∞→0・ストラトス   作:なむさんばがらす

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前回までのあらすじ

・ゼロIS学園に来る。

・千冬びっくり。しかも相部屋だった。

・とりあえず引越し作業を共同でしよう!!



感謝

私と相部屋ということなので、私とゼロは教員寮の私の部屋にもどった。

正直、ゼロの私物に興味があった。人の所有物というのは、多かれ少なかれその人を表しているものだ。

ゼロに『平和を教える』などと大言壮語をのたまった手前、まずはゼロ本人のことについて知る必要があるだろう。

だが――

 

「…………ゼロ。一つ言っていいか」

 

「なんだ。チフユ」

 

「なんで荷物が一つもない(・・・・・)んだ」

 

期待した私が馬鹿みたいじゃないか。

そういえば、前回のドイツのときも身一つで他の私物は一切持っていなかったことを思えば、この結末は用意に導けたはずだ。

私はゼロとの再会に存外に浮かれてしまっていたことを恥じた。いつもの私ならこんな単純なミスはしない。

 

「……すまない。気に障ったのなら謝る」

 

私が自己嫌悪に陥っていた様子を、怒っていると勘違いしたのかゼロが謝罪する。

なんとも愚直な男だ。

『自分、不器用ですから』を地で行くゼロをみて、私は一つ閃いた。

 

「生活必所品……とりあえず服を今から買いに行くぞ」

 

「……この一着で足りているが?」

 

「部屋着にスーツでくつろぐ人間がどこに居る」

 

「……そういうものか」

 

「そういうものだ」

 

ゼロ曰く、元居た世界ではフォーマル、カジュアルといった概念は重要ではなく、どこまでも機能的な服があり、人は同じものを何着も持っているらしい……のだそうだ。

疑問形なのは、彼の周囲にあまり人間がいなかったのと、服のことなど気にしたこともなかった。といった具合だった。

 

 

束から「正体バレとかマジでやめてよねめんどくさいから」と厳命されているゼロは人間に扮するため、千冬に言われるがままに買出しを了承した。

 

・・

 

程なくして、近隣の大型ショッピングモールにたどり着いたゼロと私は、あらかたの呉服店のコーナーを一周すると、迷わず男性洋服の売り場に直行した。

 

「おい、女物はいいのか?」

 

「……余計な装飾は要らない」

 

「そうか」

 

ゼロ曰く、ISを操縦できる男は一人しかいない。よって、ゼロがいくら男物の服を着ようとも、疑われることはないらしかった。

 

そして、ゼロは一番安くて地味な灰色のジャージのような服を手に取った。

 

「これでいいか?」

 

「問題はないが……理由は」

 

「……灰色は、『洗濯したときに色も出ないし、色物に染められにくい』と束が言っていた。一番機能的だ」

 

心なしか、満足げな表情のゼロを見て、私はがっくりとうなだれた。

そして、今頃どこかで見ているであろうあのバカに無性にアイアンクローをしてやりたくなった。

 

「……服は、機能的かどうかも重要だが、ほかにも考慮すべき要素がある。どれ、私が選んでやろう」

 

私は、すぐそこにあった服を手に取り、ゼロに当ててみる。

服を当てがう、という行為に多少いぶかしげな表情をしたゼロを見て、だいぶ、コイツの無表情を読むのも慣れたな、と妙な感慨に少し浸った。

 

「ほらな。同じ型の服でも、やっぱりお前は赤が似合う」

 

「だが、赤は色が出……」

 

「ごちゃごちゃとうるさいな、お前は私の弟か?」

 

「……すまない」

 

私は、しゅん、としてしまったゼロに背を向け、

 

「私がすべて選んでやる。お前は黙って付いて来い」

 

そういって、振り返らずに歩き出した。

 

「…………世話をかける」

 

……まったく、本当に、世話の焼ける奴だ。

だが、ゼロに頼られるというのは、存外悪い気分ではなかった。

 

 

その後、調子に乗ってたくさん選んでしまった私は、ゼロが金を持っていないことに気付き、結局最初に選んだ数着を(私のポケットマネーで)購入するにとどまり、学園に帰る頃には、すっかり夕暮れ時になってしまっていた。

 

「私はこれから食堂に行くが、ゼロはどうする?」

 

「……荷物を置いた後、校舎内を見て回ろうかと思う。地図だけではいささか不安だ」

 

「わかった。また後でな」

 

ゼロは食事を必要としない、動力は一体なんなんだと疑問に思うが、そんな知的好奇心よりも腹の虫の声を優先してしまった。

 

「……チフユ!!」

 

「なんだ」

 

だが、食堂に向かおうとしたところをゼロに呼び止められた。

 

「今日、チフユにはいろいろと世話になった……今日だけじゃない、ドイツでも、オレが到らないばかりに迷惑をかけてしまった…………本当にすまない」

 

「気にするな。お前の境遇を考えれば、世話も焼きたくなる……あと、こういうときは『すまない』ではなく『ありがとう』だ」

 

「……………ありがとう」

 

「……それで良い」

 

私は振り返らずに歩き出す。

夕日のせいで熱くなってしまった赤ら顔を隠すように……

 

 

――それ故に気付かなかった。

ちらほらと帰宅する生徒に混じって、群青色の髪の生徒がこちらを射抜くように凝視していたことに――――

 

 

食事を終え、私は部屋に戻った。

部屋にゼロはいなかったが、共用机の上には置手紙が置いてあった。

 

部屋にはカギがかかっていたため、この手紙はおそらくゼロが私に宛てたものだと思い、何の気なしに開封した。

 

――――――

『伝説の紅いレプリロイド』ゼロへ

 

至急第三アリーナまで来られたし

 

理想郷の妖将より

――――――

 

戦慄した。

ゼロの正体を知る何者かが、このIS学園に紛れ込んでいる。

そして、ゼロと会って何かをしようとしている。

 

――私は、手紙を握りつぶして部屋を飛び出した。




さて、千冬さんVSあの人が早くも始まってしまうのか!!乞うご期待。

次回:ゼロ「……迷った」

では、じわまで気長にお待ちください。
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