作者:「彼女はそういって、その華奢な手足ではおおよそ持てそうもないような重厚長大な金槌を振り上げ――って待ってごめんなさい話せば分かる何事も!!」
じわ子:「……どうせ全部『忙しかった』とかで済ませる気なんだろ?ソーナンダロ?」
作者:「そうだよ(便乗)」
じわ子:「その意気やよし、息の根を止めてやろう。意気だけに」
作者:「うわらば!!」
遅筆申し訳ない……じわをどうぞ。
凰 鈴音(ファン リンイン)は苛立っていた。
久しぶりに帰ってきた日本だったが、彼女は『中国代表候補生』という肩書き上政府要人という括りになっており、安全面の不安からロクに外出も出来ないままにIS学園に直行し、なおかつ迷宮もかくやという校舎の複雑さに辟易していたからである。
が、ついさっき起こった出来事に比べれば……
……思いを寄せる幼馴染が、自分の知らない女二人と楽しそうに目の前を通り過ぎていったことに比べれば、もはや些細なことでしかなかった。
「(一夏のバカ一夏のバカ一夏のバカ一夏のバカ……)」
彼女は自らの心情を表すかのようにずかずかと廊下を歩く、目指すは総合事務受付、もう看板は見つかり道なりに進むだけだ。
――ドンッ!!
突然わき道から飛び出してきた人にぶつかり、鈴は尻餅をついた。
「ちょっと! どこ見て歩いてんのよ!!」
「すまない。前を見ていなかった」
どんな鍛え方をしていたのか、結構な勢いでぶつかったにもかかわらず相手方はけろりとしていた。
腰まで届く金長髪に、精悍で中性的な顔立ち、その眉間にはしわが寄り、この学園の地図と思しき紙切れとにらめっこしていた。
「前を見ていなかった、って……」
「事前に手に入れていた地図が間違っていて、最新のものを参照していた」
「そりゃ迷うわよ」
前を見ずに進んでいるのだから、ある意味当然の結果である。
「……右壁伝いに進んでいけば、少なくとも迷うことはなかったはずだが」
「どこのダンジョンよここ……」
鈴は肩透かしを食らったような気分になり、先ほどの苛立ちはどこかへ消えてしまった
そして、この世間知らずの美人に、「日本の常識」というものを教えんと、続けて言った。
「あのねぇ。この国では、道がわからなかったら人に聞くのが普通なのよ……それに、基本的にこういう建物には『総合受付』みたいに案内してくれるところがあるのよ」
「ふむ、あれがそうか」
総合事務受付、と書かれた一角に目を向けた美人。
鈴はうなずき、二人で目的地に向かって歩き出した。
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程なくして、鈴たちは総合事務受付に到着した。
「じゃあ、あたしは窓口が違うからここで別れるわね」
「……ああ、世話になった」
金髪の美人は事務員に二、三言しゃべった後、どこかへ連れられていってしまった。
「(生徒じゃないみたいだし、変なところで常識知らずだし、一体何者だったのよ……)」
鈴の疑問は、数週間後に解決することになる。
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クラスリーグマッチが謎の無人IS乱入で中止となり、一週間が経過した。
「今日は、皆さんに新しい先生を紹介します」
そんな時。山田先生が朝のSHRで唐突に言い出した。
五月下旬に赴任とは、珍しいこともあるもんだ。まぁ、鈴の転入と似たような感じだが。
クラスの女子達がさまざまな質問を投げかける中、その人は入ってきた。
千冬姉よりも鋭い目つきに『凛』……というか『斬』とした雰囲気を纏う男物のスーツを着た金髪黒目の女性だった。
皆が新しい先生に注目する中、なぜか俺はふと視線を戻し、千冬姉のほうを見た。
千冬姉は目を見開き、「なん……だと……」とでもふきだしが付きそうな顔をして驚いていた。
千冬姉が取り乱すなんて珍しいこともあるもんだ。と思い、張本人である目の前の新任教師に視線を戻した。
「ゼロ・シノノノだ。主にISの戦闘を教える。よろしく頼む」
俺は衝撃に備えて、対ショック体勢(耳をふさぐ)を取った。
――キャァーーーーー!!!!
