気を許さず、会話をするべきだと理解した。

「その質問に、はいと答える奴がいるのか」

 馬鹿にしたように奴は鼻を鳴らした。

「誰に脅されてるかは知らない。見たところ弟を大事にしているのは分かった。だがな、罪もない相手を、まして10にも満たない子供を対象にしたことは許される事ではない」

「……アンタに言われたくはない。殺戮者といえば名前が上がるアンタとは違ってな!」

「正義は立場で変わる。お前らから見れば俺は殺戮者かも知れないが、俺達からすれば知り合いの子供を殺したお前ら二人のほうが殺戮者だ」

「詭弁だ!! いままで何人殺してきた! この地でお前に恨みを持たない奴などいない!」

 正面から罵倒したのに、奴は目を閉じて数えるように唇を動かした。

「…………数えきれないほど、殺してきた。歯向かってくる相手はすべて殺した」

 奴の目を見て、レックは思う。

 普通殺してきた人間の数を数える者はいない。

 知り合いに子供を虐殺する作戦に無理矢理参加させられ、血塗れた自分に罰として自殺した奴がいた。

 奴は言っていた。

 ――子供の泣き叫ぶ声が耳から消えないんだと。

 ――足元に殺してきた子供たちの手が離れないのだと。

 ――背中におぶるようにして何人もの重さが肩に残ると。

 奴はきっかり、自分が殺してきた数を覚えていた。

 "銃弾の効かない悪魔"の噂にはもう一つある。

 殺す予定の人物に必ず名前を聞くのだと。

 つまり、奴は狂ってる。

 狂わずして数は数えられない。

 まともじゃない。

「……うおおおおおおお!!!!」

 恐怖を振り払うように引き金を引いた。

  

 

 300m先で弟のリックはその戦いを見ていた。

 用意されていたライフルのスコープを覗き込み、二人を追いながら。

 兄が銃を乱射している。

 平静を失ったように弾をばらつかせている。

 ただでさえ狙っても当たらない相手なのに、あれでは命中する見込みもない。

 だが、自分が一発胴体に撃ちこめばいいのだ。

 以前兄に教わったように動作を確認する。

 ボルトを引いて、弾薬を装填し息を止めて狙いを定める。

 二人の位置取りが変化する。

 奴がこちらに背を向けた瞬間、引き金を引く。

 ――当たった。

 リックは自然と拳を握りしめた。

 どうやっても避けられまいと。

 しかし、その銃弾は当たらなかった。

 スコープを覗きながら"銃弾の効かない悪魔"はリックの方へ振り向き手をかざす。

 無手の状態から魔法使いのように盾を取り出して銃弾を弾いた。

 信じられないような光景を見て、思わず喉を鳴らした。

 瞬きが出来ずこちらを視界に収めている蒼い眼に心臓を握られるイメージが脳裏をよぎる。

 リックの想像に間違いはなく命を握る奴の手は既に何かのスイッチを押していた。

 瞬間的に視界が灼熱に燃え上がる煙で包まれていた。

 鼓膜が破れるほどの爆音を最期に、二度と意識が戻ることはなかった。

 

 

