まだ完結させてない奴いっぱいあるのに完全な見切り発車です。
なので、通過待ちや遅延を駆使してのんびりと進めて行こうと思います。
他の二作の更新が優先なのでかなり不定期な更新です。
……ごめんなさい石投げないで!!
プロローグ
―――とある孤島の地下
ディスプレイの無機質な光、縦横無尽に駆け巡るケーブル、ハードディスクの回転するカリカリという音
地図上には「無人島」として登録されているこの島の地下空間は、そんな言葉などお呼びもつかないほどに機械化されていた。
その機械城の中心にたたずむ少女、篠ノ野束
宇宙開発用のマルチフォームスーツIS(インフィニット・ストラトス)を開発し、それの優秀さから、世界の軍事バランスを崩壊させ、世界各国から絶賛逃走中の彼女は、たった数キロバイトのメールにより今、大いに困っていた。
2???/??/?? ??:??
From:Ⅹ
To:シノノノ タバネ
Title:力を貸して
Message:傷ついた友人を助けてください。
ボクは訳あって姿を見せることは出来ないけど、数日後に彼があなたの元にやってくる。
あなただけが頼りです。
なにとぞよろしくおねがいします。
-END-
「うーん、なんで束さんのところにメールが届くのかなぁ?」
彼女の疑問は至極もっともなものだった。
それは、そのメールがどこの基地局も経由していないことでも、
アドレスが宛名と同じⅩ(エックス)しかないことでも、
天才と名高い彼女のPCアドレスを探り当て世界最高峰のセキュリティを破ったことでもない。
仮に三つ目だったなら、彼女も少し感心したのち、迅速に流出データの確認、セキュリティの見直し、情報を盗んだ相手への粛清の作業に入っていただろう。
だが、それはありえなかった。
なぜなら、彼女のPCは外界と隔絶されたスタンドアローンだからだ。
先ほど例に挙げたハッキングによる情報漏えいをピッキングによる空き巣に例えると、このメールの送り主はドアも郵便受けもない家の中に手紙を届けたようなものだ。
機密も何もあったものではない。
今や世界各国で最強のセキュリティと信じられているスタンドアローンのPCにアクセスできるということは、自分を含めありとあらゆる国の機密を閲覧出来るということ。
もう一度言おう、機密も何もあったものではない。
彼女は悩んだ。
「(Ⅹとかいうメールの送り主は友人を助けて欲しい。と言っている。
でもⅩは暗に、この要求を呑まない場合、私のPCの中の機密情報を外部に流出させる。と脅しをかけてきているって考えるのが自然だ。
でも、この地球上に私と対抗できる人材はいなかったはず、いたら、各国が黙ってない…
…ともかく、Ⅹの正体も、独立PCにアクセスできる謎の技術も「彼」っていう人が来てからじゃないとどうしようもできない…さらに「彼」がどうやって来るのかも曖昧だ)」
うっとうしそうに頭を掻く。
いつも、世界を相手にいつも先手を取ってきた彼女にとって、後手に回るしかないことはとてももどかしいことであった。
二日後
「―――ッ!!!」
束は孤島内の居住ブロックで起床してすぐ、声にならない叫びを上げ、ベッドから転げ落ちた。
寝相の悪い彼女のためのダブルサイズのベッド、その左半分に彼女以外の人間がいたからである。
孤島のセキュリティは完璧だった。うかつに島に上陸しようものなら一瞬で対IS用の重火器で蜂の巣になり、仮にそれらが破られたとしても束を(にんじんシャトルで)避難させてから自爆する。という機構が彼女の就寝中も作動するようになっている。
つまり、ここには束以外の人の存在はありえない。
幸い侵入者は気絶していたようなので、彼女は一目散に逃げ出した。
道中、複数犯の可能性を警戒した束は孤島全体の生命反応も確認したが、なぜか自分以外の生命反応は確認されなかった。
空恐ろしいものを感じながら開発ブロックから手近な武器を手に取り、侵入者のいる自室に戻った。
・
・
・
