ちょっと長めです(三千四百ちょっと)
ほんとはシエル達の世界の話も書いたのですが、まだネタ晴らしには早いかな、と思ってまだあげてません。どのタイミングであげればいいか決めかねている今日この頃。
追記
サブタイ付け忘れてたのでつけました。
本編
ラウラ、クラリッサ、双子が気絶している間に、模擬戦は滞り無く進み、彼女達は演習場の隅っこで目覚めた。
辺りを見回した四人は、他の隊員たちが例外なくのされ、何かやり遂げたような達成感に満ちた表情で、この演習場の隅っこに打ち捨てられて死屍累々の惨状を形成しているのを目の当たりにした。
演習場中央部では、ゼロが千冬から「やりすぎだ。馬鹿者」と説教を喰らっている。
「……」
ふと、四人とも目が合い、ラウラがぷいとそっぽを向く。
「……あのさぁ。私言ったよね。徹甲弾は当たらないって」
「真っ先に落とされたヤツが何を言っているんだ。寝言は寝て言え」
「ぐぬぬ」
ラウラに言い負けたクラリッサがorzの体制になる。
「……二人とも」
「喧嘩やめ……」
双子が仲裁に入り、誤射をしてしまったらしいラウラはばつが悪そう下を向く。
「ねぇ、いまどんな気持ち? 誤射しないとか豪語してたのに誤射しちゃって、ねぇ今どんな気持ち?」
ぐぬぬから立ち直った『敗北を糧に強くなる女(笑)』がお返しとばかりに煽り立て、今度はラウラが渋面を作る。
――スパァン!!
「ぐほぁ!!!」
「煽ってどうする。喧嘩でもするつもりか? 馬鹿者」
説教を終えた千冬が、いつの間にかやってきてクラリッサの脳天に出席簿のような固いあれを振り下ろした。
「織斑教官!!」
ラウラの表情が劇的に変化して、ピシリと敬礼をするが、堅苦しい挨拶はいらん、と千冬が手で制す。
「ラウラ、さっき誤射がどうとか言っていたようだが、ゼロがなにをしたのか見ていなかったのか?」
教官の質問に、首をかしげるクラリッサとラウラ、双子はなぜか訳知り顔だ。
「あれは誤射ではない。ゼロに意図的に誤射にさせられたんだ。双子はそれを警戒していた。ラウラへの指示は、そのためだ」
「……捕まって」
「盾にされた……」
――あなたの腕前では、絶対誤射になる
ラウラは唐突に理解した。
双子は誤射を『する』のではなく誤射に『なる』と言ったのだ。
「カノンの狙いは正確だった。だが正確ゆえに、読まれてしまった」
千冬は詳しく何が起こっていたのかを説明し始めた。
「ゼロは一発目を切り払って地面に着弾。砂煙を巻き上げ視界をさえぎり、チェーンロッドとホールドアーツで双子を同時に拘束、カノンの射線上に放り投げた、と口で言うのは簡単だが……」
こんなことを一瞬で行える人物は人間ではない。
状況判断から行動までが早すぎるのだ。
しかも、機械のような正確さというおまけつき。
このことを安易にこいつらに言って良いものかと千冬はためらって言いよどむ。
そこに、クラリッサが手を上げて質問する。
「では、織斑教官がゼロ教官の立場ならばどう切り抜けますか?」
「私か? 私なら…………かわすか全弾斬り伏せるかどちらかだな」
「どっちも人外じゃないですかーやだー」
――スパァン!!