 レックは呆然と悪魔を見ていた。

 絶妙な位置取りで、弟が奴を貫く姿が見えるのを楽しみにしていた。

 情けなくも精神的に不安定でありながら自分の役目を全うできたと思い上がっていた。

 だが、奴の目は茶色いそれから蒼く光るモノに変化し何の前触れもなく背後を振り向いて、その手から盾を出現させた。

 "銃弾の効かない悪魔"のもう一つの代名詞。

 奴は無手の状態でどこからか鉄の盾を取り出すのだと。

 無残にも弾かれた銃弾に驚くだけでなく、奴が取り出し何かしらの動作を行ったことでこの地域でまともに残っていた建造物が爆発し燃え上がったことに理解が及ばなかった。

 300m先の建物が大きく煙を上げて様変わりする。

 その場所には弟がいるはずだ。

 自分が"銃弾の効かない悪魔"を引き付け、弟が仕留める。

 それがこんな結果になるなんて。

 常識を超えた業と、一瞬で散った弟の命を受け止める許容量はレックにはなかった。

 浅慮だったことすら認められない。

「この場所で俺を狙撃するポイントはあそこだけだ。事前に罠を仕掛けておくのは当然のことだろう。弟はともかく、お前は詰めが甘かった」

 時間がなかったんだなんて言い訳も口には出来なかった。

 弟の命を天秤にかけられたのなら、決断を先延ばしにすることは不可能だった。

 どちらにせよ、もう、遅い。

「――――リック」

 悪魔の声すら届きはしない。

「復讐は復讐を生む。だが、子供を殺された母親を納得させるには復讐しかないんだ」

 悪魔の銃がレックを射止める。

 彼は向けられた銃にすら認識をせずに、遠くを見つめ続けていた。

「最期に名前を聞いておこう。お前の名前は?」

「――――――」

 答えられる余裕もなかった。

「……そうか。せめて、苦痛もなく弟の元へ逝け」

 頭蓋を貫く感触から、死ぬのだと悟った。

 

 

 "銃弾の効かない悪魔"は自身の銃で撃ち抜いた人物の生死を確認する。

 瞳孔は開き、鼓動もない。

 死んだことを確かめ青年の瞼を下げる。

 次に炎上した建物の付近に向かい、鎮火するまで時間の経過を待つ。

 火が消え煙もおさまったと判断したら口元に折り曲げた布を押し当て耳の後ろで縛る。

 銃を片手にクリアリングをしながらそれらしい死体を見つけて一発だけ撃ちこむ。

 反応が確認されないことから、ゆっくりと近づいて蹴り上げた。

 気色悪いゴムを蹴る感覚で死んでいることを認識した。

 コートの別のポケットから無線機を取り出して耳に当てる。

「こちらマール。標的の殺害を確認」

「了解。すぐに戻ってこい」

 返答せずに無線機を切って、先ほど蹴り上げた死体を肩に背負う。

 持ち上げたモノは人の体にしては随分と軽く、それがまた腹立たしくもある。

 男は慣れた様子で元の場所まで歩き、頭蓋を撃ち抜いた兄の方の死体も工夫して肩に乗せた。

 両肩と腕で支えながらまた歩きはじめる。

 向かう先はいつもの場所だ。

 その場所には肩に背負う二人の仲間が埋まっている。

 死者に罪はない。

 彼らには平等に"銃弾の効かない悪魔"なりの配慮が与えられる。

 

 

 ときおり、あの日のことを夢に見る。

 彼女を助けに旧校舎に向かったが、そのときに発現した魔眼の能力で視た未来の光景を。

 みっともなく顔を崩して泣いたのをよく覚えている。

 けど、最近になって彼女の顔がすこしづつ薄れていく気がする。

 もっと前に夢で見た時は、はっきりと顔が確認できたのに今はもう輪郭がぼやけてシルエットしか見えない。

 手も伸ばせば届きそうな距離だったのに、今はもう伸ばしてもとても届かない。

 俺に背を向けて、決して俺を見ることはない。

 おそらく二度と向き合うことはないだろう。

 俺の夢はいつも、そいつの名前を口にして目を覚ます。

 

「またうなされてたぞ」

 目を覚まし体を起こせば見慣れた白人がいた。

 椅子に座っているのにやけに大きく見える。

 日本男子の平均を十は上回る俺よりも更に高い。

「――アオコ。お前がうなされるたびに必ず聞こえるその言葉、故郷に亡くしてきたのか」

「その話はする気はないといっただろう。何度言えばわかる。寝起きにそんな名前聞きたくもなかった」

「前にも話したが、俺は元軍人だ。テメエの面を見ればなあ、自殺一歩手前なのが丸分かりなんだよ。殺してきた奴らの墓を作る習慣は止めろ。あれで幾つ目だ、ああ? 100は降らねえ」