「イケメンよイケメン!! 男と見紛うばかりのイケメンだわ!!」
「男装の麗人って本当にいるのね!! 織斑先生とは似て非なるタイプよ!!」
「あえて言おう。貧乳であるとッ!!」
ちょっと待て、『イケメン』って男に使われる形容詞じゃなかったか? そもそも活用しないのに形容詞と言っていいのか?
確かに、目測でAA以下のバストに男物のスーツは大変似合っている。
千冬姉とはタイプが違うと言うのもうなずける。
千冬姉が『立てば軍人、座れば侍、歩く姿は装甲戦車』ならば、彼女は銃や剣、滑空砲といった『武器』そのもののような無機質で浮き世離れした印象を覚えた。
千冬姉は、ゼロ先生への黄色い歓声で我に帰ったのか、驚きを潜めて生徒達を怒鳴りつけて黙らせた。
その後、山田先生の説明で、ゼロ先生は教育実習も兼ねた補助講師として、いろいろなクラスの授業を聴講するということがわかった。
そして、SHRは滞りなく進む……………………………ん? シノノノ?
忘れもしない。自身の第一幼馴染と同じ苗字だったことに今さら気付いた。
斜め後ろの方面に座っているであろう箒を盗み見ようとしたら、千冬姉に叩かれた。解せぬ。
ついでに斜め後ろの山田も、なぜか山田先生から注意されていた。
・・
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ゼロが一年の他のクラスにも挨拶に行くために足早に立ち去り、SHRを終えた私は職員室への道すがら山田先生に詰め寄った。
「どういうことですか。山田先生、新しい先生が来るなんて聞いていませんよ?」
「いやだなぁ織斑先生。通達があったじゃないですか今朝と二週間前に」
……そうだった。
だが私が聞いていたのはそんなことではない。
何故『新しい先生』とやらがよりにもよってコイツ(・・・)なのか、ということだった。
そのことを尋ねると、彼女は『良くぞ聞いてくれました』と言わんばかりに大きな胸をさらに張って説明を始めた。
……完結に言おう、全部あのバカ(束)のせいだった。
山田先生の説明からは「束」とは一言も出なかったが、私には手に取るようにわかった。
束は、戦いに関してはプロフェッショナルと言っていいゼロの戦闘力を、IS学園に売り込んだのだ。
ゼロは、未登録ISを持っているために各国に把握されることがない。
故に、いざと言うときのピンチヒッターとしてはうってつけなのであった。
「でも、採用自体が決まったのは、織斑先生が赴任する前のことなんですよ」
「……どういうことです?」
「さぁ? 私が彼女の試験官をやってた関係で、合格通知を送ったのが一年半ほど前、って知ってるだけですからね」
話をしているうちに、千冬と真耶は教員室に到着した。
教員室前には、他クラスへの紹介を終えたゼロが手持ち無沙汰気味に立っていた。
「どうしたんだ。ゼロ」
「……チフユか、実は先ほど、リジチョウシツというところで指示を受けたんだが……」
理事長曰く、ゼロの住居と処遇に関して、先方(束)から指示があったらしく、「織斑千冬と寝食を共にし、教師研修に関しても彼女に一任させる!!」とのことであった。
「あのバカ、また面倒を増やしおって……」
「何か言ったか?」
「いや、こっちの話だ。ゼロが気にすることじゃない」
「お二人は、一体どういったお知り合いなんですか?」
ここで、真耶が満を持してと千冬たちに聞いた。
聞かずにはいられなかった。なぜなら真耶は、千冬が弟のことを話すとき以外でこんなにうれしそうにしているのを見るのは初めてだからだ。
「……ドイツで少し、な」
「あぁ……」
彼女達は詳しく語ろうとはしなかったが、真耶には二人がただの友人以上の関係であることが容易に察することが出来た。
「幸い、今日は私はこれで上がりだ。教員寮で、お前の引越しの準備をしよう」
「……恩に着る」
「山田先生、後は頼みます」
千冬がゼロを伴って、教員寮へ帰ってしまい、教員室前には真耶一人が残される。
真耶は教員室にの自分の机に戻り、『もう一つの考えごと』をしながら、次の授業の準備を着々と進めていた。
もう一つの考え事は、別に重要でもなんでもないことです。
そして次回は、なんとラブコメ要素が!!(予定は未定)
あと、明日から1日まで、おそらく(よほど緊急なものを除いて)見はしますが感想返しは出来ませんのであしからず
次回:レヴィ「パルパルパルパル……」
では、じわまで気長にお待ちください。