∞→0・ストラトス   作:なむさんばがらす

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プロローグⅡ

 

大気圏突入による高熱が、巨大人工衛星のラグナロクを覆いつつある。

 

その中で、高笑う異常者と無言でたたずむ紅い戦士。

 

「貴様に出来るのかね!?

 

…レプリロイド達のエイユウである貴様が!

 

…人間(・・)を守るセイギの味方が!

 

地上の人間を守るために……このワシ(人間)を……倒すということが!!」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

ロボット三原則というものがある。

その第一に「いかなる場合においてもロボットは人間に危害を加えてはならない」というものがある。

当初、『人間と同じように考え、行動するロボット』として作られたレプリロイドたちにとって、その第一こそが、守るべき絶対遵守の法であり、それを犯すものはイレギュラーと呼ばれ、同胞であったはずのレプリロイドの手で狩られてしまう。

(もっとも、今ではイレギュラーの定義も歪んでしまっているが)

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

かつて、イレギュラー狩りにおいて、伝説の英雄とまで呼ばれた彼の今の行動は、その禁忌を犯す行為に他ならない。

 

 

 

だが、エイユウと揶揄された紅い戦士は微塵の迷いもなく告げる。

 

「オレは、セイギの味方でもなければ、自分をエイユウと名乗った覚えもない…」

 

…オレはただ、自分が信じる者のために戦ってきた」

 

―――オレは…悩まない

 

「目の前に敵が現れたなら」

 

たとえ、エックスが守ろうとした「人間」だったとしても

 

「叩ききる…までだ」

 

通信機から漏れる、自身の帰還を切望する少女の悲鳴のような声とはうらはらに―――

 

『ゼローーーーーーーーー!!!』

 

戦士は光る剣を構え、敵と定めたモノ(バイル)に切りかかった。

 

 

バイルを下し、崩壊するラグナロクで、ゼロと呼ばれた紅い戦士は倒れていた。

 

大気圏突入による空気摩擦で生じる熱が、彼の駆動系に重大なダメージを与えたようだ。

 

自らの死を確信しながらも、彼の表情には一片の後悔もない。

 

むしろ穏やかにも見える表情を浮かべていた。

 

…さらば、俺の信じた者

 

…さらば、俺の信じた物

 

…すまない。シエル

 

…やはり、ヘイワな世界に俺のような存在は不要のようだ。

 

 

……………………………………………………………………………………………………………

…ここで、彼の意識は途絶えた。

 

故に彼は気付かない。彼の元へサイバー空間への扉が開き、その体ごと吸い込まれていったのを・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――サイキドウヲカクニンシマシタ

 

脳内に響いたシステム音声を皮切りに、彼は思考を再会する。

どういうことだ、オレはあの時間違いなく死んだはずだが…、と目を開け、視覚からの情報収集を始める。

 

そこらじゅうにディスプレイ、コンピュータと思しき箱型の機械、それらを繋ぐコードが彼の目に付いた。

 

「…どこかの研究所のようだが…?いかんせん設備が旧型過ぎるな」

 

「起きたと思ったらいきなり束さんのラボを旧型扱いにするなんて……一体君は何者なんだろうね?」

 

「!?」

 

引き戸になっている自動ドアから長髪の女性が入ってくる。

 

ゼロは整備用らしい無機質な診察台の上で体を起こし、臨戦態勢を取る。

 

「ああ、待って待って!!束さんは君に危害を加えるつもりはないよ!もしそうだったら君のこと直したりなんてしないし」

 

両手をぶんぶん振って、敵意のないことをアピールする束。ゼロは警戒を続けながら問う。

 

「…直した?」

 

「そう!!君、生身で大気圏突入したでしょ!!いくら自分が機械で直しが利くからって…

駆動系、制御系ありとあらゆる部分の回路が焼きついちゃってほとんど一から作り直した、って言ってもいいようなもんなんだからね!!?……ほんと、Ⅹ君からの技術供与がなかったら詰んでたよまったく…」

 

「…Ⅹと会ったのか!?」

 

直す方のことも考えてよ…と束は若干呆れ気味に続けようとして、ゼロにまた別の質問を言われる。

 

ゼロにしてみれば、エックスはゼロがオメガを倒した直後、永い眠りに就いた。という認識であり、誰かと意思疎通できる状況にはないと考えていたため、エックスと何かしらの情報をやり取りしたというこの女性を疑問に思うのは当然のことであった。

 

「君がボロボロでここに来てからメールのやり取りを何回かしただけで、会ってはいないよ…それより、こっちの質問にもいい加減答えてくれるとうれしいな」

 

「…オレは、ゼロだ」

 

「ゼロ、か…言いえて妙だね」

 

「…?」

 

いぶかしげな顔をするゼロに、束は続ける。

 

「私にとって、君(レプリロイド)は、私の開発したISの『無限大』の可能性を文字通り『零』にするものだからね……

…兵器分野にしても、宇宙開発分野にしても、量産の効くレプリロイドのほうが向いてるし、各国の軍部にも受けがよさそうだから」

 

人間と同じように考え、行動するロボットが存在する。ということは人的な被害を全く考慮せずに、戦争や、宇宙開発をおこなうことが出来ることと同義であるといっても過言ではない。

人々は軍役から解放され、一滴も血を流さない戦争が始まる。

 

だが、伊達に『天災』と呼ばれているわけではない束はこうも考える。

 

―人間と同じように考え、行動するロボットは、ただの人間と一体何が違うのか?、と

 

いや、違わない。

唯一違うことといえば、体の構成物質が無機物か有機物か、ということだけだ。

 

しかし、各国の重鎮はそうは考えず、ただ「高性能な機械」としてしか考えないだろう。

―機械風情に人権など、バカげている。と言わんばかりに

 

 

…そんな束の思考をよそに、ゼロは問う。

 

「…待ってくれ、レプリロイドがいないのか?」

 

「私の知っている限り、君以外は見たことがないよ」

 

「…なら、ラグナロクは、エリアゼロはどうなった!?」

 

突然ゼロが語気を強める。が束には彼が何のことを言っているのかわからない。

 

「そんな地名や計画の名前は世界のどこにもなかったよ?」

 

「…一体ここは…」

 

どこなんだ?というゼロの嘆きは、突然に鳴り響いた電子音にかき消された。

 

―――ピリリリリリ

 

『そこから先はボクが話そう』

 

相手は、二人の共通の知人となったエックスからであった。




いろいろ捏造、というか勝手に解釈している部分もあると思います。何かおかしなところがあればお伝えください。
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