 下唇を噛んで目を細める。

 目の前の白人には世話になった。

 それこそ今話している言葉だって日本語ですらない。

 少しだけ聞き取れる英語でもない。

 不自由なく英語を話せたって、現地の言葉を知らなければ出し抜かれる。

 お陰様で、現地の言葉を教えてくれたのは目の前の白人だ。

 白人の言う墓を作る習慣は煙たがれる行為らしい。

 その習慣だって、贖罪のためでもある。

 せめて、殺した俺だけは殺してきた人間が確かに生きていた事を覚えておかなければと。

 ――そうだ。彼女がそんな覚悟を決めていたから、せめて意志だけでも俺が継ぎたかった。

「それにな、ここにはガキがいるんだ。ガキよりも死にそうな顔してんじゃねえ。お前の顔に引きずられてガキどもに影響するだろうが」

 白人はそっと視線で開け放たれた就寝所を刺す。

 遠目からでも安心した顔で寝付いた子供たちを見る。

 こんな光景を作り出したのは白人の手によるもの。

 こいつがいなければこのような光景は無かったはずだ。

「お前の力は頼りになる。世界には知られてない技術がありふれているのも。けど、その力には危険が伴う。そうだろう?」

「……ああ、そのとおりだ。その時は俺が責任を取る」

 俺の前に立つ白人が俺の胸ぐらをつかんで持ち上げる。

 俺もそれなりに体重はある方だが、奴はそれ以上だ。

 持ち上げるのもワケはないだろう。

「死んでからじゃ遅えんだ。判断は誤るな」

 白人の腕を振りほどいて立ち上がった。

「俺だって子供を死なす気はねえ」

「自殺志願者にやけを起こされたら迷惑だ。そうでなくちゃ困る」

「少なくとも恩は返すさ。心配するな」

 背中を向けて、突き放すように言う。

 利用されているのは構わない。

 俺には力がある。

 白人に手ほどきを受けた銃火器類の扱いとは別の力がある。

 それを使うのに惜しむことはない。

 使えずに後悔したことのほうが心に強く刻まれているから。

 助けられる命が多いのなら、迷わずに使ってやる。

 俺が役に立てるのはその程度だから。

「伝え忘れていたが、最近怪しい奴を見た奴がいるって話だ」

「どんな奴だ」

 振り返らずに会話を続ける。

「なんでも狂信者らしい」

「狂信者ぁ?」

 思わず聞き返してしまった。

 胡散臭い話はどうにも嫌いだからだ。

「首から十字架を下げていてな、お前の持っているのとは違って本物だ。服装もお前がここに来た当時と似たように真新しく別の国から来たとの事だ」

 自分のことを考えると、異国からの来訪者はやはり珍しい。

 望んで来る場所ではないことは確かだ。

「別の国ねえ……見当はついてるのか」

「それがはぐらかされたというか…………」  

 言いにくそうに言葉を濁す。

 先程までの風格とは違って、情けなさが垣間見える。

「はっきり言えよ。じゃないとわからない」

「……なんでも、記憶が曖昧らしい。誰かに何かを聞かれたことは、漠然と覚えているがしっかりと思い出せないとのことだ」

 妙に覚えのある感覚を得た。

 その昔、俺も多用した方法だ。

 ――暗示。魔術師ならば初歩の技術。

 首から下げた人物がどういう輩なのかは把握できた。

「推測の域を出ないが、狙いはお前だ。そいつが"銃弾の効かない悪魔"について聞きまわってる」

 白人の男の言葉に、俺は深く頷いた。

「だろうな。連中はおおやけに魔術を使うのが気に食わないらしい。数日しない間に別の国にでも逃げるさ」

「なんだったら二日で紹介状でも書いてやるよ」

 歩みを進めて。

「遠慮しておく。アンタには世話になりすぎた」

 返事を待たずに依然として小奇麗さを残した建物を抜けて、外にでる。

 砂埃が舞う深夜に、ポケットからこの数年で吸い慣れてしまった物に火をふかす。

「魔術について嗅ぎつけてくるってことは魔術協会か……俺がいる世界は、そういうところだったな」

 久しく忘れていた。

 魔術を使ってはいたが、魔術協会のことなんてすっかり頭から抜け落ちていた。

 奴らは神秘の秘匿を第一に置いている組織だ。