「みぎゃぁぁああぁーーーーーーー!!」
「何か言ったか? 馬鹿者」
クラリッサの何気ない突っ込みに千冬の出席簿らしき書類束が火を噴き、クラリッサのたんこぶが二段になったところで、今日の訓練はお開きとなった。
・・・伏線編・・・
~日常と黒ウサギとレプリロイド~
ある日の訓練終了後、半ば隊のムードメーカーと化しているクラリッサが隊員たちを集めた。
「ねぇ、皆どう思う?」
ゼロがここに来てから早数ヶ月が過ぎ、黒ウサギ隊の隊員達の間ではある噂が広まっていた。
曰く
・ゼロ教官は霞を食べて生きている。
・ゼロ教官はトイレに行かない。
・汗とかかいたところ見た事ないし、いつ触ってもひんやりしててきもちいい
といった類のものである。
ツッコミ役の織斑(弟)が聞いたのなら「どこの仙人と昭和アイドルだよ! 上二つ!」などと間髪いれずにツッコむであろう胡散臭さを持っていた。
「でたらめでしょ? ゼロ教官だって人間なのだからトイレぐらい……」
「チッチッチ。甘い、甘いよエトヴァス少尉! この類の行き過ぎた根も葉もない噂は織斑教官のときには一切発生しなかった。だがゼロ教官の時には発生した……後は分かるな?」
キリリと格好をつけて皆を見回し、反応に困った隊員たちを代弁して双子が口を開く。
「……なるほど」
「分からん……」
「ええい、察しの悪い双子めぃ!! ならばこのクラリッサ様が直々に……」
「つまり、『火の無いところに煙は立たない』?」
「さすがだよエトヴァス少尉……出来れば私の見せ場を取らないで欲しかったが」
クラリッサが喜び勇んで説明するより、一足速くエトヴァス少尉が正解してしまったため、話はスムーズに進んだ。
「……要するに」
「ストーキング……」
「こら、そこの双子!! ひらったく言うんじゃない! これは……訓練、そう! 自主訓練の一環だ。ゼロ教官に気付かれずにどれだけ行動を監視できるのか、というなっ!!!」
クラリッサの言い訳は破れかぶれな理論もはなはだしくはあるが、ゼロ教官なら仮にばれたところで「……そうか」程度で済みそうだな、と隊員の全員が思っていた。
そして、作戦は実行される。
その日は、軍施設のすべてのトイレ入り口に小型カメラが取り付けられ、トイレに入るものをモニターに出していた。
肝心のゼロ教官には常にメンバー一人が尾行して近況を報告、不審な行動を取ったのなら逐一報告が出来るようになっている。
『双子、首尾は?』
「……ばっちし」
『もーまんたい……』
双子は外見の類似性を利用し、一人はモニターの監視、もう一人がアリバイ工作という大役だった。
『本当に決行するんですか? もし織斑教官にでもばれた日には……(ガクブル)』
『な、なんてことをいうんだエトヴァス少尉……その発想はなかった! 無かったことにしないと我々の精神が持たない(震え声)』
『あ、ラウラ気絶した』
『捨て置け、この程度(!?)のリスクに耐えられんようではこの先ついてはいけまい(失禁一歩手前)』
『了解なり~』
・・・
・・・
・・・
夜になっても、ゼロ教官は本当にトイレにも仕官食堂にも行かなかった。
ということは、朝から今まで、食事も排泄もしていないことになる。
その日一日、たまたま体の調子が悪かった、またはラマダーンだったということは断じて無かった。(ラマダーンとは、イスラムの断食文化のことである)
数日にわたって監視したわけではないので、結局噂の真偽は分からないが、少なくとも、人の見ているところでは、食事も排泄もしないらしい。
と、クラリッサは報告書風にまとめた反省文に綴った。
「……何故ばれたし。しかも織斑教官(鬼)に」
――スパァン!!
「何か言ったか?」
「キリキリ書きます。といいました」
「そうか」
大部屋に集められた隊員たちは、なれない正座で反省文を書かされていた。
早く書き上げなければならないのに、足の痺れが集中力を猛烈に削いでいく、書き上げなければ、正座を解くことも許されないので、さらに足が痺れるという悪循環に陥っていた。
作戦はうまく行っていたのだ。
だが夜になって、なぜかモニタールーム(双子の部屋)が織斑教官(鬼)によって強襲された。
双子妹(エルザ)は果敢に闘った。だが相手が悪すぎた。
一瞬で昏倒させられ、モニタールームを占拠されたらあとは流れだ。
嘘の指示を教官(鬼)が出し、集合したところを一網打尽。
ねっ。簡単でしょ?
――訓練は順調か? 大馬鹿者共
誘い込まれた大部屋で凄みのある声でこういわれたときに、一体何人が失禁しかけただろうか。
私? これは汗だよ(震え声)
織斑教官が離れたことで、隣のエトヴァス少尉の恨みの声が聞こえてきた。
「何でラウラだけ処罰されないの……ッ!!」
これは他の隊員も少なからず思っていた。
早々に気絶してしまったラウラは、そもそも関与を疑われていない。
このことで、後にラウラは他の隊員と一時的に疎遠になるのだが、今は語るべきではないだろう。今は、反省文を書くことが先決だ。
――数時間後、足の痺れのせいで、生まれたての子鹿のような足取りで隊舎へと戻る隊員たちが確認された。
ちなみに、ゼロは最後までこのことを知らなかった。
・
この報告書風の反省文を読んだ千冬は驚いた。
ゼロは外で食事をしない。
反省文には『部屋でそれらのことをしているのだろう。難儀な性分だなぁゼロ教官は』と推測されていた。が
「ゼロは一体どこで食事をしているんだ……?」
ゼロと相部屋の千冬が見た限りでは、部屋の中で食事やトイレに行ったことなどなかった。
千冬の疑問は深まったが、彼女は社会人故、一日使って尾行、などという選択肢は取れず、数日のうちに、疑問自体を忘れてしまった。
伏線編は、千冬さんにとっての伏線です。あしからず
>本編
訓練はお開きになりましたが、まだこの日はイベントが続きます。
あと、試験が近いので、じわは結構後(最長一ヶ月)になると思います。石投げないで!!
次回:ラウラ「私一人なら勝ってた」
では、じわまで気長にお待ちください。