束は自室の扉の前で自分の手元を見、泣きそうになった。
「……なんでとっさに持って来れた武器がドリルだけだったんだろ…しかも天元突破しそうな感じのドリル……束さん一生の不覚かも」
―仕方なかったんだもん!だって、銃系は全部ロボットアームに備え付けだったし、真剣なんて持ってないし扱えないもん、ちーちゃんじゃあるまいし。
と勝手に納得し、女は度胸!!と両手で頬を叩いて気合を入れた。
そして音を立てないように自室のドアを開け、ドリルを構えながらゆっくりと侵入者ににじりより、その顔を見た。
前衛的なデザインのヘルメットからこぼれる金の長髪、戦士のように精悍だが中性的な顔があった。
次に体を見る。
侵入者は紅いISのような装甲と体をおおうスニーキングスーツらしき全身タイツを纏っていたが、それはところどころ焦げ、傷つき、剥がれ、ボロボロだった。
その女性(・・)が持つそれらは、破損も含め一つの芸術品のような美しさを放ち、束を魅了した。
…が、詳しく見ると、その評価は間違っていることに気付く。
なぜなら、傷のある箇所から流れ出してベッドを汚しているものは赤い血液などではなく、誰でも知っている機械油のような臭気を放っているし、傷からは火花が飛び散りベッドに焦げ目を作っていた。
手足の傷だけなら、義手の可能性があったが、内臓まで達しているであろう腹部の大きな裂傷の中から、機械のようなニビ色が覗いているのを確認し、束は確信した。
―芸術品(ロボット)みたい、じゃなくて、芸術品(ロボット)そのものなんだ。
束は瞬間的に、この芸術品(ロボット)を作り出した技術者の才能に嫉妬した。
と同時に、「彼女がⅩの言っていた「彼」なのではないか?」という疑問が湧き上がる。
―ピリリリリリ…
無機質なメールの着信音、ちーちゃんでも、いっくんでも、ほうきちゃんでもない初期設定のそれを鳴らすことができるのは、件(くだん)のⅩしかいない。
おそるおそるポケットから端末を出し、メールの確認をする。
案の定Ⅹからで、本文はなく二つのテキストファイルが添付されているだけだった。
念入りにウイルスチェックをして開く。
一つ目は目の前の彼女の設計図だった。
ISを作る過程で、機械技術関連は一通り学んだ束だったが、現代のロボットテクノロジーなど児戯にも等しいと思えてしまうほど高度な理論や設計、プログラム構築に舌を巻かざるを得なかった。
―――人間のように考え、行動するロボット
日夜、各国の研究者達が取り組んでいる命題の答えがここにあった。
そして、これらの情報を惜しげもなく提供するⅩという存在に恐怖した。
製作者はアルバート・W・ワイリー
形式番号はDR.W.NO∞
ドクターワイリーラストナンバーと読むらしい。
戦闘行為を目的にしたレプリロイドとして作られた。
レプリロイド、という単語の意味は束はわからなかったが、おおよそ人の形をしたロボットの総称であると推測。
「…って男(男性体)だったの!?
でもやっぱり、間違いなくⅩの言ってた「彼」で間違いなさそう…修理しろってことでいいのかな?」
それにしても、Ⅹ(未知数)に、形式番号∞(infinity)とは…
『未知』の宇宙を探索するための『インフィニット』・ストラトス製作者の束となにか掛けているのかと束は驚いた。
二件めのファイルを開く。
そこには同じく目の前の「彼」のものだったが、先ほどと比べ、どこか安上がりな感が否めない作りになっていた。
「廉価版…?」
読み進めていくと、この廉価版ボディはバイルという研究者が「彼」のオリジナルボディを他の事に利用するために作った、人格プログラムの受け皿のようなもので、今の「彼」のボディはこちらのものだということがわかった。
「今の破損を修復しつつ、元のボディに近づけろ、って言われてる気がする…いいよ…やってやる!!
この天才束さんの実力、甘く見てもらっちゃあ困るよ!!」
束は作業を開始した。
二話連続投稿します。
たぶん