 人目を気にせず神秘を行使する存在は抹消したくもなる。

 さぞ俺みたいな存在は排除したいのだろう。

 ただ、排除される対象に含まれているということはそれなりに名前が知れ渡ったという事でもある。

 どこから漏れたかは知らないが、何年も同じ場所にとどまりすぎた。

 ふと、左手に浮かぶ痣を見つめる。

「……赤い痣か。なにか意味があった気がするが」

 これが浮かんだのは最近のことだ。

 しばらく時間がたっても消えることはなく、左手の甲に残り続けている。

 俺にはそれが何かを意味しているようにしか思えない。

 だが、思い出せることなく日々が過ぎていく。

 一瞬だけ、見たくもない血の海が脳裏に過るが慣れたものだ。

 前は吐いて吐いて、駐在地にいる子供たちにまでバカにされた。

 ビビってるのかマールと。

 その後はなんとか馬鹿にされないところまでは来た。

 サッカーで少年達を抜き去ってハットトリックを決めたり。

 勉強を教えることで少女達の不信感を徐々に取り除いて擦り寄った。

 善意での気持ちだが、なにかの贖罪でもある。

 そのなにかに自分が縛られ続けていることも理解していた。

 結局逃げても、追いかけられる運命なのかもしれない。

 指に熱を感じて咄嗟に咥えていたものを投げ捨てた。

 放置するのも気がしれて、そっと空中に文字を刻む。

 残った吸い殻は火を上げて塵になった。

「とにかく、今は魔術協会から逃げることが先決か」

 奴の言葉に引っかかる事もある。

 元軍人としての手腕には眼を見張るものがるが、人柄に関しては全く信用していない。

 歯に挟まった違和感を解消するため狂信者が目撃された現場に向かう。

 未だ日は登らない。

 だが、神崎護の行動はいつも夜明け前からはじまる。

 可能性として、襲撃まで二日もない。

 

 

 駐在地に向かった。

 そこには民間兵が数多くいる。

 狂信者を見たというのもおそらくここだ。

 あえて、奴には尋ねなかった。

 あの白人に対して思うところがあるからだ。

 奴は俺同様、目的のためなら手段を選ばない。

 目的のために益となるのなら、迷わず不要なモノを切り捨てる。

 なにより、狂信者を敵に回すよりも俺を敵に回したほうが楽だと奴は悟ったのかもしれない。

 奴の目的については以前聞かされた。

 子供達が平和に暮らせる状態にするというありきたりな願いだ。

 一人だけならまだしも、百人近くとなれば別だ。

 それを実現するためにも奴は常に苦悩していた。

 決して子供たちには苦しむ顔を見せず、笑顔で努めていた。

 並半端な覚悟じゃない。

 人を殺した数もはかりきれない。

 俺が見てきた中でも奴の決断は常にはやく、迷いのないものだった。

 敵でなくて良かったと思うこともある。

 駐在地に着き、見慣れた民兵たちに出会う。

「マール。暇があったらあの人のところへ一言あげて欲しい」

「お前が奴等に始末をつけられたかどうか報告をずっと待っているんだ」

 俺は頷いた。

 もともと、あの少年たち二人を殺したのも今回の件が原因だ。

 息子の亡骸の前で泣きながらしがみつかれ、殺してくれと。

 勢いに押されて是非と答えた。

 その報告を母親がずっと待っていると。

 ただ不可思議なのは、あの二人の少年たちに出し抜かれるのはどうも納得がいかない。

 見回りを担当している奴等が一人も昏睡や殺害をを起こされていないとなると――。

「わかった。それと、後でお前たちに聞きたいことがあるんだ。できれば時間をつくっておいてほしい」

 民兵はシワを寄せた顔で答えた。

「例の狂信者の件か?」

「そうだ」

「了解した。交代したらできるだけ多くの奴等に伝えてくる」

「助かる。これからも見張りを頼む」

 聞き込みの約束を取り付けてから奥に進む。

 時刻は丁度明方。

 続々と人が起き始めて活動を起こす。

 俺はここに来たばかりの頃のように、奉仕活動をする。

 その前に、俺は例の女性に会いに行った。

 

 女性の家を訪れた後、俺の心は複雑な気持ちでいた。

 頭を揺らし思考を止める。

 考えたって仕方がない。

 切り替えて、何件もの家を渡り歩いて手伝いをする。

 言葉を教えてもらったり、この地域での常識や危険察知など。

 現地でしかわからない事を教えてもらった恩返しとして、今も俺はこうしている。

 重い荷物や水の確保など子供ではキツイものは率先して引き受ける。

 一通りの仕事を手伝い、昼にやることといえば俺が唯一安らぎ楽しめる運動。

「マール!! サッカーしようぜ―!」

 はやくに朝に課せられた仕事を終えて駆けつけてくる。

 身の丈は130程。年にして9歳位か。

 一時は衰弱してダメかもしれないとまで言われたが無事回復した。

 周りと比べるとやや小さいが、最近はよく食べて寝るらしく今後が期待だ。

「ルージェ、サッカーしたかったら他の人たちの仕事も手伝ってやれ。みんなでやったほうが断然楽しいからな」

「分かった! オレの次に終わりそうなアベルを片付けてくる!」

 俺もあらかた手伝いを終えた頃に女の子がやってきて勉強を教えてくれとせがんでくる。

 それも五人くらいの輪で攻め立ててくる。

「ルージェとアベルが周りを手伝ってるから、それが終わるまで教えるよ」

「じゃここ教えて!」

 それぞれの子がボロボロの教科書で教えて欲しいところを指さして言う。

 ここに残っている子供たちは学校に通えず親の仕事を手伝いながら日々を過ごしている。

 勉強をしたくても出来ないから。

 親戚や周辺にいる人たちから教科書を貰い受けたり、共用したり。

 制限された中で必死にやりくりしている。

 少女たちに一時間ほど勉強を教えた頃にルージェとアベルが彼らを含めて丁度11人を集めてくる。

「マール!今日集められる人数集めたぞ!」

 ぞろぞろと列を成して詰め寄る少年たちの前に女の子が立ちはだかる。

 この少女たちの代表であり、もっとも責任感の強いナターシャがいる。

「アンタ達この前マールが来た時だってサッカーしてたじゃない! 今日は私たちが借りたっていいでしょう!」

「先に約束したのはオレ達だぞ。後から言われたってそうはいかねえ」

 貴重な時間も無くすのが惜しいので仲裁に入る。

「ごめんナターシャ。次来た時にはこっちを優先するから今日は許してくれ」

「そう言ってマール一週間以上も帰ってこないんでしょ!」

 覚えがあるせいか反論できない。

「……いや、俺も忙しいんだよ仕方がないんだ」

「嘘つき。前もそういって誤魔化した」

 眼にうっすらと涙をためて、ナターシャは顔を伏せる。

 それを茶番のように見ている男子たちは退屈そうに悪態をつく。

「まーたナターシャ泣かしたよ。これで何度目だマール」

 頭の後ろで両手を組んで生意気そうに言う少年が一人。

「アベル、お前は黙っとけ!」

「そんなことより早くサッカーしようぜ」

「だったらお前ら先に広場いってろ。ナターシャと話してから俺も行くから」

 アベルとルージェ率いる男子たちを行かせて、泣いている女の子を慰める。

 残る女子がナターシャをなだめながら俺を睨んでくる。

 女子の圧力に怯むも足を前に出してナターシャの前で屈む。

「ごめんな。その……次来るときはナターシャ達を優先させるから、許してくれ」

 綺麗に伸びた髪を撫でる。

 昔好きだった女の髪に似ていて手が止まる。

 あいつの髪も癖のないストレートだった。

「許してあげる。だから次来たときはサッカー禁止ね」

 ナターシャの声で意識を戻して微笑みかける。

「了解。そう遠くないうちに来るから、その時は真っ先にナターシャのとこに来るよ」

「じゃあ約束ね。サッカー頑張ってきて」

「おう!」

 立ち上がって腰の位置にある頭に手を置いて広場に向かう。

 道中この地で幼馴染といっても過言ではないやつを見つけたので声をかける。

 俺がここにいた期間で少年から青年へと成長し、身長さえも抜かれた相手だ。

 その青年こそが俺にかつて、ビビってるのかと言い放った張本人だ。

「そこの木偶の坊。ちょっと付き合え」

「えっ、マール!? いや、痛い!! 待って!」

 

 無理やり連れてきて、とうの幼馴染さんは大変とご立腹だった。

 腕を組みだるそうにホイッスルと黄色と赤のカードをムネポケットにしまい少年達と一緒に走る。

 隙をみては俺をにらみつけ、肝心の休憩時間を奪った怨念だけで殺しそうなほどだ。

 少年達に休憩を告げれば迷いなく俺のところまでやってくる。

「おいマール。帰ってきたと思ったら雑用かよ」

「悪いな。聞きたいこともあったし」

「……狂信者の件か?」

「話が早くて助かる」

 先ほどまで審判をしていた青年は予め聞かれることを分かっていたかのように懐からある紙を取り出した。

 なにやらそれには文字が書かれており、その単語を読み取ることで俺は確信した。

「お前も一時的な記憶の欠落があるのか?」

「だろうな。他の奴らにも聞いたが似たような反応ばかりだ。俺はマールに対処の方法を教えてもらって実践したからよかったが他は違うだろ」

「ってことはここにいる人は全員暗示をかけられたか……最悪だな」

「大丈夫なのか? 俺たちの知らぬ間に敵の銃が眉間に向けられてるってことだぞ」

 俺はした唇をかんで考える。

 敵――魔術協会の狙いは俺だ。

 魔術の秘匿などお構いなしにしてきた結果がこれか。

「子供たちは、人質扱いだろうな」

「裏切り者は誰だ。初めに狂信者と口にした奴が犯人としか思えない。俺たちは誰一人その狂信者と話した記憶なんて残ってないんだからな」

 青年はすでに裏切り者について当たりをつけているようだった。

 俺も、青年に見せてもらった紙に書かれた単語で当たりをつけられた。

 念のためとして、その狂信者が口を漏らした奴にあえて記憶を消されていなかったとも考えられる。

「全員俺が聞き取りをする」

 腰を上げて子供たちを集合させ各々を家に帰す。

 返し終わった後、ふと幼馴染の青年の腕に目が止まった。

「お前、刺青彫ったのか」

「ああ、仲間内でな。なんか気になるのか?」

「……俺の国ではあまり良いものではなかったらな」

 俺の発言に矛盾を見つけたように青年は笑う。

「全身に文字を刻み込んでるアンタが言うなよ」

 ごもっともだ。

 青年と別れ、俺は駐在地で一人ひとり聴きこみをした。

 だが、誰一人として最初に狂信者と口にしたものはいなかった。

 誰かから聞いたと。

 顔は覚えてない。

 いつごろから狂信者という言葉を聞いたのかについて時期は揃って同じ日だった。

 暗示をかけて再度確認しても返事に変化はなかった。

 これで歯に挟まった異物感は取り除けた。

 記憶を消された、または暗示をかけられた人たち全員が。

 誰一人として"銃弾の効かない悪魔"が狙われたなんて言われてもいないし、覚えてもいなかった。

 ただ一人を除いて。

「そうか…………奴か」

 限られたヒントと状況の不自然さから大凡検討はついた。

 被害者は子供一人。

 子供がさらわれた日に見回りの兵や、近辺の住人に被害はない。

 皆揃いも揃って一時的な記憶の欠落。

 被害は最小限に、魂を売る相手は間違えない。

 紹介状を書くまで二日――。

 奴がやりそうな手だ。

 ひとつ引っかかる点といえば、生贄が子供だったということだ。 

 

 逃げる準備を整えるために逃走ルートを確認する。

 日が暮れる前には準備を終えたい。

 各所に隠しておいた武器を身につける。

 両足にサバイバルナイフ。

 両脇にリボルバー。

 リボルバーは火薬さえアレば弾が粗悪品でも充分に作動する。

 火薬の造り方は以前習った。粗悪品よりも質が落ちる弾を投影で補強すれば事足りる。

 右手には片手で撃てる反動の小さいサブマシンガンを。

 右胸に閃光手榴弾二つ。左胸に手榴弾二つ。

 マガジンを3つ左腰に。

 逃走経路については大きな道が4つ。

 そこから延びる経路のうち、利用するルートにクレイモアを設置。

 リモコン操作で爆殺する。

 出来る限りの準備は終えた。

 ちょうど日暮れだ。

 張り裂けそうな心臓の鼓動が聞こえる。

 俺は覚悟を決めてあの白人の元へ向かった。

 まだ深夜というわけでもないのに、気持ち悪いほどの静けさがある。

 見張りの兵と住人が誰一人としていない。

 ――ああ、誘われている。

 奴の手のひらで踊らされている。

 見知った道を行き、つい先日寝泊まりした部屋についた。

 奴を書斎でくつろぐ社長と見間違えるほど緩んだ顔をしていた。

「よう、はやかったな」

 呼びかけは軽く、俺の警戒心を跳ね上げるには十分。

 全身に魔力を走らせる。

「開き直りか?」

「違いない。怪しまれた時点でもう隠す必要はない」

「おいおい、いつもと違って素直なんだな。もう少し捻りがあってもいいんじゃないか」

「お前こそ時間稼ぎなんてしてていいのか。逃げる準備は整えてきたほうが懸命だ」

「とっくに終わったさ。それより聞きたいことがある」

 白人は変わらず指揮を執るリーダーのように俺の問いに答える気だ。

 なら遠慮無く聞こうと決めた。

「どうして子供売った」

「二人の兄弟にさらわれた子供の件か。お前があえて尋ねる話題でもない気もするが答えよう」

 白人の顔は戦場にいる時の迷いのない顔に変貌する。

 この威圧感に慣れた俺でさえ歯に力を入れなければ顎が震えそうだ。

「一番被害が少なく、周りの同情を買えて母子ともに楽になれるからだ」

「お前は子供を守りたかったんじゃないのか!」

 俺の発言に白人は笑いを堪えるようにして目尻を下げた。

「まだまだ甘っちょろいな、何もわかってねえ。元からさらわれた子供は長くなかった。その母親は精神的に不安定で死を受け入れられるわけもない。誰かが死ななくちゃならないのなら、未来のある子どもよりもいっそ長くない子供を捧げるべきだ。あの子供は死にたがっていた。オレにはその子供が罹った病を経験したことがないから、間違っても痛みを理解してやれることは出来ない。だが、ガキに自ら死にたいと言わせるほどだ。それ相応の苦しみだろう。楽にしてやった方がいい。母親は一時的には深く落ち込むが、復讐という形で終わらせれば鬱憤も少しは晴れるだろう。矛先が医者に向かわないだけマシだ」

 俺もそれは知っている。

 あの母親は見るも無残な子供を助けたくて仕方がなかった。

 毎日、苦しいよ、痛いよ、ママ、死なせて。なんて言われてみろ。

 母親はなんとかして救おうと医者に駆け込み、何度も治療をしてくださいと懇願していた。

 この地の医者は対処できない病状だと言って、母親を追い返した。

 それでも何度も何度も母親は繰り返したそうだ。

 挙句の果てに他の患者に外傷を追わせてしまい錯乱していると判定される。

 経緯は知っている。

 だけど、だからと言って白人の言葉を正しい判断だとは言いたくない。

 言いたくないが、何よりも俺が白人の選択をより合理的に的確だと思っていた。

「……………くそっ」

 本当にコイツは末恐ろしい。

 目の前の男に成りきれれば俺はもっと強くなれるだろうか。

 ただ、その強さは俺の欲しているものとはかけはなれている。

 手に入れたとしても彼女は帰ってこない。

「俺が先日殺した兄弟を差し向けたのもてめえか」

「厳密には違うが、手引をしたのはオレだ。結局差し向けたって意味なら当人になるだろうな」

「魔術協会の一人と手を組んだんだろう。狙いは何だ」

「――"銃弾の効かない悪魔"。名を神崎護の身柄を寄越せと」

「見返りは」

「金銭の類だ。少しはこの場所の足しになる」

「そうかい。アンタらしいな。清々しいほどに」

 大きなため息を吐いた。

 もうここにはいられない。

 俺が追われているのなら逃げなければ。

 どこか遠い地に。魔術協会が追ってこないような場所に。

「ただ、残念なことは」

 話を切り替えるように目の前の白人は切り出した。

 曲がりなりにも親しくなった友人に別れを告げる様子だ。

 俺はなんとなく察してしまった。

 背中にへばりつく悪寒が知らせてくれている。

 この予感は未来視など使わずとも未来が視えた。

「一応、言っておこう。今までお前には助けてもらったよ。さよならだ」

 これから死にゆく俺の姿を惜しむその顔を見て。

 奴の行動に思考を向ける前に両眼の魔眼を拓いた。

 右から振り向いて背後に迫っていたその影が消える。

 気がついた時には左腕が根本から斬り飛ばされた。

 視えたものはそんな未来だ。

 数秒後の俺の結末。

 未来に抗うため、俺は未来視に映る自分と同じように右から振り向きながら左手に盾を投影する。

 敵の剣戟を受け止め、勢い良く回転しながらしゃがみ込み影の脚を狩るように狙うも避けられた。

 影の本体を視認しようとして飛来する長物が頭蓋に向かってくる。

 左手の盾で防ごうするが、視界が覆われるデメリットを考慮して頭を後にそらす。

 額をかすめた物体を追うように体重を浮かせ、右手で地面について側転。

 浮遊している間に左手の盾を地面に突き立て、部屋全体に広がる大きさに変化させる。

 右胸にある閃光手榴弾を盾の奥に投げ込み全速力で逃げた。

 いまだに敵の姿がつかめない。

 未来視で視た左腕の切断から、敵は剣を使う。

 それも投擲できる物。未来視にて腕を切りつけた物と飛来して来た剣が同一かどうかは判断しかねるが、敵は剣らしきものを二本以上持っていることになる。

 敵はまだ武器を隠し持っていることは確かだ。

 先程の数手の判断から敵は俺より強いかもしれない。

 銃や魔眼に頼る俺と違って、純粋な強さがあると感じた。

 正面からやりあえば勝ち目は薄い。

 もとより俺の戦い方は、格下であるのなら魔眼の使用で一手一手追い詰めていき逆転の目を潰す戦法だ。

 可能であれば、気づかれずに、不意に仕留めるを理想としたものだ。

 しかし、格上との戦いならば魔眼の効果は減少する。

 この世界には未来視で未来を見ようともそれを覆すバケモノが存在する。

 俺はそういった手合とは片手で数えられるほどの経験しか持ち合わせていない。

 それも全て逃走という形で終わったものだ。

 とてもじゃないが勝ちを拾えるわけもない。

 願わくば、影がバケモノでないことを祈るのみ。

 先に建物から抜け出し、出入り口の暗闇に向けて銃口を向ける。

 僅かに動いた影を認識した瞬間に引き鉄を引く。

 敵に被弾した感触は無く、気味の悪い悪寒がする。

 それは正しく闇に溶け込んで矢が飛来する。

展開(シールド)

 左手に再度盾を投影して矢を弾く。

 左胸の手榴弾のピンを引き抜いて入り口に投げ込む。

制度強化(シールド・オン)

 銃を強化して制度を上げる。放物線を描く手榴弾が入り口に到達する寸前に撃ち込んだ。

 爆裂した瞬間に駆け出し距離をとる。

 出入口全てを見渡せる場所で伏せ、視力を強化する。

 二分ほど待機するも目視では確認できず、地面に転がる小石に文字を刻む。

「征け――――ペルカナ」

 意志を持った石はなんの迷いもなく垂直に飛び上がった。

 今までの経験から、石が真上に飛び上がったことはなかった。

 大抵の場合地面を滑走して対象を追う。

 今回もそうだろうと高をくくっていた。

 結局のところ、相手を侮っていたのだ。

 空からはこないだろうなんて予想を、敵は簡単に覆した。

「――――っ!!」

 石につられて視線を上げれば、上空から真っ逆さまに剣を手に落下してくる影。

 前転して転がりながら威嚇射撃。

 影は懐からさらに剣を出し、散りばめた銃弾を剣で弾く。

 その業に恐れ戦きながらも体制を立て直し左手の盾を鋭利に変形させて投げつける。

 胴体めがけて回転する盾を影は避けるが、変形した盾の刃が身につけていた服をかすめ取った。

「…………貴様」

 やっと分かった。

 顔を隠していたフードは(はだ)け、両手に持つ剣と首から下げている十字架。

 歴戦の戦士を思わせる風格と油断のない構え。

 惚れ惚れするくらいに様になる姿が見て取れた。

 それも当然のことかもしれない。

 影であった敵は、俺が出会いたくもなかった存在であり、出会うとは思ってもいなかった相手でもある。

 自分が狙われているのは魔術協会からであって。

 決して聖堂教会(・・・・)だとは思いもしていなかったからだ。

 俺が矢だと認識していたモノは投擲できる剣であり知識の中にもあった武器でもある。

 その剣で銃弾を弾く様は記憶の奥底に封じられていた光景を呼び覚ます。

 ――魔術師殺しと、ある男の闘いを。

「魔術協会ではなく、聖堂教会からのお出ましか」

「"銃弾の効かない悪魔"。その名を神崎護、貴様の命、貰い受けに来た」

 ――代行者。 

 俺が銃口を向ける相手の正体。

 無意識に喉を鳴らした。

 銃を持つ右手が、こころなしか揺れていた。

 

 

 

 

 

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